700号☆再掲載☆本当に必要な防災グッズとは?【7・最終回】
■当記事は過去記事の再掲載です。なお、ブログスタートから通算700本目の記事となります。
地震を中心とする大災害が発生した場合、一般に「3日間は自力でしのげ」と言われ、その分の備蓄をすることが推奨されています。これは大体3日目くらいから、被災地に水や食料、医薬品などの公的支援が届くということが前提になっている考え方です。しかし東日本大震災で明らかになったように、被災地が非常に広い範囲に及んだり、道路が寸断されてしまった場合には、さらに長い期間に渡って公的支援が得られないこともあります。
仮に、現在想定されている東海・東南海・南海地震が短期間で連鎖して発生した場合、関東から四国・九州までの太平洋岸という人口とインフラが集中している地域が被災し、最悪の場合4000万人、つまり我が国の人口の三分の一が「被災者」になる可能性があります。なお、一般に「被災地」とは、何らかの被害が出る、震度6弱以上の揺れに見舞われた場所を指します。
それは最悪のシミュレーションですが、そこまで行かなくても、大都市圏が広範囲に被災した場合には、速やかな公的支援が得られない可能性は非常に大きいと考えなければなりません。それでも、とにかく支援が得られるまでは自力で「生き残る」必要があります。そんな場合、命をつなぐために一番大切な要素はなんでしょうか。
それは「水」です。
人間は、健康な大人ならば何も食べなくても、最大3週間は生きられる可能性があります。しかし水が無ければ、ほとんどの人は3日で死に至ります。災害報道で良く聞く、閉じこめられた人の生存率が急激に落ちるまでの時間を表す「黄金の72時間」(Golden 72hours)とは、すなわち水無しで生きられる限界を表しているのです。ただ、これはもちろん条件が良い場合のことであり、子供、老人、身体の弱い人や、暑さ、寒さ、怪我などの悪条件があった場合には、当然ながら短くなります。
すでに多くの方が水の備蓄をされていると思います。しかし想定より長い期間にわたって、外部からの支援が得られない場合はどうしますか?備蓄はいつかなくなります。
その場合には、水を「作る」のです。
我が国は、水の国です。雨や雪も多く降りますし、国土のあちこちに水が流れています。それを利用しない手はありません。しかし都市に存在する水を、そのまま飲用するわけには行きません。
それでも有害な化学物質が大量に含まれているような水でなければ、ろ過と煮沸をすることで、かなり安全な水にすることができます。その方法は別稿にゆずるとして、ここでは最も簡便な方法を紹介します。我が国は、高度産業国家でもあるのです。
画像は、「スーパーデリオス」という商品です。キャップ部分に中空糸膜フィルターと活性炭フィルターが入っており、水中の不純物から細菌までをろ過して、安全な水を作ることができます。条件が良い水の最大ろ過能力は200リットル、つまりドラム缶一本分にもなりますので、ひとつあるだけで非常に心づよいものです。キャップはペットボトルと同じサイズですので、大型のペットボトルにつければ、効率的にろ過ができます。これがあれば、風呂の残り湯でも安全に飲むことができるのです。ボトル部分はサイズも素材もマヨネーズの容器とほぼ同じで、空気を抜けば丸めてコンパクトに持ち歩けます。フィルター部分だけの重量は約60g、ほぼ卵一個分しかありませんので、普段から持ち歩けます。
次はこちら。
浄水ストローです。これは水を直接口で吸って飲むものですが、殺菌能力はありませんので、塩素系消毒剤がセットされています。川の水などを容器に汲み、消毒剤で殺菌してから、ろ過材が入った本体でストローのように飲むわけです。軽量コンパクトですので、普段から持ち歩くのも負担になりません。右が私の持ち歩きスタイルで、フリーザーバッグに入れて、カバンに入れています。家族ひとりに一本ずつあると良いでしょう。
これは徒歩移動中に水の補給があまり期待できない、帰宅困難時対応グッズとしても優秀です。川の水も雨水も、みんなあなたの「水場」になるんですよ(笑)
さらに大量の水を作りたい時、これが役立ちます。
浄水剤です。これは不純物が無いきれいな水か、ろ過済みの水に入れて、微生物や細菌を消毒するものです。「スーパーデリオス」と併用すれば、さらに安心です。
価格は、画像にもあるとおり15ミリリットル(大さじ一杯分)で1250円程度です。
これらの商品は、ホームセンターなどの防災グッズコーナーではまず目にすることがありませんが、登山・アウトドア用品店なら大抵は扱っています。また、商品名で検索すれば、ネットショップがたくさんヒットしますので、入手は簡単です。でもこんな商品は、海外では手に入らないことが多いでしょう。我が国はまさに「災害列島」ではありますが、こんなに優れた商品が簡単に手に入る国であることを、「生き残る」選択肢もとても多い国であることを、誇りに思おうではありませんか。
水に関してひとつ補足しますと、喉が渇いたからと言って雪を直接食べてはいけません。雪を食べると身体を中から冷やしてしまい、体力を大きく消耗します。下がった体温を上げようとして、カロリーが無駄に使われるのです。雪は必ず溶かして、体温程度にまで暖めてから飲む必要があります。一番簡単な方法は、ペットボトルなどに雪を詰めて、それをしばらく服の中に入れておき、体温で溶かして暖める方法です。
最後に念のため申し添えますが、各商品のメーカー、取扱い店とも一切の関係はありません。あくまで「防災屋」の目でセレクトし、自分でも使っている優れた商品を紹介しております。
今回で【本当に必要な防災グッズとは?】のシリーズは、一旦終了します。
■商品リンク掲載に当たっての追記■
今回は、「安全な水を作る」ために管理人が最もお薦めするふたつのグッズです。どちらも持ち歩きにも備蓄にも適した製品で、淡水さえあれば渇きに苦しむことは無くなるのです。ちなみに管理人は、スーパーデリオス3個、浄水ストロー2本を備蓄とEDC(Every Day Carry)用に備え、最低でも浄水ストロー1本は必ず持ち歩いています。
浄水剤は、当初は持ち歩きを考えて登山用品店で購入したミニボトルを紹介しましたが、少量の割に割高でもありますので、家に備蓄しておくためには下記商品をお薦めします。商品名「ケンミックス4」という次亜塩素酸ナトリウム剤です。この製品は食品添加物の認可を受けていますので、安心して水の消毒に使えます。希釈液を作れば、ノロウイルスをはじめとするウイルスの除去にも効果を発揮します。ウイルス除去用だけならば安価で主要成分が同じのキッチン用塩素系漂白剤(商品名キッチンハイター等)でも十分ですが、キッチン用には水酸化ナトリウムが添加されていますので、飲料水、食品用には適しません。なお、使用時には分量を正確に測って正しく使わなければなりません。酸と混ぜると猛毒の硫化水素が発生するので、その点も注意が必要です。
■このシリーズは、カテゴリー【防災用備品】です。
« 小説・声無き声 第一部【18】 | トップページ | 福島県沖で震度4連続発生 »
「防災用備品」カテゴリの記事
- 『通電火災』対策はどこから必要か?(#1309)(2017.02.02)
- 未来の大災害に備えてEDCを考えよう(#1196)(2016.05.15)
- 【熊本・大分の方だけでなく】『普段持ち歩く防災グッズ』リンク集(#1194)(2016.05.08)
- 【熊本・大分の皆様へ】『本当に必要な防災グッズ』リンク集(#1191)(2016.05.01)
- 【熊本・大分の皆様へ】『家に備える防災グッズ』リンク集(#1190)(2016.05.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント