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2013年10月18日 (金)

伊豆大島の大惨事を検証する

台風26号は、伊豆大島に未曾有の大災害をもたらしました。犠牲者、行方不明者の数はもとより、その大規模な山体崩落は、まさに「過去に例の無い」災害となってしまいました。このような状況を見るにつけ、ただただやりきれない思いにとらわれます。犠牲になった方々のご冥福と、行方不明の方々の一刻も早い救出を祈らずにはいられません。

それにしても、今年になってから既に何回「過去に例の無い」という言葉を聞いたでしょうか。我が国を取り巻く気象は、このようなことが普通に起こる状況になってしまった、それだけは確かなようです。

今回は、いささか拙速ではありますが、伊豆大島でなぜこのような巨大災害が起きてしまったのかを現時点でわかっていることから検証し、そこから得られる教訓を見出してみたいと思います。

■なぜ豪雨となったか?

台風26号の接近に伴い、台風に向かって北から吹き込む冷気と、台風が「引っ張って」来た暖気が伊豆大島付近の海上で衝突し、強力な寒冷前線が発生しました。北からの冷気の上に、南からの暖気が「乗り上げる」形になったのです。

そこでは強い上昇気流によって強力な積乱雲が急速に発達し、伊豆大島に時間雨量80〜100mmという豪雨をもたらしました。さらに寒冷前線はしばらくそのまま停滞し、伊豆大島は長時間に渡って豪雨帯の中にすっぽり入っていたのです。このため、連続雨量800mmを超える「過去に例の無い」膨大な降水に見舞われました。

■被災地の条件は?

伊豆大島は三原山の噴火によって形成された「火山島」で、急斜面のすぐ下に市街地が広がっています。表層近くの土は、比較的もろくて重い火山灰土が中心です。普段から流水によって火山灰土が流出しており、居住地域の手前には、それを止めるための砂防ダムが造られていました。

■その時、何が起きたのか?

火山灰土は本来水はけが良いのですが、今回はあまりに降水量が多かったために、その下の不透水層との間に大量の水が染み込み、表層の火山灰土がはがれて崩落するという、「表層雪崩」と似た状態になったと思われます。市街地の背後の山体が大規模に崩落し、膨大な量の泥土と巻き込まれた樹木が直線的に流れ下って高速で市街地を襲い、致命的な破壊をもたらしました。大量の樹木によって破壊力を増した泥流は、瓦礫を巻き込んだ津波とそっくりの破壊をもたらす、まさに「山津波」そのものだったのです。

泥流の一部は沢筋の谷間に集中し、溢れた泥流が沢筋に沿った建物を押し流しました。そして一部は海岸にまで流れ下りました。犠牲者の一部は、海岸や海上で発見されています。

■兆候はあったのか?

これは想像ですが、おそらく崩落のしばらく前から、沢筋を流れる泥水が増えていたり、斜面から泥水が吹き出すような現象が見られたはずです。しかし発生時間は深夜、しかも豪雨の中ですから、それを察知することは困難だったでしょう。

崩落が始まってからは「雷のような」山鳴りや、おそらく木々がなぎ倒され、根がちぎられる音と思われる「バチバチ」というような音が聞こえたとの証言がありますが、その段階からできる避難行動は、せいぜい二階に上がれるかどうか、というくらいだったでしょう。つまり、何か異変を感じてからの避難行動では、ほとんど間に合わなかったはずです。

■対策は可能だったか?

被災地区の災害危険度がどのように判定されていたかについては、管理人はまだ良く把握していません。しかし「土砂災害危険地域」であったことは間違い無いでしょう。しかし火山灰土は元来水はけが良く、歴史上このような大崩落が起きたことも無かったので、現実的な脅威として想定されていなくても、ある意味で仕方なかった部分もあるかと思います。仮に崩落が起きたとしても、これほどの規模になるとは予想しにくかったでしょう。

その後の報道によれば、短時間雨量は「特別警報」レベルに達し、崩落前に「土砂災害警戒情報」も発表されていたとのことですが、豪雨の深夜であったために避難勧告の発表がためらわれたとのことです。行政の責任云々についてはここで論じませんが、仮に避難勧告が発表されていたとしても、このような大災害に発展するとは多くの人が考えていなかったはずで、人的被害を激減させられたかどうかについては疑問が残ります。実際に避難行動を行おうとしても、十分な装備が無い人やお年寄り、幼児などには、外に出るだけでも非常に危険な状況だったはずです。

もし管理人が現場にいたとしても、あの状況で避難勧告の発表があっても最短時間で避難行動に移れたか、正直なところ自信はありません。避難行動を始めたとしても、自分や家族が豪雨に対応する装備を整えたり、近所に声をかけたりしたでしょうから、間に合わなかった可能性も少なくありません。しかも今回は土地勘の無い観光客も巻き込まれているようで、もし自分がそうだったらと考えると、あまりに困難な状況だったと言わざるを得ません。

■今後、何ができるか?

今回の大惨事の最大の原因は「過去に例の無い」豪雨であり、それが「過去に例の無い」大崩落を引き起こしたのです。各地で「過去に例の無い」と形容される気象状況が多発するようになった我が国で、ある意味で起こるべくして起こった災害であり、それは伊豆大島に限らず、日本中どこでも起きる可能性が急速に高まっているのです。

そのような状況下で、今回の大惨事の教訓を見出すとすれれば、つまるところ個人個人がセルフディフェンスできるようになることしかありません。過去にとらわれず、行政頼みでもなく、それぞれが自分の居場所に起こる危険を知り、気象状況や周囲の様子を自ら判断して、必要と考えればためらわずに避難行動を始める、それだけがこのような状況から「生き残る」道なのです。言うまでもなく、自分の居住地だけでなく、旅行や仕事で行っている先でも、同様の行動ができなければなりません。土地勘の無い「アウェイ」の方が、条件はより厳しくなるのです。どんな理屈をつけても、結局は「早く逃げる」しか方法は無いのです。

そのような意識や知識を醸成するためには、特に若い人に対する防災教育が重要だと、管理人は考えます。中学や高校などで防災教育を必修とし、避難訓練のついでに講話を聴くようなものではない、実践的な教育を反復することが、結果的に将来の犠牲を最も少なくする道であるはずです。

最後は大きな話になってしまいましたが、今回の大惨事について、現時点で管理人が検証し、感じたことをまとめさせていただきました。

改めまして、犠牲になられた方々のご冥福と、行方不明の方々の一刻も早い救出をお祈りします。

■この記事は、カテゴリ【気象災害】です。

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コメント

大島の土石流は非常に多くの方が亡くらられ胸が痛みます。

町長への責任追及があったようですが、避難指示をためらった理由として
てば氏が以前仰っていた「避難=避難所へ」という固定概念のため
避難指示(避難所へ移動)は危険という判断に至ったことのように思われます。
寝ている時に土砂に巻き込まれた方もいることを考えると、「避難」とは別の用語を使い
行政が「自分で身を守る」事を指示・警告するシステムの必要性を感じました。

>りぴ太さん

本当にひどい事になってしまいましたね。あんな狭い場所で何十人も亡くなるなんて、本当にあってはならないことです。恐るべきは、それが大地震のような滅多にない災害ではなく、過去に経験の無い量のとはいえ、雨で起きてしまったことです。この先も、同様な状況はどこでも起こりうるということです。

例によって町長はじめ行政の責任追及大会が始まっていますね。それをどうこう言ってもはじまりませんが、確かなことは責任追及だけでは何も変わらないということです。

でも、どんなシステムを作っても、人々の危機感が無ければ実効性は小さいんですよ。例えば「特別警報」は、極端な言い方をすれば「すぐ逃げないと死ぬぞ」くらいの意味に捉えるべきなのですが、そこまでの危機感を持つ人がどれだけいるでしょうか。

最近は行政やメディアで「身を守る行動を」と言うことが増えましたが、じゃあどう守ればいいのかまではカバーできないし、しないでしょう。災害時要援護者への対応は必要ですが、自分で逃げられる人の面倒まで見切れないのが現実です。結局、個人の危機意識しか無いんです。

でも、大人の意識を変えるのは現実にはとても難しいことなので、子供のうちからの教育こそが大切だという思いから、記事の内容になったわけです。

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