2023年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

« 小説・声無き声 第一部【5】 | トップページ | 福島動物支援チャリティーに関する重大発表 »

2013年11月12日 (火)

☆再掲載☆高層ビル編09【首都圏直下型地震を生き残れ!35/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


今回は「家具はなぜ倒れるか?」について考えます。もちろん、これはあらゆる場面に共通する問題ですが、高層ビルの大きな揺れに対抗する場合に、特に重要になりますので、このテーマ内で述べることにします。

地震の際に、家具はどのように倒れるのでしょうか。まずそこから行きましょう。実は、これは地震で建物が破壊されるメカニズムと、基本的には同じ理由なのです。そこには建物と家具の「固有振動周期」が関係しています。地震による建物の揺れと、それによる家具の揺れの周期が異なるために、家具は安定を失って倒れるのです。

では、家具がどのような過程で安定を失うかを解説します。まず最初の動きが、下図の1の状態。地震の揺れで、家具の上部が、「慣性力」によって壁から離れる動きをします。揺れが最初からとても強ければ、このまま一気に転倒することもあります。脚払いを受けたような状態です。なお、下図はわかりやすくするために、家具と壁の間隔を誇張しています。
01
しかし多くの場合、次の段階があります。一旦バランスを取り戻そうとして壁の方向に戻った家具は、慣性力によって、つまり勢い余って壁側に傾き、壁に接触します。上図の2の状態です。家具と壁の間に隙間があれば家具の上部が、完全にぴったりくっついている場合は、全体が壁に押しつけられます。

このとき家具の動きと壁、すなわち建物の動きが全く同期していれば、同時に壁が後ろに「退がる」ことで慣性力を吸収し、一旦は安定状態に戻ります。しかし建物と家具の振動周期は異なりますから、壁と家具は衝突し、家具に押し戻す、あるいは弾き飛ばすような反発力を加えます。その反発力によって、今度は反対側、つまり部屋側にさらに大きく傾くか、転倒します。

そこで転倒しなかった場合、家具は再びさらに大きな速度で壁側に傾き、壁と衝突します。速度が大きいということは運動エネルギーが大きいということですから、壁に加わる衝撃力も大きくなり、その分大きな反発力で跳ね返されます。このような動きを繰り返すことで、家具の揺れ幅はどんどん大きくなり、最後には転倒して3の状態になります。これは理科で勉強した「慣性の法則」と「作用と反作用」の連鎖なのです。

家具の背後に壁が無い場合には、家具と床の揺れの周期が異なることで、家具の揺れが増幅されて転倒します。ですが背後に壁があることで、より早い段階で、より重量のある家具でも転倒しやすくなるわけです。阪神・淡路大震災のような強い地震では、数百kgの重量があるアップライトピアノでさえ、このような動きの連鎖よって転倒してしまいます。特に高層ビルにおいては、低層建物より振幅の大きな揺れがより長時間続きますから、対策はより厳重にしなければならないわけです。

このメカニズムをご理解いただいた上で、前掲の実験動画をもう一度、家具の動きに注意してご覧いただければと思います。

家具の転倒を防ぐ最も効果的な方法は、家具の「固定」です。しかし本当に固定と呼べるものは、造り付けの家具だけです。ごくわずかの隙間があれば、つまり家具を手で押してわずかでも動けば、その動きが地震によって増幅されます。

家具の転倒対策とは、すなわちこの動きを防ぐこと、言い換えれば「建物と家具の振動周期を強制的に同期させる」、もっと平たく言えば、「家具と建物を一緒に揺らす」ということなのです。

そのための効果的な方法は、次回へ続きます。

■このシリーズは、カテゴリ【地震・津波対策】です。

« 小説・声無き声 第一部【5】 | トップページ | 福島動物支援チャリティーに関する重大発表 »

地震・津波対策」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 小説・声無き声 第一部【5】 | トップページ | 福島動物支援チャリティーに関する重大発表 »