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2014年8月16日 (土)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル21】胎児のようになれ!

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回は、満員の通勤電車の中で大地震に遭遇した場合の対処方法について考えます。

大前提として、その時の安全性は何両目に乗っているか、車両内のどこに乗っているかに大きく左右されますが、それについては後述します。

まず基本は、立っている場合にはできるだけつり革や手すりにつかまることです。地震の激しい揺れと非常ブレーキの急減速程度までならば、人の圧力で手をふりほどかれる可能性は高いものの、それでもある程度までは身体を保持できるでしょう。

普段の満員電車でも、ちょっときつめのブレーキで乗客がドドドっと前方に押し寄せることがありますが、高速からの非常ブレーキの減速度はあれをかなり上回ります。結果的に手をふりほどかれるにしても、できるだけ長い時間、身体を保持する努力をすることです。

非常ブレーキ程度の減速度ならば、『人のなだれ』も致命的な圧力になることは無いでしょう。つかまる場所が無い場合は、両腕を胸の前に強く引き寄せて、こぶしを握ってぐっと力を入れます。これで、胸部が直接圧迫されることを防ぎます。転びそうになっても、上方以外に腕を伸ばしてはいけません。人に挟まれて、へし折られる可能性があります。


電車が脱線した場合は、さらに強烈な減速ショックに加え、たて方向の衝撃が加わります。車体が飛び跳ねるように暴れるのです。その段階ではほぼ確実につかまった手をふりほどかれ、さらに身体が飛び上がって、前方に向かって『吹っ飛ばされる』可能性が高くなります。満員の乗客は、強烈に圧縮されます。

その状態から、最悪の場合は車体が転覆したり、どこかに衝突する可能性があります。そうなると、確実に身を守る方法はありません。できることは、致命的な衝撃から少しでも身を守る可能性を高めることだけです。


107名が死亡したJR福知山線脱線転覆事故で、マンションの一階に横転しながら突っ込んだ一両目に乗っていて生還した方の手記によれば、横転した瞬間の車内は『洗濯機の中のようだった』とのこと。つまり人がバラバラと舞い上がり、飛ばされ、かき回されたのです。

地震で通勤電車が脱線した場合は、100km/h以上で横転したあの事故ほどの状態にはならないと思われますが、満員の乗客がなだれのように崩れ落ち、のし掛かって来るでしょう。その状態で、自分の身体の位置や衝突を意識してコントロールすることは、全く不可能です。

余談ながら、そうなったら『頭を打たないように気をつけろ』とか寝言を言っている“防災のプロ”がいるのですが、それについては別に記事書きますね。

では、そこでできることは何か。管理人が考えるポイントは二つ。『遠心力』と『重心』です。


人体の重心は腰の辺りですが、そこから一番遠い場所に、重い頭が乗っています。ですから人体が吹っ飛ばされると腰を中心に回転して頭がむちを打つようように叩きつけられ、頭と首に大きな衝撃が加わります。さらにその状態では、意識して力を入れていないと、遠心力で手足が伸びてしまいます。そこまで行かなくても、減速ショックが加わると重い頭が慣性力でいちばん大きく振り回されるわけです。

もうひとつは車体の重心。鉄道車両の重心は、大ざっぱに言えば床の辺りです。つまり床を回転の中心にして揺れ、横転するのです。

そして前記事で述べた通り、人体で一番断面積が大きく、圧迫されると窒息に至るのは胸の部分です。

それらのことから管理人が導き出した耐衝撃姿勢は以下の通り。本来なら図解したいのですが、絵心が無いもので文章で表現することをお許しください。

その姿勢を一言で表現するなら、ちょっと違うけれど「胎児のようになれ」ということでしょうか。
■両手のこぶしを頭の両側につけて、腕に力を入れて身体に密着させる。
■首を前に曲げて思い切り縮め、力を入れる。
■両足を揃え、膝を曲げて重心を落とす。(感覚的には身長を50cm縮める感じ)
■息を大きく吸って止め、全身の筋肉を緊張させる。

両腕で頭の側面をガードし、首に力を入れてむち打ち状態を防ぎ、身体の重心を車体の重心に近づけて横回転の遠心力を弱め、減速ショックで重い頭が振り回される慣性力も弱めるのです。手足を縮めて緊張させることで、伸びた手足が挟まれて折られる可能性も減らせます。

さらに胸の位置を下げることで、乗客の圧力による胸への圧迫を弱めます。これは、スシ詰めの電車でもランドセルを背負った小学生が乗っていられるのと同じことです。下半身の高さは、実はかなり余裕があります。人の圧力で重心を下げられない場合は、上半身だけでもこの姿勢を取るべきです。

その状態で電車が止まれば良し、吹っ飛ばされてどこかに衝突したり、人のなだれにのし掛かられたりしても、致命的な怪我を負う可能性を大きく減らせるはずです。

なお、この姿勢は軍用パラシュート降下の着地時の姿勢(軍用は民間用より高速で着地するので、着地と同時にこのような姿勢で転がって衝撃を逃がさないと足が折れます)や、オートバイで転倒した時に、最初にとるべき姿勢に近いものです。

管理人はオートバイに乗りますが、かつてはロードレースやオフロードレースもやっていまして、こんな姿勢で何度も地面に叩きつけられた経験があります。その経験からしても、有効な姿勢だと考えます。つまり、管理人なら迷わずこの姿勢を取ります。


しかしこの姿勢にすぐに移行するためには、普段から意識していないとなかなか難しいものがあります。オートバイの初心者が転倒すると、つい地面に腕を伸ばして身体を支えようとしてしまうことがありますが、もちろん何の効果も無くて、あっさりと腕を折ってしまいます。

交通事故のような凄まじい衝撃の中では、人間の力など全く無いに等しいのです。ですから、吹っ飛ばされることを前提として、少しでも衝撃を減らすことを普段から意識していなければなりません。なのに『頭を打たないように気をつけろ』とかお気楽なことを言う“プロ”もいるからやりきれない。カネ払って話聞いて、そんな出来もしないこと言われたらどうします?


なお、ここではスシ詰めの電車内を想定していますが、もし空いている電車内で大地震に遭遇し、脱線転覆しそうだと判断したら、『両腕で頭を守りながら床に伏せる』、これに尽きます。まずは床に膝をついて重心を下げ、脱線すると判断したら、可能ならば進行方向と逆方向に身体を投げ出すのです。これは椅子に座っている時でも同じです。

最後にもうひとつ、“お笑いプロ”(お笑いのプロじゃない)の話。腕で頭を守るときには、動脈を切らないように手首の手のひら側(脈拍を取る部分)を内側に向けろと、テレビでしたり顔で言っていた“防災のプロ”がいましたが、どうやったら外側向けられるか教えて欲しいw。これなど、『動脈を守る』というもっともらしい自分のアイデアを言いたいがために、必要の無い“指導”をしているだけですね。おカネもらうには、そういうことも必要なんですか?ねえYさんw

まあ、こんなのばかりじゃ、防災屋はいつまで経っても尊敬どころか信用もされませんな、などとぼやきつつ、次回は、電車のどこに乗るべきかについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

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