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2014年4月16日 (水)

【防災の心理11】パニックはどこからでもやってくる

前回記事では、往年の名ギャグ「赤信号、みんなで渡れば怖くない」を例に引き、大抵の場合はそれで大丈夫だと述べました。しかし、状況がある「しきい値」を超えると、「みんな」でいることが危険を増幅することもあり得るとも。

具体的にどういうことかというと、大人数で赤信号を渡っていれば、平時ならば大抵の車は止まります。もし、よそ見している車が突っ込んで来たとしても、被害を受けるのは運悪く車が突っ込んで来る方向にいた一部です。つまり集団の端にいさえしなければ、少なくとも自分はほとんど被害を受けません。大抵の自然災害も、そういうレベルで収まるわけです。

でも、突っ込んで来たのがダンプカーだったら、しかも運転手は酒に酔っていて、パトカーに追われて正気を失い、アクセルべた踏みで突っ込んで来たとしたら。このようなことが「しきい値」を大きく超えた、滅多に起きない巨大災害ということであり、東日本大震災はそういうレベルだったのです。危険地帯にいたら、何もしなければごく僥倖に恵まれる以外に生き残る途は無く、行動してもそれが誤りや不十分だったら、結果はあまり変わらなかったのです。

もしそこで一人でいたならば、ダンプカーの動きを見極め、ほんの数歩移動して直撃さえ避けられれば無事でいられます。しかし集団の中にいたとしたら、まず危険の覚知が遅れがちになる、移動しようとしても周囲の人並みに阻まれる、他の人の動きや転倒などに巻き込まれるなどの阻害要因がある上、それ以前の段階で集団の中にいるという安心感がありますから、危険を覚知しても緊急避難モードへの移行が遅れがちになり、「みんなと一緒だからなんとかなる」という思考停止に陥りやすく、行動開始自体が遅れるでしょう。さらに他の人が恐慌状態に陥ったりすれば、それが伝染して冷静な判断がより難しくなります。高密度の集団ほど、恐慌状態が伝染、拡散しやすいのです。

ここで言う「しきい値」とは、集団に対して思考停止や恐慌を招く強度の不安や恐怖が与えられ、統制の取れた行動ができなくなるレベルのことです。注意しなければならないのは、それは決して災害など状況の重大さに限らないということです。巨大災害時に集団パニックが起こりやすいのは、ある意味で当然予想がつきます。しかし高密度の集団では、実際に危険が無くても、例えば誰かひとりが上げた悲鳴から集団パニック状態に発展することもあるのです。特に災害直後で不安心理が強い場合は、その可能性が高くなります。

そうであれば、発災直後の緊急避難時や、危険がまだ完全に去っていないうちに高密度の集団の中にいることは、避けるべきであると考えなければなりません。

繰り返しますが、大抵の場合は集団の中にいても大丈夫なのです。ですから、とりあえず皆と同じように動けというような経験則も生まれます。しかし状況が「しきい値」を超えると、集団は凶器にもなります。そして、その「しきい値」がどこにあるかは様々な状況に左右され、最終的には「実際に起きてみないとわからない」のです。それでもあなたは、災害時にただ集団の中にいたいですか?

とはいえ前述の通り、不安な時ほど集団の中にいたくなる心理は、人間の本能でもあります。ですから、それと異なる行動をするためには、不安を乗り越えて集団に依存したくなる気持ちを振り切る必要があります。それも発災直後の緊急避難時には、強い恐怖と不安の中で、ほとんど瞬間的に「独立思考」しなければなりません。それは、口で言うほど簡単なことでは無いのです。

管理人が考えるに、それを可能にする要素はただ一つです。そのためには様々な事前準備が必要ですが、突き詰めればたった一つに集約されます。それが具体的にどういうことなのか、東日本大震災における実例を元に、次回考えてみたいと思います。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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コメント

今、まさに救助活動中の韓国フェリー沈没事故のニュースにうなってしまいました。行方不明者が現時点で200人越え!
何でも、船が傾きはじめてから、「動かないで」と船内放送が流れたそうで、結果的には無視して甲板に上がる、が生き残る為の正解だったようなのですが…。怖い、そんな放送を聞いて、しかも周りの人達が皆動かなければ、私も不安を感じながらも、船内に留まってしまうかも。


もしよろしければ、この事故に対するてばさんの見解もお聞きしたいです。


急ぎませんので、お時間が空いたら是非

>ぼたもちさん

私もニュースを見て戦慄しております。船内放送で「動くな」と言ったのは、つまり運行側は重大事故という「しきい値」を超えないと判断し、パニックを避けることを第一義としたのでしょう。しかし、状況は完全に「しきい値」を超えた重大事故であり、その認識の違いが被害を拡大していると思われます。

避難行動が完全に遅れたと思えるのは、周囲に救命ボートの姿が全く見えないからです。状況から判断すれば、傾きが止まらなかった時点で、船長が「総員退船」を宣言して避難行動を始めなければいけなかったのですが、完全に判断と対応が遅れていたと思われます。

この事故については、さらに状況が明らかになった時点で記事にしたいと思います。

>ぼたもちさん

もっと状況がわかってから記事にしようと思っていましたが、事故原因以外は非常に明白な状況でしたので、すぐ記事書きました。しかし、避難誘導の不備は明らかだったものの、船長、船員がほとんどトンズラしていたとは。記事に書いたコスタ・コンコルディアのようなことは普通は起きないと思っていたのに、また起きました。来るはずのない避難指示を待って脱出できなかった乗客が、かわいそうでなりません。

>てばさん


昔の人間である父に
「船長というものは、船が沈む時には皆を逃がして、自分は船と一緒に沈むんだよ、偉いんだよ」
と言われて育っていたので、
(°д°;;)(; ̄Д ̄)
まさにこんな感じです


タイタニック以降は救命ボートの数も足りているし、安心だと思っていたのに…。


セルフディフェンスの巾が少ない件も、言われて見ればそうですよね
周り海なんだから。
今回の件でも、海水温が低いため、水に浸かってしまうと体温が一時間持たないとのことでした。
ただ浸水していない部屋がないとも限らないので、一刻も早く効率の良い救助が始まると良いのですが。

>ぼたもちさん

特に旧日本海軍の艦長は「艦と運命を共にする」というイメージがありますが、欧米の戦闘艦長も、日本とメンタリティは異なるものの、自分の艦を守れなかった責任を取って、艦と共に沈んだ艦長は数多くいます。それくらい、自分の船を愛しているんですよね。船乗りとって、船は家みたいなもののはずです。

そこまで極端でなくても、乗客の安全を最優先に考えるのは当然の責務なのに、さっさとトンズラできる精神構造が全く理解できません。しかも船長だけでなく、船員もほとんど一緒だったというのですから。

船内には、空気が残った場所に確実に生存者がいるはずです。しかし水に浸かっていれば、低体温症を免れることはできないでしょう。あとは奇跡を祈るだけです。

タイタニック以降、救命ボートは定員分載せていますが、それが十分使えた例はほとんど無いのです。大抵は、全部下す前に船が沈んでしまいます。

後の記事で、船舶事故の際に自分でできる対策を纏めました。もっと早い段階で上甲板に出て、海に飛び込んでいれば、若い人たちですから大半が生き残れたはずなのですが。残念でなりません。

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