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2014年6月

2014年6月30日 (月)

【防災の心理26】「一時的恐怖」まとめ+避難動線について

ここまではお化け屋敷の演出を例に取って、「一時的恐怖」の種類と理由、そして対処方法について述べて来ました。

その種類は「群集心理の遮断」、「情報の遮断」、「想定外」、「恐怖の伝播」でしたが、どれも災害時に陥る恐怖の原因でもあります。そのいずれの対処方法も、簡単に纏めれば「事前に情報を得て、早期に対処せよ」ということに尽きるわけです。恐怖の内容と対処方法を「知っている」ことがすべての原点であり、恐怖に惑わされずに有効な避難行動をするために必須なのです。

そのために具体的に何ができるか、何をすべきかは、現在再掲載中の【対災害アクションマニュアル】を始め、当ブログの各シリーズで述べて来ていますので、各記事カテゴリごとに、過去記事もぜひご覧ください。


このテーマの最後に、ちょっと番外となりますが、お化け屋敷の「動線」について触れてみたいと思います。以前の記事で、富士急ハイランドのお化け屋敷では、経路の最後に「最恐」の演出があり、そこで誰もが広い通路を駆け出すような動線設定がしてあったということを書きました。

このような設定には、実は私たちも日常的に接しています。代表的な例はデパート、ショッピングセンター、地下街、大規模展示会場などです。このような場所では、消防法により「避難動線」の設定が義務付けられていて、他の通路より広い通路を進むと、自然に非常口に着くような動線設定になっています。その目的は、もちろん多人数が直感的に、そして円滑に緊急避難できるようにすることです。

お化け屋敷ではそれを逆手に取って客の動きをコントロールしていたわけで、まんまと演出側の「思う壷」だったわけですが。

この「動線」に関する問題はふたつ。ひとつは、非常時に広い通路に集中する人の数があるレベルを超えると、人の流れ自体が「凶器」となる可能性があることです。その場所の混雑具合などにも左右されますが、特に混雑時の地下街などパニックが起きやすく、人の流れが一方向に集中しやすい場所では、場合によっては人の流れを一旦やり過ごすような行動も必要になります。具体例を上げた過去記事を、文末にリンクします。

もうひとつの問題は、「避難動線」が必ずしもわかりやすいとは限らない、ということです。管理人は、その典型として、いわゆる「デパ地下」を挙げています。

皆様は、「デパ地下」で道に迷ったことはありませんか?気がついたら同じ店の前を何度も通っていたとか。これは、「デパ地下」のような小テナントが集まるような売場では、動線設定に「回遊性」が考慮されているからです。

通路自体を比較的狭くして、さらに通路の広さにあまり差を付けず、曲がり角を多くして、極端に言えば客が「迷いやすい」動線によって、できるだけ目的外の店の前も通るようにしてあるのです。そこで目に入った商品を、衝動的に買ってもらおうと。通路だけでなく、例えば人気の駅弁コーナーや実演販売コーナーは入り口から遠い場所に置くなどして、客をできるだけ「回遊」させる、つまり滞留時間を長くして購買の機会を増やそうとしているわけです。

このような設定が、災害時には問題になります。通路が狭く、避難すべき方向が直感的にわかりづらいのです。もちろん消防法の規定はクリアしているわけですが、避難に関して言えば、他の売場に比べて条件が厳しい例が多いのは確かです。

そこでどうすべきかという問題については、これも過去記事でまとめていますので、文末のリンクからどうぞ。その内容は、恐らく管理人の他には誰も言わないことであり、あくまで緊急避難のための「最後の手段」という感じではありますが、これは管理人自身がいろいろなデパ地下を歩き回って導き出した考え方ですので、ぜひご覧ください。知っていて損は無いと思います。

なお、管理人は過去に大規模展示会の企画・運営の仕事を10年近くしていましたので、こういう問題に関しては「プロ」でもあります。

さて、これで「一時的恐怖」に関するテーマについては終了します。次回からは「防災はなぜ"面白くない”のか?」について、心理面から考えてみたいと思います。


■避難動線に危険が存在する場合のシミュレーションと対策(地下街編)
【シミュレーションストーリー】地震・地下街
【シミュレーション解説編】地震・地下街【1】
【シミュレーション解説編】地震・地下街【2】
【シミュレーション解説編】地震・地下街【3】

■デパ地下など「回遊性」を持たせた動線での対処方法
首都圏直下型地震を生き残れ!【9】☆買い物編
首都圏直下型地震を生き残れ!【10】☆買い物編


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月29日 (日)

【気象災害】笑い事で済めばいいけれど

今日6月29日は、埼玉県南部から東京23区を中心に激しい雷雨に見舞われました。今日の雷雲は、ここ数日のものより比較的大型で勢力も強く、降水量が一時間当たり80mmを超えた場所も少なくなかったようです。

そんな中で、Twitterを中心に拡散したのが、この画像。
Manhole
JR渋谷駅前で、豪雨の最中にマンホールから雨水が間欠泉のように噴出しており、マンホールが「爆発」したというネタとしてリツイートされまくっています。

こんなのもありました。
Uzu
冠水した道路にできた渦です。この下には水圧でふたが飛んだマンホールが口を開けているわけで、雨が止んだ後に、下水道に向かって水が流れ込んでいる状態です。

このような状態でも、被害らしい被害が無かったは幸いでした。でも、私の知人が行っていた地下のライブハウスでは、ライブ終了直後にエアダクトとエレベーターから雨水が一気に流れ込み、客は滝のようになった階段を上って地上に避難したそうです。これがもしライブ中なら浸水に気づくのが遅れたでしょうし、さらにそこで停電でもしたら、被害が出ずに済んだでしょうか。まさに間一髪の状態であり、このようなケースは他にもあったはずです。

さて画像ですが、マンホールの「爆発」は、いわゆる内水氾濫という状態です。短時間の豪雨が下水道に一気に流れ込み、容量を超えて逆流してしまったのです。渋谷駅前で激しく噴出したのは偶然ではなく、渋谷はその名の通り「谷」が集まっている地形で、渋谷駅付近が一番低い場所なのです。ですから周囲から水流が集中し、水圧が最も高くなったために、画像のように激しく噴出したわけです。今日の豪雨は降雨域が比較的広かったために、より大量の水が集中したのでしょう。

場合によっては、数十kgもあるマンホールのふたが跳ね飛ばされることもあり、それが当たったりしたら無事ではいられません。でも、それより怖いのがもう一枚の画像です。豪雨で冠水するような低い場所では、内水氾濫によってマンホールのふたが外れることが多いのです。

画像は水が引き始めた時なので、マンホールに流れ込む水が渦を巻いています。しかし、それまではマンホールの位置は全くわかりません。夜間や豪雨の最中だったとしたら、尚更です。そこを歩いたり、車で通過したらどうなるでしょうか。特に歩行中に浸水したマンホールに落ち込んだら、すぐに脱出するのはまず不可能です。

こんな場所を歩く時には、杖のようなもので足元を確かめながら進まないと、ひとつ間違えれば生死に関わることになります。

このような二次的な危険を知ることももちろん大切なのですが、それ以前に怖れるべきは、このような状態をもたらす過激な気象状況がここ数年当たり前になり、その傾向にさらに拍車がかかっているということです。この先、こんな状態はさらに日常的になり、重大な被害に繋がることも増えて行くでしょう。具体的には豪雨、豪雪、落雷、暴風、竜巻、雹などの発生が増え、被害も確実に増えるということです。

特に都市部では、脆弱性のある部分をピンポイントで突くように、被害が集中するでしょう。地下では、脱出できないほどの濁流に襲われるようなことも起きないとは言えません。

気象災害に関しても、「過去に無かったからこれからも無い」という発想は一切捨て、「何が起きてもおかしくない」という考え方で予防的な安全行動を取っていないと、取り返しのつかないことになるかもしれません。少なくとも、その可能性は年々増大しているのです。

今日辺りはほとんど笑い事で済みましたが、これは近未来に起こるであろう、さらに恐ろしい事態の序章に過ぎないのかもしれません。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル11】手段を選ぶな!

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回は、住宅密集地で前後を火にふさがれて、進退窮まった状況を考えます。

当ブログでは以前もちょっと書いたのですが、どこの「防災本」にも書かれていないし指導もされていない、おそらく日本で管理人だけが提唱するチェックポイントがあります。まあ、こんな内容は「社会的地位のある防災指導者」の方々は決して言わないでしょうし、それ以前に考えたことの無い方も多いかとは思いますが。そんな「過激」な、しかし「生き残る」ためには有効な方法です。

その方法とは「道路以外の脱出路」のチェック。これは特に住宅密集地、木密地域で有効な方法です。例えば、狭い路地で前後を火災でふさがれたとします。そんな時はどうしますか?必死で脱出路を探しますよね。ではあなたが探す脱出路は、道路だけですか?


そんな場合、何も道路を行かなくても良いのです。もちろん、建物の間の通れそうな隙間などあればチェックしておきますが、それも無かったら。

その時は、周囲の建物の敷地を通り抜けるのです。さらには、建物の中を通り抜けることも考えます。住宅密集地や木密地域ではそれが可能な場所、つまり人家の敷地や庭もチェックしておきます。それで通り一本裏に出られれば、脱出できる可能性は大きく膨らむわけです。

もちろん、チェックの際には道路上からで、平時に実際に通ってみたり、じろじろのぞき込んだりしないようにwさらりと眺めて、とりあえず「ここは通れそうだな」という場所をチェックしておくのです。

そして実際の災害下で進退窮まったら、人家の中を通り抜けて脱出することをためらう理由はありません。その時は壁を乗り越え、生け垣を折り、門扉を壊し、さらに家の鍵が閉まっていたらガラスを割り、ドアを壊すことになるでしょう。

その場合、法律的には他人の土地建物に無断で入ることで侵入罪、カギやドアを壊したり、室内を傷つけることで器物損壊罪を犯すことになりますが、生命が危険に晒され、そうしなければ生き残れないような状況だったと認められれば「緊急避難」が成立し、法的責任を問われないはずです。

でもそんな理屈以前に、たとえ後で罪に問われようと、そこで死ぬよりはマシというものです。管理人は、もし実際にそんなことをやって生き残れたら、仮にその家が灰になっていても、後で住人を探してお詫びとそれなりの補償をするつもりではありますが。何しろ、命あっての物だねです。


言うまでも無く、それは本当に「最後の手段」でなければなりません。でもそんな状況では、そこにいるのはあなたひとりではないことが多いと思います。そこであなたが唯一の脱出路を開けば、全員がそこへ殺到します。通り抜けられた家は、かなりの被害を受けるでしょう。

仮にその行動が後で問題になり、最初に誰がやった?あいつだと指摘され、罪をかぶせられるのならばそれでも良し、それくらいの覚悟をしておくことです。そこにいた皆が「あの人のおかげで助かった」とかばってくれる?そんなことは期待せずに。仮にそうでもあっても、責任が軽くなるわけでもなし。でも後でどんな目に遭おうと、その場で黒こげになって転がっていることになるよりは、はるかにマシだということです。

東日本大震災でも、津波に巻き込まれてずぶ濡れになりながら、寒さをしのぐために他人の家の中から衣服や布団を持ち出して生き残った方も実際にいるのです。生命の極限で、だれがその行動を責められましょうか。とにかく普段から、最後は手段を選ばないという「覚悟」をしておくことです。


実は、あの「大川小学校の悲劇」が起きたひとつの要因は、この「覚悟」の問題だったと言うことができます。すぐ近くに安全な避難場所がありながら、そこが津波避難場所として想定されていなかったこと、深い山の中での集団の掌握が困難と思われ、事故の可能性があったこと(要は責任問題)、児童を迎えに来た父兄への引き渡しができなくなること、学校に集まった一般避難者に高齢者が多く、山を登らせるのにためらいがあったことなど「生き残ってから」の理由を引率者が優先したために、「生き残る」チャンスが失われたと言っても良いでしょう。

それは、引率者に「後でどうなろうと、子供たちを守ることを最優先する」という「覚悟」が足りなかったために、判断の遅れを招いたということができます。極端な話、子供たちだけでも山に登らせるという選択肢もあったのです。

ただし、管理人はその判断を報道だけで一方的に批判するつもりもありませんので、先日実際に大川小学校跡に出向いて、なぜそのような判断になったのかを、管理人なりに検証して来ました。それが、このような悲劇を繰り返さないために必要だと思うからです。そしてそれは、管理人自身の「覚悟」を補強するためでもありました。

動画も含めた大川小学校からのレポートは、カテゴリ【被災地関連情報】の、「宮城・震災から1年8ヶ月」シリーズでお送りしています。

さて、防災フィールドワークに戻りましょう。避難場所が見えて来ました。次回は、避難場所周りのチェックです。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月27日 (金)

【防災の心理25】恐怖の以心伝心?

今回は、お化け屋敷が怖い最後の要素、「恐怖の伝播」について考えます。

これはどこでもたやすく起こることで、集団の中で誰かが恐怖を訴えれば、それが周囲の不安や恐怖を呼び起こし、押さえる手段が無ければ加速度的に拡大して行く状態です。その結果、最悪の場合は集団パニックに繋がり、場合によっては二次的被害が起こることもあります。

特に、災害下など集団自体が不安を感じている時には、ちょっとしたきっかけで「安全弁」が外れて、強いパニック状態に発展しやすくなります。お化け屋敷に入る前にパニック状態の客を見せられて恐怖を煽られるのは、これのミニ版と言っても良いでしょう。

そんな場合に考えなければならない要素は二つ。防ぎ方と逃げ方です。

まず防ぎ方。誰かが一旦パニックに陥り、恐怖の伝播があるレベルに達すると、コントロール不能になります。ですから、ごく早い段階で恐怖の元、つまり恐怖でパニックに陥っている人を落ち着かせなければなりません。そのための方法として「言葉」と「接触」が考えられます。


まず「言葉」は力強く、断定的で、落ち着いていることが必要です。声を掛ける方が慌てていては、それがまた相手に伝わって逆効果になりかねません。

内容はシンプルに。「大丈夫、大丈夫、大丈夫」や「心配ない心配ない」などと繰り返せば良いのです。パニックに陥った人には、なぜ大丈夫かの説明を理性的に聞く余裕はありません。それ以前に、強い恐怖自体が大抵は理性的な判断の結果ではなく、感情の爆発に過ぎないのですから、それを押さえるのにも理屈は必要ではないのです。

極端な話、状況が全然「大丈夫」ではなくても、「大丈夫」と言わなければなりません。そこではパニック状態を落ち着かせることが目的ですし、パニックの拡大はさらに悪い結果に繋がりやすいからです。

次に「接触」。人間は不安になると、何かに寄り添いたくなります。これは生物としての本能です。例えば真っ暗闇の中で広い空間にいるのと、壁に寄り添っているのではどちらが安心か、寄り添っているのが動物だったら、さらにそれが人間だったらと考えるとわかりやすいでしょう。

ですから、パニックに陥った人の肩を抱いたり抱きしめたりするなどして身体を接触させると、心理的な不安を軽くする大きな効果があります。手を握るだけでも効果があります。恐怖の余り暴れる人を抱きしめて押さえるような場合でも、身体の暴走を押しとどめ、寄り添うことが心理にもフィードバックされ、正気を取り戻す助けになります。

もし、相手が「あなたになんか触られたくない!」と怒りだしたら、それはそれで「成功」です。少なくとも、恐怖によるパニックからは脱出させられたのですから。もっとも、そうなったら自分の精神的ダメージが心配ではありますがw。でも、今は非常時です。ぐっと堪えるしかありませんね。

映画などで、パニックに陥った人の横面を張り飛ばして落ち着かせるようなシーンがありますが、あれは身体の痛みと他人に殴られるという心理的なショックを与えて正気を取り戻させる方法であり、最後の手段として有効でしょう。でも、一発張り飛ばしてショックを与えた後は、抱きしめてでも寄り添うことを忘れずに。

それ以前に、恐怖を感じている人をパニックに陥らせない方法としては、常に話しかけて、相手にも話させることが効果的です。これは前出の「情報の遮断」による恐怖を和らげる方法です。できればその時の状況や、こうなったらこうするという情報を与えられたら良いのですが、雑談でも誰かの声を聞き、自分もしゃべることで不安を和らげる効果が大きいのです。人間は何か話している間は他のことをあまり考えられませんから、不安から目を逸らせる効果が大きいのです。


それでは、早い段階で「恐怖の伝播」を防げずに、集団パニックが拡大してしまったら。お化け屋敷の行列ならば平和ですが、災害下では何が起こるかわかりません。そうなったら、もう早くその場から逃げ出すしかありません。その方法は当ブログで何度も触れていますが、基本的に、大混乱になってしまってからでは手遅れなのです。

とにかく早い段階で、パニックが伝わっていないエリアに向かって移動する必要がありますが、密集の中ではそれも困難で、人をかき分けて逃げようとする行動自体が「恐怖の伝播」を加速するでしょう。逃げまどう人の姿は、理由もわからずに「とにかく逃げなければ」と周囲に警報を発するのです。

すると周囲も同じ方向に一斉に動き出すでしょうが、そこで誰か一人でも転んだりしたら何が起きるか。そんな中にいたら、鍛えられたプロでも安全に逃げ仰せることはできないでしょう。というか、プロは少なくとも、自分の意志では最初からそんな場所にはいないのです。


東日本大震災後、ターミナル駅前などに立錐の余地もなく集まっていた群集の危険性が何度も指摘されました。実際の災害下では、恐怖の伝播だけでなく余震、落下物、爆発、火災など、集団パニックを誘発する危険はいくらでもあります。そして恐らく、また同じような状況は繰り返されるでしょう。

それでもあなたが群集の中を目指すのかは、それぞれの判断です。その判断は起こった災害の規模にも左右されますが、群集の中にいて集団パニックが発生したら、どんな過酷な状況が起きてもおかしくない、ということだけは事実です。


最後に、もし管理人が災害下でそんな場所にいなければならなかったらどうするかについて。

まず、群集の奥には絶対に入りません。交通機関が動き出した時に早く乗れるというメリットを捨ててでも、群集の端の方に陣取ります。自分の意志で、素早く動けるという余地を確保するのです。そして周囲の危険要素、避難可能方向、避難可能場所を常にチェックします。

集まって来る人の流れに乗っていると、どんどん群集の奥の方へ入ってしまうので、常に自分が決めた「座標」を動きません。群集が拡大すれば、「座標」を群集の外へ向かって移動させます。

群集の中で騒ぎが起きるのを察知したら、それが拡大するか、自分の居場所まで伝わりそうかに関わらず、とりあえず一度群集を離れて様子を見ます。後から来た人にどんどん先を越されますが、それは最初から諦めています。

そして何より、最初からそんな場所にはできるだけ近付かないという選択肢を、最優先に考えるでしょう。

などと言うと難しそうに見えますが、要は「人に踏みつぶされるのはゴメンだ、そうならないためにはどうするか?」と考えているだけのことなのです。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月26日 (木)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル10】いよいよ外へ出よう!

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


さて、今回は実際にフィールドワークに出発します。避難訓練とは違いますから、服装は普段通りの動きやすい軽装で良いでしょう。

持参するものとしては、筆記用具と前回いろいろ書き込んだハザードマップまたは周辺の地図とメモ用紙、ノートなどをできればバインダーに挟んで、途中でいろいろ書き込めるようにすると良いでしょう。記憶だけに頼るのは見落としを招きますし、メモすることで記憶もより確実になります。

写真やビデオを撮っておくと後で確認する際に役に立ちますが、公共の場所はともかく、人家の中や通行人が写る場合には注意が必要です。あらぬ疑いをかけられませんように、その点には十分に配慮してください。


ところで、防災フィールドワークに出る時は、普通は天気の良い昼間を選ばれると思います。しかし災害はいつ起こるかわかりません。実際に避難するのは、夜間や豪雨、大雪、強風の中かもしれないのです。

ですから想像力をいっぱいに働かせて、そこが停電した夜や台風、雷雨、大雪だったらどうなるか、そこで何が必要になるかを良く考えながら、街を歩いてみてください。関東地方の方は、あの計画停電の夜を思い出して。


さて、前回の「計画」では、地図上や記憶で、街の「大きな危険」をチェックしました。今回、実際に街を歩きながら行うのは、計画段階でわからなかったことを実際に確かめることと、あなたの身体に直接危険を及ぼしそうな「小さな危険」のチェックが主になります。

歩くルートは、まずは地図上で決定した最優先ルートです。そこが本当に最良なのか、実際にはどんな危険があるのかを良く見て行きます。以下は、チェックするポイントの例です。


□【道路の広さ】家、電柱、壁などの倒壊や火災、放置車両などがあっても通れるかどうか、その場合、近くに安全な迂回路があるか。行き止まりの袋小路はないか。

□【倒壊・崩壊危険物】ブロック塀、石塀、石灯籠、鳥居、転倒対策が無い、または不十分な自動販売機、石垣、切り通しなど。

□【倒壊危険建物】倒壊して道をふさぎそうな建物。古い木造家屋、商店、ビルなど。

□【落下危険物】看板類、割れそうな窓ガラスや落ちそうな外壁(特に古い建物の外装タイル、モルタル、石材)、大型ガラス壁、大量の電線、古い陸橋や高架橋(橋桁や破片の落下)など。

□【橋・川】落ちそうな橋ではないか、落ちた場合に迂回路はあるか、川を徒歩で渡れるか、津波の遡上や土石流の後でも通れそうか(水面からの高さを見ておきます)

□【その他の危険】工場(特に化学工場)、ガス・石油タンクなど、火災・爆発・有毒ガス発生の危険がある場所など。ガソリンスタンドは、地震による火災・爆発の危険はあまりないので除外。むしろ災害時に支援拠点となるガソリンスタンドも多いので、それもチェックを。


主に上記のようなことをチェックしながら、歩いて行きます。以前の記事の動画も参考にしてみてください。
■Youtube動画 「東京地震災害危険地帯を行く(その2)」はこちらから

上記に限らず、直感的に危ないと思ったことは、どんどんメモして行きましょう。地震災害に限らず、例えば見通しの悪い交差点、狭いけれど交通量の多い道、人通りが少なく人家や街灯も少ない道なども、普段の生活における危険要素です。そのような目で見て行くと、街は本当に危険だらけです。

それだけでなく、大地震後には街のどこからでも火災が発生してもおかしくありません。特に古い木造家屋は短時間で炎に包まれる可能性が高く、狭い道では、その脇を通り抜けられない可能性も大きくなります。

津波や土砂災害危険地帯を除けば、地震発生直後を切り抜けた後の最大の危険は、火災です。行く手を塞がれそうな場所では、事前に考えた迂回ルートはもとより、危ないと思った場所ではその場で迂回ルートを探して、実際に歩いておくことをお勧めします。

次回は、火災や津波などに行く手を塞がれ、進退窮まったらどうするかについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月24日 (火)

【豪雨・落雷・竜巻に警戒】関東地方で大気が不安定に

■6月24日18:25追記
横浜市で落雷を受けた方のひとりは重症という続報に接し、本文を一部修正しました。また、各地で激しい降雹が観測されていることから、関連過去記事リンクを追加しました。

(以下本文)
今日はアリューシャン列島と南太平洋の地震について書こうと思っていたのですが、それよりも関東地方が大変なことになっているので、急遽変更します。

今日6月24日の関東付近は、上空に流れ込んだ強い寒気のために大気が不安定になっていて、明日25日まで豪雨、落雷、竜巻などの危険が続きます。横浜市の公園では男性二人が雷撃を受けてしまったようです。

このような気象条件の場合、最も恐ろしいのは落雷です。洪水や竜巻はまだ時間的に対処のしようがありますが、落雷はところ構わずいきなり発生し、致命的な結果になりやすいからです。

黒い雷雲が近づいて来たら、開けた場所や木の下などには入らず、建物の中や車の中に避難するのが基本です。しかし空が明るくても、雷鳴ひとつ聞こえなくても突然落雷するということもありますから、「大気が不安定」と言われる時に屋外で活動する場合には、スマホや携帯などで気象レーダー画像をチェックして、強い雷雲の動きをチェックし続けることをお勧めします。早めの避難以外に、効果的な防御策は事実上ありません。

このような気象条件では竜巻も発生しやすいのですが、気象レーダー画像で赤色で示される激しい降雨域の大きさが直径数kmを超えるくらいになると、竜巻が発生する確率が急上昇しますから、竜巻に遭遇しないためにも、気象レーダー画像のチェックをお勧めします。

当ブログでは、過去記事で落雷に対処する方法をシリーズ記事でお送りしておりますので、リンクします。これから、このような気象条件が頻発する季節になりましたので、是非チェックしておいてください。リンク先記事の初回掲載は2012年5月です。

なお、リンク先の過去記事には文末にブログランキング投票タグがついていますが、現在はすべてのブログランキングへの参加を取りやめていますので、無視してください。

【緊急特集・番外編】雷から生き残れ【1】
【緊急特集・番外編】雷から生き残れ【2】
【緊急特集・番外編】雷から生き残れ【3】
【緊急特集・番外編】雷から生き残れ【4】
【緊急特集・番外編】雹から生き残れ
【緊急特集・番外編】雷や雹から生き残るために

【緊急特集・番外編】命を大切に

■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年6月23日 (月)

【防災の心理24】想定してなきゃ全部想定外!

今回は、お化け屋敷の演出から「想定外」の恐怖について考えます。

これは平たく言えば、「びっくりさせられてしまう」ことですね。これが例えば誕生日のサプライズパーティだったら、びっくりは喜びを倍増してくれますが、こと怖いことや悪いことになると、「頭の中は真っ白で、身体が固まって」しまうか、パニックに陥って無茶な行動に走りやすくなります。一刻を争う緊急避難時に、そんな状態になりたくありません。

お化け屋敷では、お化けが出て来ることは「想定の範囲内」です。何が想定外かというと、出てくる場所とタイミング。だから前出の「ガイド」でそれがわかっていれば、怖さは半減します。まあ、お化けのビジュアルと動きがまた凄いので、それでもかなり怖いのですがw

では災害においてはどうかと言うと、一見、いろいろあります。東日本大震災では、地震や津波の規模などが「想定外」だったと、盛んに報道されています。でも、それは主に被害が拡大したことの責任追及の話であって、個人が「生き残る」ためには、ほとんど関係ありません。それ以前に、個人レベルでは災害の規模など最初から想定さえされていなかったでしょうし。

などと言うと、東京で震度7、南海トラフで津波34m、木密地域で大火災、帰宅困難者650万人とか、いくらでも想定情報があるじゃないかと反論されそうです。

ではそんな情報を知っていたら、いざそれが本当に起きた時に、あなたは「ああ、想定の通りだ」と、少しでも落ち着けますか?極論すれば、そんな情報は、個人レベルにおいては防災意識を高めるくらいの効果しか無いのです。


災害の規模に関する想定は、被害の種類と「面」の広がりの規模を規定します。行政ならばそれを基に全体の災害対策を策定しますが、あなたの被害想定は、あなたの居場所、つまり「点」の想定でなければなりません。

乱暴に言ってしまえば、例えばあなたが帰宅困難者のひとりだったとしても、あなたに水と食品、雨露や寒さを凌げる場所があれば、ほかに何百万人いようがほとんど関係ありません。突き詰めれば、あなたにとっての災害とは、あなたの目に見えて、あなたに危険を及ぼす「周囲3m」で起こることに過ぎません。

そんな、あなたの「周囲3m」の危険を、具体的に想定していますか?それをしていなかったら、あなたの周りで起こることはすべて「想定外」となり、あなたを混乱させるでしょう。もちろんあなたは移動しますし、あなたひとりの問題でもありませんから、お化け屋敷のように、本当の「点」で起こることがわかれば良いという訳ではありません。


もしあなたが今まさにシュートを狙うサッカー選手ならば、必要な「点」情報は敵ゴールの方向、敵ディフェンダーやキーパーの位置、味方選手の位置であり、その動きを想定するということになります。それだけあれば、有効なシュートを打てるでしょう。そこで味方ディフェンダーの位置やサポーターの応援、スタジアムに何万人入ったとかの「面」情報を知っていても、何の役にも立ちません。

こういう例えならば「当然だ」と思われる方も多いでしょうが、こと防災情報に関しては、このようなピントのズレに気づかず、身近な危険を具体的に想定できていない方が、実は多いのではないかと思います。そのまま「本番」に遭遇したら、「想定外」の恐怖に「頭の中は真っ白で、身体が固まってしまう」かもしれません。

繰り返しますが、「生き残る」ために最も必要なのことは、災害時に「あなたの居場所の周囲3m」で起こることを正確に想定し、その対策を考え、具体的な対策をしておくことなのです。災害の第一撃から「生き残る」ためには、それ以外の情報や行動は無くても構わないと言っても、決して過言ではありません。

正しい想定は避難行動の精度と速度を上げるのはもちろん、気持ちの上での余裕ともなって、より正確で素早い判断が可能になるはずです。本当の災害は、お化け屋敷よりずっと怖いのですから。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月21日 (土)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル09】まずは計画から

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回は、実際の防災フィールドワークの進め方を考えます。

フィールドワークと言っても、いきなり外に出るわけではありません。まず最初にやらなければならないことは、「計画」です。お住まいの場所や、お勤め先、学校など、良く行く場所周辺の地図とハザードマップを用意してください。お住まいの自治体から入手してください。ハザードマップはネット上での閲覧ができることが多いのですが、災害時はネットが使えないこともあるので、プリントアウトしておくことをお勧めします。フィールドワークでも、プリントアウトしたものを使います。

まず最初に、あなたの居場所周辺の一時(いっとき)避難場所、広域避難場所、学校などの避難所、帰宅困難者支援施設、病院、警察署、消防署など、災害時に行く可能性のある場所と、おおまかな経路、距離を把握してください。そして、改めて街全体や周辺の地形を見てください。

ところで、自宅周辺はともかく、勤め先など出先のハザードマップは意外とご覧になっていないのではないでしょうか。この機会に、是非ご覧になってみてください。


次に、ハザードマップがある場合は、記載された津波到達及び洪水危険地域、液状化危険地域、火災危険区域、土砂災害危険地域など記載された危険要素と、その他地図上で把握できる危険要素をチェックします。その主なポイントは下記。カッコ内は予想される主な危険要素です。

□住宅密集地、木密地域(倒壊・火災・袋小路)
□繁華街、商業地域(落下物・倒壊・火災)
□工場(火災・爆発・有毒ガス)
□川沿い・海沿いの地域(液状化・津波・土石流)
□低地・ゼロメートル地帯(液状化・津波・洪水)
□がけ、急斜面(土砂崩れ、地滑り)
□橋(落橋・津波による冠水)

このように、避難の際に障害となりそうな場所をチェックして行きます。もちろん地図上ではすべて把握できないでしょうから、気になる場所は地図に印をつけておくか、メモしておきます。

最後に、上記ふたつの要素を考え合わせて、避難場所への経路を複数考え、優先順位をつけます。とりあえず3~5ルートを選べば良いでしょう。ポイントは、最短ルート、比較的安全そうなルート、距離を無視して最も安全と思われるルートを取り混ぜることです。条件によっては、最短ルートが最優先とならないことも、もちろんあります。

これで、事前の「計画」は完了です。この段階から、ご家族みんなでワイワイと楽しみながらやってみてください。みんなで意見を出し合うことで情報が共有できます。お子さんが一緒ならば、自ら危険を見いだし、それを避ける力をつけるために効果的なだけでなく、子供の視点は大人が気づかなかった危険を教えてくれることもあります。

例えば、大人にとっては低い壁でも、子供にとっては頭上から倒れかかる危険を感じていたり、さらには「あの家は大きな犬が吠えるから怖い」とか。それも、街の危険要素に他なりません。なにも自然災害対策だけにこだわる必要はないのです。大人も、いわゆる「災害弱者」の視点で危険をチェックすることが大切です。

さて、そんな感じで大まかなチェックができたでしょうか。この段階で、そんなに根を詰めて細かくチェックする必要はありません。地図上の情報など、本当に限られたものでしかないですから。次回は実際に外に出てみましょう。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月19日 (木)

【防災の心理23】オ、オラに情報を分けてくれ!

すいませんタイトルで遊んでみましたwあのマンガのファンというわけではありませんが。

今回は、「情報の遮断」による恐怖と、その対処法について考えます。

お化け屋敷の怖さは、暗く、先が見通せず、何が出て来るかわからないという三つの要素によるものと言っても良いでしょう。つまり何があるか、何が起こるかという情報を遮断された不安による恐怖です。

さらに、入る前には「ここではきっと怖いことが起こる」という事前情報がたっぷり与えられてしまい、より恐怖感を煽られるわけです。これなど、メディアが煽る「巨大災害の恐怖」情報と同じようなものですが、お化け屋敷は「怖がるために」入るのですから、こちらでは必須の情報ではあります。


さて、お化け屋敷の中に入ると、前述のように暗いし、先見えないし、どこから何が出てくるかわかりません。ではここでどうやったら怖くないか、考えてみましょう。

まず暗さに対しては照明。十分な明るさ確保は、視覚情報を得る以上に、心理的な不安を取り除きます。もちろん、行動の速度もぐっとあがります。周囲を真昼のように照らし出せる強力なライトがあれば、仕掛けは台無しですね。

次に、進路の先がわからないこと。それには「ガイド」です。もし会場の見取り図を持っていて、そのドアの先はどうなっている、「お化け」が隠れる場所があるとかわかっていれば、仕掛けが予想できます。少なくとも、ドアを開けた途端にびっくりさせられることは無いでしょう。

最後は、何が出てくるかわからないこと。これにも「ガイド」なわけですが、究極は「中の人」がガイドをしてくれること。次のドアの先には何もないよ、この角を曲がったら「出る」よ、さらにはこんなお化けがこんな動きをするよと事前に教えてくれれば、怖くもなんともない。

これですっかりお化け屋敷は台無しです。もちろん、お化け屋敷にはライトは持ち込み禁止ですし、中の情報は秘密ですが。実はお化け屋敷の中でも、管理人のポケットの中にはいつも通りLEDライトが入っていましたけどねwもちろんこれは、中にいるときに地震や停電が起きた時のためですけど。


さておき、これまで述べて来たように、お化け屋敷の恐怖は、我々が災害に直面した時の恐怖の要素ととても近いわけです。巨大災害は、自力で「やっつける」ことができない、得体の知れないお化けみたいなもので、我々はただ逃げるしか無いですし、そのために欲しい情報が、お化け屋敷では効果的に遮断されているのです。

ここではその対処法を考えたわけですが、災害情報は秘密でもなんでもありません。ただ、「生き残る」ためにはどうでも良い情報が多すぎるだけです。


まず、当ブログでとても重視しているライト。非常時は、とにかく周囲が見えなければ話になりません。ですからペンライト程度ではなく、最低でも25ルーメン以上の照度を持つものが必須です。照明の心理的な効果としては、こんなエピソードがあります。

かつて米国でビルの爆弾テロが発生し、エレベーターに十数人の人が閉じこめられました。もちろん電源が落ちて暗闇で、インターホンも通じません。携帯電話が登場する前の話ですから、外部に連絡する手段もありません。ビルは大きく損傷し、火災や崩落の危険も考えられましたが、連絡も脱出の手段も断たれました。

結局、救出までに二日以上かかったのですが、その間、暗闇でパニックを起こさずに冷静に救助を待てたのは、ひとりが持っていたバックライト付き腕時計のおかげだそうです。その弱い緑色の光でお互いの顔が見え、励まし合いながら乗り切ったとのこと。救出された人は、もし完全な暗闇だったらどうなっていたかわからないと、口を揃えたそうです。

これなど、ごく小さなひとつの明かりが、群集心理を良い方向に導いた例と言えるでしょう。もちろんひとりの場合も、明かりのある無しで安心感は全く違います。管理人がライトを肌身離さないのは、ずっと以前にこのエピソードを知ったせいと言っても良いかもしれません。


次に「ガイド」の効果。震度いくつだ津波何メートルだ犠牲者何人だというマクロ情報は、あなたが「生き残る」ためのガイドにはなりません。必要なのは、お化け屋敷の見取り図、つまり「あなたの居場所はどうなっているか」というガイドです。まず基本は地域のハザードマップです。その内容を踏まえて、あなたに直接の危害を及ぼす要素、つまり「周囲3m」の危険を知り、それを避ける行動を考えておかなければなりません。

もちろん、それは他人が与えてくれるものではありません。家、職場、学校の中や安全な場所への避難経路の危険をあなた自身が見て、考えて、作るのです。その方法は、現在再掲載中の【対災害アクションマニュアル】シリーズで解説していますので、参考にしてください。


では、あなたを導いてくれる「中の人」のガイドは?災害時に、そんな人が近くにいてくれたらいいですね。でも、大抵はいないのです。ならば諦めるしか無いのでしょうか。いえ、ひとつだけ確実な方法があります。あなた自身が、ガイドになれば良いのです。正しい情報を正しく知り、それを実地で調査・検証することで、誰でも自分の居場所における優秀なガイドになることができます。


もちろん、それは他を救うためでなくても良いのです。まずあなた自身、家族、大切な人を守るために、あなたが強くなる。そして「余裕があれば」、他のために力を尽くせば良い。それは利己的でもなんでもなく、セルフディフェンスの原点です。何より、まずあなたが生き残らなければ、他を救うことはできないのですから。

巨大災害時には、「生き残る」ために欲しい情報の多くが遮断されます。しかし、上記のような備えをしておくことで、得られない情報の穴埋めをすることが可能なのです。今回は敢えて触れなかったのですが、ラジオやネットから情報を得るための備えも、当然忘れるわけには行きません。

情報とは、他から与えられるものを受動的に受け入れるものではなく、あなたが選び、知って、見て、触れて、行動して集めるものであり、そんな情報でなければ、少なくとも災害からの緊急避難時には役に立たないのです。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月18日 (水)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル08】オプションを用意せよ

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


前回記事を動画をご覧になって、いかがだったでしょうか。あれはあくまでざっくりと危険要素を指摘しただけで、実際に徒歩で避難する際には、さらに細かい危険がたくさんあるわけです。

揺れている最中の危険はもちろん、あのような「木密地域」では一軒の家の倒壊や出火、電柱などの倒壊で、いとも簡単に道路が通行不能になることもおわかりいただけたと思います。下画像は、阪神・淡路大震災における、木密地域の被害状況です。
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阪神・淡路大震災で焼け野原となった神戸市長田区は、まさにあのような「木密地域」だったのです。下画像は、管理人が撮影した、最近の(管理人註:撮影は2010年7月)長田区市街です。道路は昔通り細いままですが、建物がすべて新しくなっていることが、あの時「全滅」したことを、無言のうちに伝えています。
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大地震の時、かつての神戸市長田区のような、そして現在も各地に点在する大規模な木密地域にあなたがいたら、そして炎や瓦礫に行く手をふさがれたら、どうしますか。非常に厳しい状況です。


そこで「生き残る」確率を上げるために必要なことは、ただひとつ。それは「オプション」、つまり選択肢の存在です。これがダメならあれ、あれがダメならその次というように、できるだけ多くのバックアップ手段を持っているかどうかが、避難行動の速度と確実性を大きく変えるのです。

具体的には、複数の避難経路を事前に設定・調査し、その優先順位を決めておくことが必要です。そしてそのためには自分の目で見て、自分の足で歩き、自分の頭で考えなければなりません。これはあらゆる危険地帯に住んでいる場合や良く行く場所においてはもちろん、初めて行く場所でも、建物の中でも、常に「その時何が起こるか、その時どうするか」という視点で周囲をチェックするのです。

いくら防災本を読んでも、帰宅支援地図を見ても、あなたの身体に直接危害を及ぼす危険要素や、目的の行動ができなかった時のオプション手段はわかりません。そんな「机上の情報」だけで安心していませんか?そこではあなた自身が実際に行う事前行動によって得られた情報が必要不可欠であり、そんな情報を得るために行動が、管理人の言う「フィールドワーク」なのです。

そして、その「フィールドワーク」こそが、地震災害において最も危険度が高い、最初の1分から数時間の間を「生き残る」ために、最も効果的な備えだということに疑いはありません。

動画の最後に入れた「あなた自身の意識と備えで、生き残れ。」という言葉は、そんなメッセージを込めています。
次回は、実際のフィールドワークの際に参考となる、チェックリストをお送りします。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。


2014年6月17日 (火)

【防災の心理22】頼りたい、でも頼れない

今回は、お化け屋敷の演出から「群集心理からの遮断」について考えます。

お化け屋敷や肝試しに大人数でぞろぞろ行ったら、普通は台無しですよね。群集心理が恐怖感を分散してしまって、ちっとも怖く無い。一人もしくは小人数でこそ、「何かあっても助けが来ない」という心細さを楽しむことができるわけです。

当テーマでは、これまで災害下における群集心理の危険性を述べて来ました。群集自体にパニックの危険性があるだけでなく、群集の中にいることが判断の遅れや思考停止を招き、付和雷同的に誤った行動に結びつきやすいのです。

その結果、状況が変化や行動の誤りに気付かなかったり、気付いても群集の中から抜け出すという判断が困難になります。それ以前に、群集から抜け出すということ自体が、物理的に困難なのです。

それを防ぐ方法として、群集の中にいることの危険性を「知る」ことが必須であり、早い段階で「自分自身の判断」で行動を決めなけばなりません。そして、特に理由がある場合を除いて群集の中には入らないか、すぐに抜け出せる位置取りをする必要があります。


では、災害下で人間の本能である群集心理を遮断されてしまったら、どうなるでしょうか。生命の危機に直面した時、だれも頼る人がいないという状況です。それは一人のこともありますし、周囲に子供やお年寄りなど「災害弱者」しかいないというようなこともあるでしょう。否応なしに、あなたが「リーダー」になってしまうような状況です。

お化け屋敷ならば、あなた一人か、一緒にいるのは恐がりの友人、彼氏や彼女、または子供だけで、進むも退くもあなたが判断することもあるでしょうし、時には足がすくむ連れを励まして行動させなければなりません。そんな状況が、意識的に作り出されるのです。実は、お化け屋敷は災害避難時のシミュレーションにもなっているわけですね。

そんな追いつめられた状況では、その人のパーソナリティが強く現れます。大まかに分ければ、「状況と戦おうとする」か「状況に飲み込まれる」かの違いです。さて、あなたはどちらのタイプでしょうか。


前者であれば、まずそこでどうすれば良いか考えるでしょう。この先は進めるのか、別の道を選ぶべきなのか、五感をフル回転させて周囲の情報を集め、それを自分の知識と照合して行動を決め、それを怖がる連れに伝え、励まして行動させようとします。

一方後者の場合は、自らが恐怖に飲み込まれ、理性的な判断ができなくなります。そして周囲にさらなる「弱者」がいれば、できれば依存したいリーダーが混乱する姿は、より強い恐怖を招きます。そして周囲が恐怖に戦く姿はリーダー自身に伝染し、より強い恐怖と混乱に陥るという悪循環になります。行き着くところは、その場にただ留まるか、パニックに陥って無茶な行動に走るかでしょう。そんな場合、かなりの幸運に恵まれない限り、大抵は悪い結果に繋がります。

ちなみに例のお化け屋敷では、動けなくなったりパニックに陥った人は、係員が誘導して脱出させてくれます。ああ、アトラクションで良かったw


ではどうするかという話ですが、そんなパーソナリティは一朝一夕に変えられるものでもありません。では次善の策とは。

仮に、あなたが「状況に飲み込まれる」タイプだったとします。恐怖に打ち勝つ自信は全くありません。でも、例えばあなたがそのお化け屋敷が二度目だったらどうでしょうか。出てくるお化けの大体の場所や種類、距離感、脱出路の存在や、最後には係員の誘導があると知っていたら。

「知っている」ことが確実に気持ちの余裕に繋がります。怖がる連れに、「お化けは絶対に襲って来ないし、最後は助けてもらえる、怖かったら目をつぶってじっどしていれば助けてもらえる」というような安心情報を与えて恐怖を和らげ、前へ進む勇気を与えることができるでしょう。情報だけでなく、「知っている」人が一緒にいるというだけで、周囲には大きな安心感を与えます。

もちろんあなた一人の場合でも、自分自身の余裕にも繋がるわけです。もっとも、それはアトラクションの楽しみを殺ぐことでもありますが、本当の問題はお化け屋敷ではなく、大抵は事前に経験していない災害現場の話なのです。


実際に被災して生命の危機に直面した人は、そこで「失敗」だと感じたことを、次は絶対に繰り返さないでしょう。まずはそんな声に耳を傾けなければなりません。しかし、本当に「失敗」した、つまり災害から生き残れなかった人の声は、聴くことはできません。そんな人々がもし語れたら何を言うかを、想像するのです。それが、当ブログでも繰り返し提唱している「声無き声を聴け」ということです。

しかし巷の防災情報は、地震のメカニズムや何年後に何%だとかが余りに多く、「生き残る」ための知識や技術は、何々に「注意しろ」とか「警戒しろ」という漠然としたものばかりではありませんか?そして水だ食料だと、生き残った後の話になってしまっていませんか?

メディアなどで伝わって来る被災者の声は、どんな悲惨な体験をしたとか言う話ばかりで、そこでどんな行動をして助かり、どんな行動をした人が助からなかったかというような、「本当に役に立つ」教訓はあまりありません。しかも本当に悲惨な話は、メディアが「自主規制」してしまう。

結局、伝わって来るのはお化け屋敷を出た人の「すごく怖かった」というような話ばかりではないでしょうか。お化け屋敷ならば、中の様子を語るのはネタバレになりますが、災害対策においては、体験者による本当の意味でのネタバレこそが必要なのです。

ならばそれを自ら探し、見つからなければ想像し、災害現場で得られた貴重な教訓を「知る」ことこそが、群衆心理から遮断されたあなた自身が、「生き残る」ために最良の判断と行動ができるようになるために必須なのです。それが恐怖を和らげ、「状況に飲み込まれる」かもしれないあなたに、「生き残る」ための勇気とチャンスを与えてくれます。

もちろん「状況と戦う」あなたにも、より多く知り、より多く考えることが「生き残る」力をアップさせることは、言うまでもありません。

あなたの防災知識、本当にイザという時に使えるものばかりですか?


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月16日 (月)

【地震関連情報6/16】関東・東北で連続地震

6月16日未明に、関東と東北で比較的大きな地震が連続して起きました。

まず午前3時19分頃、茨城県沖、深さ10kmを震源とするマグニチュード5.6の地震が発生しました。この地震はマグニチュード値が5.6とかなり大きく、もしこれが陸地直下の深さ10km程度で発生すれば、震源直上付近の震度は5.弱~5強が予想される規模です。しかし震源が陸地から比較的遠かったために、陸上の最大震度は3でした。

特記すべきは、この地震が「アウターライズ地震」だと思われることです。陸地から比較的遠い海底の浅い部分で発生しており、特徴が合致します。東日本大震災後、東北沖では何度もアウターライズ地震が発生していますが、茨城県北部沖での発生はほとんどありませんでした。しかし茨城県北部沖は東日本大震災震源域の南端部であり、震災による地殻変動の影響を強く受けている場所でもありますから、今回の地震も、広い意味において震災の余震ということができるでしょう。

しかし、典型的なアウターライズ地震よりは陸地に近い場所で発生していますので、「アウターライズ性の」地震という感じでしょうか。なお、一見するとアウターライズ地震のようでも、実は全く異なる未知のメカニズムであったという実例もあります(2012年12月7日に三陸沖240km、深さ10kmで発生し、石巻市で1mの津波を観測した地震)ので断定はできませんが、この地震がアウターライズ地震であった可能性は高いと思われます。

なお、アウターライズ地震は海底の浅い部分で発生するために海底の変形を伴いやすく、規模がマグニチュード6台後半になると、津波の発生が予想されます。しかし震源が陸地から比較的遠いために、陸地の揺れは規模の割りには大きくなりません。仮に、震源がさらに陸地から遠ければ、陸地の揺れが震度3~4程度でも津波が発生することもありますから、沿岸部の方は、地震を感じたら深夜でもすぐに地震・津波情報を確認するようにしてください。


二回目の地震は、午前5時14分頃、福島県沖の深さ50kmを震源とするマグニチュード5.8と、これもかなり規模の大きな地震でした。この地震のタイプは、震災後に東北から関東地方沿岸で多発するようになった「スラブ内地震」であり、これも広い意味で震災の余震です。

規模が大きく震源が比較的陸地に近かったために、宮城、福島、茨城県にまたがる広い範囲で最大震度4を観測しています。このタイプの地震は沿岸部の陸地直下でも起こる可能性がありますが、その場合、今回の規模ならば最大震度は5弱以上になると予想されます。今回は海底での発生でしたが、このタイプの地震はこの先まだ頻発が続ぎ、時々大きめの発震がありますので、この先も警戒が必要です。なお、このタイプは震源が40~70km程度と深いために、海底で発生した場合でも、津波の危険はあまり大きくありません。

しかし、揺れの大きさだけでは震源の場所や地震のタイプを判断できませんので、やはり地震を感じたら、すぐに地震・津波情報を確認することをお勧めします。


なお、16日未明に地震が連続したことは偶然であり、ふたつの地震の発生においては直接の関連はありません。しかし「アウターライズ地震」も「スラブ内地震」も、東日本大震災の発生にによって太平洋プレートが西向きに動く速度が上がるという、共通の原因によって発生しやすくなっている地震です。「アウターライズ地震」は、浅い部分が引っ張られることによる正断層型地震、「スラブ内地震」は、深い部分が押し込まれることによる逆断層型地震なのです。

震災から3年以上経ち、震源域周辺での地震回数もかなり落ち着いて来てはいますが、いまだ震災余波の地殻変動は続いており、その影響はこの先数十年も続きます。その間、震源域周辺で大規模地震が誘発される可能性は常にありますので、常時警戒する意識と、「できるうちにできるだけ」の備えを進めることが大切かと思います。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

2014年6月13日 (金)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル07】バーチャルフィールドワーク解説編

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


前回記事の動画をご覧いただいて、いかがだったでしょうか。大地震の際にそれぞれの場所で何が起きそうか、どれくらいチェックできたでしょうか。

お子さんがいる方は、是非一緒にチェックしてみてください。幼稚園の年長さんくらいになれば、かなりの危険を見つけだすことができると思います。さらに、大人の視点では見落としがちな危険まで、鋭く指摘したりもします。もちろん実際に街を歩いてチェックする際にも、是非お子さんと一緒に歩いて危険の場所と種類を共有し、その時どうするかを良く話し合うことが、お子さんの、ひいては家族皆の安全につながります。

ではここで、管理人がチェックした危険入りの動画をご覧ください。前回と同じ動画に、字幕を入れたものです。以後のテキストは、動画をご覧になった後にお読みください。

■Youtube動画「東京災害危険地帯を行く(その2)」へはこちらから
または下記URLへ。
http://youtu.be/GpRT4fbG5-k

このような「木密地域」には、いかに多くの危険があるということがおわかりいただけたのではないでしょうか。でも、もちろんこれで全てではありません。あくまで、車で走りながらざっくりと危険要素を視ただけですし、字幕では最も恐ろしい火災の危険には、ほとんど言及していません。どの家が火を噴いていてもおかしくありませんし、実際に多くの火災が発生するでしょう。

そして軒を接した家々に延焼して行きます。119番通報しても消防車はまずやってきませんし、仮にやってきても、効率的な消火はまず不可能です。最悪の場合、短時間で下画像のような状態になります。
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さらに、実は字幕から敢えて外した危険要素があります。皆様は狭い路地の左右を慎重に見て行かれたと思いますが、「上」をチェックされましたでしょうか。路地の上に網の目のように張り巡らされた電線です。

電柱が倒壊したり傾いたりすると、電線が垂れ下がって行く手をふさぎます。特に、道路を横断している電線が垂れ下がると大きな障害になりますが、動画を見てもわかる通り、電線の地中化をしている以外の場所では、どこでもおきる可能性があります。

確実に停電していることがわかれば良いのですが、実際には電気工事で使う検電器でもなければわかりませんから、切れたり垂れ下がった電線に無防備で触ることは、自殺行為にもなりかねません。

そうでなくても、家一軒の倒壊や火災で、細い路地は通れなくなります。そんな状況に遭遇したら、どうしたら良いのでしょうか。

次回へ続きます。

■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月11日 (水)

【防災の心理21】もうひとつの「怖さ」とは

今回からは、もうひとつの「怖さ」について考えます。

当シリーズでは、これまで主に死に対する本能的恐怖と、その影響について述べて来ましたが、もうひとつ、考えておかなければならない恐怖があります。本能的恐怖は、生きている限り永久的(parmanent)に続くのに対し、もうひとつの恐怖は、何か危機に直面した場合に一時的(temporary)に感じるものですので、ここでは「一時的恐怖」と呼ぶことにします。

危機に直面した際、人間は緊張します。緊張は心拍数を増やして血圧を上げ、アドレナリンの分泌を促します。それは危機から脱出するために思考と肉体を一気に興奮状態にする、本能的反応です。つまり、危機から逃げたり戦ったりするための準備が、自動的に行われるのです。しかし危機があるレベルを超えると、緊張は恐怖に転化して思考は停滞し、行動は阻害されます。最悪の場合、「頭の中は真っ白で、身体が固まって」しまうのです。

大災害からの緊急避難時にそんな状態になってしまったら、「生き残る」確率を大きく下げることになりますから、出来る限り「固まって」しまうのを避けなければなりません。それは、どうしたら良いのでしょうか。


静岡県の富士急ハイランド遊園地に、とにかく怖いと有名な「お化け屋敷」があります。管理人は二回ほど行ったことがありますが、大体パターンがわかった二回目でもとにかく怖い(もちろん細かい演出は随時変えられています)。病院の廃墟を模した建物の中を1km近く進むのですが、恐怖のあまり途中の脱出路から逃げ出してしまう人も少なくないのです。管理人はなんとか最後まで行けましたがw

そんな「お化け屋敷」とは「一時的恐怖」を逆手に取ったアトラクションですから、その手法を分析することで、恐怖に対応する方法も見えて来るはずです。あまり詳しく書いてネタバレになってもいけませんが、ここではその「お化け屋敷」を例に、「一時的恐怖」のメカニズムと、その対処法について考えて見ます。


まず最初に、廃病院という「恐怖の記号」が与えられます。病院と死のイメージは切り離せず、それだけで本能的恐怖が掻き立てられます。それが廃墟ですから、つまり中には「病院に本来いるべき人」は誰もいない、何かあっても助けが来ないという孤立感を掻き立て、誰かに頼りたくなる気持ちから切り離されます。「赤信号をみんなで渡れない」という、「群集心理からの遮断」です。

さらに、死のイメージは有象無象の「得体の知れないもの」の存在を感じさせます。恐怖の内容を具体的に「知る」ことができないのです。ここまででも、今まで述べて来た、本能的に感じる「怖さ」を、見事に逆手に取られているわけです。実は、入る前にもうひとつ恐怖を植え付けられる仕掛けがあるのですが、それは後で述べることにします。


さて、中に入りましょう。内部は、打ち捨てられてから何年も経つような雰囲気が見事に再現されています。しかもリアルな備品類が乱雑に散らばっていて、打ち捨てられる際に何か恐るべき事が起きて、皆が一斉に逃げ出したことを想像させます。そして当然ながら、かなり暗いのです。

暗い、つまり視覚が制限されて情報が得られないということだけで、人間は本能的恐怖を感じます。さらに、暗闇の中に「得体の知れないもの」がいろいろ配置されていて、近づくのもおっかなびっくりです。通路は曲がりくねり、先の見通しは効きません。カーテンやドアで仕切られた場所も多く、その先に何があるのか、何が起こるのかと、びくびくしながら進まなければなりません。どれも「情報の遮断」という、恐怖の演出です。

そしてここのハイライトが、妙な言い方ですが「生身のお化け」が現れること。人間が演じていると言えば身も蓋も無いのですが、これがとにかく怖い。この辺りから出そうだと身構えた所からは現れず、見事に裏をかいて来ます。お化けが怖いというより、猛烈に驚かされるのです。つまり、「想定外」の演出による恐怖です。

そして、これはかなりネタバレになるのですが、たっぷりの恐怖を味わわされた客も、実は演出の一部に利用されてしまうのです。少人数に分かれて入場する人気アトラクションですから、会場前には行列が出来ています。そこには中から聞こえてくる奇声や客の悲鳴がスピーカーで流されていて、待っている間にも、中で一体何が起こっているのだと、嫌が応にも不安と恐怖を掻き立てられています。


一方、経路の最後まで辿りついた客には、詳しいことは書きませんが、「最恐の」仕掛けが用意されています。そこで、大抵の人は悲鳴を上げて駆け出してしまうのです。管理人もそうでした。しかし、客にはそこが経路の最後だとはわかりません。とにかくここから逃げなければと、ダッシュして手近なカーテンを跳ねのけると・・・いきなり屋外に出て、目の前には入場待ち行列が。いい大人が悲鳴を上げて駆け出て来る姿を、入場待ちの客に晒されるのです。

これはもう「やられた!」と苦笑いするしかありませんが、これとて、絶妙な演出です。入場待ちの間に中の様子を想像して不安になっている客の前に、悲鳴を上げた客が次々に駆けだして来るという、これは「恐怖の伝播」を狙った演出です。これが本当の災害時などに起こると、集団パニックを誘発することもあるわけです。

若干余談ながら、ここにはもうひとつの仕掛けがあったことに、管理人は後で気づきました。出口に通じる最後の廊下は、それまでの通路より広かったのです。他にも廊下はあり、一見そこが経路の終わりだとはわかりません。しかしそこで「最恐の」事態が起きた時、人は無意識に最も広い、つまり移動しやすい経路を選ぶという心理を、見事に逆手に取られていたのです。

その広い廊下には何も障害物が無く、とにかく最速で逃げられる方向だと誰もが思うようになっていて、その距離も絶妙。全力で走って、ぎりぎりで危機から逃れられると感じさせておいて、そこがいきなり終点、しかも入場待ちの客の前というわけです。この動線構成は、まさに見事でした。

そんな「一時的恐怖」を演出する数々のテクニックから、次回からはそんな恐怖に対応し、本番の災害時に「固まって」しまわない方法を考えて行きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月10日 (火)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル06】バーチャルフィールドワークをやってみよう

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


さて、今回はyoutube動画をご覧いただきながら、フィールドワークをバーチャル体験していただきたいと思います。身の回りの危険を知るとはどういうことか、動画の中から危険要素を探し出して見てください。

今回の動画は、敢えて詳しい場所は記しませんが、東京都内で建物の倒壊危険度、火災危険度が非常に高いとされる木造家屋密集地域、いわゆる「木密地域」とその周辺の映像を繋いだ、約6分間です。

本来ならば歩いてチェックするべきところですが、時間の都合もありますから、車で走りながら撮影しました。皆様ご自身がこの地域の住人になられたつもりで、大地震が起きた時と、その後の避難行動中にどのような危険があるのかをチェックしてみてください。

ポイントは、あなたがそれぞれの場所にいる時に大地震に襲われたら周りで何が起こるのか、そしてその時どのような行動をすべきなのか、そこで何ができて、何ができないのかを、実際の場面を想定して考えていただくことです。

同時に、大地震の際に非常に危険とされる地域がどんな様子なのかをご覧いただき、皆様のお近くに似たような場所が無いか、通勤・帰宅途上などに通ったりしていないかもお考えになってみてください。

今回は素の映像のみですが、次回、管理人の目でチェックしたテロップをかぶせた動画をお送りします。なお、動画の順番はランダムになっており、実際の避難経路の順番とは異なります。

それでは、トライしてみてください。

■Yotube動画へは、こちらから
http://youtu.be/RD-mEsS-Pk8


■このシリーズは、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月 9日 (月)

【防災の心理20】人は災害でどう死ぬのか

今回は「災害で死なないためにどうするか」というテーマについて、あなたの中に作るべきテンプレートの空白について考えます。そのために最も必要なのは、「人は災害でどのように死ぬのか」ということを知ることです。今回はかなり直接的な表現が多くなりますので、ご注意ください。

災害における死因を大きく二つに分けると、下記のようになるかと思います。なお、管理人は医学の専門家ではありませんので必ずしも正しくは無いかと思いますが、現実の災害から得られた内容を、管理人の考えで分類したものとご理解ください。

■主に体内の循環が不全となることによる死因
窒息死(胸部などの圧迫、溺水等)、失血死など。なお、災害死において一般に「圧死」と言われるものの大半が、胸部や腹部の圧迫による窒息死です。

■災害において上記の死因が起こる主な状況
【窒息死】:家具類の転倒、家屋の倒壊、土砂崩れ、土石流、津波・洪水等による溺水
【失血死】:ガラス片、壁材等落下物の衝突などによる重篤な外傷


■主に臓器などが正常に機能しなくなることによる死因
主要臓器の挫滅(潰れて損傷すること)、脱水症、低体温症、クラッシュ症候群、焼死、毒物中毒(有毒ガスなど)、感染症、外傷性ショックなど。なお、いわゆる「焼死」は、その前段階で一酸化炭素などの有毒ガスを吸入して中毒を起こす場合と、熱による直接的な機能損傷がありますが、いずれもこちらに含まれると考えます。

■災害において上記の死因が起こる主な状況
【主要臓器の挫滅】:家具類の転倒、家屋の倒壊、落下物、土砂崩れ、土石流
【脱水症】:家屋の倒壊等による長時間の閉じこめ
【低体温症】:家屋の倒壊等による長時間の閉じこめ、津波・洪水等での落水、寒冷地での保温不良
【クラッシュ症候群】:家具類の転倒、家屋の倒壊、土砂崩れ等による生き埋め
【焼死】:火災(特に家屋の倒壊等による閉じこめ後)
【毒物中毒】:家屋や工場等の火災による有毒ガス吸入
【感染症】:外傷の治療不備、避難生活中の衛生不良
【外傷性ショック】建物の倒壊や落下物の衝突による重篤な多発性外傷や短時間での大量出血など

実際の災害では、これら状況が複合することが多いのですが、発災後短時間で起こる状況とそれによる死因は、これらが大半となります。

死因の分類はともかく、それらが発生する状況に注目してください。発災時の居場所にも大きく左右されますが、ざっと見ても、家具類が転倒せず、家屋が倒壊せず、落下物に衝突しなければ、半分以上の原因は回避できるということがわかります。物理的にそれが防げなければ、最低限の生存空間が確保できる場所、もしくは落下物を回避できる場所への避難が、次善の策となります。つまり災害死、特に地震による死亡を防ぐためには、家屋(職場・学校等も含む)とその内部の対策及び、発災時の避難行動のシミュレーション及び訓練が、最優先課題であるこということです。

さらに津波、土砂崩れ、土石流、火災など「その場にいたら生き残れない」二次的状況からは、安全圏へ素早く避難しなければなりません。それができれば、災害死の原因の大半が回避できるわけです。そのためにも、まずは発災後に閉じこめられず、重傷も負っていないという「自分の意志で動ける」状況を目指さなければなりません。死ぬ死なない以前に、「動ければ、逃げられる」という当たり前のことが、災害から「生き残る」ための最優先対策であり、それを実現するための知識、行動、装備を空白としたテンプレートが、あなたの中に無ければならないのです。


多くの方にとっての防災情報とは、能動的に集めたものではなく、たまたまテレビで目にした、煽るような見出しに惹かれて手に取った書籍に書いてあった、出所も真偽もわからないネット記事から得られたような断片的な情報が、整理されずにぐちゃぐちゃのまま、頭の中に放り込まれているだけではないでしょうか。

その結果、対策をしようにも何から手をつけて良いかわからず、対策を進めている方も何が最優先かわからず、それが「本当に役に立つ」かどうか、自信が持てていないのではないでしょうか。しかし巷の情報がどうであろうと、その優先順位ははっきりしています。

まず何より、発災直後に「動ける状態でいること」、次に「動けたら、何をするかということ」、そして「その後を生き延びること」であり、それを実現する知識と備え必要です。あなたの災害対策は、災害の第一撃を乗り切ることが前提の、「その後を生き延びること」が中心になっていませんか?


優先順位を確かめたところで、災害のニュースを見るような第三者の視点から、改めてもう一歩踏み込んでいただきたいと思います。災害で死ぬということは、どれも凄まじい苦痛と恐怖を伴います。それを最大限の想像力を働かせて、感じてください。

東日本大震災では、犠牲者の死因の90%以上が「溺死」とされています。でもそれは最終的にそうであったということで、倒壊した建物や車内に閉じこめられたりしたまま、大津波の襲来を受けた人々も少なくなかったのです。阪神・淡路大震災では、公式に分類されているだけでも、自宅内死亡者の約12%、600人以上が「生存時焼死」とされています。どういうことかおわかりになりますか?転倒した家具に挟まれたまま、倒壊した自宅に閉じこめられたまま、火災で焼かれたのです。

そんな、語られることのない犠牲者の「声無き声」を、聴き取ってください。災害で失われた多くの命は、統計上の数字では無いのです。あなた自身、あなたの家族、あなたの大切な人の身の上に起こることだと、感じてください。その作業は、これまで述べたように心理的には大きな負担となります。しかし人は、怖くないことには本気になれません。だから、怖れてください。それも漠然とではなく、ひとつひとつ起こり得る状況を知って、ひとつひとつ「理性的に」怖れてください。

災害で死ぬということは、非常に多くの原因があり、知れば知るほど恐怖と不安が募るでしょう。でも、正しい知識と正しい対策によって、確実にその可能性が減らせるのです。それも、ほんの少しの知識と行動で、劇的なほどの効果を生むことも少なくありません。

例えば、家具の転倒対策をひとつしておけば、最大級の地震には最終的には耐えられないとしても、転倒するまでの時間的余裕が確実にできます。その間に家具の前から逃げられれば、それが厳然と生死を分けることもあるのです。それなど数百円の出費とわずかな作業で、「生き残れた」と言うことができるでしょう。

もちろん、運に左右される部分も大きいのが現実です。しかし、あなたに訪れた幸運を生かせるかどうか、そして不運を覆せるかどうかも、あなたの知識と備えで左右されるということもまた、現実なのです。


最後に、わかりやすくまとめましょう。管理人の考えでは、我々と同じ空間で生活する人の中で、災害に対して「最強」なのは、消防や警察のレスキュー隊員だと考えています。彼らは災害で起こることとその対処方法を知り、人間が死ぬ理由とその対処方法を知り、必要な装備を整え、十分な訓練を重ね、体力にも優れ、さらに実際の現場の経験も積み重ねています。

ですから我々一般人が災害から「生き残る」ために目指すべきは、彼らレスキュー隊員の能力に少しでも近づくことだと言っても良いでしょう。本来ならば「本当に役に立つ」防災情報を語り、テンプレートの空白を教えてくれるべきは、「学者」でも「専門家」でもなく彼らだと考えているのですが、様々な理由でそれは実現しないでしょう。せいぜい災害現場での体験談インタビューくらいで。

そこで当ブログとしては、レスキュー隊員の知識と技術を、普段の生活に応用できるような形で提示したいと考えています。例えば、レスキュー隊の油圧スプレッダー(歪んだドアなどをこじ開ける機器)の代わりに、バールとジャッキを装備するというような。


さておき、今回の記事で災害で人はどのように死ぬのかということが、おわかりいただけたかと思います。この知識が、「ならば死なないためにはどうするか」という、あなたの中のテンプレートの空白となることを願っています。そうなれば、必要な情報をあなた自らが引き寄せると同時に、「本当は役に立たない」情報を排除し、「生き残る」ための最短距離を行くことができるようになるでしょう。

ご意見、ご質問も歓迎します。コメント欄か管理人宛メールでどうぞ。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。


2014年6月 8日 (日)

【防災の心理19】テンプレートに必要なもの

災害から「生き残る」ための正しいテンプレートを、あなたの中に作るためには、どうしたら良いのでしょうか。そのためには、まず大前提となることがあります。それは「安定」です。

ことは交通や勉強とは違って生死に関わることですから、当然ながら本能的な恐怖に苛まれます。しかしその恐怖が強すぎると、「本当は役に立たない」枝葉末節の情報や、何の根拠も無い不良情報にばかり惹き寄せられてしまう、つまりテンプレートに間違った空白を作ってしまいます。

本能的な恐怖は、漠然としています。ただ「死にたくない、苦しみたくない、どうしたらいいのだろう」と。それを乗り越えて「安定」を得るためには、「恐怖の種類を知る」事が必要になります。例えば目的地へ向かう場合ならば、道を間違える、予期しない渋滞が起こる、事故を起こす、電車に乗り間違える、電車が遅れるなどが、あなたが望む目的達成を邪魔する「恐怖の種類」です。

それを知っていればこそ、ルートや迂回路をしっかり調べたり、時間に余裕を持つなどの対策をすることができるわけです。そして、完全では無いにしろ出来る対策があることを知り、そのやり方を考えるということが、「安定」に繋がります。これを本能から理性への転化と言っても良いでしょう。

災害から「生き残る」ための対策もこれと全く同じなのですが、やはり本能的恐怖が先に立ち、多くの場合「大地震→死ぬかもしれない」というレベルで止まっている方が多いのではないでしょうか。しかし問題はその→の部分で、そこで何が起きるか、それがあなたにどう影響するかを知らなければならないのです。それが、災害における「恐怖の種類」です。

まず「恐怖の種類」を知ることで、そこで何が必要かがわかって来ます。もちろん、恐怖が消えることはありません。でも「地震で死ぬのが怖い」から、例えば「家具に潰されるのが怖い」となった時に、本能を乗り越えた「理性的な恐怖」に変わっています。その時点で、あなたの中には「家具に潰されないためにはどうするか」というテンプレートの正しい空白ができているわけです。そしてそれは対策が見える恐怖であり、その対策を考えることで「安定」が得られるのです。


本能的恐怖を乗り越えて「安定」を得るためには、まず「恐怖の種類」を具体的に知らなければなりません。そうすれば対策の方向性、つまりテンプレートの空白が見えて来るということです。そしてそれに見合った情報を探し、知識をつけて対策を進めることが、さらに「安定」に繋がるという良循環になります。

あとは、その空白に正しい情報を探して流し込んでやるわけですが、「家具に潰されないにはどうするか」という空白には、間違っても「大地震のメカニズム」や「水と食料を備蓄せよ」とか、ましてや「○月○日に大地震が来る」とかの類の情報は入りません。自然に、家具の転倒対策情報が目に入るようになります。それが「あなたが正しい情報を引き寄せる」、つまり「情報を選択する」ということなのです。

余談ながら、その段階になったあなたは、おそらく苛立つでしょう。苛立たなければおかしいのです。巷には、「生き残る」ためにはあまりにも「本当に役に立つ」情報が少なく、一見役に立ちそうな情報も、実際にやってみると困難だったりします。そんなものが報道や商業ベースで堂々とばら撒かれているのです。

さておき、「生き残る」ためのテンプレートを作るには、もうひとつの困難があります。それは、災害時にあなたの生命を危険に晒す要素が、あまりに多いということです。次回は、心理とは少し離れて、テンプレートに盛り込むべき最優先要素である、「人は災害でどのように死ぬのか」について、具体的に考えます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年6月 7日 (土)

☆緊急再掲載☆豪雨の時にできること

■当記事は2013年6月29日掲載の過去記事です。一部加筆修正の上、緊急再掲載します。


関東地方を中心に、強い雨が続いています。最近の豪雨を受けて、他の「防災系」ブログでも豪雨に関する記事が多くなっているようですが、当ブログの「豪雨災害に警戒を!」とは、大抵は内容が異なります。多くの場合決定的に違うのが、下記のような内容があるか無いかということです。

■斜面やその下から、泥水が噴き出す。
■沢や川の水が濁る。
■沢や川の水が減ったり、水がなくなる。
■斜面や崖から、小石や土くれが落ち始める。
■斜面に亀裂が入る。
■山鳴りがする。
■山からミシッ、バシッというような音が聞こえる(地すべりによって、木の根が切れる音)
■生臭いような、不快な匂いがする(これはあまり多くありません)

表現に多少の違いはあるものの、これは豪雨や地震の直後などに山崩れや土石流が発生する兆候であり、知識としてはとても重要なものです。もちろん当ブログでも過去に何度も採り上げているものの、実のところ、豪雨災害に関しては、それほど優先度を高く考えていません。なぜなら、「生き残る」ためには、これを知る以前に知っておかなければならないこと、やらなければならないことががあるからで、それが先日の「豪雨災害に警戒を!」で書いたことです。

管理人に言わせれば、豪雨災害を警戒せよと言いながら上記のような「知識」を最優先で述べることなど、一見すると役に立ちそうに思えるものの、実は机上の空論に近いものです。過去から何度も繰り返されて来た「アドバイス」ですが、その知識だけが実際に命を救ったことがあるのでしょうか?


実際の状況を考えて見てください。あなたは豪雨災害の危険地帯で、家の中にいます。外は既に激しい雨です。家の裏には山があり、崩れるかもしれませんし、近くの川が氾濫したり、土石流が襲ってくるかもしれません。そんな状況で、上記のような状況を、どれだけ察知できますか?

家の窓から山の斜面、沢や川が見えることなどそうは無いでしょうし、豪雨で視界は悪化しています。夜間なら全く無理。激しい雨の音で山からの音はほとんど聞こえません。豪雨の中を頻繁にパトロールするわけでもなし、仮にやったとしても、自宅に危険を及ぼす全ての状況を把握するのは不可能です。つまり、知識を持っていても、現実にはそれを察知する手段があまり無いのです。

実際には裏山から小石などが落ち始め、それが建物に当たる音で初めて危険を察知するくらいで、そうなったらばもう一刻の猶予もありません。事実上、手遅れと言っても良い状況です。そして、避難するにも外は豪雨で、車での避難は冠水などで不可能のこともあり、場合によってはそれが命取りになることさえあります。

ですから、そうならない前にハザードマップなどで自分の居場所の危険を知り、「9割は無駄足」の覚悟で、早めに安全な場所へ避難するしかないのです。そして、危険地帯で待機する場合には、土砂崩れや土石流の直撃を受ける一階を避けることなどが、優先されるべきアドバイスなのです。


通り一遍の知識だけで命が守れるのなら苦労はしません。最近の豪雨でも山崩れによって一階で土砂に呑まれる犠牲者が出てしまいましたが、敢えて手前味噌で傲慢な書き方をしましょう。その犠牲者が、当ブログのアドバイスと他のブログやメディアなどのアドバイス、どちらを守った方が生き残れる確率が高かったか、考えてみてください。管理人は何も自慢したいのではなく、「本当は役に立たない情報」が大手を振っていることを危惧しているのです。

多くの人が言うことが、必ずしも正しいことではありません。

■関連過去記事(リンク先の記事は、2012年7月と2013年6月の掲載です)
【緊急特集】豪雨から生き残れ【1】
【緊急特集】豪雨から生き残れ【2】
【緊急特集】豪雨から生き残れ【3】
豪雨災害に警戒を!


【再掲載に際しての追記】
この記事を掲載した当時は、メディアなどで「静かなうちに早めの避難を」と呼びかけることはほとんどありませんでしたが、その後「明るいうち、雨がひどくならないうちに避難を」という呼びかけが出て来ました。当ブログの記事が影響与えたとは思っていませんが、それまで「豪雨や土砂災害に警戒を」とだけ繰り返していたのは、一体なんだったのでしょうか。実際にはできもしないことがわかっていながら、とりあえず言っておけば「責任」は果たせるということだったのでしょうか。世間の「防災情報」には、このような「注意しろ」だの「警戒しろ」だの、現実的なやりかたを示さずに、投げっぱなしの情報があまりにも多いのです。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年6月 6日 (金)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル05】フィールドワークに勝るものなし

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回から「家の周りの危険」について考えます。

大地震が起きて、あなたはなんとか家から脱出しました。または、近所にいる時に、大地震に襲われました。

その時、あなたはどのようなアクションをしなければならないでしょうか。まず最初に何をするか、そして、どちらの方向に、どのように逃げるか。特に揺れている最中に屋外に出たら、あなたの身体に危険を及ぼすものは、なんでしょうか。

過去の例を見てみましょう。1978年の宮城県沖地震では、死者28人の約64%である18人が、揺れている最中に、倒壊したブロック塀や石塀の下敷きになったことによる死亡でした。
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画像はイメージですが、同様の原因による負傷者は数倍以上の数になります。

1995年の阪神・淡路大震災では、道路沿いのビルが数多く倒壊したり、外壁やガラスが大量に落下したりしました。
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早朝のため人通りがごく少なかったために、幸いにしてほとんど人的被害はありませんでしたが、これが日中ならば、恐るべき結果になっていたでしょう。

2005年の福岡西方沖地震では、福岡最大の繁華街である天神地区で、ビルのガラスが大量に落下しました。
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こちらも人的被害はありませんでしたが、これも単なる幸運に過ぎません。

そして東日本大震災でも、津波のために地震直後の被害の多くは把握されていませんが、同様のケースが少なく無かったのは間違いありません。そして津波によって気仙沼市などで発生した大火災は、海岸線の街を広範囲に渡って焼き尽くしました。
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1923年の関東大震災において、死者約11万人のうち約9万人が火災による犠牲だったという事実は、決して昔話ではありません。当時より耐火、耐震性が向上したとえはいえ、街の規模はあの当時の数倍以上に膨れ上がっているのです。それは、危険要素が増えたことと同時に、「安全圏への逃げ道が長くなる」ということも意味しています。

近年は建物や壁などの耐震性を上げる取り組みが進んではいますが、街中にはいまだ多くの危険が存在します。想定される首都圏直下型地震や南海トラフ地震が最大級で発生した場合、さらに大火災や爆発による巨大な危険が加わることが予想されます。このように、大地震発生直後から少なく見積もっても48時間程度、状況によってはそれ以上の間、地震(余震)、火災、場所によっては津波や土砂災害の大きな危険が続くのです。

かつて、こんな地震に関するこんな防災標語がありました。
「1分過ぎたらもう安心」
一つの震源で起きる単発の地震ならば、それはほぼ正しいものです。そして、多くの場合はその通りです。しかし、東日本大震災において、複数震源が短時間で連鎖するという現実をつきつけられた今、その発想は捨てなければなりません。揺れが完全に収まるまでは安心してはなりませんし、特に海沿いや大都市圏では、さらに大きな危険が連鎖的に発生するのです。

そのような現実を踏まえ、大地震の第一撃を「生き残る」ために、さらにその後しばらくの間を乗り切るためのアクションを継続しなければなりません。なんとなく、避難所に入ればもう大丈夫くらいに思っていませんか?しかし状況は流動的です。あなたの居場所でどのような危険が発生するかは、完全に予測しきれるものではありません。

そこで大きな差になってくるのが、周囲の危険要素を事前に知っているかどうか、ということです。自分の居場所で何が起こる可能性があるかを知り、その対処法をシミュレーションしておくことが、「生き残る」可能性を大きく向上させます。

地震の際の大きな危険要素である地盤の揺れやすさ、津波到達範囲、土砂災害危険地帯、大火災発生危険地帯などの情報は、ハザードマップや防災本を見れば把握できます。しかし問題は「今そこにある危機」なのです。いくら揺れにくい場所だったとしても、古い壁がひとつ倒れ、あなたがそこにいたら終わりです。あなたに危害を加えるのは、マクロ情報ではわからない、あなたの「周囲3m」の危険なのです。

そんな危険を知る方法は、あなた自身がフィールドワークを行うしかありません。自分の足で歩き、自分の目で見て、自分の頭で考えるのです。

ここでは「家の周りの危険」と便宜的に言っていますが、もちろん職場、学校、よく行く場所、そして初めて行く場所でも、常に「防災の目」で周囲を見ることを習慣にしなければなりません。それが、あなたが「命の1秒」を稼ぎ出すための近道であることに疑いはありません。

次回は、その具体的なフィールドワークの方法に入ります。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年6月 5日 (木)

ありがとう!70万PV(くらい)

微妙なタイトルですw

おかげ様で、本日6月5日中にアクセスカウンターが60万に到達することが確実になりました。しかしこれが全てではなく、過去の集計システムではアクセスカウンターに反映されていなかった携帯電話からの累計アクセスが、約10万PVほど存在するのでした。

というわけで、合わせて70万PV(くらい)に到達という、微妙なお知らせをさせていただきます。スタートは2012年1月ですから、約2年と4か月で、ここまで来ることができました。

細かい数字はともかく、いつも当ブログをご愛読いただいている皆様に、心から感謝致します。今後とも、皆様のご期待にお応えできるような記事をお送りできるよう、精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。


当記事は通算769本目となりますが、これまでそれなりの量の情報をお送りしてきました。是非、過去記事もご覧ください。自然災害に関するキーワードで検索していただければ、大抵のケースにおける対処法を、過去記事でお送りしております。

最近は「竜巻」、「熱中症」での検索ヒットが急上昇しておりますが、特に竜巻に関しては、対処法を徹底的にまとめています。過去記事【竜巻から生き残れ!】シリーズを是非ご覧ください。

改めまして、今後ともよろしくお願いいたします。


「生き残れ。Annex」管理人 てば拝


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

☆再掲載☆普段持ち歩く防災グッズ【14・最終回】

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


普段持ち歩く防災グッズについて、少し補足させていただきます。

このシリーズは、自然災害、特に地震・津波災害時の主に外的要因から「生き残る」ためのグッズという観点で進めてきましたが、その他の留意点で、特に大切なことを記しておきます。

まず、これは該当する方のみなのですが、普段服用している薬の予備を、最低3日分は常時持ち歩くことが必要です。理由は言うまでもありませんね。

さらに、処方箋のコピーを持ち歩くと安心でしょう。大災害時は、出先で薬の補充ができる可能性は低くなりますが、その機会があっても薬の正確な内容がわからないと、せっかくのチャンスを失います。基本的には医師から投薬の指示が無いと、薬局は薬を出しません。しかし受診したくでもできない非常時には、なんとしても薬をもらわないとなりません。その際に薬の正確な種類がわからなければ、これは問題外ということになります。

大災害で重症者が多数出ているような状況では、病院では「トリアージ」が行われ、軽症や慢性疾患では受診できない可能性が大きくなります。また、人工透析など継続的な加療が必要な方は、かかりつけ以外にも必要な治療が受けられる病院をいくつか確認し、その記録を持ち歩く必要があります。

さらに、市販薬も必要に応じて持ち歩くこともあるかと思いますが、基本的には発災直後の混乱時において体調を維持するためものとなりますので、鎮痛解熱薬(バファリンなど)があると良いかと思います。他はそれぞれの必要応じてアレンジしてみてください。


もうひとつは情報の問題です。最近は連絡先情報を携帯電話、スマートホン「だけ」に記録している方が多いと思いますが、それを失ったり電源が落ちた場合、例えば家族の携帯電話に、記憶だけで電話やメールができますか?友人や親戚ともなれば、まず連絡先は記憶していませんよね。

非常時に連絡が必要な先は、電子機器に頼り切りにせずにメモを取り、財布など必ず持っているものの中に入れておきましょう。記憶に自信がある方でも、非常時の混乱の中では、なかなか思い出せないことも良くありますので、やはりバックアップが必要だと思います。

前述の薬や病院情報などももちろん、緊急時に必要な情報は皆、メモを持ち歩くようにしましょう。手帳などに書いておくのも方法のひとつですが、手帳を入れたバッグごと失うという可能性も大きいですから、やはり常時身に付けている財布等の中に、最低限の情報メモは必要かと思います。何しろ、非常時に一番強いのは、最もアナログな方法なのです。

これで、再掲載版「普段持ち歩く防災グッズ」シリーズを終わりにします。


■当記事は、カテゴリ【防災用備品】です。

2014年6月 3日 (火)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル04】危険を減らすアクションとは?

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


前回は、家の中の「小さな危険」について、典型的な例を列挙しました。それを参考に、皆様それぞれのご家庭の事情によって、そのほかにどんな危険があるか、考えてみてください。それぞれは生命に直接関わる危険とは言えなくても、さらに大きな危険へ連鎖する可能性を秘めています。ですから、事前にできるだけ排除しておく必要があります。とは言え、すべての危険を完全に排除、つまりどんな揺れが来ても何も起きない対策など、全く不可能です。気にし出したら、それこそ夜も眠れません。

では、どうするか。そんな「小さな危険」への対策は、二種類に分けられます。ひとつめは、物理的な対策です。前回の事例の中には、移動・転倒対策が可能なものの、実際にはあまり対策されていないものも含まれています。例え電子レンジ、機械式米びつ、テレビとテレビ台、家具のガラス扉、壁掛け時計、本棚の中の本、ベッド、パソコンなどです。

これらは、市販されている対策器具、具体的には衝撃吸収ジェルマット、移動防止器具、飛散防止フィルム、落下防止ワイヤーなどを使うことで、その危険をかなり抑えることができます。要は、完全に危険を無くそうとするのではなく「その近くから離れる間だけ」、危険な状態にならなければ良いくらいに考えます。あらゆる状況が想定される災害対策においては、完全主義は通用しないこともあると、多少は開き直りも必要かと思います。

大切なのは、より危険なもの、例えば高い場所にありがちで重量のある電子レンジ、普段の居場所に近い家具のガラスなどから対策したり、最も守らなければならない対象、例えばお子さんの居場所周りから始めるなどの、「優先順位」を考えた上での対策です。

ふたつめは、むしろこちらの方が大切であり、当シリーズのテーマでもある「行動」、つまりアクションです。このアクションも、二種類に分けられます。

まずひとつめのアクションは、家の中で「その時」の行動を考え、実践することです。揺れが来たらどこへ移動するか、移動できなかったら、その場でどうするか。その時、周りにある危険は何か、どうすればその危険を避けられるか、家の各場所から脱出口、玄関や庭へ最短何秒で移動できるかなどをシミュレーションし、実際にやってみてください。

これは、家族全員でやっておかなければなりません。お子さんも、幼稚園の年長さんくらいになれば、その瞬間に自分で身を守る行動ができるはずです。それを教え、実際にやってみるのです。そしてもし小さな地震が来たら、ある意味でチャンスです。大したこと無いと無視せず、事前に取り決めた行動、例えばすぐに玄関に移動するなどの行動を、実際にやってみます。

小さいとは言え、実際の地震の緊張感の中で何ができるか、何ができそうも無いかを、自分自身で知っておくことが大切なのです。場合によっては、東日本大震災のように小さな地震から大きな地震へ連鎖することもありますから、小さな地震も最初から甘く見てはいけません。

このようなアクションは、実は「その時」に完全に同じ行動ができることだけを目的にしているのではありません。震度6強レベル以上では、屈強な男性でも揺れの最中に移動するのは困難ですし、恐怖で足がすくんでしまう人も多いでしょう。東日本大震災の時、関東では最大震度5強になりましたが、皆様はその時、どうだったでしょうか。

でもそんな時、普段のアクションの違いが顕著に出ます。事前に考え、行動しておくことで、何もしていない場合に比べて少しでも「考える」余裕が生まれ、一瞬の判断で危険を避けられる可能性が確実に大きくなるのです。これは理屈ではなく、間違いの無い事実に裏打ちされていることです。


もうひとつのアクションは、危険を事前に摘み取る行動です。前回のリストに挙げた危険、例えばキッチンでは食器を洗ったらすぐに収納すればばらまかれる危険は無くなり、使用中の包丁は調理台の上ではなく、シンクの中に置けば、揺れで飛び出すことはなくなります。トイレの天井棚に置くのはトイレットペーパーなど軽いものだけにしたり、水タンクのふたは目立たない場所を一カ所でも粘着テープて留めておけば、いきなり飛ぶこともありません。

家の各場所から玄関などの脱出口への「避難経路」からはつまづきそうなものや、踏んで怪我をしそうなものを取り除いておきます。特に石油ストーブは、避難経路からは外れた場所におくべきです。家具の上からは重量のあるものを下ろし、押し入れの衣装ケースは下段に移し、本棚は重い本を下段に集めます。そのような過程では、どうしても「防災のための断捨離」が必要になりますから、思い切りも必要でしょう。

このようなちょっとした細かいアクションを積み重ねることで、前回挙げたリストの大半は、その危険度を大きく下げることができます。実際の危険の種類とアクションは、それぞれのご家庭の事情によって様々に変わるわけですが、まず危険の内容を良く知ることが大前提であり、それぞれの事情に合わせてご自分で考え、行動に移すこと。これが物理的な危険を減らすだけでなく、「その時」の行動を変えるのです。

最後に、実は前回のリストに入っていない部分について。それは「玄関」です。玄関には、一般に身体に危険を及ぼすものはあまりありません。すぐに脱出できる体制を取るためにも、地震を感じたらまず玄関へ行き、ドアを開けて待機することを習慣にしてください。アパートやワンルームマンションなどでも、玄関スペースは脱出への最短距離であることに変わりありませんから、まずは地震を感じたら玄関へ移動を基本とし、その経路の危険を摘み取って行くわけです。

面倒なことも多いのですが、大災害から「生き残る」ことにどこまで真剣になれるか、それにかかっています。このシリーズでは、具体的な危険排除の方法より、その考え方と実際の行動を中心に考えて行きますので、具体的な対策は過去記事をご覧ください。

次回からは、「家の周りの危険」について考えます。


■このシリーズは、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

【防災の心理18】テンプレートを作ろう

どろどろの生コンクリートで構造物を作るためには、型枠が必要です。木材や鉄板で構造物の形を作り、そこに生コンクリートを流し込んで固めることで、頑強な構造物ができます。ビジネス文書などを書くときは、テンプレートがあると便利です。定型の文書に必要な内容を記入するだけで、わかりやすい文書が素早くできます。

いきなりなんだと思われたでしょうが、これらは、実は効果的に「知る」という行動と似通ったことです。前出した交通や勉強のための情報を集める時など、あなたの中には既に型枠やテンプレートが存在しています。交通ならば目的地までの道路名や距離、路線名や駅名が空白になったテンプレートが、勉強ならば、自分の弱点という情報を前提に、それを補強する方法が空白になったテンプレートがあるから、その空白に必要な情報を流し込めば良いのです。

つまり型枠やテンプレートとは、必要なものが入るべき空白が決められた「道」であり、さらに空白に入るべきものの種類や形も決まってます。ですからそれに見合う種類や形のものを選び、それを流し込むことで、簡単に強固な構造や知識を構築することができるわけです。

しかし防災の世界、こと個人が災害から「生き残る」ための知識を構築するためには、そんな型枠やテンプレートが事実上存在しません。管理人は良く「体系的な」という表現を使うのですが、災害から「生き残る」ための効果的な体系が存在しないのです。

例えば交通や勉強のためのテンプレートは、日々の経験や研究から生まれたものです。しかし世間には「防災学」と言えるような、関係する各分野を横断した総合的な研究は存在せず、災害経験談は多いものの、体系的に纏められてもいません。そして何より「生き残る」ために最も必要な経験談、すなわち生き残ることに失敗した経験談は、誰にも語れないのです。

結局のところ、巷に溢れる防災情報は、それぞれが専門分野や得意分野の情報を断片的に語り、災害経験談はメディアなどが恣意的にピックアップした内容、それも「一般ウケ」しやすく「当たり障りの無い」内容ばかりがばら撒かれているだけと言っても過言では無いでしょう。つまり、「生き残る」知識のためのテンプレートが無い上に、流し込むべき情報の種類も形もバラバラで、さらに言えば質の悪い、判断を狂わせるような情報も山ほどある。これではテンプレートどころか、小さくてボロボロのかごの中に大量のみかんを詰め込んだようなものです。

一見、外観はみんな似通っていても、中には固いもの酸っぱいものや腐ったものもある。でも、それがどこにあるかわからない。かごからこぼれ落ちたみかんが一番甘いものであっても、それにも気付かない。下の方から甘いみかんを探し出すこともできない。仕方ないから、上の方にある見栄えの良いみかんだけ食べて、それが仮に酸っぱくても、とりあえず満足しているような。

型枠に例えれば、構造的に繋がっていない、あちこちに穴が開いている、おまけにぐらぐらするような型枠の中に、セメントと水と骨材をバラバラに、しかも適当な場所から流し込んでいるようなもので、出来上がった構造は形も悪ければ強度も無いというようなもの。

手前味噌ながら、管理人がこのブログを始めたのは、そんなバラバラの情報の中から「本当に役に立つ」ものを集め、できるだけ体系的に提示したい、しなければならないという思いからです。みかんを一列に並べ、腐ったものを排除したい。そしてそれぞれの甘さ、つまり先に食べるべき優先順位も示したい。力学的に強固な形状の型枠の中に、良く練られた良質の生コンクリートだけを流し込みたい、ということです。それが成功しているかどうかは、過去750本を超える記事から、読者の皆様にご判断頂くしかありませんが。

さておき、そんな状況の中で効果的な情報を「知る」ためには、まずはあなたの中に「生き残る」ためのテンプレートを作らなければなりません。あなたの本能的な「怖れ」を直視し、死を怖れる本能の妨害を乗り越えて、必要な情報を流し込むための「正しい空白」を作るのです。

長くなりましたので、次回へ続きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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