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2013年10月 1日 (火)

被災経験者ねえ・・・【管理人ひとりごと10/1】

先日、新聞でいわゆる「防災セット」の広告を見つけました。なんでも、《阪神・淡路大震災、東日本大震災の被災者と「防災士」の意見を反映した》ものだそうで。ちなみに、管理人も「防災士」ではありますが、実際の被災経験はありません。

防災の基礎知識がある人間が実際の被災生活の経験を生かしてセレクトしたものならば、それはすばらしいセットになるでしょうね。もっとも、販売用としてはコストの関係もありますから、理想的なものを組むことができないくらいはわかります。でもコンセプトは秀逸なはず・・・と思いたかったのですが、ある程度予想してはいたものの、がっかりを通り越して怒りさえ感じましたよ。

そのセットは車輪つきの頑丈なキャスターバッグに収納されていて、まあそれは良いでしょう。緊急避難時に引っ張って行くのは現実的ではりませんが、被災後に、例えば家から避難所へ運んだりするに便利なのは確かです。ただ、広告コピーが理解しがたいものでした。ちょっと要約しますが、

「オフロード用車輪つきバッグで、瓦礫の上もスイスイ」

だと。オフロード用車輪と言っても、直径5cmもないようなブロックパターン車輪に過ぎません。仮に大きなゴムタイヤがついていたとしても、「瓦礫の上もスイスイ」などとは、被災経験者ならば口が裂けても言えないでしょうがね。

まあ、それは「広告コピー」として話半分、いや十分の一くらいに聞くとしましょう。最大の問題は、その商品の最大の「売り」の部分でした。

キャスターバッグを空にすると、中に水槽型のプラスチックバッグをぴったりと入れられるようになっていて、「給水車の太い送水管からも受水しやすく、重い水を女性やお年寄りでも運びやすい」そうなんですよ。ちなみに、バッグは20リットル容量です。

しかし被災直後はひとり20リットルも分配されないでしょうから、仮に半分の10リットルだとしても、10kg+バッグの重量。それを引っ張るだけならば、女性やお年寄りでも大丈夫でしょう。でも、家や避難所についたらどうします?段差や階段上れますか?マンションの上層階だったら?軽くしようとして、ふたの無い水槽型バッグだけ取り出したら確実にこぼれますし、下手すれば破れます。

じゃあ、そこで他の容器に移して小分けにすれば良いじゃないかというのは机上の空論。断水時には、「水が飲めない」ということばかり考えてしまいますが、忘れられがちな重大なことがあります。それは、手も容器もろくに「洗えない」ということです。

給水車が運んで来たせっかくのきれいな水に、汚れた手や容器を突っ込んで汲むわけですか?一発で雑菌が混ざり、夏場なら数時間で大繁殖しますよ。残留塩素があっても、それは時間の問題です。バッグを家などに運び込むことができても、水を使うたびに汚れた手や容器を突っ込まなければならないとしたら、どうなりますか?こんなこと、被災経験者ならばだれもが気がつくはずなのですが。

ですから、水の容器は運搬と衛生維持のために密閉できるキャップつきのタンクやバッグでなければならないわけで、このセットも、例えば折りたたみ式の5リットルバッグをふたつとか入れてあれば、かなり使えるものになったでしょう。でも、考えが及ばなかったのかコストかはわかりませんが、全く机上の空論的なセットになっています。

この手の「実際には使えないモノ」は、防災グッズの世界ではイヤというほど見かけるわけで、いちいち突っ込んでいたらキリがありません。でも、今回敢えて突っ込んだのは、これが

《実際の被災者と「防災士」がセレクトした》

という売り文句だったからなんですね。どこの誰かは存じませぬが、防災知識を持った人が被災生活を反映させた結果がこれだとは、理解に苦しみます。これでは「防災士」と言っても大したことないな、と思われそうですが、「防災士」といっても、基礎的な座学と初級救急救命講習を受けただけですから、それだけでははっきり言って大したものじゃありません。

資格に加えて、各自が持った独自の知識、意識、経験値によって、上はレスキュー隊レベルから下は「上に言われて資格取得しただけの普通の人」まで、ピンキリもいいところです。それでも「士」ですから、簡単に取得できる割には、広告に使うには便利な資格なんですよね。なお、「防災士」はNPO法人「日本防災士機構」認証資格であり、公的資格ではありません。


当ブログをご覧になっている方で、今後販売用の「防災セット」を作ろうとお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひとも管理人にご相談ください。きっと、すばらしく「本当に役に立つ」セットを組んでご覧に入れます。但し、管理人がやりたいようにやったら、販売的には高確率で失敗するでしょう。きっと「マニア」にしか受けない(笑)


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コメント

仰るように、防災用品を用意すればそれで良いというわけではないですね。
モノを揃えても意味がないわけで、モノは使えて初めて意味がありますからね。

飲み水を汲む行為を考えるならば、ポリバケツやタンクは滅菌しておくか、ビニールなどを使用する必要があります。汲んだ水は防腐の為に小分けすることが予想され、使い捨て手袋、アルコール綿、軍手、滅菌済みの手動ポンプも用意する必要があります。バケツを運ぶ台車には盗難防止のため、ロープやチェーン錠、夜間運搬の可能性があればライトなども、平時から既に設置しておく必要があるかと…

>まったりさん

いやほんとおっしゃる通りです。もし私が「本当に使える防災セット」を組むのならば、そういったことまで想定してやりますし、使い勝手や耐久性も重視しますから、いきおいコスト高になって、しかも一般になじみの無いものがたくさん入ります。だから、一般には売れない(笑)

しかしまあ、断水下では手や容器を洗えないということはあまりにも当たり前のことで、だからこそ「食器にサランラップをかぶせて使えば洗わなくて済む」みたいなトリビアは有名だし、ウエットティッシュ無敵!みたいな話もあるわけです。でも、話がそこで終わってる。

被災時の衛生維持は、ものすごく重要な割には、衆目を集めるトリビア化しずらいジャンルなので、あまり気にされてないんですよね。特に小さなお子さんやお年寄りにとっては、下手すれば生命に関わる重大事なんですけどね。

まあ、私は私で、信じる道を進みますよ(笑)

テスト

管理人様とはリアル友人です。

この夏に、政府のエージェントとして、
双葉郡富岡町に入りました。

放射線測定技師として、線量を計測したり、
現地の状況を調査したり。
(ちなみにネット通販で買った機材や、役所が
貸し出す機材で素人が計測した値には、全く
信憑性ありません。
訓練を受けた人間が、きちんと校正を受けた
測定器で計らないと意味がありません。)

山間の農村部は、屋根瓦が落ちたくらいで
のどかな光景でしたが、
富岡駅周辺の市街地は、津波に呑まれて
酷い惨状でした。

線量自体は、全く大した事なかったのですが
今も避難指示が解除されていません。

そんな中での調査は、

「現地は水道が出ない。」
「トイレも仮設。」

現地の人ですら、認識が薄い。
暑くても、汚れても、手も顔も洗えないのです。

場合によっては、飲み水すら不足する。

移動は車ですから、何でも積み込めるのに。

私のチームは、私が氷水を5リットルのジャグに
2つ持って行きましたからヤレヤレですが、
脱水で引き返すチームもあったようです。

今回は水の事だけ書きましたが、
どんな装備も、机上の空論ではなく、
近いシチュエーションで使ってみるなど
実態にあった取捨選択が必要です。

もちろん、件のキャリーバッグだって、何にも
無いよりは遥かにマシなのですが…

>グローヴァーMSさん

毎度どうも。最前線でのお仕事ご苦労様です。

無人で全インフラ停止の警戒区域に入る、しかも業務で入る方々でさえそうであるということは、呆れるとかではなくて、災害下でも自己完結できる備えをするという意識と知識の醸成が、いかに難しいかということでもありますね。

東日本大震災という究極の「お手本」があって間もないにも関わらず、本当に大切なことは、なかなか一般化していません。水が無いと手も顔も洗えないという被災者の話はいくらでもあるのに、直接的な生命の危険に結びつかないから重要視されておらず、それよりもどうでもいいトリビアばかり広まるし。机上の空論の方が、わかりやすくて面白いんですよ確かに。

でも断水下で医者にもかかれない状況では、不衛生でひどい下痢にでもなったら、簡単に命に関わるんですけどね。本当に生き残れるかということより、生き残れる気になるという情報ばかり取り沙汰されるのは、商業ベースではある意味仕方ないので、それを批判してもはじまりません。

ただ、そういった「本当に役に立つ情報」を広めようと、目立たずとも地道に活動している人々も多いなかで、得体の知れない「プロ」だの「専門家」だのいう肩書きや、ましてや「被災者」まで持ち出して、「本当は役に立たない」モノや情報が拡散されている状況を静観したくは無いですね。

災害の被害は、備えの不備があれば確実にそこに集中します。後悔先に立たずなんですが。

もちろん、どんなものでも、あればあったでそれなりに役には立ちますけど、機能的にも価格的にも、やっぱり商業ベースじゃ限界があるなと痛感する今日この頃です。

関係ありませんが、近々福島を題材にした「ディザスター・エンタテインメント」小説第二弾の連載を始めようと思っております。

防災グッズの記事待っておりました。

現在の防災グッズを見ていると余りのぼったくりに苦笑いです。まるで銀色の持ち出し袋に売れ残り品を詰め込んで売っているようです。私の中では銀色の袋=ぼったくりの式が出来てしまっています(笑)

これらの防災グッズの相場は1万円くらいですが、1万円で管理人氏がそろえる防災グッズという物も拝見したいです。防災グッズの実質は半額程度ですので遙かに凌駕するのは明らかですが・・・。

言いにくい事ですが。防災は、世界経済や国際政治、紛争問題と言った、高尚な?カテゴリには入りません。まあ、アレです。福祉や介護のような、社会的弱者視点の話題です。少なくとも3.11以前は、忌み嫌う話題でした。
私の知る限りでは、防災産業自体が旧態然としており、コスト意識や研究開発意欲もまるでありませんでした。経営陣は老人ばかりで、作業者が刑期中の人ということも。非常に暗い産業なので、実用には程遠い。

使えない防災グッズの理由はそんなところにあると思います。
私は防災グッズより、アウトドアグッズを人には勧めますね。
アウトドアは自ら進んで行う野営であり、やってることは、被災生活に類似点が多いですから。

てばさん、こんばんは!お久し振りにコメントします。私の防災グッズの内容はまだ未完成ですが、こちらのサイトと出合って数段レベルアップしたと思ってます。乾電池のサイズを揃える、防寒の意味を含む「雨具」の装備。これらはこちらのブログに出合わなければ気付かなかったと思います。

情報が溢れた世界だからこそ、個々で情報の質を見極める力が必要となるんでしょうね。

>りぴ太さん

記事のセットも、2万円以上するんですよw敢えて他の中身には触れなかったのですが、まあ推して知るべしという感じ。もちろん、あればあったでそれなりに、って奴ですね。でも、同等のものを個人で揃えれば、半額以下で行けますわ。要は、製造とか流通が全く異なる商品をセットする手数料って感じですかね。実際、えらい手間かかりますよ。それにしても高いw

私が揃えるものとしては、今連載しているEDCシリーズをご覧いただければ、方向性はお判りいただけるかと。基本的に、「これだけあれば安心」みたいな捉え方をされたくないので、具体的なセットを組むことはしないと思います。あくまで方向性を示す形で行きたいと考えております。

>まったりさん

おっしゃること、理解できます。まあ、儲かる産業じゃない。ユーザーにしても、用意しても使うかどうかもわからないから、できるだけ安く上げたい。高ければ売れないから、必然的に「安物」的商品がはびこる。だから経済的にはおまけみたいな産業ですよね。

ただ、「本当はどうなんだろう、何が必要なんだろう」と考える方々も特に311以降増えているのは確実ですし、そういう方々が、私のブログを支えていただいているんだと思っています。

記事をご覧いただいてお判りいただける通り、私も「防災グッズ」として作られたものは、あまり重視していません。機能、耐久性、使い勝手に優れたものは、本当に少ないですから。だから、それ以外のものを転用したり、機能性、耐久性に優れたアウトドア用品や軍用品を重視しています。

まあ、極限状況で使うことを前提としたグッズですから、良くて当然なんですけどね。コストを除けばw

>かなさん

お久しぶりです。役に立った、そう言っていただけるのが、私には一番うれしいですね。

「これだけ揃えろ」みたいなことは簡単に言えますが、あらゆる状況に対応できるものはできませんし、そこで思考停止して欲しくない。あくまで、それぞれの置かれた状況にあわせて、ご自分で考えて備えて欲しい。それが私の願いです。というか、そうでなければ「本番」で使えないこともあるのです。

私が示すのは、あくまで考え方と方向性です。被災時に腹減った喉渇いた寒い暑いあれが無いこれが無い、そんなのはイヤだ。ならばどうするか?何が使えるか?というだけの話なんですけどね。

それ以前に、まずそんな不平不満を言える状態、つまり生きていなければならないから、そのためにどうするか、ということの方が大切なわけです。

防災に限らず、山ほど情報があっても、有用なものは限られます。でも防災の世界は、特にそれが極端なんですがw

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