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2013年10月28日 (月)

☆再掲載☆高層ビル編04【首都圏直下型地震を生き残れ!30/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


今回は、高層ビルにおける「長周期地震動」以外の危険について考えます。

前回までに、超高層ビルにおける「長周期地震動」の影響について考えましたが、理論的なことはさておき、とにかく高層ビルは大きく揺れるわけです。一般的な感覚として、背の高いものが揺らされた場合、高い場所ほど揺れの幅が大きくなると思いますし、事実その通りです。

これは何も高層ビルではない低層の建物でも、そして「長周期地震動」でなくても、高い場所ほど揺れの幅は大きくなります。ところが、こと高層ビルの場合、高い場所の揺れ幅が最大にならないケースがあるのです。これは超高層でなくても、10階建てくらいからはっきりとした傾向が出始めます。

それは「短周期地震動」、つまり周期1~2秒の、いわゆる「キラーパルス」が発生した場合です。ここで、1995年の阪神・淡路大震災の被害状況を見てみましょう。この地震は、震源深さ10kmの内陸直下型地震で、強い「短周期地震動」が発生した典型的な例です。
Photo
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このように、比較的高いビルの中層階が押しつぶされるように崩壊する、それまでほとんど想定されていなかった被害が多発しました。これは一体何が起こったのでしょうか。なお、先に申し上げておきますが、阪神・淡路大震災でこのような崩壊をしたビルは、ほとんどが1980年以前に建築された「旧耐震基準建物」です。1981年以降の「新耐震基準建物」は、耐震強度が大幅に向上していますので、このような崩壊をする可能性は非常に小さくなっています。

さて、その後の研究で、新たな事実がわかりました。ある程度以上の高さの高層ビルは、揺れの周期によって、かなり異なる揺れ方をするのです。それが下図です。
Mini
「長周期地震動」を含む、ある程度長い周期の揺れ、これはある程度震源から離れた場所で発生しやすいのですが、その場合の高層ビルの揺れ方は「一次モード振動」と呼ばれます。これは一般的な感覚の通り、高い場所ほど振幅が大きくなる揺れ方です。

しかし、内陸直下型地震で発生しやすい周期1~2秒程度の「短周期地震動」、つまりビルの「固有振動周期」より短い揺れを受けた場合、「二次モード振動」と呼ばれる、いわば「腰をくねらすような」揺れが発生します。この場合、中層階の揺れが最大になる、つまり中層階の構造にかかるストレスが非常に大きくなります。

その結果が、前出画像のような破壊を生んだのです。最も揺れが大きくなった中層階の構造が、建物を真ん中でねじるような力に耐えきれず、上層階の重みで押しつぶされたわけです。繰り返しますが、1981年以降の新耐震基準による建物では、このような崩壊をする可能性は、はるかに小さくなっています。

ひとつ補足しますと、二枚目画像の建物では、「二次モード振動」の効果に加え、建物左右の構造が違うことで揺れ方の違いが発生し、崩壊部分により強いストレスが集中した結果でもあります。このように、建物に構造が異なる部分があったり、増改築をした建物や、上から見てL字型などの建物は、各部の揺れ方が異なるために、特にその結合部分に大きなストレスが集中し、破壊に発展することがあります。


ところで、広い範囲で「長周期地震動」が発生した東日本大震災でも、関東地方では高層階より中層階の構造や室内への被害が大きいという現象が発生しています。この傾向は、主に10~20階程度の高層マンションなどで多く見られました。これは、人類の観測史上4番目という超巨大地震だった東日本大震災では、震源域からの距離が比較的離れていた関東地方でも周期1~2秒程度の「短周期地震動」が、かなり強く発生していたことによるものです。しかし一般的には「短周期地震動」が発生しやすい、内陸直下型地震の場合に顕著になると思われます。

東日本大震災では、東京・新宿などの超高層ビルにおいては「長周期地震動」による「一次モード振動」が卓越し、それより低い高層マンションなどでは、「短周期地震動」による「二次モード振動」が多発したわけですが、これは地震の規模や震源との距離、地盤の状態など多くの要素に影響されるものです。ですから、まずこのような事が起こるという事を知った上で、普段から「どちらが起きてもおかしくない」という意識を持って、対策を進めなければなりません。具体的な方法は後述します。

次回は、「免振ビルは本当に地震からの救世主か?」ということについて考えます。


■このシリーズは、カテゴリ【地震・津波対策】です。

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