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2014年4月22日 (火)

韓国客船沈没事故・追記

韓国の客船沈没事故で、転覆寸前の船と船舶交通管制部との交信記録が公表されました。交信における船長の言動にも批判が集まっていますが、それについては触れません。

管理人が着目したのは、「傾きが50度に達し、船員も操舵室内で身動きができない」という部分です。

30度の傾斜でも、足場が良くても四つん這いにならなければ上れない程の急斜面です。50度ともなれば床は壁のようにそそり立ち、人は固定されたものにしがみつくか、下側の壁に身を寄せていることしかできないでしょう。

その状態からの脱出がいかに困難かは、想像に難くありません。しかも、固定されていない器具も多い一般船室内では、それらが崩れ落ちて障害物となっているのです。なお、操舵室は船の一番高い場所にあり、ほとんどの器具が固定されていて、ドア一枚抜ければすぐに船外に出られますから、その状態からの脱出も可能だったのでしょう。

船と管制の交信が行われている時点で、すでに船体内には浸水が進み、脱出経路を失った人々が地獄のような状態に晒されていたはずです。

一方で、船に「乗り慣れた」トラックドライバーが、自分の判断で傾きがまだ緩いうちに海に飛び込み、無事救助されていたという報道もありました。つまるところ、それがこの事故において「生き残る」ための最良の判断と行動だったのです。返す返すも、「動くな」という放送に従って脱出のチャンスを失った、特に修学旅行の生徒たちが哀れでなりません。


一般に、船舶事故は荒れた海で起こることが多いので、その中を海へ脱出するのはとてつもない勇気と判断力が必要です。しかし今回の事故は静かな海面で起きましたから、脱出への条件はかなり良かったので尚更です。

なお、管制の指示の中で「乗客に厚着させて脱出させろ」とあるのは、前記事で書いた通り低体温症をできるだけ防ぐための方法です。身体の周りに「動かない水」(static water)の層を作ることで、身体が直接冷たい水に晒されるより、体温の保持効果がずっと高くなるのです。

ところで、管理人は前記事で「上甲板に出る場合は傾きの下側へ」と書きました。これはおそらく「専門家」も言わないことだと思います。しかも、普通の心理ではより水面から遠い方、つまり傾きの上側に行きたくなるでしょう。今回の事故の映像でも、水面上に出た右舷側、つまり傾きの上側から乗客が救助されています。

沈む寸前まで船に残るならば、上側の甲板にいた方が良いかもしれません。しかし、上側にいると傾斜が急になるにつれて、甲板を滑り落ちる危険が大きくなります。そして舷側が水面から高く上がって飛び込めなくなり、船縁を乗り越えることも困難で、救命ボートの投下や吊り下ろしも、下側より早い段階でできなくなります。

下側の甲板ならば水面に近く、落下の危険も小さく、甲板が波に洗われる直前まで救命ボートの投下もできます。しかしその代わり、上側に比べて時間的な余裕はずっと少なくなります。ですから、傾きの下側、水面に近い方に位置を取ることは、「早い段階で、自分の意志で船から離れる」ということと不可分です。

さらに転覆と沈没時の渦に巻き込まれないように、船体から距離を取る必要もありますから、とにかく早い段階で船から離れる決断しなければなりません。救命ボートが使えない場合でも、まだ「浮いている」船を自ら放棄するにはとてつもない勇気が必要ですが、それが「生き残る」確率を高くするならば、そうすべきだと考えます。

もちろん、下側の甲板が水没するような状態になってからでは、上側に行くしかありません。ですから上甲板に出るのはもっと早い段階で、管理人の考えでは、前記事に書いた通り「10度傾く前に上甲板へ移動」ということです。船内の素早い移動を考えても、そうすべきなのです。なお、言うまでもありませんが、非常時には救命胴衣を正しく装着していることが前提です。

さらに付け加えれば、客船やフェリーボートでは、一部を除いて上甲板上で両舷側の間を移動できない構造になっていることも多いため、船室から最初に脱出する際の方向が、運命を決めてしまうこともあります。

脱出時、人の流れにただついて行ったら、おそらく傾きの上側の甲板に出てしまうでしょう。それが人間の心理です。ですから、そこで「自分の意志で」脱出方向を決めなければなりません。もちろん、船が急速に傾いたり沈んで行くような状況では、傾きの上側に出るという判断もあり得ます。

その際に大きな意味を持って来るのが、前記事にも書いた通り「乗船後に上甲板への経路を“複数”確認しておく」という備えです。

このような非常時には、秒単位で生き残る確率が減って行きます。躊躇している時間はありません。とにかく素早く行動に移ることが必要で、そのためには正しい知識と事前の備えが必要なのです。

なお、当ブログで韓国での事故について述べた一連の記事では、横転から沈没に至る事故を想定しています。しかし事故には様々なパターンがあり、すべての状況で「これが絶対」という方法はありません。船が沈む場合には正立したまま沈んで行くことはほとんど無く、船首や船尾が高く持ち上がることも少なくありません。

しかしいかなる場合でも、「事故を想定した事前準備」と「早い段階での行動開始」が、生き残る確率を高めることだけは間違いありません。それを応用することで、あなたが「生き残る」ための選択肢を増やすことになるのです。


最後に。当ブログでは、船舶事故に関しては船員の指示に従うという前提の下に、今までセルフディフェンスの方法を記して来なかったですが、今回のあまりに理不尽な事故の発生を受け、敢えて記事としました。今後は、事故の原因や運行側の責任追及が主になるでしょうが、それは当ブログの主旨ではありませんので、この事故についての記事は、これで最後とします。

■4/22 16:00さらに追記
過去に日本で発生した、荒天での荷崩れによるフェリーの転覆事故が、韓国の事故と比較されています。日本の事故は、乗員乗客合わせて28名が船長の指示によって避難し、全員無事でした。この場合、船は完全に横転したものの、座礁着底していたために完全に沈没しなかったのが幸いした部分もありますが、そのような状況を判断して、早い段階で船体の高い場所に避難指示した船長の対応が犠牲を防いだと言えます。

船舶事故においては、本来はこれが「当たり前」なのでしょうが、そうでないケースも考えざるを得ません。正直なところ、当記事のような行動をしなければならなくなったら、生き残れる確率はあまり高く無いでしょう。ほとんど「最後の賭け」のようなものだというのが現実です。

■4/23追記
「これで最後」と宣言してしまったので、こちらでまた追記させていただきます。報道によれば、左舷側から救助された人の数がずっと多いとのこと。これは右舷より早い段階で浸水が始まったので、早い段階で船を見切って露天甲板に移動し、海に飛び込んだ人が多かったからだそうです。それに対し、右舷側は最後まで船室の中に残っていた人が多かったために、犠牲者が増えたとのこと。

浸水が始まれば指示が無くとも脱出行動に移るのは当然とも言えますが、重要なことは「脱出が可能だった」という点です。つまり、早い段階なら船内を移動して、脱出可能地点まで行けたということです。傾きがさらに大きくなってからでは、上甲板に出ることもできなくなった人が大勢いたはずです。

このことからも、最初に移動すべきは傾きの下側で、とにかく早い段階で船から離れるべきということがわかります。特に救命ボートを使用できれば、両舷における脱出の時間差など、ほとんど問題になりません。何より「沈む船からは早く逃げる」ことが大切だということです。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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