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2014年4月17日 (木)

【ニュース解説】韓国で客船が転覆・沈没

韓国の珍島付近で、客船が転覆、沈没する事故が発生しました。未だ行方不明者が多数出ている状況ではありますが、この事故の問題について現時点での考察をさせていただきたいと思います。まず最初に、犠牲になられた方のご冥福と、心と身体に傷を負われた方々の快癒をお祈りします。

そして何より、行方不明の方々の一刻も早い救出を願わずにはいられません。状況からして、船内にはまだ多くの生存者がいるはずです。

この事故の直接の原因はまだはっきりとしていませんが、確かなことは、船体左舷側の喫水線下(海面より下の部分)の船殻に、大きな穿孔が発生したということです。そこから海水が流れ込んで左舷に傾斜し、転覆、沈没に至りました。

海面下に隠れた暗礁に衝突したという説や、積載した車両が爆発したという説がありますが、車両甲板は喫水線上にあるため、車両が爆発したとしても、喫水線下に重大なダメージを与えるとは思えません。それに報道映像を見る限り、火災の煙も見えません。転覆時に激しく上がった白煙のようなものは、船内の空気が噴出することによる水煙です。

一方で、船内からの電話で「やけどをした」という証言があったそうで、客室内などで小規模の火災などがあったかもしれません。しかし、転覆の原因とは直接の関係は無いでしょう。

喫水線下には機関室、燃料タンク、貨物室などがありますが、ディーゼル機関の爆発によって船殻が穿孔されるということは考えられず、燃料の火災も起きていません。しかし貨物室内などに強力な爆発物があったとしたら、船殻が破壊される可能性はあります。

外部からの攻撃の可能性ですが、考えられるのは魚雷、機雷、船殻に貼り付けられた爆弾、近距離からの水中成形炸薬弾による爆破です。しかし、いずれの場合も爆発時には巨大な水柱が上がりますし、船体が激しく動揺しますから、そのようなことが確認されていなければ、これらの可能性は排除して良いでしょう。

脱出者の証言によれば、「ドン」という音がしてからすぐに傾き始めたということなので、船殻にかなり大きな穴があき、大量の海水が一気に流れ込んだものと思われます。

船の中は浸水した区画を遮断する水密区画という部屋に別れていますが、水密区画のドアを十分に閉鎖することができなかったか、左舷側多数の水密区画に渡って、長い穴があいた可能性があります。船殻が長く引き裂かれ、多数の水密区画に一気に浸水したとすれば、あのタイタニック号と同様の状態です。

そうなると疑問になってくるのが、避難指示の遅れです。傾き始めてから転覆までに二時間ほどだったそうですが、その間に復元不可能という判断がなぜ為されなかったのでしょうか。脱出者の証言によれば、「救命胴衣をつけて船内から動くな」という指示があり、その後も「避難せよ」との指示は無かったそうです。

船が転覆を免れられるのが明らかならば、パニック防止のためには正しい指示だったでしょうが、今回のケースでは結果的に誤りだったことは明らかです。

報道映像を見る限り、海上に投下された救命ボートは一艘のみか、他にあったとしても多くは無いようです。映像にも映っていますが、救命ボートはカプセル状のケースに入って上甲板の両舷側に並んでおり、海上に投下すると自動的に膨張してボートになります。しかし知識の無い人が自分で救命ボートを投下することは難しいので、映像からは、最後の瞬間まで船員による脱出行動もほとんど無かったのではないかと思われます。

さらに、左舷側に大きく傾いたことで、左舷甲板は早い段階で水没し、右舷側は大きく持ち上がって、ボートの投下がかなり困難だったのではないかとも思われます。

これらの状況を総合すると、船が致命的な状況に陥っているにも関わらず、運行側はそれを正確に把握していなかったか、何らかの理由で適切な段階での避難指示・行動が行われなかったことが伺えます。もっと早い段階、例えば傾斜が30度以下のうちに「総員退船」(abandon ship)の判断がされていたら、救命ボートに乗れないまでも、大半の人が脱出できた可能性があります。

船内に残ったまま転覆した乗客の恐怖を想像してみてください。船室のドアが天井か床になってしまったり、上甲板に出るための階段は、壁のようになっていたでしょう。しかも、電源が落ちて暗闇なのです。映画「タイタニック」では最後まで照明が灯っていますが、あれはあくまで映画的表現に過ぎません。

何より、まだ船内に生存者がいる可能性が非常に高いので、一刻も早い救出を改めて願うしかありません。

最後に。管理人は、当ブログの過去シリーズ【対災害アクションマニュアル】で、いろいろな乗り物で事故に遭遇した際の対処法をまとめました。しかし、船については書いていません。それは、大型船の場合は事故発生時や直後にに乗客が危機に陥ることが少ないことと、脱出に関しては、つまるところ「船員の指示に従う」しか無いからなのです。つまり、セルフディフェンスの余地が非常に小さいのです。

しかし、2012年に地中海で起きたコスタ・コンコルディア号座礁・転覆事故や、今回の事故のような避難誘導の不備による犠牲の拡大を見るにつけ、やはり最後にはセルフディフェンスの発想と行動が必要なのかなと思わずにはいられません。

■4月17日 22:50追記
最新の報道によれば、船長はじめ多くの船員がかなり早い段階で脱出し、救助されていたことがわかりました。多くの船客は、随時適切な指示があるものと考えて船内に残ったのでしょうが、「船内に残れ」と放送で指示してから、その後の状況を判断して避難指示を出す人間が残っていなかったのです。指示を待って脱出の機会を逃した船客が、あまりに哀れです。

船長が脱出したということは、その時点で船は復原不能と判断されていたということですが、多くの船客の命を預かるプロが、なぜそのような行動ができるのでしょうか。記事本文にも挙げた、コスタ・コンコルディア号事故と全く同じ状況です。もちろん、普通の船長、船員は乗客の安全を最優先に考えた判断をするはずです。しかし、このように悪質なクルーが存在する可能性がある以上、やはり最後には自分自身の判断で行動することが必要だと考えるしか無いようです。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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