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2014年6月11日 (水)

【防災の心理21】もうひとつの「怖さ」とは

今回からは、もうひとつの「怖さ」について考えます。

当シリーズでは、これまで主に死に対する本能的恐怖と、その影響について述べて来ましたが、もうひとつ、考えておかなければならない恐怖があります。本能的恐怖は、生きている限り永久的(parmanent)に続くのに対し、もうひとつの恐怖は、何か危機に直面した場合に一時的(temporary)に感じるものですので、ここでは「一時的恐怖」と呼ぶことにします。

危機に直面した際、人間は緊張します。緊張は心拍数を増やして血圧を上げ、アドレナリンの分泌を促します。それは危機から脱出するために思考と肉体を一気に興奮状態にする、本能的反応です。つまり、危機から逃げたり戦ったりするための準備が、自動的に行われるのです。しかし危機があるレベルを超えると、緊張は恐怖に転化して思考は停滞し、行動は阻害されます。最悪の場合、「頭の中は真っ白で、身体が固まって」しまうのです。

大災害からの緊急避難時にそんな状態になってしまったら、「生き残る」確率を大きく下げることになりますから、出来る限り「固まって」しまうのを避けなければなりません。それは、どうしたら良いのでしょうか。


静岡県の富士急ハイランド遊園地に、とにかく怖いと有名な「お化け屋敷」があります。管理人は二回ほど行ったことがありますが、大体パターンがわかった二回目でもとにかく怖い(もちろん細かい演出は随時変えられています)。病院の廃墟を模した建物の中を1km近く進むのですが、恐怖のあまり途中の脱出路から逃げ出してしまう人も少なくないのです。管理人はなんとか最後まで行けましたがw

そんな「お化け屋敷」とは「一時的恐怖」を逆手に取ったアトラクションですから、その手法を分析することで、恐怖に対応する方法も見えて来るはずです。あまり詳しく書いてネタバレになってもいけませんが、ここではその「お化け屋敷」を例に、「一時的恐怖」のメカニズムと、その対処法について考えて見ます。


まず最初に、廃病院という「恐怖の記号」が与えられます。病院と死のイメージは切り離せず、それだけで本能的恐怖が掻き立てられます。それが廃墟ですから、つまり中には「病院に本来いるべき人」は誰もいない、何かあっても助けが来ないという孤立感を掻き立て、誰かに頼りたくなる気持ちから切り離されます。「赤信号をみんなで渡れない」という、「群集心理からの遮断」です。

さらに、死のイメージは有象無象の「得体の知れないもの」の存在を感じさせます。恐怖の内容を具体的に「知る」ことができないのです。ここまででも、今まで述べて来た、本能的に感じる「怖さ」を、見事に逆手に取られているわけです。実は、入る前にもうひとつ恐怖を植え付けられる仕掛けがあるのですが、それは後で述べることにします。


さて、中に入りましょう。内部は、打ち捨てられてから何年も経つような雰囲気が見事に再現されています。しかもリアルな備品類が乱雑に散らばっていて、打ち捨てられる際に何か恐るべき事が起きて、皆が一斉に逃げ出したことを想像させます。そして当然ながら、かなり暗いのです。

暗い、つまり視覚が制限されて情報が得られないということだけで、人間は本能的恐怖を感じます。さらに、暗闇の中に「得体の知れないもの」がいろいろ配置されていて、近づくのもおっかなびっくりです。通路は曲がりくねり、先の見通しは効きません。カーテンやドアで仕切られた場所も多く、その先に何があるのか、何が起こるのかと、びくびくしながら進まなければなりません。どれも「情報の遮断」という、恐怖の演出です。

そしてここのハイライトが、妙な言い方ですが「生身のお化け」が現れること。人間が演じていると言えば身も蓋も無いのですが、これがとにかく怖い。この辺りから出そうだと身構えた所からは現れず、見事に裏をかいて来ます。お化けが怖いというより、猛烈に驚かされるのです。つまり、「想定外」の演出による恐怖です。

そして、これはかなりネタバレになるのですが、たっぷりの恐怖を味わわされた客も、実は演出の一部に利用されてしまうのです。少人数に分かれて入場する人気アトラクションですから、会場前には行列が出来ています。そこには中から聞こえてくる奇声や客の悲鳴がスピーカーで流されていて、待っている間にも、中で一体何が起こっているのだと、嫌が応にも不安と恐怖を掻き立てられています。


一方、経路の最後まで辿りついた客には、詳しいことは書きませんが、「最恐の」仕掛けが用意されています。そこで、大抵の人は悲鳴を上げて駆け出してしまうのです。管理人もそうでした。しかし、客にはそこが経路の最後だとはわかりません。とにかくここから逃げなければと、ダッシュして手近なカーテンを跳ねのけると・・・いきなり屋外に出て、目の前には入場待ち行列が。いい大人が悲鳴を上げて駆け出て来る姿を、入場待ちの客に晒されるのです。

これはもう「やられた!」と苦笑いするしかありませんが、これとて、絶妙な演出です。入場待ちの間に中の様子を想像して不安になっている客の前に、悲鳴を上げた客が次々に駆けだして来るという、これは「恐怖の伝播」を狙った演出です。これが本当の災害時などに起こると、集団パニックを誘発することもあるわけです。

若干余談ながら、ここにはもうひとつの仕掛けがあったことに、管理人は後で気づきました。出口に通じる最後の廊下は、それまでの通路より広かったのです。他にも廊下はあり、一見そこが経路の終わりだとはわかりません。しかしそこで「最恐の」事態が起きた時、人は無意識に最も広い、つまり移動しやすい経路を選ぶという心理を、見事に逆手に取られていたのです。

その広い廊下には何も障害物が無く、とにかく最速で逃げられる方向だと誰もが思うようになっていて、その距離も絶妙。全力で走って、ぎりぎりで危機から逃れられると感じさせておいて、そこがいきなり終点、しかも入場待ちの客の前というわけです。この動線構成は、まさに見事でした。

そんな「一時的恐怖」を演出する数々のテクニックから、次回からはそんな恐怖に対応し、本番の災害時に「固まって」しまわない方法を考えて行きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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