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2014年3月

2014年3月29日 (土)

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【9】

■当記事は過去記事の再掲載です。


今回は「安全・衛生」編です。

これはどういうことかと言うと、災害時において衛生状態を良好に保ち、身体の傷害、トラブルを防ぐということです。

まずは、手袋です。「防水・防寒」編にも登場しましたが、管理人は普段、防寒用手袋を持ち歩いていませんので、防寒用にも代用する前提で、作業用手袋とラテックス手袋を持ち歩いています。
Photo
画像は、作業用手袋の上にラテックス手袋を重ねてつけた状態です。本来は手に直接はめて使います。

ラテックス手袋は、主に負傷者救護時の血液感染防止用や、汚物を扱う時のために用意しています。裏技として、作業用手袋にかぶせても使うわけです。家庭にもまとめて常備しておけば、地震時に限らず、断水時の衛生管理や普段の掃除などにも重宝します。

作業用手袋は、災害時の避難行動やその後の多くの作業から、手を護ってくれます。しかし管理人が持ち歩いているものは、軽量コンパクトであることと、作業しやすさを重視して薄手のものなので強度はそれほど無く、耐熱性もほとんどありません。そこでヘビーデューティを想定するなら、こんなのも良いでしょう。
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厚手の革手袋です。これなら保温力もかなりあり、切削、突き刺しにも強くて耐熱性も高いので、火を焚く時にも安全です。管理人も、行く場所によってはこちらを持っていくこともあります。


絆創膏(バンドエイド、リバテープ、カットバン、サビオ等)も重要です。これは一般的なものなので画像は載せませんが、箱ごとでは無く、他の衛生用品と共に何枚か、フリーザーバッグに入れておくと良いでしょう。軽い怪我に使えるのはもちろん、長距離徒歩移動の際には、足の小指の先、足の裏などに先に貼っておくことで、マメができるのを効果的に防ぎます。足の裏用には、正方形のタイプが使いやすいでしょう。マメができた足で何キロも歩くことは、事実上不可能です。


災害時にはきれいな水が入手できないことが多いので、手を洗うこともままなりませんし、怪我をしても、洗い流すこともできません。常に細菌感染の危険があります。それに対応したものがこちら。
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エタノール(アルコール)です。画像はありませんが、ウエットティッシュのパックとポケットティッシュも一緒に持ち歩いています。エタノールは薬局で購入したものを、100円ショップのスプレーボトルに小分けしたものです。手が洗えない時、手指の消毒ができますし、傷口を清浄に保つこともできます。入手しやすいポケットティッシュに噴霧して使えば、ウエットティッシュの節約にもなります。小さなお子さんがいる場合には、特に重要な部分でもあります。ちなみに、ウエットティッシュ代わりとして、安価でとても有用なのが、赤ちゃん用おしりふきクロスです。

そして定番のマスク。
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管理人は、二種類持ち歩いています。まず安価な通常のマスク。これは主にホコリを防ぐ目的です。東日本大震災の被災地でも、ひどいホコリに悩まされ、マスクとゴーグルが欲しかったという声がありました。ホコリを防ぐためには前出の水泳用ゴーグルに加え、タオルの覆面とマスク併用するとさらに効果的です。

もうひとつは、抗ウイルスタイプです(パックされている方)。これは災害というより、インフルエンザのパンデミックに対応したものです。状況によって使い分けます。さらに、最近はPM2.5からの防護も考えなければならなくなりました。通常のマスクでもそれなりの防護効果は見込めますが、抗ウイルスタイプの方がより効果的です。ただ、価格がかなり高くなりますので、状況によって通常タイプと使い分けると良いでしょう。

これらをまとめて、フリーザーバッグに密封して持ち歩いています。内容は、マスク6枚、抗ウイルスマスク2枚、ラテックス手袋3組、ウエットティッシュ10枚入りパック1個、ポケットティッシュ1個、レジ袋(緊急時の手袋代わりと、血液汚染ゴミ等処理用)2枚、絆創膏10枚と、キューマスク(人工呼吸用感染防止フェイスマスク)です。
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大災害で負傷者がたくさん出た場合に、病院では「トリアージ」が行われ、重症者優先の治療体制になりますので、軽傷者は治療が受けられない可能性が高くなります。そのため、小さな怪我は自力で対処しなければなりません。怪我だけでなく、劣悪な衛生状態で体調を崩すことも防がねばなりません。特に下痢になると、身体の水分を大量に失いますので、非常に危険です。

ですから、まずなるべく身体を痛めないための「予防安全」が重要です。

次回は、「情報」編です。


■参考データ
作業用手袋(ミタニ・プロハンドラー) 重量65グラム
革手袋(メーカー不明) 重量100グラム
エタノール+100均スプレーボトル 重量57グラム
衛生セット(マスクなど)+フリーザーバッグ 118グラム
※データは管理人調べ

↓ラテックス手袋 サイズ各種あり

↓作業用革手袋

↓汎用革手袋(記事のものと同等)

↓消毒用エタノール

↓抗ウイルスマスク。他にも様々なバリエーションがあります。


■このシリーズは、カテゴリ【防災用備品】です。

2014年3月28日 (金)

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【8】

■当記事は過去記事の再掲載です。なお、今回は最近の他の記事と重複した内容が多く含まれます。


「防水・防寒」編、続きます。

ここで前回の記事の補足なのですが、レスキューシートの重要な使い方について。

レスキューシートはとても反射率が高いため、地面に広げたり、海に向かって広げれば、航空機や船舶からの被発見率がぐっと上がります。航空機や船が見えた場合は、その方向に向けて広げることで、さらに見つかりやすくなります。

余談ながらそれに関連して、救難信号のことを少し。災害時に孤立した人々が、地面に「SOS」を描いているのが見られることがありますが、その代わりに、大きな「正三角形」でも大丈夫。これは世界共通の救難信号ですから、パイロットや救助隊が見れば、すぐ理解されます。夜間の場合は、大きな正三角形の溝を掘って、そこに灯油などを流して炎の三角形を作るという方法もあります。正三角形の頂点で火を燃やしたり、ライト類を置くのも有効です。

サインの表示場所と退避場所が離れていたり、移動が必要になった場合には、「正三角形」のそばに石などで退避場所や移動方向を示す矢印を描いておきます。

人体でも救難信号が出せます。船や航空機の方を向いて両手を上げ、全身で「Y」の形を作ると、これも世界共通の救難信号になります。

火が焚ける場合は、火を大きくした後に生木や緑の葉を多く入れれば、白煙の「のろし」が上げられます。これは条件が良ければ、20km以上もの遠方からも視認することができますので、航空機や船舶に対して自分の位置を示すのに非常に有効です。プラスチックやゴム類を大量に燃やせば、黒煙の「のろし」が上げられます。

破壊された車があれば、シートの中のスポンジやビニールレザーのカバー、合成樹脂の内装類、さらには空気を抜いたタイヤ(空気を入れたまま燃やすと破裂の恐れがあります)など、黒煙を上げられるものがたくさん手に入ります。


さて、「防水・防寒」に戻ります。

非常時の防寒で特に重視したいのが、頭部です。頭部は表皮の近くに毛細血管が集中していますので、多量の熱を放出しており、その割合は、身体全体の放熱量の40%にもなります。ですから頭部を冷やすのは、体熱、つまりカロリーの大きな無駄遣いなのです。

何も対策をしないと、カロリーが十分に摂取できない非常時には、行動可能時間に大きな差が出ます。特に長距離徒歩移動中には、空腹感、疲労感が強くなるだけでなく、途中で力尽きるかどうかの分かれ目にもなりかねません。

そこで、頭部を保温する持ち歩きグッズとしてお勧めしたいのが、ニットキャップです。耐熱性を考えると、ウール100%のものが良いでしょう。
Cap_001
画像は管理人の私物で、米軍放出品の「ワッチキャップ」です、ウール100%で、価格も手頃です(下記)

それが無い場合でも、寒い季節には帽子、スカーフ、タオルなどで、とにかく頭部をできるだけ保温してください。プラスチック製のいわゆる保安帽をかぶる場合も、できるだけ何か下にかぶってください。保安帽に保温効果はほとんどありません。大きなスカーフやタオルがあれば、ヘルメットの上からかぶってしまう方法もあります。

頭部を保温すると血液が無駄に冷えませんので、身体全体が温かく感じますし、実際にかなり楽です。これは冬の屋外はもちろん、寒い部屋の中で頭に何かかぶるだけで、十分に実感できますので、一度試してみてください。管理人のパソコン部屋は寒いので(笑)、部屋の中でも愛用しています。


コートなどを着ていても、首まわりが開いていると、体熱がどんどん逃げて行きます。首周りも、マフラー、スカーフ、タオルなどをしっかり巻いてください。

そのためにも、持ち歩くカバンの底にでも、クッション代わりタオルを1~2本入れておくことをお勧めします。タオルは防水・防寒はもちろん、汗止め、包帯・止血帯代わりなど非常に使用範囲が広いので、ぜひ持ち歩きたいものです。

手に入りやすいもので保温力をアップする方法として、新聞紙や段ボールは有効です。新聞紙をなるべく空気を多く含むように折り畳んで服の下に入れると、かなり温かくなります。段ボールでも同様の効果があります。

空気は最良の断熱材ですので、服の中に動かない空気の層(スタティックエア)をたくさん作ることで、外気の冷たさを遮断し、体温が放出されるのを防ぐからです。体温で暖められた空気は軽くなって上昇しますので、この時に首元をしっかり締めていないと、温かい空気がどんどん逃げてしまいます。それを防ぐためにも、首元をマフラー、タオルなどでしっかり塞ぐことが大切です。


これらの対策で身体を温かく保ち、カロリーの無駄な消費を押さえることで、対策をしない場合よりずっと長い時間行動したり、持ちこたえたりすることができるはずです。

これで「防水・防寒」編は終わりです。次回は「安全・衛生」編です。

■参考データ
ワッチキャップ(米軍放出品) 重量73グラム、価格1000円前後


■このシリーズは、カテゴリ【防災用備品】です。

【防災の心理09】楽観戦隊ダイジョブジャー!

おバカなタイトルをつけてみましたw

今回は、「心理の壁」とヒーローの関係について考えます。当シリーズの冒頭で、三人の「ある男」の行動を挙げ、どれが一番「ヒーロー度」が高いと感じるかお聞きしました。

一般的には、登場前の状況が厳しいほど、そして冒した危険が大きいほど、「ヒーロー度」が高く感じるということにはご同意いただけるのではないかと思います。

ところで、世間にはなぜこれほどヒーローもののコンテンツが多いのでしょうか。その答えは、面白いから。見ていて理屈抜きにスカっとするからではないでしょうか。

小さな子供の頃から熱中してしまうことを考えると、どうやら我々は「本能的に」ヒーローが好きなようです。そんなカタルシスを得られるという意味では、あの「倍返し」の人や水戸黄門もヒーローの範疇ですね。

では、ヒーローがやる事とは?これはもう簡単。普通の人なら解決できない危機や問題を、快刀乱麻を断つが如くバッサバッサと解決するわけです。その亜流には、すごく弱いキャラクターが悩み、苦しみながら最後には勝つなんていうパターンもありますが、とにかくも危機を解決してくれます。

そして我々は思うのです。ウルトラマンが、仮面ライダーが、水戸黄門が(管理人はそういう世代なものでw)いてくれたら悪ははびこらずこの世は安泰、そんなヒーローが本当にいてくれたらなあと。そして、自分がそんな力をもっていたらいいのになあと。

そんな願望を起こさせるヒーローがやっていることを一言で表すとしたら、どうなるでしょうか。もうバレているかもしれませんが、それこそが「正常化」ということです。ねじ曲がり、歪んだ状態を、我々が本能的に望む「正常な状態」に戻してくれるわけです。ヒーローへの願望は、「正常化」への願望とイコールと言っても過言ではありません。

そう考えると、我々の心の中の「正常化」を望む願望は、かなり強いと思いませんか?本当にヒーローがいてくれれば、何が起きても大丈夫だと「楽観」できるのです。これが創作の世界でなくても、例えば職場に頼れる上司がいたしたら、問題が起きても「あの人の指示に従えば大丈夫」と思いたかったりしませんか?

それくらい、我々の「ヒーロー=正常化」への願望は、ごく普通の気持ちだったりします。

翻って災害時の行動シミュレーションですが、その想定は平和な日常を覆す、ねじ曲がり、歪んだ状態です。しかもそこで起きるのは、テレビを観るように傍観できない、あなたや大切な人に、実際に降りかかる生命の危機です。できることなら、それが現実に起きるとは認めたくありません。つまり、強い精神的ストレスが加えられるのです。

そんな状態では、無意識のうちに「ウルトラマン助けて!」という気持ちが起きるのは、ある意味で当然のこと。その気持ちが、「正常化バイアス」となるのです。なお、バイアスとは「偏向」の意味で、本来ある方向から曲がってしまうことです。

言うなれば、起きて欲しくない状況を前に、あなたの心の中のヒーローに、無意識に助けを求めてしまうのです。その結果、「起きて欲しくない事→起きない」というバイアスがかかり、現実に起きる可能性が高い困難を排除してしまい、ある意味で「楽な」シミュレーションになりがちになるわけです。

現実にはあまり役に立たないような災害トリビアが興味を惹きがちなのも同じことで、そこに「これを知っていればもう大丈夫」というような、わかりやすい「正常化ヒーロー」を無意識に求めてしまう結果と言うことができるでしょう。しかし、残念ながらそれで済まないのが現実なのです。

ではどうするか。何もあなたの中のヒーローを消去せよとは言いません。ヒーローの存在は、心の支えでもあります。大切なことは、あなたを助けてくれるヒーローは、なぜヒーローたり得るのか、どうやって危機を救ってくれるのか、そのためには何を考え、備えているのかをひとつひとつ考えて真似することです。

SFだと超人的な能力で片づいてしまいますが、生身のヒーローは、裏では(時には表でも)考え、悩み、苦しんだ結果、意を決して行動することで、解決策を導き出しているのです。

自分の「こうであって欲しい」という願望を意識して抑え、現実には何が起こるか、むしろ起こって欲しくないことばかりが起きるという前提で考え、備えることが必要です。それは前述の通り本能との格闘であり、ともすれば「楽」な方にバイアスがかかりがちです。でも、そんな「心理の壁」を乗り越えなければなりません。

それができるようになった時、あなたの「生き残る力」は確実に高くなっているはずです。そして、普段からそのような考えと行動ができているあなたは、「その時」に、誰かにとってのヒーロー(ヒロイン)になっているかもしれません。


次回からは、また新しいテーマについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年3月26日 (水)

超満員のスタジアムでハンディキャップを考える

なんとなくシリーズ化している『超満員のスタジアムで○○を考える』、今回は超満員の国立競技場で考えました。

先日、東京の国立競技場で行われたライブコンサートに行って来ました。実は管理人、大抵のライブ参加時には、車椅子の友人の介助者として入場しています。もちろん観覧席は身障者専用スペースであり、それ自体には問題は感じていません。

ただ、数万人のファンが集まる会場周辺や入場時、そして多くの人が一斉に動く退場時は特に、車椅子の方など身障者にとって非常にシビアな状況になるわけです。介助者がいればまだしも、一人で来場されている車椅子の方も結構多くいらっしゃいます。

そんな方々が、例えば駅から混雑する街を抜けて会場へ行き、さらにそこから階段などを避けて一般とは違うルートで入場するまでの間には、実は非常に多くのバリアが存在するのです。例えば歩道の切り下げにしても、車椅子単独では登れないくらいの急な坂になっている事も少なくありませんし、結構な段差もあります。それ以前に人が密集した歩道などでは、車椅子からの目線では先を見通すこともできません。都市部の狭い歩道で、さらに放置自転車や街路樹などがあったりすれば、人とすれ違うのも難しい場面も多々あります。

また、坂を上らなければならないこともありますが、そこを車椅子が密集した歩行者のゆっくりとしたペースに合わせて進むのは、かなりハードな作業となります。そんな場所ではこまめに発進・停止を繰り返すことになり、介助者が押していても、普通に進むよりもはるかに体力を使うのです。腕力だけで進む車椅子の方の苦労を想像してみてください。

今回の会場だった国立競技場周辺の歩道はかなり狭い場所が多いのに加えて、緩やかながら長いアップダウンもかなりあり、そこで密集した人の流れの中で車椅子を押して進むのは、かなり骨の折れる仕事であることを実感しました。これがもし歩道も無いような狭い繁華街などだったらと思うと、身障者にとっていかにバリアが多いかということも考えさせられます。


それが楽しいライブ会場への道中ならばまだしも、人の密集度で言えば大都市災害における帰宅困難時と何ら変わりはありません。一方向に流れる群集の中では健常者でも逆行することは困難ですが、車椅子の場合は事実上不可能です。しかも低い視線で周囲から得られる情報は極限され、群集の列から抜け出すのも困難です。

もしそこで、何らかの理由で群集が走り出したらどうなるでしょうか。地震の帰宅困難時ならば、強い余震の発生などでそれが起こることも考えられます。語弊を承知で言えば、そうなったら素早く動けない車椅子の方は路上の障害物となってしまい、衝突、転倒に巻き込まれてしまうでしょう。本人にも周囲にも、非常に危険な状態です。

しかもライブ終了後の退場時にはさらに密集度が増し、周囲はまさに人の壁です。それでも秩序を保って移動していれば良いのですが、そこでパニック状態になったらと考えると、車椅子を押す健常者である管理人でさえ、強い恐怖を感じざるを得ませんでした。これが車椅子単独や松葉杖などの使用者、視覚障害者だったらどうなるでしょうか。

そこで現実的な対処法を考えても、身障者単独はもちろん介助者一人という場合でも、十分な安全を確保する方法が思いつかないのです。それでも考えた結果は、やはり周囲の援助しかないかなと。

密集した人の中に身障者がいて、そこでパニック状態が発生したら、周囲の人が身障者を取り囲むように人のバリアを作り、スクラムを組むように移動するのが一番安全な方法ではないかという結論に達しました。ただ、果たして、パニック状態の中でどれだけの人が自主的に身障者の援助に加わってくれるかは未知数ではありますが、必ずそういう人がいるはずだと思いたいものです。

そこで誰かがリーダー的な立場で周囲の人に援助を求めれば、それが実現する可能性はより高くなるでしょう。介助者は、そんな場合には躊躇せずに周囲の援助を求めて良いと思います。

理想的には、そのような危機的状況でも周囲の人が自然に身障者を援助するような社会的コンセンサスができていたらいいなと思いますが、他人に言う前にまず、管理人自身がそういう行動をしたいと思います。皆様も、もし災害の混乱下で身障者を見かけたら、まず一声かけてできるだけの援助をお願いしたいと、帰宅困難時並みの人混みの中で、車椅子を押しながら考えたのでした。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


【防災の心理08】壁を乗り越えろ!

今回は、【防災の心理06】で例に挙げた行動シミュレーションのどこが「誤り」なのか、具体的に考えます。

文中の【 】内で、誤りの内容と現実の可能性について述べたいと思います。最後に(知)とあるのは知識の誤り、(心)とあるのは、心理的な問題による誤りです。まずは「あるママさん」の場合。

■1分後
自宅キッチンで料理中に地震。すぐにコンロの火を消して玄関へ【激しい揺れが始まってからではどちらも不可能(知)】ドアを開けてから、幼稚園から帰宅していた子供の部屋へ行き【これも揺れが収まるまで不可能(知)】、子供の手を引いて玄関から外へ。【子供がすぐに脱出可能の状態とは限らない。もちろん自分も(心)】

■5分後
揺れが収まったので一旦家に戻り、用意してあった非常持ち出しを持って【実際には家具の転倒などですぐに持ち出しできない例が多発する(知)】、ヘルメットをかぶって避難所となる小学校へ向かう【移動経路の危険について想定していない(知・心)】

■30分後
小学校の体育館に入り、備蓄の水と食品の配給を受ける【被災直後に配給が受けられる可能性は小さい(知)】余震が続いて怖い。でも、被害が拡大するほどではなく、なんとかなりそうだ。避難所には続々と人が集まり、体育館はすぐに満杯になる【既に満杯で自分が入れるとは限らない(心)】

■1時間後
余震が続いている。あちこちで火事が起きているようで、黒煙が何本も上がるのが見える【避難所に危険を及ぼす近隣火災を想定していない(心)】避難所に怪我をした人が来たので、手当を手伝う【自分は補助者と限定している。自分が主体で、重傷者だったら?(心)】


次に、「ある会社員男性」の場合。

■1分後
ビルの7階にあるオフィスでデスクワーク中に地震。すぐにデスクの下に入り、強い揺れが収まるのを待つ。キャビネットが倒れ、窓ガラスが割れる。自分も破片を浴びて少し切り傷を負うが、大したことは無い【自分が軽傷という前提(心)】会社の救急箱を使って手当をする【救急箱の場所、内容、手当の方法を普段から把握しているか?(知・心)】

■5分後
周囲の社員に声をかけ、ビルから脱出を試みる。普段から防災グッズを入れてあるバッグは忘れない【緊急脱出時に荷物を持てない、または失う可能性を想定していない(知・心)】怪我で歩けない人がいるので肩を貸しながら【歩行可能の負傷者しか想定していない。動かせない重傷者がいたら?(心)】非常階段を降り、屋外へ脱出。ビルの前には落下物で怪我をした人が数人いたので、応急手当を手伝う【怪我人は軽傷で、自分を補助者に限定している。(心)】

■30分後
怪我人の手当が一段落したので【しなかったらどうする?(心)】、広域避難所に指定された公園へ向かう。公園は周囲のビルから避難して来た人で溢れかえっている。怪我人も少なくない【目の前に瀕死の重傷者がいたらどうする?いない前提になってはいないか(心)】

■1時間後
公園で待機したまま、日が暮れて来た。余震が続き、ビルに戻るのはまだ危険と判断する。かなり寒いが、皆が持ち寄った燃料を使い、あちこちでたき火が焚かれ出したので、なんとか寒さをしのげた【大勢がいる公園で、長時間たき火に当たれる可能性はどれだけある?(心)】


これらはあくまで一例に過ぎませんが、このようにほとんどが「やりたいことはできる、対応できないことは起きない」という「正常化」した前提に立ったシミュレーションになっているわけで、無意識のうちにそうなってしまう例が多いのです。

このメソッドを考案した東京大学の目黒教授によれば、このような「正常化」は一般の方々だけでなく、災害知識が豊富な、防災に直接関わっている方々でさえ、非常に多く見られるそうです。基本的に、自分が救護される側になるという発想はあまり出てこないと。むしろ、災害時の行動について熟知しているほど、それが実現するという前提になってしまうこともありそうです。

さらに細かいことを言えば、例えば眼鏡や靴を失ったり、軽傷でも足を怪我したりするだけでも行動の速度と精度は大きく制約されるわけですが、そのような事まで考えられている例も少ないそうです。しかし、大災害の混乱下ではそれが現実に多発するのです。

それを知った上で意識的に除外しているならまだしも、そのようなことが起こるという知識を持たず、さらに無意識の「正常化」や「楽観」に自分で気づいていないとしたら、災害対策のベースとなるシミュレーションとしては意味がありません。

皆様がどのような行動シミュレーションをされたのか、管理人には知る術はありませんが、上記のような「誤り」に思い当たる節がありましたら、ぜひともここから「知識の壁」と「心理の壁」を乗り越え、より現実的なシミュレーションに進化させていただきたいと思います。

まず、あなたの周りの危険の種類と程度を正確に知り、そこからあなたの身に起こり得る事態を、辛い気持ちを乗り越えて、徹底的に考え抜くこと。そして、ひとつひとつに具体的な対策を進めて行くことが、「その時」に、あなたとあなたの大切な人が「生き残る」確率を大きく高めるのです。

それは非常に多岐に渡る可能性を考えながら、場面場面に応じた選択を積み重ねて行く作業であり、八方塞がりのような場面にも少なからず遭遇しますから、非常に面倒で悩ましいものです。しかし元来、危機管理とはそういうことの積み重ねなのです。


今回、実際にシミュレーションをしていただいた皆様は、高い防災意識をお持ちかと思います。そんな皆様の口から、メディアが大好きなあの台詞が出ることが無いようにと、管理人は切に願っております。

「こんなことになるとは、思ってもいなかった」

例によって付け加えれば、大災害後にそんな台詞を吐ける状態でいられるならば、まだ幸せというものです。


次回は、「心理の壁」とヒーローの関係について考えます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年3月25日 (火)

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【7】

■当記事は過去記事の再掲載です。なお、初回掲載時より大幅に加筆修正しています。


今回は、持ち歩ける「防水・防寒」グッズを具体的に考えます。

別のエントリにも書いたのですが、我が国だけでなく、世界の地震災害を見ても、雨や雪などの悪天候下で発生したという記憶がありません。そのためか、「防水・防寒」に関する教訓が非常に少なく、それが軽視される理由のひとつになっているような気がします。

東日本大震災が事実上初めて、厳しい寒さと小降りとは言え雪の中で起きた大規模地震災害ではないでしょうか。阪神・淡路大震災より、ずっと厳しい気象条件でした。そしてその寒さのために、犠牲者が少なからず出ました。その教訓を生かさなければなりません。

「防水・防寒」の基本は、言うまでも無く服や身体を濡らさないことです。そのために最低限の装備として持ち歩きたいのが、100円ショップのビニールカッパです。
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これは、できればもっとしっかりした物の方が機能的には望ましいのですが、100円ショップものは素材が薄い分、畳むと一番軽量コンパクトになりますので、普段から持ち歩くに適してるとも言えます。画像のようにフリーザーバッグに入れて空気を抜くと、さらにコンパクトになります。フリーザーバッグは密閉できるので、濡れたカッパをしまう際にも便利です。地震災害以前に、夏場のゲリラ豪雨で活躍することが多いでしょうし。

カッパは降水が無いときでも、ウインドブレーカーとしても役立ちます。サイズはコートの上からも羽織れ、できればショルダーバッグなどの上からでも羽織れるように、2サイズくらい大きなものを用意すると良いでしょう。大は小を兼ねます。

さらに、ポンチョタイプならばショルダーバッグや大きめのリュックサックを背負った上でも着やすいので、確実に荷物の防水をすることができます。但し100円ショップものは着丈があまり長くないのが普通なので、少しコストをかけても、大き目のものを用意されることをお勧めします。

防水・防寒グッズの中心として管理人が持ち歩いているのが、下画像の軍用タイプポンチョです。
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これは軽量のポリエステルリップストップ生地で破れにくく、十分な着丈がある上に畳むとかなりコンパクトになります。重量は285gです。雨具としてだけでなく、広げればグラウンドシートや防水シートに、四隅のハトメ穴にロープを通せば簡易テントになるなど、利用価値の高いものです。価格は高めですが、機能を総合的に考ると、コストパフォーマンスは十分に高いものと思います。

持ち歩きグッズの定番と言えるのが、アルミレスキューシートです。これの保温力はかなりなもので、身体に巻いた上から上着やカッパを着れば非常に暖かい上、これ自体が簡易的ながら雨具代わりにもなります。その他にも、工夫次第でいろいろな使い道が考えられます。防水・防寒効果はもとより、重いやけどや開放性骨折の患部をくるむことで、空気感染を防止するという使い方もあります。そのような傷の場合、ガーゼや包帯など傷口に貼りつくもので保護してはいけないのです。
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画像左は、さらに高機能の封筒型レスキューシートです。通常の使い方に加え、寝袋として絶大な保温力を発揮しますが、それでも収納サイズは変わりませんし、価格もリーズナブルです(下記)

ただし、レスキューシートは超軽量の非常に薄い素材ですので、ちょっとの風でふわふわ舞い上がり、実際にはあまり使いやすいものではありません。ですから、あくまで服の中に巻くなど、インナーとして使うべきでしょう。一般に、サイズも大人が全身を包める程大きくありませんので、防水・防寒グッズとしては、ポンチョなどと合わせて、あくまでサブと考えるべきです。

レスキューシートと同様の素材で、移動時の保温と雨や雪に対応しやすいジャケットタイプもあります。(商品名:マウンテンサーマルジャケット)これは管理人もまだ入手していないのですが、優れた防災グッズだと思いますので、参考までに。フードもついています。
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これも、畳むと非常にコンパクトですし、機能の割には手頃な価格です。


また、手の防水・防寒と怪我防止も大切です。避難生活中の作業用途も含めて、管理人は作業用の厚手のゴム手袋や、園芸、台所用の薄手のゴム手袋の準備を、以前からお勧めしてきました。被災後には軍手より防水性の高いゴム手袋が欲しかったという、東日本大震災被災者の実際の声によっても、その必要性が証明されました。
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ただ、機能的には申し分ないものの、厚手のものは多少かさばることと、正直なところ使用時は美観的にあまりよろしく無く、被災時はともかく平常時に手が寒いからと気軽に使う、というのも現実的ではありません。

そこで次善の策として管理人が常備しているものを紹介します。
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薄手の作業用手袋と、ラテックス手袋です。これらは、後の「安全・衛生」の項目でも再登場しますが、ここでは手の保温と防水のためのグッズとしての登場です。手袋は、もちろん厚手の方が保温性は高いのですが、非常時の作業性を考えて、敢えて少し薄手のものにしています。防水が必要な場合は、手袋の上からラテックス手袋をかぶせてしまいます。

ラテックス手袋単独では、負傷者救護時の血液感染防止用や、汚物を扱う時の衛生維持に役立ちます。非常に軽量ですから、3~5セット程度持ち歩いても負担にならないでしょう。持ち歩く場合は、マスクなど他の衛生用品と一緒に、フリーザーバッグに入れることをお勧めします。ラテックス手袋を家にまとめ買いをしておけば、手が洗えない被災時以外にも普段からなにかと重宝しますし、持ち歩き分を使ってもすぐに補充できるので便利です。

なお、ここでの紹介はあくまで常時持ち歩くことを前提として、作業性、重量や他の用途も考えた組み合わせであり、負担にならないのであれば、防水性があって保温力が高い手袋を用意すべきではあります。

長くなりましたので、次回へ続きます。


■参考データ
100円カッパ+フリーザーバッグ 重量104グラム
レスキューシート(画像の通常タイプ) 重量60グラム
レスキューシート(寝袋タイプ) 重量81グラム
ロスコ社製軍用タイプポンチョ(画像のもの) 重量285g
作業用手袋(画像のもの) 重量65グラム


↓ロスコ社製軍用タイプポリエステルポンチョ。他にもカラーバリエーションあり。

↓寝袋型レスキューシート

↓マウンテンサーマルジャケット

↓ラテックス手袋(100枚)

↓作業用手袋(画像のもの)リンクはLサイズ。サイズ各種あり。


■このシリーズは、カテゴリ【防災用備品】です。


 

2014年3月24日 (月)

【防災の心理07】あなたの中の抵抗勢力

前回記事では、大地震発生時の行動シミュレーションについて、明らかな「誤り」の例を挙げました。今回は、それらのどこが「誤り」なのかを考えて行きます。「正解」は存在しないものの、より望ましいものは、一体どういうものなのでしょうか。

ここで望ましい行動シミュレーションを実現するには、ふたつの壁を乗り越えなければなりません。「知識の壁」、そして「心理の壁」です。

まず「知識の壁」を乗り越えるためには、災害時に何が起こるかを正確に知らなければなりません。今回の想定では、『直下型の震度6強、歩いて移動できず、四つん這いになるがやっと』という地震を想定しています。であれば、地震発生から1分後までに、徒歩で移動したというのは明らかな誤りです。『すぐにコンロの火を消した』というのも、不可能であった可能性も出てきます。

その時「できること、できないこと」を正確に知らなければ現実的な行動シミュレーションをすることはできず、そこから効果的な対策を導き出すことはできないのです。

それでは、例えば「自分は大地震が起きたら何もできないから、1分後には死亡している」と考えるのはどうでしょうか。常に「最悪を想定する」というセオリーからは、誤りとは言えません。ただ、そこで問題になるのは「なぜ死亡したか」ということです。

例えば家の中にいて、最も危険なものが転倒防止対策をしていない家具だとわかっていれば、その対策するという対策が導き出されます。コンロの火を消せないかもとわかっていれば、例えばIHコンロにする、自動消火装置が高性能のコンロにする、それが無理ならば近くに消火器を用意して、火災になった場合に初期消火の可能性を高めるなどで、危険を大きく減らすことができます。

このように、まず自分の周囲の危険度を正確に判定できなければ、効果的な災害対策のための望ましい行動シミュレーションとはならないわけです。危険を過小評価することが絶対にあってはならない一方で、イメージや恐怖感で過大評価してもいけません。


では、もうひとつの「心理の壁」とは。実はこれが実に厄介なもので、個人の災害対策を進める上の最大の壁と言っても過言ではありません。できましたら、前回記事の行動シミュレーション例を、もう一度読み返していただければと思います。ふたつに共通する、致命的とも言える誤りが存在するのです。

それは「やろうとしたことがほとんどできている」ということです。詳しくは後述しますが、例えば「子供と一緒に家を脱出する」、「防災グッズを持って避難所に入る」、「負傷者を救護する」、「たき火で寒さを凌ぐ」というようなことです。

実は、これらはすべて「こうありたい」という願望にすぎません。しかし、それができなくなることも多いのが、現実の大災害なのです。まずそれを受け容れなければなりませんが、口で言うほど簡単なことではありません。

何故なら、大災害時には自分や家族が苦しみの中で死んだり、築き上げた財産が失われるという、究極の非日常を現実のものとして考えなければならないからです。我々は本能的に生命の維持や平穏な生活を望んでいますから、それをぶち壊すシミュレーションは、ある意味で本能との戦いなのです。

そんな時、我々はある心理状態に陥り易くなります。それが「正常化バイアス」もしくは「楽観バイアス」と呼ばれるもので、これは生死に関わるような事態だけでなく、実は多くの人が日常的に経験しているものでもあります。平たく言えば、何か問題に直面した時に、具体的な根拠も無く「なんとかなる」と考えてしまう心理です。思い当たる節、ありませんか?

例えば、都市部に大雪が降ると、いつも夏タイヤのままの車があちこちで立ち往生します。これなど、大雪という非日常で起こることを受け容れず、「なんとかなる」と出かけてしまう人が少なくないことの一例と言えます。また、強力な台風があなたの居場所に接近しているような時でも、心のどこかで「きっと逸れる、直撃しても大したことない」と考えたりしていませんか?

「正常化」や「楽観」とは、はすなわち「なんとかなる」、つまり正常な日常が継続する、して欲しいという願望が勝ることで、目前の問題から目を逸らしてしまうということです。ましてや、いつ起こるかわからない大災害を自分の目前の問題と認識すること自体が難しいので、「まあ、そのうちに」という感覚に陥りがちです。

さらに、大災害では自分や家族が死んだり傷ついたり可能性が高いと潜在的に考えていますから、「そうなって欲しくない」という願望が、危険を現実のものとして受け容れることに無意識の抵抗をするのです。その究極が、何の根拠も無く「自分だけは大丈夫」とうそぶいたり、「今まで何も無かったから、これからも大丈夫」というような言動になるわけです。

しかし一旦大災害が起きれば、個人のそんな考えなど何の関係もありません。単純にその場での危険要素が少ない人の生き残る確率が上がり、そうでない人の犠牲が増えるだけであり、それは冷徹な確率論にすぎません。ですから、「その時」の危険要素を減らすために、徹底して現実的なシミュレーションをすることが必要であり、そのためには、これまで述べた通り「知識の壁」と「心理の壁」を乗り越えることが必要なのです。

今回述べたような、「正常化バイアス」や「楽観バイアス」と呼ばれる心理状態に陥りやすいという知識だけでは、実際には役に立たないトリビアの類です。それだけでは意味がありませんので、次回は前回記事の行動シミュレーション例のどこがどう「誤り」なのか、具体的に細かく考えて行きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年3月18日 (火)

【防災の心理06】その時、あなたに何が?

しばらく間が空いてしまいましたが、シリーズ前記事「あなたどうしていますか?」の続きです。

さて、ここで前回記事での想定をもう一度ご覧ください。
【想定】12月中旬、晴れ、北風が強い寒い日。平日の午後4時、皆様それぞれの居場所で、直下型の震度6強が発生。古い木造建物は軒並み倒壊し、新しい建物でも何らかの損傷を受け、未対策の大型家具類はほとんど転倒、散乱。揺れのピークでは歩行移動は不可能、四つん這いになるのがやっとというレベルの揺れ。停電、断水が発生。固定、携帯電話、メールは不通、ネットもダウン。大きな余震が何度も起きている。


この状況下で、あなたは地震発生から1分後、5分後、30分後、1時間後にどのような状況に置かれ、何をしているかをお考えいただけたでしょうか。皆様の置かれた状況によって、様々なパターンがあると思います。

実は、これには「正解」というものがありません。しかし、明らかな「誤り」はあります。忘れてならないことは、これは心理テストの類ではなく、具体的な災害対策を進める上での基礎データのひとつとなるものだということです。「誤り」の例としては、例えばこんな感じでしょうか。あるママさんの場合。

■1分後
自宅キッチンで料理中に地震。すぐにコンロの火を消して玄関へ。ドアを開けてから、幼稚園から帰宅していた子供の部屋へ行き、子供の手を引いて玄関から外へ。
■5分後
揺れが収まったので一旦家に戻り、用意してあった非常持ち出しを持って、ヘルメットをかぶって避難所となる小学校へ向かう。
■30分後
小学校の体育館に入り、備蓄の水と食品の配給を受ける。余震が続いて怖い。でも、被害が拡大するほどではなく、なんとかなりそうだ。避難所には続々と人が集まり、体育館はすぐに満杯になる。
■1時間後
余震が続いている。あちこちで火事が起きているようで、黒煙が何本も上がるのが見える。避難所に怪我をした人が来たので、手当を手伝う。

ある会社員男性の場合。
■1分後
ビルの7階にあるオフィスでデスクワーク中に地震。すぐにデスクの下に入り、強い揺れが収まるのを待つ。キャビネットが倒れ、窓ガラスが割れる。自分も破片を浴びて少し切り傷を負うが、大したことは無い。会社の救急箱を遣って手当をする。
■5分後
周囲の社員に声をかけ、ビルから脱出を試みる。普段から防災グッズを入れてあるバッグは忘れない。怪我で歩けない人がいるので肩を貸しながら非常階段を降り、屋外へ脱出。ビルの前には落下物で怪我をした人が数人いたので、応急手当を手伝う。
■30分後
怪我人の手当が一段落したので、広域避難所に指定された公園へ向かう。公園は周囲のビルから避難して来た人で溢れかえっている。怪我人も少なくない。
■1時間後
公園で待機したまま、日が暮れて来た。余震が続き、ビルに戻るのはまだ危険と判断する。かなり寒いが、皆が持ち寄った燃料を使い、あちこちでたき火が焚かれ出したので、なんとか寒さをしのげた。

さて、これらのどこが「誤り」なのでしょうか。大地震に遭遇した瞬間に身を守る行動をし、用意してある防災グッズを持ってすぐに避難行動を始め、怪我人の救護まで手伝っています。ある意味で、理想的な行動ですよね。被災時にはこうあるべきだという行動と言っても良いでしょう。

でも、もうお気づきの方も多いと思いますが、「理想的」で「こうあるべき」だからこそ、「誤り」なのです。残念ながら皆様がどのようなシミュレーションをされたかを管理人が知る術はありませんが、このような内容を考えられた方、比較的多かったのではないかと思うのです。さて、皆様はいかがだったでしょうか。

次回は「誤り」の理由と、なぜそのような考えになるのかについて考えたいと思います。実は、そこに人間の心理が絡んで来るのです。

■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年3月15日 (土)

マレーシア航空機はハイジャック?

マレーシア政府は、3月8日に行方不明となったマレーシア航空機について、ハイジャックされた可能性が高いと発表しました。

その理由は、無線やレーダー記録等の解析により、無線機とトランスポンダー(無線自動識別装置)が数分の時間差をもって、人為的と思われる方法で切られていること、消息を絶つ前に西へ進路を変更していたこと、その後インド洋へ向かう航路を飛び、位置通報点(ウェイポイント)を正確にヒットしていることなどから、旅客機の運用、操縦技術を持った者が機体を掌握し、いずこかへ向かったと思われるなどの理由です。

しかし、未だにレーダーから消えた後の飛行経路、異常飛行の目的、着陸または墜落地点などは一切わかっていないとのことです。一般に、レーダーに捕捉されないためには、超低空を飛ばなければなりません。

管理人は、当初の報道で一切の通信もなく消息を絶ったとされていたことから、ごく短時間における機体の激しい損傷を考え、墜落したものと考えました。過去のそのような事例は、ほぼ例外なく爆弾等によるテロ行為によるものだったために、当事件もその可能性が非常に高いと考えたのです。

しかしその後、周辺海域で一切の破片等も見つからないことから、少なくとも消息を絶った付近の海域での墜落の可能性は小さくなりました。フライトデータレコーダーとコクピットボイスレコーダー、いわゆるブラックボックスからは、墜落後に位置通報用の音波が発信されますが、それも確認されていません。ボーイング777のブラックボックスは3200Gの重力加速度に耐え、1000℃の熱にも1時間は耐えられるといいますから、墜落ですぐに損傷する可能性はあまり無いのです。

不明機のボーイング777は、2500mクラス以上の滑走路が無ければ安全に着陸できません。しかし現時点でもそのような飛行場に着陸した形跡はありません。誰にも気づかれずにレーダーをかいくぐり、軍事基地も含めてそのような大きな飛行場に着陸することは、普通なら不可能です。ですから、現時点でも墜落した可能性は非常に高いと思われます。

その他の可能性としては、どこかの陸上や海上に不時着をしていることですが、そこまでの経路で一切の痕跡を残さないということも現実的ではありません。なお、ジェット旅客機は、不時着水しても機体が大きく損傷していなければ1時間程度は浮いていられると言われ、普通の事故ならば、その間にライフラフト(救命いかだ)で全乗客の脱出が可能です。

ハイジャックだとすれば、非常に不思議なことがあります。もし、テロリストなどが武力で強制的に乗員や乗客を掌握したとしたら、乗客の携帯電話などからの発信が一切無いということは考えにくいのです。ごく短時間のうちに、すべての乗客を完全に監視下に置くことなど、普通は不可能です。音声やメールの発信ができなくても、電波が発射されれば、衛星も含めて必ずどこかで受信されるはずです。その痕跡が本当に一切無いのか、発表されていない事実があるのかはわかりませんが。

もし何の発信も無いならば、乗客は誰も異変に気づいていなかった可能性が出てきます。それに無線機やトランスポンダーが人為的に切られているらしいことも考え併せると、ハイジャックとはいえ武力によって強制的に乗っ取られたのでは無いかもしれません。そこから考えられる可能性は、非常に不可解で不気味なものです。

これ以上の推測は現時点では避けたいと思いますが、この事件はただの航空事故やハイジャックではない、前例の無いような事件なのは確かなようです。いずれにしても、巻き込まれた多数の乗客の安否が気遣われます。最悪の結果で無いことを祈るしかありません。続報を待ちたいと思います。


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2014年3月14日 (金)

3/14伊予灘で震度5強発生

2014年3月14日午前2時6分、瀬戸内海の伊予灘、深さ78kmを震源とするマグニチュード6.2の地震が発生し、愛媛県西予市で最大震度5強を観測しました。津波は発生していません。

発震機構は東北東-西南西に張力軸を持つ正断層型です。この地震は、震源が瀬戸内海であること、震源深さが80kmと深いこと、張力による正断層型地震であることから、想定される南海地震とは異なるメカニズムであり、直接の関連は無いものと考えられます。

想定される南海地震は、四国とその沿岸及び九州沿岸の太平洋海底が震源となる、震源深さ20~30km程度の圧縮力による逆断層型となりますので、明らかに異なっています。しかし、広義においては両者とも陸側のユーラシアプレートと、海側のフィリピン海プレートの相互関係によって発生する地震であり、完全に無関係ではありません。


今回の震源となった伊予灘付近は、普段からあまり地震が起きている場所では無く、東日本大震災後も目立った動きはほとんどありませんでした。今回の地震は、伊予灘で発生した地震としては、過去15年のうちで最大の地震となります。

伊予灘では1998年5月23日に、今回とほぼ同一の震央、震源深さ86kmでマグニチュード5.4、最大震度4が発生しています。2006年9月26日には今回の震源の南側海底、震源深さ70kmでマグニチュード5.3、最大震度4が発生しているのが目立つくらいで、基本的に地震が多い場所ではありません。

この地震は、前述の通り想定される南海地震とは異なる震源と発震機構ですから、南海地震の直接的な前兆ということはあり得ませんが、過去の例を振り返ると、南海地震のようなプレート境界型巨大地震が発生する数年~10年程度前から、周辺地域での比較的大きな地震が増えるという傾向が見られていますから、長期的には無関係とは言い切れないものの、すぐに心配する必要は無いでしょう。

但し、マグニチュード6.2と比較的規模が大きかったために、周辺の断層の動きを誘発する可能性はあります。この地震の約1時間46分後に、震央の東側に当たる安芸灘海底を深さ50kmを震源とする、最大震度2の地震が発生していますが、この地震の震央は2001年3月24日に安芸灘海底深さ46km、マグニチュード6.7、最大震度6弱を観測した、いわゆる「芸予地震」の震央、震源深さ共に近く、伊予灘の地震に誘発される形で、安芸灘海底の断層が動いたものと考えられます。今後しばらくはこのような可能性があるため、周辺地域では余震の可能性も含めて警戒が必要かと思います。

なお、四国で震度5強を記録したのは、前述の「芸予地震」以来約13年ぶりとなります。


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2014年3月11日 (火)

改めて『大川小の悲劇』を考える

東日本大震災において、宮城県石巻市の大川小学校では、児童76人が犠牲になりました。

管理人は2012年10月に初めて大川小学校跡を訪ね、周辺の状況を詳細に検分しました。そして、それまでに得た情報と統合し、大川小の悲劇はなぜ起きたのかを記事にしています。また、現地で撮影した映像を編集して、解説を入れてyoutubeで公開しています。

この悲劇については現在も調査や裁判が続いていて様々な見解がありますが、管理人なりの検証結果をまとめています。文末にリンクしますので、是非ご覧ください。

東日本大震災から三周年の今日、なぜ改めて『大川小の悲劇』を採り上げたかというと、そこで起きた事とその対応から、災害対策の原点とも言える、非常に大きな教訓が読み取れるからです。

多くの犠牲者が出るような大災害に襲われた時、そこにいる人々は、状況によって三種類に分かれます。まず、特別な行動をしなくても生き残れる人。次に、運や行動次第で生き残れる可能性が出てくる人。そして何をやっても生き残れない人もいるのが、厳しい現実です。

そこで我々が二番目の状況に陥ったとしたら。運については文字通り天に任せるしかありませんが、行動次第で生死が分かれるとしたら、そこで何をしたら良いのかを考えることが、「生き残るため」の災害対策の原点だと考えます。

災害対策は、つい「生き残った後」の防災グッズなどに目が行きがちです。その理由のひとつは、災害後に拡散される情報は、大半が「生き残った人」からの情報であり、その数は犠牲者数よりはるかに多くなるからです。それ以前に、犠牲者は自らの体験を語ることもできません。だから、生き残るために本当に必要な情報が、体系的に伝えらえることは少ないのです。

いかなる災害対策も、まず生き残らなければ話になりません。そして、「その時」を生き残るために必要なのは防災グッズではなく、ひとりひとりの知識と意識に裏付けられた行動に他なりません。

そのような目で『大川小の悲劇』を見ると、そこには「究極の選択」とも言える状況があったのです。詳しくは文末にリンクする過去記事をご覧いただきたいのですが、あの時の状況を箇条書きでまとめてみましょう。

■大川小付近は北上川河口から5kmほど上流で、過去の昭和三陸津波、チリ地震津波も到達していない場所だった。
■ハザードマップでも津波到達の危険区域ではなかった(予想津波高さ0~1mで、堤防の高さは2m以上ある)
■大川小自体が地域の避難所で、児童だけでなくお年寄りなども多かった。
■停電していて、外は寒く、間もなく日が暮れる時間だった。
■大地震のショックでパニックを起こしたり、吐いたりする子供も少なくなかった。
■児童を迎えに来る父兄に引き渡しをしなければならなかった。

そのような状況で、さらに避難するのはためらわれたでしょう。しかし地震の大きさから大きな津波が予想され、一部の人からさらなる避難が進言されました。そして、避難できる場所は二か所。

■通称「三角地帯」。橋がかかっているために堤防が高くなっており、北上川の水面から5m以上の高さがある。ハザードマップで想定された津波からは、十分に安全と思われた場所。
■学校の裏山。細い道がついていて、実習授業で児童も登ったことがある。しかし傾斜がきつい暗い森に入ることになり、さらに地面がぬかるんでいた。児童はともかく、避難所のお年寄りに登らせることはためらわれた。山に入れば父兄への引き渡しもできず、明かりもなければ暖も取れない。

結果的に、地震から50分以上経ってから「三角地帯」への移動を開始した直後、北上川を遡上して、堤防を越えた津波に襲われたのです。仮に、もっと早い段階で「三角地帯」へ移動していても、そこからさらに高い場所へ行くことはほとんど不可能な場所なので、結果はあまり変わらなかったのではないかと思います。


そこで「正解」を言うのは簡単です。すぐに全員を学校の裏山に登らせれば、その後の寒さなどの問題はありますが、ほとんどが無事だったでしょう。そして、教科書通りに「最悪を想定」すれば、そのような判断になったはずです。しかし、もしあの場であなたが管理者だったら、果たしてそのような判断ができたでしょうか。

管理人は現場に立って思いました。もし自分が管理者だったとしたら、上記のような状況下でもきっと最悪を想定するまではできたでしょう。しかし、果たして「全員すぐに裏山へ避難」を指示できたかは自信がありません。しかし、結果的に「最悪を想定」できなかったことが、このような悲劇に繋がったのです。この悲劇から導き出される最大の教訓は、災害からの避難行動時は常に最悪を想定して、無駄足を恐れずにできる限りの行動をせよ、ということなのです。

大川小の例に当てはめれば、1m程度の津波しか想定されていないのに、5mの「三角地帯」では不足と考えて、さらに高くまで上がれるけれど暗くて寒い裏山を選択せよということです。少人数ならともかく、子供からお年寄りまでの大集団に対してそのような指示を出すことがいかに困難か、想像してみてください。しかし、やらなければならないのです。

大災害下では、このように行動ひとつで生死が分かれる「究極の判断」を求められるケースに遭遇することもあるのです。そこでは、どんな防災グッズもあまり役に立ちません。頼れるのは、あなた自身の判断と行動だけです。その事実から目を逸らさないことが、「生き残る」ためにまず必要なことなのです。

3月11日を迎え、改めてそのことをお考えいただきたいと思います。


なお、念のため申し添えますが、当記事は関係者の方々の責任追及や擁護を目的とするものではありません。また、ご遺族などの感情にそぐわない部分もあるかもしれませんが、あくまで管理人個人のいち考察であり、再びこのような悲劇を繰り返さないための教訓を導き出したいと考えて、作成いたしました。

■関連過去記事
大川小からの報告【1】
大川小からの報告【2】
大川小からの報告【3】

■youtube動画(管理人撮影)
【石巻市 大川小】悲劇の現場を検証する映像集
http://youtu.be/xHv6fV8kEvU


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

東日本大震災から3年

また3/11が巡って来たからと話題にするのは、なんだか軽薄なメディアみたいで嫌なのですが、やはり触れない訳には行きません。

まずは、犠牲になった多くの方々の三回忌となりますので、改めてご冥福をお祈りいたします。


あれから三年です。あの直後に中学、高校に進学した生徒が、卒業を迎えるのです。三年という時間は、短くありません。

その短くない間、家族や友人を失い、家を失い、仕事も収入も失い、愛する町のすべてを失い、新しい仕事も決まらず、決まっても家族が一緒に暮らせず、収入も安定せず、定住する場所も決まらずに、終わりの見えない仮設住宅暮らしが続いているような人々が、未だ二十数万人もいらっしゃるのです。

その事実を、いかに「我がこと」として考えらえるか。


「被災者」とそれ以外の違いとは、「その時どこにいたか」が全てです。あなたの居場所で大災害が起これば、あなたも「被災者」です。ちょっとシニカルな言い方をさせていただければ、あなたも「テレビの向こう側のかわいそうな人」になるということです。

他人事ではありません。

そして忘れてはならないのが、「テレビの向こう側」にも登場しない、大災害によってその歴史に終止符を打ってしまった方々の存在。これはますます「我がこと」として考えにくいのですが、要は、あなたやあなたの隣にいる人が、ある日突然消えてしまうということなのです。

しかし、どうやっても被災者の本当の気持ちや苦しみと完全に同化することなどできません。だからその悲しみや苦しみを能動的に考え、想像し、感じて、行動するのです。それが、我が身に大災害が襲いかかった時に、後に残る悲しみや苦しみを、最も小さくする方法に他なりません。

災害の記憶だけ残っても、大した役には立ちません。その悲劇を詳細に分析し、そこから導き出される教訓を生かして、後世にまでずっと伝えて行くこと。それが「風化させない」ということだと、管理人は考えています。


「お涙頂戴」や「災害トリビア」はもうたくさんです。あなたに今、そしてこれから何ができるのか。自分や大切な人を守るために、苦しんでいる人を救うために、何をしたら良いのか。それを、ひとりひとりが真剣に考えていただければと、管理人は願っています。

危機はその姿を巧みに隠しながら、今も現在進行形なのです。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2014年3月10日 (月)

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【6】

■当記事は過去記事の再掲載です。


今回は「防水・防寒」について考えます。

当ブログでも何度も指摘している通り、一般的な防災指導においてこの要素が欠落していたり、不十分なケースが非常に多いと管理人は感じています。

東日本大震災以降、被災者の声を反映して、それでもかなり変わってきたのを感じてはいますが、まだまだ不十分です。この問題、すなわち体温の維持は水分、カロリーと並んで、人間が生きるための根幹となる要素であり、もっと重視されなければならない部分なのです。


寒い季節、外出時には基本的には暖かい服装をしています。しかし一旦被災し、屋外や暖房が無い場所で長時間過ごすことになると、寒さはあちこちから忍び込み、生命を脅かします。それを防ぐために、持ち歩ける最低限の装備で最大の保温をしなければなりません。そのために効果的なグッズはどんなものでしょうか。

まず、体温を失う最大の要因は、身体や服が濡れることです。水分が体温によって蒸発するときに気化熱を奪い、体温を奪います。それを補うために、人体はカロリーを消費して熱を発生させます。つまり、寒いとそれだけカロリーを無駄遣いして、行動するための体力が奪われるのです。

もし水に落ちたりして服がずぶ濡れになったら、寒いのをこらえて一旦服を脱ぎ、水分をできるだけ絞ってから再び着なければなりません。服に含まれる水分が多いほど蒸発が続き、体温を奪い続けるからです。カロリーが十分に摂取できない非常時には、著しく体力を消耗してしまいます。


ここで体温の低下、つまり「低体温症」のメカニズムを確認しておきましょう。

寒いときに身体が震えるのは、人体の生命維持機能によるもので、筋肉を強制的に動かすことで熱を発生させ、体温を上げるための反応です。それでも体温が低下すると、人体は生命を守るために体幹、つまり主要臓器に血流を集中させ、手足などの末端への血流を少なくします。生命維持に必要の無い部分を切り捨てることによって、エネルギーを効率良く使い始めるのです。手足先がかじかんだり感覚が無くなって来るのは、その初期症状です。「低体温症」になりつつあるのです。

そのような場合には、軽い体操をしたり、特に手足の筋肉を意識して動かして熱を発生させるのと同時に、脳に向かって「こちらにも血液を送れ」という信号を送ってやらないとさらに血流は少なくなり、動くことができなくなります。寒さが厳しい場合には、血流が止まった手足先などから凍傷になります。そしてさらに体温が低下すると、主要臓器も体温が維持できなくなり、「低体温症」による死亡、つまり凍死につながるのです。

これは決して厳寒地だけの話ではなく、水分やカロリーが不足している状況では、どこでも十分に起こりうることなのです。特に体が小さい子供、代謝機能が低いお年寄り、身体が弱っている人にとっては危急の問題です。なお、冷たい水に落ちた時に溺れやすいのは、体温の急激な低下によって急性的に「低体温症」の状態になり、手足が動かなくなるからです。

東日本大震災においても、地震や津波から避難できても、雪の舞う屋外や暖房の無い避難所で少なくない命が「低体温症」で喪われています。せっかく災害の第一撃から生き残った命を喪わないために、また、そこまで行かなくても避難行動力を維持し、さらなる危機に陥らないためにも、非常時の防水・防寒をもっと重視しなければなりません。

次回は、体温を維持するために役立つ「防水・防寒」グッズを、具体的に考えます。

■このシリーズは、カテゴリ【防災用備品】です。

2014年3月 8日 (土)

マレーシア航空機が消息不明

本日3月8日、マレーシア航空のクアラルンプール発北京行きボーイング777機の墜落が確実となりました。この機体はクアラルンプールを発ってから50分後に何の前兆もないままに交信が途絶え、消息を絶ったと報道されています。

離陸してから50分後ならば、高度1万メートル前後の巡航高度か、その付近にまで達していたのは確実です。もしそこで何か機体トラブル等が発生したのならば、何の無線交信も無く墜落するということは、通常ならば考えられません。

仮に上空で全エンジンが停止したとしても、すぐに高度を大きく失うわけではなく、非常電源での交信も可能です。その場合、音声交信で非常事態を宣言するか、もしくはパイロットが機体に割り振られた識別番号(スクォーク)を「0077」にセットすれば、音声交信が無くとも自動的に非常事態と認識され、地上のレーダーに表示されます。

最近の機体はSATCOM(衛星通信)機能がありますから、陸地から離れた洋上であっても、無線が通じないという可能性はありません。ちなみに、かつては洋上からの長距離通信は4〜11MHz帯の短波を使用しており、電波状態によっては交信が困難なこともありました。現在の機体も主にバックアップ用として短波通信機は搭載していますが、いずれにしろ離陸から50分ほどの、報道によれば陸地から220kmほどの洋上では、無線が不通になることは考えられません。

なお、スクォーク0077は飛行に重大な支障を及ぼす事態や、ハイジャックなどの非常事態の際に設定される緊急コードです。1985年の日航機墜落事故のボイスレコーダー音声で、爆発音直後に機長が「スクォーク77」と宣言したのを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

今回の事故では、一切の交信も緊急コードも確認されていないようですから、考えられることは、巡航飛行中のごく短時間のうちに、機体の主要機能が喪失したということは確実なようです。

過去の航空事故でこのような事態になったケースを振り返ると、メカニカルトラブルやヒューマンエラーではなく、爆弾などによるテロ行為の可能性が浮かび上がって来ます。安定した巡航飛行中に、ごく短時間のうちに無線交信もできないほどの重大な機能喪失をもたらす事態は、爆弾などによる致命的な破壊である可能性が非常に大きいと考えられます。

ハイジャックならば、過去の例でも何らかの交信は可能なケースがほとんどで、いきなり消息を絶つということはあまり考えられません。詳細については今後の情報を待ちたいと思いますが、この事故は通常の航空事故では無い可能性が非常に大きいと、管理人は考えております。

余談ながら、事故機のボーイング777は、「180分ETOPS」(イートップスと発音)というタイトルを取得した初めての双発機(エンジンが二基)で、エンジン一発が停止しても、一発だけで最低180分の飛行継続が可能です。1995年の就航以来、乗客の多くが死亡するような重大事故は起こしておらず、現在就航している大型ジェット旅客機の中では最も安全性が高いと言える機体なのです。

今回の事故の報に接し、航空機を愛する者のひとりとして、非常に心を痛めております。当ブログの主旨とは異なりますが、人命が多く失われたと思われる異常な事態に鑑み、管理人の考えを記事にさせていただきました。ひとりでも多くの方が生存されていることを、心よりお祈りしております。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【5】

■当記事は、過去記事の再掲載です。

「視界」編の続きです。

メガネやコンタクトレンズを使用している人は、それらを失うとピンチなのは言うまでもありません。実は管理人の私も、メガネが無いとかなりキツい視力なので、切実な問題です。

外出中は基本的にメガネもコンタクトも装用していますので、普通なら失くす心配は無いのですが、災害時の混乱の中では落としたり、破損したりすることは十分に考えられます。東日本大震災の際には、避難時にメガネが破損した人が、再び自分に合ったメガネを手に入れるまでに一ヶ月以上かかったという話を聞きました。その間、矯正なしで過ごさなければならなかったのです。

最良の対策は、予備を用意することに他なりません。コンタクト派の方も、災害後しばらく続くであろう劣悪な衛生状態を考えると、やはり予備のメガネは欲しいところです。ろくに手も洗えない状況では、コンタクトレンズの脱着で目にダメージを負う可能性もあります。

普段から自宅、勤務先、車の中などに予備メガネを置いておきたいものですが、問題は外出中に失った時です。コンタクトレンズの予備は持ち歩き易いものの、メガネはそうでもありません。破損防止のためにハードケースに入れておくと、それなりの容積になってしまいます。でも持ち歩くカバンなどに余裕があれば、是非予備の持ち歩きをお勧めしたいのですが、いかがでしょうか。

ご自分の裸眼視力で、照明もろくに無い夜間、それもどこに危険が潜むかわからない状況下を、メガネなしで行動できるかを考えて見てください。不安になられたら、多少無理をしてでも持ち歩くことをお勧めします。次善の策としては、度の合った使い捨てコンタクトレンズを数日分、予備メガネのある場所にたどり着けると思われる期間分だけ持ち歩くのも現実的です。その際、ウエットティッシュなど衛生用品も一緒にしておくことを忘れずに。その問題を応急的に解決するグッズもありますが、それは後述します。


「視力」に関する最後の問題は、目の傷害です。大災害時は、猛烈なホコリ、煙、漏れた化学物質による刺激など、目を傷めて視力を失う危険がいくつも考えられます。その際にどうやって目を守るかを考えると、一番効果的なのは、やはり専用の防護ゴーグルです。しかしその問題は、一般に通気性が無くて曇りやすい、メガネの上から装着できないか、できても密着性が損なわれる、普段持ち歩くにはかさばり過ぎるということなどです。そこで目を守る機能を持ちながら、かつ軽量コンパクトであるものを考えたら、ここに行き着きました。
Gogle
水泳用のゴーグルです。これなら、外的刺激に対する目の保護はほぼ完璧です。それに、大型のゴーグルよりも意外に曇りずらいのです。内側に曇り止め剤を塗っておけば、さらに安心です。画像のものはスモークレンズですが、もちろん素通しのものもあります。

でも、目が悪い人はどうしたら良いのでしょうか。実は、一部の水泳用ゴーグルはレンズ交換式になっており、視度補正レンズが用意されています。すべての視度には対応していませんが、視力をかなり補正することはできます。管理人も、水泳をするときに使っています。

水泳用ゴーグルがあれば、目に対する傷害の大部分を防ぐことができるでしょう。そして視度補正レンズを入れてあれば、メガネやコンタクトレンズを失った際の予備にもなります。そう考えると、かなり使えるグッズだと思いませんか。視度補正レンズは、実際に目に当てて、見え方を確かめてから購入できますので、スポーツ用品店で相談してみてください。

正直なところ、ビジュアル的にはあまり使いたく無い感じですが(笑)、被災直後には役に立つ機会があり得ると思いますから、あくまで“転ばぬ先の杖”として考えてみました。例えば、煙が立ち込めるビルの中を避難しなければならない時など、絶大な効果を発揮してくれるはずです。でも、必ずしも常時持ち歩かなくても、出先に用意しておいて、災害時に持ち出すという感じでも良いかもしれません。

なお、今回のグッズは種類も多く、特に特定のお薦め商品はありませんので、商品リンクは掲載しません。次回は、「防水・防寒」編です。

■参考データ
水泳用ゴーグル(画像のものはスワンズ製、視度補正レンズつき) 重量46グラム

■このシリーズは、カテゴリー【防災用備品】です。

2014年3月 7日 (金)

【ご質問にお答えします】大人の頭も守りたい

2月26日の記事で、読者の方からのご質問にお答えして、主にお子さんの頭を守るグッズについての提案をさせていただきました。今回はその続編として、さらにヘルメットについての提案です。

防災用ヘルメットとして最も汎用性が高いのは、やはり工事現場などで使われている、プラスチック製の保安帽です。下画像は管理人の私物で、最低限の避難用装備としてビニールポンチョ、カップ型マスク、ゴム手袋、タオルを中に入れて、自宅玄関の壁にかけてあります。
Annex_029
このような保安帽の最大の問題は、とにかくかさばること。自宅や仕事場などで置いておく場所を確保するだけでも大変です。良く、オフィスのキャビネット上などに置いてあったりするのを見かけますが、これが最も必要になる場合は地震直後の緊急脱出・避難時ですから、その際にすぐ手に取れる場所でなければ、いざという時役に立たない可能性も大きくなります。

最近は折り畳み式の保安帽もありますが、管理人としては機能、デザイン面などで「これだ」というものに出会えていませんでした。そんな中で見つけたのが、前記事と同じくDICプラスチック(旧・大日本インキ化学工業)の製品、商品名「IZANO MET」です。
Izano_met03
この保安帽は入れ子式になっており、畳むと最大厚さ8cmほどに収まりますので、ちょっとした隙間にも入れておくことができますし、専用ポーチに入れて壁やデスクの下などに掛けておいても、あまり邪魔になりません。

管理人がこの製品を最も気に入った点は、実はデザインの格好良さだったりします。折りたたみヘルメットは、機能は十分でもデザイン的に「?」というものも多いと感じていたのです。このデザインならば、誰でも心おきなくかぶれるのでは無いでしょうか。言うまでもなく、要求される十分な性能を持っていますので、安心して使えます。

価格は4600円と高めではありますが、小さなスペースで収納できる本格的ヘルメットとしてその価値は高いものと思い、紹介させていただきます。車載用としてもお薦めですね。詳しい製品情報は、下記メーカーサイトをご覧ください。PDFファイルです。文末には、Amazonの商品リンクを掲載します。
■IAZNO MET製品情報


次は、手軽なヘルメットの紹介です。上記のような保安帽は、災害直後にはある意味で「当たり前」に見えるスタイルではありますが、その後の避難生活でずっとかぶり続けるのは、あまり現実的ではありません。しかし災害被災地では、頭を保護したいケースも多々考えられます。

例えばそんな時に使いやすいのが、下記のようなベースボールキャップタイプのセイフティキャップです。上の紺色のものが日本メーカー(製造は台湾)で、下のベージュ色がフランスメーカー(製造は中国)のもの。なお、画像は管理人が入手したもので、カラーバリエーションは他にもあります。
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綿(国産)、ポリエステル(フランス)の帽子の中に、下画像のような衝撃吸収プロテクターが内蔵されています。上が国産、下がフランス製です。
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帽子のように頭にほぼ密着しますし、プロテクターもあまり厚くないので衝撃吸収性能は保安帽よりも劣りますし、あご紐が無いので、何かにひっかかったり強い衝撃を受けたりすると脱げることもあります。ですから、主に狭い場所などで何かが倒れかかって来る程度の衝撃や、軽い接触による頭部の外傷を防ぐくらいの機能と考えるべきでしょう。

それでも、普通の帽子とは比べものにならない防護効果がありますし、仮に性能を超える衝撃を受けた場合でも、頭部への傷害を確実に軽くしてくれます。最大の特徴はその保安帽らしくないデザインで、街中でも違和感無く使えると思います。

実はこれらの製品、東日本大震災被災地に入るボランティアにとても好評だったそうです。直接的な危険はあまり無くても、いつ大きな余震や津波が来るかわからない状況下で、ヘルメットをかぶっている安心感はとても大きかったとのこと。直接的な機能よりも、その心理的効果の方が大きいのかもしれません。

頭の怪我は心配だけど、大げさなヘルメットはちょっと・・・とお感じの方にもお薦めです。例えば帰宅困難時、こんなのがあったらいいと思いませんか?壁にかけておいてもヘルメットの類には見えませんし。

価格は日本メーカーものが2000円前後、フランスメーカーものが3800円前後です。製品の詳細については、下記取扱いショップのサイトの「セイフティキャップ」のページをご覧ください。なお、ブログでの紹介許可も頂いておりますので、ショップに「ブログで見た」と直接お問い合わせいただいても結構です。文末には、Amazonの商品リンクも掲載します。
■(有)トランパーズ

なお、プロテクターが頭部のほぼ全周を覆うプラスチック製ですので、頭の形でフィット感が変わります。可能であれば、実際にかぶって試されることをお勧めします。取扱い店舗は、東京都中野区のJR中野駅近くにあります。詳しくは上記サイトをご覧ください。




■当記事は、カテゴリ【防災用備品】です。

2014年3月 4日 (火)

【防災の心理04】あなたはどうしていますか?

東京大学生産技術研究所の目黒公郎教授をご存じでしょうか。テレビにはほとんど出演されませんが、週刊誌などの防災記事にはしばしば登場されています。

目黒教授が提唱されている特徴的な防災メソッドに、通称「目黒巻」と呼ばれる方法があります。これは具体的な災害対策を行う前段として、発災時から自分自身がどのような状況に置かれ、どのような行動をしているかを想像し、時系列でプロットして行くものです。

災害対策の根幹は、「その時」に何が起きるかを正確に知り、そこから具体的な対策を導き出すことが必須で、それなくして効果的な災害対策はあり得ないのです。「目黒巻」は、それを災害時にいち個人に起きることのレベルから考えるものです。

それでは、早速皆様にもトライしていただきましょう。下記の想定下で、その時あなたはどんな状態でどんな行動をしているか、できるだけ具体的に想像してみてください。なお、ここでは目黒教授のメソッドそのままではなく、管理人が少しアレンジさせていただいています。


【想定】12月中旬、晴れ、北風が強い寒い日。平日の午後4時、皆様それぞれの居場所で、直下型の震度6強が発生。古い木造建物は軒並み倒壊し、新しい建物でも何らかの損傷を受け、未対策の大型家具類はほとんど転倒、散乱。揺れのピークでは歩行移動は不可能、四つん這いになるのがやっとというレベルの揺れ。停電、断水が発生。固定、携帯電話、メールは不通、ネットもダウン。大きな余震が何度も起きている。

そのような状況で、あなたの生活環境や生活パターンを考慮しながら、地震発生から1分後、5分後、30分後、1時間後それぞれに、あなた自身がどのような状況に置かれ、どのような行動をしているかを具体的に想像してください。

なお、冬の平日、午後4時という時間は、お勤めの方は会社内か外出中のどちらか、家庭では小学生くらいまでのお子さんが帰宅しているかどうかで買い物などに出ている事も多いという、行動の可能性が多岐に渡る、ある意味で意地悪な設定です。しかも冬ですから、すぐに日が暮れます。

でもそこはあまり深く考えずに、「その時間なら○○をしているな」と思いつかれたことに沿って、その時起きた大地震の中でのあなたの状態と行動を自由に想像し、時間経過ごとにプロットしてみてください。


想像の具体例を挙げたいのですが、誘導になってもいけませんので、別の想定で考えます。例えば8月の暑い日中、取引先で商談中に震度5弱と停電に遭遇したとしましょう。その場合は、例えばこんな感じ。

1分後:応接で商談中に地震発生。机の上のファイルが落ちたくらいで大きな被害は無いが、停電したので商談を切り上げる。

5分後:帰社しようと駅に向かって徒歩移動中。街にも地震被害は見られないが、信号が消えて渋滞がひどい。しかしパニックが起きるような様子は無い。火災の煙も見えない。

30分後:駅に着いているが、電車は止まり、運転再開の目処は立たない。入場規制された駅前は人が集まり始めて大混雑。とても暑いので日陰に入りたいが、人がぎっしり集まっていて入れない。

1時間後:まだ電車は動かない。タクシーも一台もいないし、乗り場は長蛇の列。喉が乾いたが停電で自販機は使えず、近くのコンビニを探して行って見るが、飲料類はすでに全部売り切れ。停電による断水でトイレも使えない。先に行っておけば良かったと後悔する。今後に備えて、とりあえず残っていた菓子パンを数個買う。

というように、その場面をできるだけ細かく想像して、あなたに起きることのストーリーを作ってみてください。それでは、続きはまた次回に。前記事と全然関係ないじゃないかと思われるかもしれませんが、実はあるんです。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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