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2014年3月26日 (水)

【防災の心理07】壁を乗り越えろ!

今回は、【防災の心理06】で例に挙げた行動シミュレーションのどこが「誤り」なのか、具体的に考えます。

文中の【 】内で、誤りの内容と現実の可能性について述べたいと思います。最後に(知)とあるのは知識の誤り、(心)とあるのは、心理的な問題による誤りです。まずは「あるママさん」の場合。

■1分後
自宅キッチンで料理中に地震。すぐにコンロの火を消して玄関へ【激しい揺れが始まってからではどちらも不可能(知)】ドアを開けてから、幼稚園から帰宅していた子供の部屋へ行き【これも揺れが収まるまで不可能(知)】、子供の手を引いて玄関から外へ。【子供がすぐに脱出可能の状態とは限らない。もちろん自分も(心)】

■5分後
揺れが収まったので一旦家に戻り、用意してあった非常持ち出しを持って【実際には家具の転倒などですぐに持ち出しできない例が多発する(知)】、ヘルメットをかぶって避難所となる小学校へ向かう【移動経路の危険について想定していない(知・心)】

■30分後
小学校の体育館に入り、備蓄の水と食品の配給を受ける【被災直後に配給が受けられる可能性は小さい(知)】余震が続いて怖い。でも、被害が拡大するほどではなく、なんとかなりそうだ。避難所には続々と人が集まり、体育館はすぐに満杯になる【既に満杯で自分が入れるとは限らない(心)】

■1時間後
余震が続いている。あちこちで火事が起きているようで、黒煙が何本も上がるのが見える【避難所に危険を及ぼす近隣火災を想定していない(心)】避難所に怪我をした人が来たので、手当を手伝う【自分は補助者と限定している。自分が主体で、重傷者だったら?(心)】


次に、「ある会社員男性」の場合。

■1分後
ビルの7階にあるオフィスでデスクワーク中に地震。すぐにデスクの下に入り、強い揺れが収まるのを待つ。キャビネットが倒れ、窓ガラスが割れる。自分も破片を浴びて少し切り傷を負うが、大したことは無い【自分が軽傷という前提(心)】会社の救急箱を使って手当をする【救急箱の場所、内容、手当の方法を普段から把握しているか?(知・心)】

■5分後
周囲の社員に声をかけ、ビルから脱出を試みる。普段から防災グッズを入れてあるバッグは忘れない【緊急脱出時に荷物を持てない、または失う可能性を想定していない(知・心)】怪我で歩けない人がいるので肩を貸しながら【歩行可能の負傷者しか想定していない。動かせない重傷者がいたら?(心)】非常階段を降り、屋外へ脱出。ビルの前には落下物で怪我をした人が数人いたので、応急手当を手伝う【怪我人は軽傷で、自分を補助者に限定している。(心)】

■30分後
怪我人の手当が一段落したので【しなかったらどうする?(心)】、広域避難所に指定された公園へ向かう。公園は周囲のビルから避難して来た人で溢れかえっている。怪我人も少なくない【目の前に瀕死の重傷者がいたらどうする?いない前提になってはいないか(心)】

■1時間後
公園で待機したまま、日が暮れて来た。余震が続き、ビルに戻るのはまだ危険と判断する。かなり寒いが、皆が持ち寄った燃料を使い、あちこちでたき火が焚かれ出したので、なんとか寒さをしのげた【大勢がいる公園で、長時間たき火に当たれる可能性はどれだけある?(心)】


これらはあくまで一例に過ぎませんが、このようにほとんどが「やりたいことはできる、対応できないことは起きない」という「正常化」した前提に立ったシミュレーションになっているわけで、無意識のうちにそうなってしまう例が多いのです。

このメソッドを考案した東京大学の目黒教授によれば、このような「正常化」は一般の方々だけでなく、災害知識が豊富な、防災に直接関わっている方々でさえ、非常に多く見られるそうです。基本的に、自分が救護される側になるという発想はあまり出てこないと。むしろ、災害時の行動について熟知しているほど、それが実現するという前提になってしまうこともありそうです。

さらに細かいことを言えば、例えば眼鏡や靴を失ったり、軽傷でも足を怪我したりするだけでも行動の速度と精度は大きく制約されるわけですが、そのような事まで考えられている例も少ないそうです。しかし、大災害の混乱下ではそれが現実に多発するのです。

それを知った上で意識的に除外しているならまだしも、そのようなことが起こるという知識を持たず、さらに無意識の「正常化」や「楽観」に自分で気づいていないとしたら、災害対策のベースとなるシミュレーションとしては意味がありません。

皆様がどのような行動シミュレーションをされたのか、管理人には知る術はありませんが、上記のような「誤り」に思い当たる節がありましたら、ぜひともここから「知識の壁」と「心理の壁」を乗り越え、より現実的なシミュレーションに進化させていただきたいと思います。

まず、あなたの周りの危険の種類と程度を正確に知り、そこからあなたの身に起こり得る事態を、辛い気持ちを乗り越えて、徹底的に考え抜くこと。そして、ひとつひとつに具体的な対策を進めて行くことが、「その時」に、あなたとあなたの大切な人が「生き残る」確率を大きく高めるのです。

それは非常に多岐に渡る可能性を考えながら、場面場面に応じた選択を積み重ねて行く作業であり、八方塞がりのような場面にも少なからず遭遇しますから、非常に面倒で悩ましいものです。しかし元来、危機管理とはそういうことの積み重ねなのです。


今回、実際にシミュレーションをしていただいた皆様は、高い防災意識をお持ちかと思います。そんな皆様の口から、メディアが大好きなあの台詞が出ることが無いようにと、管理人は切に願っております。

「こんなことになるとは、思ってもいなかった」

例によって付け加えれば、大災害後にそんな台詞を吐ける状態でいられるならば、まだ幸せというものです。


次回は、「心理の壁」とヒーローの関係について考えます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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