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2014年8月

2014年8月31日 (日)

【広島土砂災害】あなたはRedzoneにいないか?

8月20日に発生した広島市の土砂災害現場では、未だ本格的な復旧作業にも手が付けられない状態で、長期化の様相を呈しています。被災者の皆様が一日も早く元の生活に戻れるようお祈りすると共に、微力ながらお手伝いさせていただいてます。

広島では、強い積乱雲が連続的に発生する『バックビルディング現象』によって記録的な豪雨が長時間続いたことと、崩れやすい『まさ土』という土質という条件により、未曾有の巨大災害へ発展してしまいました。

しかし気象と土質という条件を除いてみても、同じような条件の場所は日本全国至る場所に存在します。背後に山がある集落や住宅地です。そのような場所で土石流や土砂崩れ、地すべりが起きれば、高い確率でその下の建物に被害が及びます。


土砂災害で最も破壊力が大きく、被害範囲が大きくなるのは土石流です。大量の水が泥土、岩石、樹木を巻き込んで一気に流れ下る破壊力は凄まじく、しかも流動性が高いので、遠くまで被害を及ぼします。

土石流の場合、流水がある谷の出口から角度30度以内が最も危険(Redzone)で、角度60度以内に被害が及ぶ可能性が高いとされます(Yellowzone)。これは土石流の規模、周囲の地形や建物の配置などでも左右されますが、過去の例を見ても、曲がった谷などの特殊な地形で無い限り、この範囲の危険性が高いと言うことができます。


今回の広島で最も大規模な土石流が発生した現場に、それを重ねてみました。左は被災前の現場、右は被災後です。被災前の画像には、谷から流れ出していた川を赤い線で記しました。
14082005

被災後の画像を見ると、この場合でも家ごと押し流されるような重大な被害はRedzoneに集中する一方、一階部分に土砂が流入するような被害は、Yellowzone内にほぼ収まっているのがわかります。また、巨大なエネルギーで流れ下る土石流は、川の屈曲部を超えてまっすぐ流れ下っていることもわかります。

被災後の画像で、Yellowzone右外側に被害範囲が広がっているのは、土石流の一部が画面右方向に曲がった川沿いに流れ下り、川から泥土や樹木があふれ出たからです。


これらのことから、流水のある谷の出口における土石流の危険範囲について、大まかに以下のことがわかります。
■谷の出口から30度以内は、家ごと押し流される危険性があるRedzone
■谷の出口から60度以内は、被害を受ける可能性が高いYellowzone
■川や沢の流域も、溢れた土石流によって被害を受ける可能性が高いのでYellowzoneに入る

土石流がどこまで流れ下るかについては、土石流の規模や地形などによって大きく影響されますが、流れを遮るものが無ければ相当な距離を流れ下ると考えて、自分で危険範囲を設定する際には、十分な安全マージンを取る必要があります。根拠なく「ここまでは来ないだろう」と考えてはいけませんん。

特に川や沢筋沿いでは何キロも下流まで大量の泥流が流れ下ることは確実で、川のキャパシティを超えて溢れたり、屈曲部で溢れたりすることが考えられます。樹木や瓦礫がダムになって溢れることもあるでしょう。

ですから、土石流が起きる可能性のある川や沢筋では、山の近くだけでなく、ずっと下流の流域まで警戒が必要です。山から遠くに住んでいる方も、目の前の川や沢がどこから流れて来ているのかを確かめておく必要があります。家を押し流すような威力は無くとも、家の中に泥流が流れ込むような被害が考えられるからです。


最後に、具体的な対処方法について。もちろんこれは絶対ではありませんが、ひとつの目安となるでしょう。
■Redzoneにいたら、Yellowzoneの外か、少なくともRedzoneの外へ早い段階で避難する。
■Yellowzoneにいても、可能な限りYellowzone外へ避難する。避難しない場合には、二階以上へ上がる。
■川や沢の近くにいたら、山からかなり
離れている場所でも、最低でも二階以上へ上がる。

言うまでもありませんが、避難すべき方向は土石流が流れる方向から直角方向がベストです。直角方向ならば、ほんの少し高い場所に上がっただけで、直撃を受けない可能性が高くなります。

一旦土石流が発生したら、流域にいる人間が走って逃げることはまず不可能です。時速100km以上で流れ下ることもありますから、下流方向にまっすぐ向かうことは絶対に避けなければなりません。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年8月30日 (土)

【緊急回答】ブラジャーが濡れていたら

当ブログを検索で訪れていただいた方の検索キーワードランキングのかなり上位に、『aed 使用時ブラジャーが濡れていたら』というフレーズが入っていました。

当ブログでは、過去に『ブラジャーはどうする?』というAED使用時のブラジャーの扱いについてまとめた記事をお送りしてますが(文末にリンクします)、ブラジャーが濡れている状態は想定していませんでした。

しかし、その場合の対応ははっきりしていますので、とり急ぎお答えします。

ブラジャーが濡れている場合、もしくは濡れている水着などは外し、体表の水分を良くふき取ってからAEDの電極パッドを貼り付ける、これが正解です。


AED使用前には、4つのポイントをチェックする必要があります。

■身体は濡れていないか(濡れている体表に漏電する)
■ネックレスなど金属を身につけていないか(電極パッドに触れると漏電する)
■体毛は極端に濃くないか(電極パッドが身体に密着しないが、一般的な日本人の体毛程度なら問題ない)
■心臓ペースメーカーをつけていないか(鎖骨の下の盛り上がりをチェック。使用していても、パッドを胸の逆側に貼れば使用できる)

これらの4つですが、そのうち最も注意すべきは、身体が水や汗で湿っている状態です。身体が濡れているとに電気が体表に流れてしまうので、心臓に効果的な電気ショックを与えられないのです。

ですから、ブラジャー以前に上半身の水分は完全にふき取ってから、AEDを使用しなければなりません。電極パッドの表面は絶縁素材ではあるものの、裏面の導電素材が水分と接触すると漏電する可能性が高いので、濡れているブラジャー、下着、水着類の下に貼るべきではありません。人目がある状況では、乾いたタオルなどで身体を覆うと良いでしょう。

非常に大切な疑問だと思いましたので、取り急ぎお答えしました。


■過去記事『ブラジャーはどうする?』

http://hurry911.cocolog-nifty.com/survive/2013/09/post-2800.html


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2014年8月29日 (金)

【地震関連情報】宮崎沖の日向灘でM6.1

本日8月29日、午前4時14分頃、宮崎県沖の日向灘の『ごく浅い』海底を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生し、宮崎県、熊本県の一部で最大震度4を観測しました。その後、余震と思われる小規模の地震が発生しています。

これら地震により、若干の海面変動が発生した可能性がありますが、津波にまでは発展していません。

日向灘付近では、東日本大震災以降、小規模の浅い地震が若干増える傾向が見られていましたが、今回のマグニチュード6.1は、その中でも最大クラスです。震源が非常に浅いため、マグニチュード6台後半以上の規模で発震すると、断層の動きによって海底の変形を伴いやすく、津波が発生する可能性が高くなります。

その場合九州東岸、四国の太平洋側、瀬戸内海の西半分周辺を中心に、比較的短時間で津波が到達することになります。

なお、マグニチュード値が0.2大きくなると地震のエネルギーは約2倍に、値が1大きくなると約30倍になります。


今回の地震は、普段から小さく発震している海底の浅い断層が比較的大きく動いたもので、今後短時間のうちに本震を超える規模の地震が起きる可能性は、それほど大きく無いでしょう。

しかし、海底の断層により大きなひずみエネルギーが蓄積されていないとは言い切れず、将来的にはより大きな地震が発生し、被害が出るレベルの津波が起きないとは言い切れません。もっとも、これはどこの震源域にも言えることではあります。

少なくとも、この震源域にマグニチュード6クラスの地震を起こすポテンシャルがあることははっきりしましたし、大規模に発震すると津波が起きる可能性が高いので、今後より警戒すべき震源域であると言えます。

なお、この地震は南海地震などの『南海トラフ地震』とは発震メカニズムが異なっており、南海地震の前震である可能性はありません。

ただし、余震がすぐに収束せずに1週間以上続いたり、本震と同程度やそれを超える規模の地震が発生するようだと、普段とは違う動きが出ている可能性がありますので、しばらくの間は動きを注視する必要があるでしょう。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

2014年8月28日 (木)

【おすすめ書籍のごあんない】Newton 10月号

Newton

今回のお薦め書籍は、現在発売中のNewton 10月号です。メイン特集は『必ずやってくる首都圏巨大地震』。

“いつ起きてもおかしくない”と言われる首都圏直下型地震についての特集ですが、メカニズムや確率などより、『そこで何が起きるか』に重点を置いた内容です。建造物へのダメージ、インフラ途絶の影響、液状化や津波の被害シミュレーションなど、起こり得る被害の具体的な情報を得ることができます。

関東南部にお住まいの方にとっては、災害対策の方向性を考えるために非常に役立つ内容になっています。

また、直下型のM7級地震だけでなく、現時点では“当分起きない”とされている、関東大震災と同じタイプの関東地震についても言及されていて、関東南部の危険は、いわゆる東京直下型地震だけではないということを改めて認識されられます。


サブ特集は、現在も危機的状況が続いているエボラ出血熱について。エボラについての一通りの知識とアウトブレイクの現状、今後の見通しなどについて、詳しく解説されています。

関連して、世界各地の主要な感染症についても言及されていて、わが国で70年振りに国内感染が確認されたデング熱についての記述もあります。もちろんこのタイミングなのは偶然ですが。


災害対策の基本は、まず“その時”に何が起こるかを知ることです。そのためのマクロ情報として、非常に役に立つ書籍です。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル23】飛行機の危険

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回はシリーズの主旨と少し異なりますが、飛行機に乗っている時に大地震が発生した時の対応について触れてみたいと思います。

飛行機の場合、個人でできる対策はあまりありません。基本的には係員の指示に従うことになります。ただ、どのような対応が行われるかを知っておくだけで、混乱しないで済むでしょう。


まず、飛行機が地上にいる時に、強い地震に遭った場合です。大規模な地震の場合、実際の揺れ以上に機体は激しく揺れるでしょうが、機体が大きく破損することは無いでしょう。地上走行をしている時ならばすぐに停止しますから、まずは揺れが収まるまでシートベルトを外さずに、床に足を踏ん張ってしっかりと身体を保持します。

オーバーヘッドストウェッジ(頭上の荷物棚)が開いて重い荷物が落ちてくるかもしれませんから、両腕で頭をかかえ、首に力を入れて縮め、衝撃に備えます。できれば、シートの背もたれよりも頭を低くして、落下物の直撃をできるだけ避けるようにします。

揺れが収まったら勝手に動かずに、落ち着いて客室乗務員の指示を待ってください。場合によっては、その場で機外へ脱出する必要があるかもしれません。


空港は海沿いにあることが多いので、地震の際に懸念されるのはまず液状化です。もちろん十分な対策が施されてはいますが、水や砂の噴出など多少の影響を受ける可能性はあります。このため機体がそこから動けなくなったりするかもしれませんが、いかなる場合も係員の指示に従うことです。

海沿いの空港の場合、津波も懸念されます。東日本大震災における仙台空港の惨状は記憶に新しいところですが、係員はそのような場合の避難誘導の訓練も受けています。とにかく勝手な動きをせず、落ち着いて指示に従ってください。


管理人が最も危険だと考える状況は、着陸直後でまだ高速のうちに強い地震に襲われるケースです。その場合、最悪の場合は滑走路逸脱やオーバーランにつながる可能性があり、その場合は激しい減速ショックが襲いかかります。

その場合、首がむちを打つように振り回されることによる頚椎損傷、頭が前のシートに叩きつけられることによる打撲や顔面骨折、シートベルトが腹に食い込むことによる内臓損傷、足が跳ね上がって前のシートにぶつかることによる膝や脛の損傷が考えられます。頭上の荷物が落ちてくることもあるでしょう。

それに対処するベストの方法は、不時着時に取る耐衝撃姿勢です。しかしこの場合、客室乗務員の指示はほとんど間に合わないでしょうし、仮に指示があっても、心構えがなければとっさに身体が動かないでしょう。対処できる時間は、おそらく数秒以下しかありません。

ですから、特に着陸時はいつでも自分で耐衝撃姿勢を取れるような心構えが必要です。地震でなくとも、滑走路逸脱が絶対に無いとは言えません。もちろん耐衝撃姿勢がどんなものか知らなければ問題外ですので、飛行機に乗る際は各席に備え付けられた「安全のしおり」(セーフティ・インストラクション)や機内放送を必ず見て、耐衝撃姿勢や脱出方法を確かめ、自分の周りの非常口の位置を確認してください。

滑走路逸脱の場合は、高い確率で脱出シュートを使って機外に脱出することになりますが、機外の状況によっては別の非常口を指示されることもあります。その場合もあわてないように、自分の周りの非常口をすべて確認しておくのです。その行動だけで、緊急時にパニックに陥らずに済む心理的効果も大きいのです。

なお、離陸滑走中に大地震を感じ、機長が離陸中止の判断をした場合、通常ならば滑走路内で停止できるはずなのですが、場合によっては滑走路逸脱や停止し切れずにオーバーランしてしまう可能性もあります。ですから、地震に限らず、離陸滑走中に急激なブレーキがかかった場合も、自主的に対衝撃姿勢へ移行するべきです。


次に、飛行中に大地震が来た場合です。言うまでも無く乗客にできることはありませんし、何もする必要はありませんので、ちょっとトリビア的なことなど。

飛行中に目的地の空港が大地震に襲われて閉鎖されたら、すぐに安全な代替空港へ行き先が変更されます。出発地へ引き返すこともあるでしょう。仮に、本来の飛行予定時間より長い時間飛ぶことになっても心配ありません。燃料は十分に積んでいます。

例えば羽田-千歳線であれば、羽田-千歳間を一往復半くらいできるほどの余裕を持って燃料が積まれていますから、国内線であれば、どこでも燃料切れの心配はありません。国際線でも、燃料が少ない機体から優先的に下ろしますので、事実上心配ありません。


ここで、ウソのような本当の話をひとつ。東日本大震災では、史上初めて成田と羽田が同時に閉鎖されました。混雑する大空港ふたつが同時に使えなくなったのですから、大混乱です。

その時に両空港に向かっていた機体は、国際・国内線合わせて約70機。そのすべてを他の空港に下ろさなければなならなくなりました。特に遠距離を飛んで来た国際線は、国内線ほど燃料の余裕がありません。

国際線に多い747やA340などの大型機は、滑走路が長い大空港にしか下ろせませんし、着陸後の駐機スペースも必要です。それらの要素をすべて勘案しながら、必死の管制が行われました。

結果的に、すべての機体が千歳、米軍横田基地、中部国際、県営名古屋、関空、伊丹やその他の地方空港に無事下りることができましたが、実はこの神業的管制業務の裏に、まさに神がかり的な事実があったのです。

従来は成田と羽田が同時閉鎖するという事態は具体的に想定されていなかったのですが、関東で大地震が起これば、高い確率であり得ます。そこで具体的な対処計画が作られ、管制官の合同訓練が行われていました。

その訓練が行われたのが、なんと震災前日の3月10日だったのです。

もちろんその訓練をしていなくても、全機をさばく能力はあったでしょう。でもよりスムーズに、安全に管制が行えたのは確かです。

緊急事態を想定した訓練の翌日に、突然本番がやってくる。それも想定した関東地震ではなく東北の巨大地震ですから、代替となるはずだった仙台はじめ東北の各空港が使えないという、より厳しい条件で。

良くも悪くも、こんなことが起こるのが現実の世の中です。これなど、まさに常に備えておくことの大切さを象徴するような出来事ではあります。


次回からは、自動車での危険をお送りします。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年8月27日 (水)

【防災の心理38】全てを乗り越えるチカラ

人はできれば関わりたくなかったり、想定外の出来事に遭遇した時、周りに傍観者が多いほど、自らも傍観者となってしまいやすい。さらに傍観者の集団は群集心理を呼び起こし、危機の過小評価や行動の遅滞を招きやすい。

それが普段の生活ならともかく、事件、事故、災害などの危機に遭った時には、致命的な判断の誤りや行動の遅れに繋がりやすい。

そんな”がんじがらめ”の心理から抜け出して、『生き残る』、そして『生き残らせる』ために必要な行動を率先して起こすためには、一体どうしたら良いのでしょうか。


これまで当シリーズでは、そんな心理から抜け出すために共通する方法として、現実的な情報を『知る』ことが必要だと述べて来ました。しかし、こと『傍観者効果』から抜け出すためには、知っているだけではダメなのです。

『傍観者効果』に陥る場合には、大抵の場合はそこで何が必要か既に知っていて、その上で「それは誰かがやるだろう」という”逃げ”の心理が頭をもたげます。しかも、大抵の場合は「今、自分は傍観者になろうとしている、判断を避けている」という自覚さえある。


成功者と言われる人の座右の銘には、良く『迷ったら、動け』という意味あいの言葉がありますが、要は動かなければ状況は変わらない、動くことで状況を打開できる可能性も出てくるという意味でしょう。しかし迷いの中で動き始めることで、小さくない失敗のリスクも負うことになります。その結果の責任は自分で負う、という覚悟あってこその考え方かと思います。

問題は、その”覚悟”ができるかどうかですが、例えば目の前の負傷者に関わるかどうかという状況では、心理を抜きにしても、リスク要素があまりに多すぎるのです。

まず多くの場合、十分な救護知識・技術が無い。多少心得があっても実地経験はあまり無く、必要とされる処置が正しくできるか自信が無い。判断を誤って悪い結果になったら精神的負担だけでなく、社会的責任を負わされるかもしれない。ましてやリーダーになって、周りに正しい指示をする自信など無い、これだけ人がいれば、自分より適した人がいるに違いない、などと言う要素をひとつひとつ乗り越えようとしたら、とても動き出すことなど出来ないでしょう。

しかし、動かなければならない時もあるのです。そこで必要なのが、『別系統の思考』ではないでしょうか。上記のようなリスク要素を無視して、一気に飛び越える考え方です。


負傷者の立場になって考えてみましょう。事故などでケガをして、動けない。とても痛いし、ケガがどんな状態かわからない。もしかしたら死ぬかもしれない。後遺症が残るかもしれない。仕事ができなくなるかもしれない。なんて不運に遭ってしまったんだ。自分は、仕事は、家族は、これからどうなるんだ・・・というような、強い苦痛、不安、怒りに襲われているはずです。

負傷した直後は見当識の混乱、つまり何が起きたのか、自分がどうなっているのか理解できないことも多く、そんな場合はとにかく不安で、錯乱状態になることもあります。

そこへ人が集まって来たら、とにかく助けて欲しい。安全な場所へ動かして欲しい。救急車を呼んで欲しい。すぐに手当をして、楽にして欲しい。できることなら、「大丈夫。大したことないですよ」と言って欲しいと、周りの助けを強く望んでいるのです。


ならば、助ける。何ができるか、どうなるかはわからなくても、そんな理屈を飛び越えてとりあえず駆け寄り、(大丈夫でなくても)「大丈夫ですよ」と声をかけ、身体に手を当てる。

『手当て』という言葉は苦痛のある場所に手を当てる行為が語源であり、救護技術云々ではなく、大昔から人間が必要としたことです。それが実際に苦痛を和らげることもありますし、それ以上に精神的に落ち着かせる効果が大きいのです。

医学的な考え方では、状態のわからない負傷者は『さわるな、動かすな』が正解かもしれませんが、人間はそんなにヤワではありません。苦しむ人の身体をさすったり、手を握るくらいは全く問題ありません。もちろん、そうしながら痛む場所を聞いたり目視することによって、負傷の状態をできるだけ把握します。

要は、“負傷者”ではなく“人”として接することです。技術は二の次。まずは苦痛と不安をできるだけ取り除いてあげる。そうしてあげたいという気持ちは、たとえ『傍観者』とて、ほとんどの人が持っているはずですし、それが救護の本質です。

言うなれば、助けを求めている人がいる、ならば理屈抜きにできる助けをするというストレートな思考こそが、『別系統の思考』なのです。

そして、あなたのその行動が『傍観者』の気持ちを揺り動かして次の行動を促し、助けの輪が広がって行くのです。決して、あなたひとりではありません。それが間違いないことは、管理人自身も何度も経験しています。


一方、交通事故などの規模をはるかに超える大災害下では、近隣の人々による救護が最も大きな力となります。そのレベルになると、もう人は傍観している余裕さえ無く、とにかくできることをやろうと動き出すのです。しかし、日常の中でいきなりそのモードに入るのが難しいことを、ここまで心理面から考えて来ました。

そんな心理も理屈もまとめて乗り越える方法は、大上段から言わせていただければ、「なんとかして助けたい」という気持ち、すなわち”愛”ではないでしょうか。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年8月25日 (月)

また訳のわからないことを

某有名週刊誌に、富士山の内圧が臨界状態だとかいう記事があるのをネットで見つけました。なんでもフランスの地球科学研究所が日本の観測データを再分析して判定したとかしないとか。まあその真偽については語りません。そんなもの管理人にはわかりませんし。

ただ、その記事にあったコメントがあまりに笑止千万というか噴飯モノというか、“専門家”として許し難いものであったので、そこを指摘したいと思います。@niftyニュースからオリジナル記事を一部引用させていただきます。

(以下引用)--------------------
 「日本のハイネットシステムというネットワークが収集したデータを基に、地球内部のエコー測定が行われました。以前はただのノイズとして除去されていたデータに焦点を当て、日本の地下にある断層などのマップを作成。すると、3・11で地殻が最もダメージを受けたのは東北ではなく、富士山の地下400キロであることが判明したのです」(サイエンス記者)
(引用終了)--------------------

『サイエンス記者』なる人物が、フランスの分析を説明しています。問題は最後の部分。
『地殻が最もダメージを…富士山の地下400キロであった…』
これ、笑えませんか?

地殻の厚さは、海洋底で約6km。陸地下の厚いところでもん30~40kmしかありません。深さ400kmとなれば完全にマントル内ですよ。それを平然と“地殻”とのたまう『サイエンス記者』様。無能かニセモノのどちらかですね。もしかして、フランスの研究所が“地殻”と言っているのなら、ソースが怪しいのかw記事では“フランスの地球科学研究所”というだけで、それ以上の情報はありませんし。

次のネタ。

(以下引用)--------------------
 1707年11月23日に富士山で始まった宝永大噴火では、東南の斜面が大爆発し、約12億トンもの溶岩や火山灰が噴き出て江戸の町にまで火山灰が降り積もったとふされる。
 「特筆すべきは、噴火発生の49日前の10月4日に、遠州灘沖と紀伊半島沖を震源とするM8クラスの南海トラフ巨大地震が発生している点。3・11を考えれば、今も同じような状況にあるということです」(前出・サイエンス記者)
(引用終了)--------------------

また『サイエンス記者』様です。一見、まともですね。でも問題外。1707年の富士山宝永噴火は、確かに現在で言う南海トラフ地震の49日後に起きました。でもこれは南海トラフ地震が富士山の噴火活動を誘発したものであり、本震の後に大規模な直下型地震、地鳴りなどが繰り返されてから噴火に至ったものです。

では、東日本大震災は富士山噴火を誘発するのか。南海トラフ地震は海側のフィリピン海プレートと陸側のユーラシアプレートの相互関係で発生するものですから、太平洋プレートと北アメリカプレートの相互関係で発生した東日本大震災とは、直接的には関連がありません。東日本大震災によって引き起こされた大規模な地殻変動が、大局的に富士山や南海トラフに影響を与えていることは否定できませんが、宝永噴火を引き起こした南海トラフ地震と東日本大震災は、メカニズム的に全くの別モノなのです。

それ以前に、地震の49日後に、多くの前兆の後で噴火したケースと、地震から3年半近く経って前兆が無い状況を『同じような状況にある』とする発想は、ほとんどエセ科学かオカルトの世界。あの世界で良くある強引な関連付けです。つまり、かつて大噴火の前に大地震があった→また大地震があった→今回も大噴火が起こる、という感じで、地域やメカニズムを一切無視してこじつけるような手法です。

管理人は思いました。この『サイエンス記者』は実在しないのだと。恐怖を煽るために仕立てられた架空キャラなのでしょう。

最後は、実在の人物です。氏名の部分はイニシャルに変えさせていただきます。

(以下引用)----------------------
防災ジャーナリストのW氏が言う。
 「活火山の中で最も観測網が発達しているのが富士山ですが、想定の範囲内でしかシグナルは出せない。我々が避難する時間の余裕も与えず活動を開始するのか--それは神のみぞ知るなのです」
(引用終了)----------------------

この御仁、以前当ブログでネタにさせていただいた、『大地震後は見慣れたランドマークが崩壊して帰り道がわからなくなるから、コンパス(方位磁石)を常時持ち歩け』という、非常にユニークwな主張をされている方です。

それはさておき、神のみぞ知る、ですか。アオってますね。“ジャーナリスト”なのに。

火山噴火は、前兆が長く続くこともあれば短時間で噴火に至ることもあります。短時間だった例としては、最近では霧島の新燃岳が挙げられます。それでも、噴火のしばらく前にはマグマの上昇による火山性微動、火山性地震が確実に観測されるのです。数十万人が完全に避難できる十分な時間があるかどうかは“神のみぞ知る”ことかもしれませんが、静かな山がいきなりドカンは無いのです。

それこそ富士山が噴火、それも大規模に噴くのなら大量のマグマの上昇があるわけで、静かなままのわけがない。それに、富士山の噴火をアオる人は、宝永噴火の前に激烈な前兆現象があったということをみんな無視するんですよね。いきなり噴く方が怖い=数字になるから。

まあそれが商売のメディアならともかく、それに乗っかって訳わからんことを言ってるのが“防災ジャーナリスト”ですからねえ。まあ、こんなものでしょ。この世界。責任も問われないから、好きなこと言える“専門家”だし。


この先、いつか富士山が噴く日も来るでしょう。すぐかもしれないし、ずっと先かもしれません。また南海トラフ地震と連鎖するかもしれません。どうなるかは神のみぞ知る、ということは確かでしょうけど。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


【広島土砂災害】ほとんど重なっていた

広島の大土砂災害が未だ収束しないうちに列島各地は再び豪雨に見舞われ、北海道の礼文島では、がけ崩れによって二人の方が犠牲になってしまいました。家の裏手にある急ながけが豪雨によって表層崩壊を起こし、直下の家ごと押しつぶしてしまっています。

礼文島のケースでは、二階に上がっていても助からなかった可能性が高いと考えられます。それでも、二階部分には一階にいるよりは多少なりとも生存空間が残る可能性があります。一階部分は完全に土砂に埋められますが、二階部分には隙間ができる可能性があるからです。
Rebun
ニュースから現場画像をお借りしましたが、右に見える黒い建物のように、だるま落としのように二階部分が落ちて残ったり、崩壊しても内部に隙間、つまり生存空間が残る可能性が、一階よりはるかに高いことは間違いありません。土砂に呑まれたらほぼ助かりませんが、崩壊した家ならば、運に恵まれれば助かるのです。

しかしそれは運を天に任せるだけのことで、可能な限り安全な場所へ避難することを優先しなければなりません。必ずしも避難所などへ行かなくても、がけ下では無い建物に身を寄せるだけでも良いのです。土砂災害や水害の危険地帯にいる方は、普段から周囲のどこが安全なのかを知っておく必要があります。


一方広島ですが、報道の情報を総合すると、今回の惨事のメカニズムがわかってきました。それは、今後に大きく活かせる情報です。

残念ながらお借りできる画像が無かったのですが、今回広島で土石流や山崩れが53ヶ所も発生した場所は、北東から南西にかけて帯状に連なっています。周辺はほとんど同様の地形、地質なのですが、崩壊が発生した場所は、ごく狭い範囲に限定されているのです。

その理由は、やはり雨の降り方でした。気象庁発表の図表をお借りしました。
Hiroshima_dosyakei
この図の赤い部分が、『バックビルディング現象』によって強い積乱雲が連続的に発生し、豪雨に見舞われた地域です。特に中心近くでは時間雨量100mmを超え、8月20日未明の午前3時から4時過ぎにかけて、連続雨量200mmを超えました。

そして今回崩落が集中した帯状の地域は、上図の赤い部分の中心を通る連続雨量200mmを超えた地域と、ほぼ重なっているのです。

詳しいことは今後の調査を待つ必要がありますが、ほぼ間違いの無い事実は、少なくとも今回の被災地周辺で同様の地形や土質の場所は、時間雨量100mmに近い雨によって高い確率で崩落が発生しはじめ、連続雨量200mmレベルになると、今回のように大崩落が多発するはずです。地形と土質が、そのような雨に耐えられないということです。

ですから、周辺の場所がこのような雨に見舞われることが予想された場合には、雨が強くなる前に予防的に避難する必要があるということです。その段階では土砂災害警戒情報、記録的短時間大雨情報や避難勧告、指示は出ていないと思われます。しかし、同様の雨が降ればほぼ確実にどこかが崩れ、時間が長くなるほど崩壊が増えて行くと考えなければなりません。

もちろん、広島だけの問題ではありません。土質などに違いはあるものの、谷の出口、急な斜面のふもと、山の斜面を造成したような場所など背後に山がある場所では、すべて同様の危険があるのです。過去の例を見ても、時間雨量が80mmを超え、それが1時間以上続くような場合には、崩落が発生する可能性が非常に高くなっています。ましてやそれが2時間以上続いたら、大災害へ発展すると考えるべきです。

特に普段から流水がある小河川や沢筋が平地や造成地に出る場所では、最も破壊力が大きな土石流を警戒して『無駄足9割』くらいのつもりで、早めの避難をしなければなりません。とにかく、土石流の予想流域と到達予想範囲から外れた場所に行くのです。

一般に、土石流の最危険地帯(レッドゾーン)は、谷の出口から角度30度の範囲、イエローゾーンは60度の範囲と言われますが、周辺の地形によっても変わりますから、自分の居場所を実際に見分して、安全な場所を把握しておかなければなりません。

そのような目で見れば、テレビに映る被災地の実際の状況からも、自分の居場所に活かせるヒントがいくつもみつかるはずです。似た場所では、似たことが起こります。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年8月24日 (日)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル22】最後まで手を離すな!

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。

鉄道編は今回までとなります。

前回までは、通勤電車が脱線するような状況で、いかに身体を守るかについて考えて来ました。実際の車内では、さらに厳しい状況があります。

前回記事の耐衝撃姿勢は身体が壁や地面に衝突する際にはかなり有効ではありますが、改めて典型的な通勤電車の中を見てみましょう。
E231
E231_2
当然ながら、このように手すり、シートの側板、背もたれ、荷物棚などが林立しています。車両によっては、通路の真ん中に手すりが立っている車両もあります。

そしてそれらのパイプ類が、吹っ飛ばされた人間の身体に最も大きな損傷を与えるのです。もちろん正しい耐衝撃姿勢を取ることでその程度を軽くできる可能性はありますが、根本的な解決策とはなりません。

そこで最も大切なことは、車両に大きな衝撃が加わった場合、できる限り身体の移動距離を小さくすることと、圧縮される力を弱めることです。身体の移動距離を小さくするには、手すりやつり革にしっかりつかまること、シートの側板などに身体をつけてしっかり保持することです。つまり衝撃を受けた場合に、どれだけ衝撃と逆方向の力をかけられるかということです。

最終的にはつかまった手を振りほどかれるにしても、出来る限り握り続けることで、吹っ飛ばされる際の『初速』を下げることができます。実はこれが非常に重要で、何かに衝突した際の衝撃荷重は速度の二乗に比例しますから、例えば速度が半分になれば衝撃は四分の一になり、身体の損傷度合いを確実に小さくできます。

さらに、衝撃をできるだけ小さくするために重要なのが、『編成のどこに乗るか、車両内のどこにいるか』ということです。ここでまたJR福知山線事故の画像をご覧いただきましょう。この事故は、100km/h以上の速度で脱線転覆するという、在来線の単独列車事故としては最悪に近いケースです。
Fukuchiyama00
ここで注目すべきは、鉄道車両は大抵先頭車両から脱線が始まり、衝突、転覆する可能性も前の方が大きいということです。脱線した中間車両が対向列車に衝突するという、2000年に中目黒駅構内で発生した地下鉄日比谷線脱線事故のような例もありますが、あくまでレアケースです。余談ながら、あの事故では当時の取引先の方が亡くなってしまい、管理人も集まった報道陣に写真撮られまくりながら通夜に行きました。


さておき福知山線事故でも、7両編成の後尾3両は、脱線せずに線路上に留まっているのがわかります。つまり、それだけ車両にかかる衝撃力が小さかったということであり、負傷者も編成後方へ行くほど少なくなっています。

この例に限らず、過去多くの鉄道事故を見ても、編成の後ろの方ほど脱線・転覆する可能性が小さいということは確かです。通勤電車程度の速度では、例えば10両編成の全車両が脱線することなど、高架橋の崩落など極端なケースを除いて事実上ありません。

そうなると、どこへ乗ればより安全性が高いかわかってきます。編成のできるだけ後方、車両の中ではできるだけ進行方向の逆側ということになります。また、障害物が少ない通路上は『人のなだれ』が一気に発生するので、できればドア付近の方が良いと考えられます。しかし、ドア付近では手すりやシートの側板に衝突する危険が大きくなりますので、一概には言い切れません。進行方向側のシート側板にしっかり身体をつけ、手すりを握っていられるようならば、ドア付近が良いと言えるでしょう。

これまで述べたことから、確率的に最も安全な乗車位置は編成最後尾の車両の、最も後ろのドア付近ということになります。その場所が車両が脱線・転覆する確率が最も低く、仮に脱線しても衝撃が最も小さく、線路外のものに衝突する可能性も小さく、車内では『人のなだれ』に最も巻き込まれずらい場所ということになります。

と、わかっていても、“鉄っちゃん”はつい最もハイリスクと考えられる先頭車両の運転席直後に張り付いてしまったりするのですがwまあ、これが at your own risk という奴ではあります。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年8月23日 (土)

今まで何をやっていたんだ

Nikai
この画像は、8月22日付読売新聞の見出しです。でもたまたま見た読売新聞の記事を撮影しただけで、本文の内容とは直接の関係はありません。


広島市で発生した土砂災害の全貌が明らかになるにつれ、背筋が寒くなる思いを禁じ得ません。これは大地震でも巨大台風でもない、“普通の雨”の延長線上の豪雨でもたらされた事態です。しかも局地的な雨雲による、ちょっと乱暴な言い方をすれば『巨大な雷雨』だったのです。

今回特徴的だったのは、『バックビルディング現象』と呼ばれる、強い積乱雲が同じ場所で連続的に発達するという現象が起きたことですが、これは条件が揃えばどこでも起きる可能性があります。


なにしろ豪雨による山崩れ、土石流、地すべりによる犠牲者が出る頻度は台風や大地震とは比べ物にならず、毎年どこかで誰かが犠牲になっていると言っても過言ではありません。しかしほとんどの場合、犠牲者はごく少数です。

でもそんなニュースが流れるたび、私たちはいつもほとんど同じフレーズを聞いていたはずです。

『…建物の一階部分に流れ込んだ土砂に呑まれ…』

大規模な土石流でもない限り、多くの土砂災害で建物は致命的な破壊を受けず、一階部分に流れ込んだ土砂が、そこにいた人の命を奪っています。それはずっと昔から、何度も繰り返されて来ました。


ならば、危険な時は二階に上がればいい。それは頭で考えただけでわかることで、現場を検分すればさらに良くわかります。しかし、多くの行政やメディアは、長年に渡ってそのような防災指導をして来なかった。行政は、『二階に上がれ』と指導して、家ごと押し流された場合に責任問題になるとでも考えていたのでしょうか(一部自治体では、以前からそのような指導も行われています)

メディアは、トリビア的知識だけを垂れ流す、使いやすい“専門家”ばかり重用して、本質的な危険を直視する気が無かったのでしょうか。はっきり言って、自分ができもしない、頭で考えただけの理屈をしたり顔で語る“専門家”を見ると、虫酸が走ります。そんな連中をまだ使うのですか?メディアの方々。念のため付け加えると、ここで管理人が言う“専門家”とは、学術的方面や防災行政関係の方々ではありません(一部を除く)

まあ肩書きはともかく、“本当に役に立つ”ことを言うならば、誰でも良いのです。そうではない輩が、影響力のあるメディアを背景に大手を振っているのが問題で。


メディアにおいて、土砂災害の危険がある時にはその兆候は豪雨下や夜間では察知できないから、明るく静かなうちに早めの避難をせよ、その場に留まる場合には建物の二階以上の、崩れそうな斜面と反対側の部屋に行けというような『指導』が主流になってきたのは、2013年10月の台風26号による伊豆大島の土砂災害直前からでした。

それまでは、例の『土砂災害の兆候』を挙げて、それを察知したらすぐ避難しろという、完全な机上の空論がまかり通っていたのです。いつの間にか、『土砂災害の兆候』のようなことばかりを言っていた“専門家”も、宗旨替えをしていましたね。

結局、悲惨な大量死が起こるまで、命を守る行動を本気で考える姿勢は、あまりに希薄でした。“本当に役に立つ”事は伊豆大島の惨事で主流になりはじめ、今回の広島でやっと一般化するのでしょうか。

もちろん、安全な場所への避難が最優先であって、二階に上がるのは移動できない時の“最後の手段”でなければなりません。しかし今回の広島のように、知識があっても判断と行動が非常に難しい状況に直面するのが現実なのです。それでも、『最後には二階へ』だけが徹底されているだけでも、犠牲者が大幅に少なくなるのは確実です。

今回の広島でその効果がまた証明されたからこそ、画像のような記事が今更出るのでしょう。

しかしそんなことは、ずっとずっと前からわかっていたのです。じゃあお前はどうなんだという定番のツッコミもあると思いますが、管理人が『最後には二階へ』などを初めて記事にしたのは、当ブログスタートから半年後の2012年7月に起きた九州北部豪雨の時です。もちろん、それ以前からそのような考えを持っていましたが。

でも別に自慢したいわけでもありません。こんなにわかりやすいことなのに、今まで何度も繰り返されて来たことを見れば誰でもわかるのに、何故そんな机上の空論ばかりがまかり通って来たのか、無性に腹立たしいだけです。


文句ばかり言っていてもいけないので、最後に具体的な話を。

土石流の直撃を受けたら、頑丈な鉄筋コンクリート造りの建物でもなければ、高い確率で家ごと押し流されてしまいます。ただ、土石流は川や沢筋など、普段から水流がある場所で起きることが大半です。即ち、土石流が起こる場所は事前に知ることができるのです。ですから、自分の居場所が土石流の到達範囲かどうかを知っておかなければなりません。

主に普段は水流の無い場所で起こるのは山崩れや地すべりですが、その場合は建物が完全破壊される確率が土石流よりかなり低くなり、一階部分の被害に留まることが多いのです。ですから切り立った崖の直下などではない限り、危険を感じたら二階に上がるだけで、少なくとも人的被害のかなりの部分を防ぐことができるのは、今回の広島でも証明されたと言って良いでしょう。


今回はなんだかあまりにまとまりがない記事ですが、大惨事の発生に接し、一体今まで何をやっていたんだという憤りがあまりに強くて、少し冷静さを欠いていることをお詫びします。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2014年8月20日 (水)

広島市で大規模土砂災害発生

広島県広島市の安佐北区、安佐南区を中心に大規模な土砂災害が発生し、本稿執筆時点で死亡27人、行方不明10人という大惨事に発展しています。しかし未だ被害の全貌が把握できていないため、今後さらに犠牲者数が増えるものと懸念されています。型通りではありますが、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りすると共に、行方不明者の一刻も早い救出を願っております。また、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

この災害は深夜3時から4時頃という、人間の活動力が最も鈍る時間帯に発生しました。多くの方が、床についていたと思われます。一部の方は凄まじい豪雨と雷鳴、山鳴りなどに危険を感じて避難しようとしたそうですが、山の斜面に造成された住宅街の坂道が濁流となっており、家から出られなかったそうです。

現場近くの測候所では、発災時間帯に雨量計が1時間当たり130mmという信じられない程の雨量を記録しています。プラスの誤差が出やすいレーダー解析ではなく、実測値なのです。これは雨量だけ見れば完全に『特別警報』レベルのなのですが、局地的であったことと継続時間が短かったために、発表の基準には達しかなったようです。

しかし局地的に見れば、完全に『特別警報』の概念である“記憶に残るような大災害が起こる”状況で、“ただちに命を守る行動をしなければならない”レベルの豪雨であり、それが実際に起きてしまいました。


当ブログでも何度も指摘して来ましたが、気象による土砂災害の危険がある場合にできることは、『静かなうちに早めの避難』しかありません。しかし今回は未明に突然の豪雨となったため、就寝時に危険を感じることは無かったでしょうし、発災害時間帯に気象情報を見ていた方も少なかったはずです。仮に気象情報を見ていて、時間雨量100mm超の雨が降ることがわかっても、それがすぐに土砂災害に結びつくとは考えにくかったかもしれません。

ただ、山の斜面を造成した住宅街ですから、本来的に危険をはらんでいた場所ではあります。しかも山の土質は花崗岩が風化してできた『まさ土』(まさど)と呼ばれるもろい土質が主で、過去にも近くで大規模な土砂災害が発生していました。ハザードマップにも、土砂崩れ・地すべり危険地帯として指定されています。但し、背後に山がある住宅地のほとんど全てが危険指定されているので、ピンポイントで自宅の危険を把握できるものでもありません。

さらに悪いことに、今回はあまりの豪雨となったため、複数のタイプの土砂災害がほぼ同時に起きています。雨水が谷筋に集中し、土砂、岩石、立ち木を巻き込んで高速で流れ下る『土石流』、角度45度以上に切り立った斜面が、大規模に崩れ落ちる『山崩れ』、造成地の端部で、家のすぐ背後に迫った山体が滑り落ちる、『地すべり』が、ごく近い場所で何ヶ所も発生し、被害を大きくしています。

そんな状況ですから、いわゆる土砂災害の兆候はいろいろあったのでしょうが、未明、豪雨、冠水、停電(一部)という状況で、把握するのは事実上不可能だったでしょう。その段階でできることは、家の二階に上がることくらいしか残されていなかったはずです。

ただ、まだ正式にはわからないものの、犠牲者の半分以上が建物の1階で土砂に呑まれているものと思われます。家ごと押し流された例も多い様ですが、二階に上がっていさえすれば助かったという例も多いはずで、実際にそれで助かった方もいるはずです。土石流は壊滅的な破壊力で家ごと押し流すことが多いのですが、それ以外の場合は、高い崖の直下などでは無い限り被害は一階部分に限定され、建物も全壊に至らないことが多いのです。


このような土砂災害への対応方法については、当ブログでも何度も採り上げて来ましたので、今回は敢えて書きません。でも、覚えておかなければならないことが、ふたつあります。

まず、時間雨量100mmを超えるような豪雨が今後ますます増えて行き、どんどん“普通”になって行くということ。冬場は豪雪が増えるでしょう。そこで何が起きるか、何が危険かを知っていなければなりません。

もうひとつは、自分の居場所の危険をピンポイントで知っておき、危険が迫りそうな時は『自分で』判断して避難行動をしなければならないということです。無駄足は当然だと思って、予防的行動をしなければなりません。生命に関わらなくても、例えば自家用車を避難させることも大切な行動です。

当災害については、より詳しい状況がわかりましたら、また記事をアップしたいと思っています。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年8月18日 (月)

【防災の心理37】傍観の現実とは

今日8月18日、新聞に象徴的な記事を見つけましたので、それに関する記事をお送りします。


AEDの使用が一般市民にも解禁され、各地へ設置が始まってから今年で10年になるそうです。現在の設置数は全国で20万台を超えたとのこと。

では、AEDがどれくらい利用されているかというと、心肺停止状態で救急搬送された人に対する使用率は、2012年には3.7%でしかなかったそうです。これに対し、関係団体は「命の現場にかかわることをためらう人は多い。以前よりAEDの操作が簡単になったが、知られていない。周知徹底が必要だ」とコメントしてるそうです。

しかし管理人は、このコメントに違和感を感じざるを得ません。現実には”命の現場”どころか、小さな交通事故などでも、目の前の現場にすぐに駆け寄って自ら救護を始める人は滅多にいません。人が倒れていても、ましてや苦しんでいたり血が少しでも出ていたら、周りを取り囲んで眺めているだけが大半。

これは繁華街になるとより顕著で、まさに『傍観者効果』そのものの現場を、何度も経験しています。

AED使用率について少し注釈すれば、AEDを使用すべき状況は交通事故などによるものより、病気による心臓障害の方が圧倒的に多く、その現場の多くが一般家庭や職場です。2005年の統計によれば、心肺停止状態で救急搬送された患者の約7割が一般家庭からだったそうで、これは現在もあまり変わらないでしょう。

つまりたまたま居合わせた救護者、バイスタンダーがおらずAEDも手近な場所に無く、しかも一緒にいる人に高齢者が多いという状況が主ではあります。しかし、これは救うべき人が他人ではなく、家族の場合が多いということでもあります。


記事では、AED講習会参加者のコメントも紹介しています。「(講習を受けるまでは)一刻を争う現場に素人が立ち入っていいのかと思っていた」という声が多かったそうです。現実には一刻を争わなくても”傍観”することが多いのですが、AED講習受講者という救護意識が高い人々でさえ、そんな心理に囚われているということです。

そしてそんな心理が、誰かが救護を始めると「動かすな」という言葉になって表れるわけです。

当シリーズでは、今まで災害対策や非常時における『心理の壁』を、いくつも指摘して来ました。お化け屋敷の例では『群集心理からの遮断』、『情報の遮断』、『想定外』、『恐怖の伝播』などを、そして現在は『傍観者効果』です。

災害や交通事故などの現場は、そんな状況の”宝庫”なのです。群集の中から抜け出すことによる『群集心理からの遮断』、救護知識や技術の不足という『情報の遮断』、平穏だった街角で、いきなり人が苦しんでいるという『想定外』、そんな光景がもたらす『恐怖の伝播』そしてそれらが『傍観者効果』を加速する。まさにがんじがらめです。


しかしそんな中でも、業務や任務ではなく動き出す人々がいます。そんな人々とて、無論普通の市民。様々な『心理の壁』を感じています。でも、それを乗り越える。いやむしろ、乗り越えずにはいられない。その力の源は何なのでしょうか。

管理人が思うに、そんな人々は”別系統の思考”をしているのではないでしょうか。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年8月16日 (土)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル21】胎児のようになれ!

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回は、満員の通勤電車の中で大地震に遭遇した場合の対処方法について考えます。

大前提として、その時の安全性は何両目に乗っているか、車両内のどこに乗っているかに大きく左右されますが、それについては後述します。

まず基本は、立っている場合にはできるだけつり革や手すりにつかまることです。地震の激しい揺れと非常ブレーキの急減速程度までならば、人の圧力で手をふりほどかれる可能性は高いものの、それでもある程度までは身体を保持できるでしょう。

普段の満員電車でも、ちょっときつめのブレーキで乗客がドドドっと前方に押し寄せることがありますが、高速からの非常ブレーキの減速度はあれをかなり上回ります。結果的に手をふりほどかれるにしても、できるだけ長い時間、身体を保持する努力をすることです。

非常ブレーキ程度の減速度ならば、『人のなだれ』も致命的な圧力になることは無いでしょう。つかまる場所が無い場合は、両腕を胸の前に強く引き寄せて、こぶしを握ってぐっと力を入れます。これで、胸部が直接圧迫されることを防ぎます。転びそうになっても、上方以外に腕を伸ばしてはいけません。人に挟まれて、へし折られる可能性があります。


電車が脱線した場合は、さらに強烈な減速ショックに加え、たて方向の衝撃が加わります。車体が飛び跳ねるように暴れるのです。その段階ではほぼ確実につかまった手をふりほどかれ、さらに身体が飛び上がって、前方に向かって『吹っ飛ばされる』可能性が高くなります。満員の乗客は、強烈に圧縮されます。

その状態から、最悪の場合は車体が転覆したり、どこかに衝突する可能性があります。そうなると、確実に身を守る方法はありません。できることは、致命的な衝撃から少しでも身を守る可能性を高めることだけです。


107名が死亡したJR福知山線脱線転覆事故で、マンションの一階に横転しながら突っ込んだ一両目に乗っていて生還した方の手記によれば、横転した瞬間の車内は『洗濯機の中のようだった』とのこと。つまり人がバラバラと舞い上がり、飛ばされ、かき回されたのです。

地震で通勤電車が脱線した場合は、100km/h以上で横転したあの事故ほどの状態にはならないと思われますが、満員の乗客がなだれのように崩れ落ち、のし掛かって来るでしょう。その状態で、自分の身体の位置や衝突を意識してコントロールすることは、全く不可能です。

余談ながら、そうなったら『頭を打たないように気をつけろ』とか寝言を言っている“防災のプロ”がいるのですが、それについては別に記事書きますね。

では、そこでできることは何か。管理人が考えるポイントは二つ。『遠心力』と『重心』です。


人体の重心は腰の辺りですが、そこから一番遠い場所に、重い頭が乗っています。ですから人体が吹っ飛ばされると腰を中心に回転して頭がむちを打つようように叩きつけられ、頭と首に大きな衝撃が加わります。さらにその状態では、意識して力を入れていないと、遠心力で手足が伸びてしまいます。そこまで行かなくても、減速ショックが加わると重い頭が慣性力でいちばん大きく振り回されるわけです。

もうひとつは車体の重心。鉄道車両の重心は、大ざっぱに言えば床の辺りです。つまり床を回転の中心にして揺れ、横転するのです。

そして前記事で述べた通り、人体で一番断面積が大きく、圧迫されると窒息に至るのは胸の部分です。

それらのことから管理人が導き出した耐衝撃姿勢は以下の通り。本来なら図解したいのですが、絵心が無いもので文章で表現することをお許しください。

その姿勢を一言で表現するなら、ちょっと違うけれど「胎児のようになれ」ということでしょうか。
■両手のこぶしを頭の両側につけて、腕に力を入れて身体に密着させる。
■首を前に曲げて思い切り縮め、力を入れる。
■両足を揃え、膝を曲げて重心を落とす。(感覚的には身長を50cm縮める感じ)
■息を大きく吸って止め、全身の筋肉を緊張させる。

両腕で頭の側面をガードし、首に力を入れてむち打ち状態を防ぎ、身体の重心を車体の重心に近づけて横回転の遠心力を弱め、減速ショックで重い頭が振り回される慣性力も弱めるのです。手足を縮めて緊張させることで、伸びた手足が挟まれて折られる可能性も減らせます。

さらに胸の位置を下げることで、乗客の圧力による胸への圧迫を弱めます。これは、スシ詰めの電車でもランドセルを背負った小学生が乗っていられるのと同じことです。下半身の高さは、実はかなり余裕があります。人の圧力で重心を下げられない場合は、上半身だけでもこの姿勢を取るべきです。

その状態で電車が止まれば良し、吹っ飛ばされてどこかに衝突したり、人のなだれにのし掛かられたりしても、致命的な怪我を負う可能性を大きく減らせるはずです。

なお、この姿勢は軍用パラシュート降下の着地時の姿勢(軍用は民間用より高速で着地するので、着地と同時にこのような姿勢で転がって衝撃を逃がさないと足が折れます)や、オートバイで転倒した時に、最初にとるべき姿勢に近いものです。

管理人はオートバイに乗りますが、かつてはロードレースやオフロードレースもやっていまして、こんな姿勢で何度も地面に叩きつけられた経験があります。その経験からしても、有効な姿勢だと考えます。つまり、管理人なら迷わずこの姿勢を取ります。


しかしこの姿勢にすぐに移行するためには、普段から意識していないとなかなか難しいものがあります。オートバイの初心者が転倒すると、つい地面に腕を伸ばして身体を支えようとしてしまうことがありますが、もちろん何の効果も無くて、あっさりと腕を折ってしまいます。

交通事故のような凄まじい衝撃の中では、人間の力など全く無いに等しいのです。ですから、吹っ飛ばされることを前提として、少しでも衝撃を減らすことを普段から意識していなければなりません。なのに『頭を打たないように気をつけろ』とかお気楽なことを言う“プロ”もいるからやりきれない。カネ払って話聞いて、そんな出来もしないこと言われたらどうします?


なお、ここではスシ詰めの電車内を想定していますが、もし空いている電車内で大地震に遭遇し、脱線転覆しそうだと判断したら、『両腕で頭を守りながら床に伏せる』、これに尽きます。まずは床に膝をついて重心を下げ、脱線すると判断したら、可能ならば進行方向と逆方向に身体を投げ出すのです。これは椅子に座っている時でも同じです。

最後にもうひとつ、“お笑いプロ”(お笑いのプロじゃない)の話。腕で頭を守るときには、動脈を切らないように手首の手のひら側(脈拍を取る部分)を内側に向けろと、テレビでしたり顔で言っていた“防災のプロ”がいましたが、どうやったら外側向けられるか教えて欲しいw。これなど、『動脈を守る』というもっともらしい自分のアイデアを言いたいがために、必要の無い“指導”をしているだけですね。おカネもらうには、そういうことも必要なんですか?ねえYさんw

まあ、こんなのばかりじゃ、防災屋はいつまで経っても尊敬どころか信用もされませんな、などとぼやきつつ、次回は、電車のどこに乗るべきかについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年8月15日 (金)

【防災の心理36】傍観は危機を招く?

1964年に米国で発生した『キディ・ジェノヴィーズ事件』では、35分間に渡って殺人犯から逃げ回る被害者を38人もの人が目撃しながら、誰一人として警察に通報しませんでした。これは、ただ"無関心”が生んだ出来事なのでしょうか。

事件後、専門家によって行われた社会心理学的な調査と事件で、そのような場合に陥りがちな、ある群集心理の存在が明らかにされました。

そ群集心理は、『傍観者効果』と呼ばれます。人はある状況において、自分以外の傍観者がいる場合には率先して行動しなくなる、つまり「自分がやらなくても、誰かがやるだろう」という意識を生みやすいということで、『キディ・ジェノヴィーズ事件』はその典型だったわけです。

これは学術的に指摘されるまでもなく、誰にでも覚えがあることだと思います。できれば関わりたくない、しかし重要な事態に直面した場合、自らは傍観、静観を決め込むことで"誰か”が動くのを期待してしまうということ、ありますよね。交通事故現場の"傍観”も、その典型的な例と言えます。ママさんにとっては、PTAの役員決めとか。そしてその心理は、傍観者が多いほど強くなって行くのです。

しかしそれは無関心でも悪意でもなく、人間の本能的な防御反応と考えられますから、それを批判しても始まりません。『キディ・ジェノヴィーズ事件』でも、もし誰かが「彼女を助けよう!」と駆け出していたら、同調する人や警察に通報する人が現れたに違いありません。"リーダー”の登場です。

『傍観者効果』が群集心理ならば、そのような付随行動も群集心理のひとつです。動き出すのは自分だけではない、危険も責任も分散されるという心理が、行動のきっかけを与えるのです。まさに『赤信号、みんなで渡れば怖くない』わけです。

問題は”本当に渡っても大丈夫か?”という判断も必要だということ。もし犯人が銃を持っていてこちらが丸腰だったら、リーダーがなんと言ってもまっすぐ突っ込んで行くのは危険すぎます。集団で赤信号を渡っていれば大抵の車は止まりますが、暴走ダンプが突っ込んで来ることもあるということです。

つまりリーダーにもついて行く者にも、それなりの知識と判断力が必要です。そしてそのレベルが高いほど、行動が成功する確率が高まります。例えばリーダーが歴戦の兵士だったら、協力者に安全な場所から犯人の気を引かせ、自分は手近なものを武器に死角から攻撃するという作戦も取れるわけです。


この『傍観者心理』というものは、他を助けるという場面だけでなく自分が当事者である場合に陥ることもあるから厄介です。例えば、この場所にいたら津波に襲われるかもしれない、しかし正しい情報も無ければリーダーもいないという状況では、自分の運命さえも"傍観”してしまう可能性があります。

特に、巨大災害のようにその恐怖を実感したことが無い場合には、「だれも言い出さないから大丈夫だろう」というような、前出の『正常化バイアス』や『楽観バイアス』にも陥り、自らリーダーとして集団を率いる行動をしづらくします。しかも本能的な群集心理により、集団の中にいた方が安心感がありますから、自分だけが逃げ出すという行動もしづらいという、なんだかがんじがらめの状態になってしまいやすいのです。

要は、人は想定を超える事態に直面し、さらにそれが集団の中だったら、基本的には"自分からは何もしたくない”状態に陥りやすいということです。

しかし現実は非情であり、間違った判断や行動は、それなりの結果につながるだけです。どんな理由にしろ、そこで求められる判断や行動を放棄したら、他を助けられないだけでなく自分も危機に陥ることがあるのです。

では、そんな心理を乗り越えて他を助け、それ以前に自分の安全を確かなものにするためには、どうしたら良いのでしょうか。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年8月14日 (木)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル20】鉄道事故で起きること

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


前回記事で、大地震時に走行中の電車が脱線転覆に至る可能性は一般に思われるほど高く無い、ということに触れました。現在の車両は脱線しても、昔に比べて転覆しずらいのです。

さらに現在では、大規模地震の緊急地震速報が発報された直後、列車無線で危険地域内の列車をすぐに止める体制になっています。JRの場合、在来線のすべての列車は最高速度からでも600m以内に停止できますし、通勤電車程度の速度ならば、事実上十数秒程度で安全速度にまで減速できるでしょう。

ですから通勤電車が高速度のまま脱線転覆する、2005年に発生したJR福知山線脱線事故のような惨状は、あまり心配する必要はないと言えます。あの事故にしても、線路を逸脱してマンションに衝突した1~3両目車両は大破しましたが、4両目以降の車両は転覆には至っていません。
Fukuchiyama00
さらに注目すべきは、後部編成が現場で停まっていることです。あの事故では、120km/h程度の速度からブレーキを僅かにかけただけで急カーブに進入したとされます。そして1両目が線路を逸脱して車両間に渡したブレーキ圧力管が切れた瞬間、後部編成には自動的に非常ブレーキがかかりました。鉄道車両はそういうシステムになっているのです。

その段階からの非常ブレーキでも、7両編成の後部3両は一部脱線しながらも線路上に留まり、大きく脱線した前車両を押しのけながら現場前で停止しています。つまり非常ブレーキによって短時間にその程度にまで減速できていたということであり、あれが軽量でブレーキが良く効く現代の車両の性能です。もし旧世代の車両だったら後部車両がより高速で突っ込み、さらに犠牲を増やしていたかもしれません。

もちろん、非常ブレーキ力に加えて脱線した車両からの抵抗力と脱線した前方車両を押しのける抵抗力が総合された結果あの場所で止まったのであり、後方車両の減速度も凄まじいものだったでしょう。しかし、それでも脱線・転覆しない程度までブレーキで減速できていた、ということが重要なのです。


では、通勤電車で大地震に遭遇した時に最も起こる可能性が高いのはなんでしょうか。これまで述べた通り、激しい揺れや軌道変位などで脱線する可能性はあり、その際に襲って来るのは、『減速ショック』です。平たく言えばスピードが一気に落ちることですが、それが猛烈な勢いで襲ってきます。その時、スシ詰の車内では何が起きるでしょうか。

あるシミュレーションによれば、スシ詰め状態の通勤列車に想定される最悪の減速ショックが加わった場合、つまりは普通の走行状態から数秒で速度ゼロになるような場合、車内の乗客は最大三分の二の『体積』にまで圧縮されてしまうといいます。一般に長さ20mほどある車両に詰まった乗客が13mほどに圧縮されるのです。そこでは、人体そのものが凶器となります。

その状態になると、つり革や手すりにつかまっていても吹っ飛ばされます。手すりやシートの端板に身体を密着させたまま圧縮されれば、とてつもない圧力で無事ではいられません。


ところで、満員電車に揺られて一番きついのは、胸ですよね。何故なら、人間は胸の部分が一番断面積が大きいからです。そしてその中には肺があります。胸を強く圧迫されると肺の中の空気が搾り出され、その状態が1分も続けば窒息に至ります。さらに強い圧力が加われば、肋骨が折れたり内臓が損傷したりして死亡することもあります。その段階になって初めて『圧死』と言える状態であり、建物の倒壊や家具の転倒などで一般に『圧死』と言われる死因の大半は、実は胸部を強く圧迫されたことによる窒息死なのです。

ですから、胸部を圧迫される状態から、出来る限り逃げなければなりません。しかし、脱線した車両が一気に転覆したり、橋脚などに高速で衝突した場合には、ほとんど対処はできないでしょう。運を天に任せるのみです。ただ、それまでに僅かでも時間があったら、どうしたら良いのでしょうか。

ここで述べる方法は、どこかで指導されているものではなく、管理人が考えていることです。ここまでの内容でお気づきの方もあると思いますが、管理人はかなり「鉄ちゃん」でもあります。そんな知識も総動員して考えてみました。

次回へ続きます。

■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年8月12日 (火)

【防災の心理35】あなたは傍観者?それとも...

今日8月12日は、29年前の1985年に日本航空123便が御巣鷹の尾根に墜落し、520人もの命が喪われた日です。改めまして、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。

さて、前回はこの事故の事も絡めて、バイスタンダーとしての意識と技術を高めるためにはどうしたら良いのか考えましたが、仮にこのような現場の状況に"慣れて”いたら、誰でも積極的に救護に当たれるようになるのでしょうか。

過去に当ブログでも何度か書いていますが、管理人は長年バイクに乗り、モータースポーツにも関わった経験の中で、何度も交通事故の現場での救護経験があります。そして多くの現場で、同じような体験を繰り返して来ました。

それは、目の前で負傷者が倒れていても、そこに居合わせた多くの人がただ取り巻いて眺めているだけで、誰も手を出そうとしない状況です。そこで誰かが処置を始めようとすると、例外なく誰かから「動かすな」と言う声が上がる
のです。

もちろん頸椎損傷の可能性がある場合など、動かさない方が良い場合もありますが、まず負傷者の状態を確認しなければなりません。

多くが傍観する理由としては、まず救護知識と技術の決定的な不足があります。なんとかしてあげたいという気持ちはあっても、どうして良いかわからない。下手にさわって、悪化させたらどうしようという意識が強く働くのは、ある意味で仕方ありません。

積極的に関わって、責任問題には巻き込まれたくない。とりあえず見ていて、できることがあったら手伝おうと考える人は多いでしょう。実際、周囲の人に何か具体的に頼むと、大抵の人は動いてくれます。一方、ひたすら傍観を決め込む、ただの野次馬も少なくありませんが。

そんな時には、リーダー的な人の存在の有無で大きく変わります。誰かが積極的に関わり、的確な指示を出すことによって、効率的に救護や事故処理が進むことも少なくありません。

では、リーダー的な人がいなかったらどうなるか。そこで、ある『心理の壁』が頭をもたげて来るのです。


1964年に米国で起きた、『キディ・ジェノヴィーズ事件』と呼ばれる悲惨な殺人事件があります。ある住宅街で、キディ・ジェノヴィーズという女性が殺人犯に35分間にも渡って追いかけ回され、最終的に惨殺されました。彼女が「助けて!」と悲鳴を上げながら逃げ回っている間の目撃者は、調査によれば38人にも上ったそうです。しかしその間、誰一人として助けようとするどころか、警察に通報さえもしなかったのです。

メディアの取材に対し、目撃者は「どうして良いかわからなかった」、「通報するのが怖かった」などと答えたため、当時は「目撃者たちは無関心だったから誰も通報しなかった」と報道され、大きな問題となったのです。

凶暴な殺人犯の前に自分の身を晒して助ける行為が怖いのは、誰でも一緒です。首尾よくその場を切り抜けても、後で何があるかわかりません。管理人とて、そんな状況で出て行くことはためらわれますし、まずは自分や周囲の安全を確保するでしょう。それは仕方ありません。

では、なぜ誰も警察にさえ通報しなかったのでしょうか。本当にただ『無関心』だったからなのでしょうか。

この事件に関連して、後に社会心理学的な調査と実験が行われ、そこにある心理の影響が浮き彫りにされたのです。

次回へ続きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年8月11日 (月)

【防災の心理34】備えていれば、助けられるか?

前回は、自分が大災害などの凄惨な現実に直面した時に気後れせず、必要な行動が素早くできるように、普段は『ブルーシートの向こう側』に隠された現実を自らの意志で見て、“慣れて”おくのもひとつの方法だということを述べました。

私事ながら、管理人がそういう意識を持ち始めたきっかけは、ちょうど30年前の明日にさかのぼります。

1985年8月12日、羽田から大阪伊丹空港へ向かった日本航空123便の機体に異常が発生し、約30分間の迷走飛行の後、群馬県の山中、御巣鷹山の尾根に墜落しました。そして単独機の事故としてはいまだに世界で最悪の、520人もの犠牲者が出たのです。三十回忌を前に、改めて犠牲になられた方々のご冥福をお祈りします。

管理人は群馬県の出身でして、あの事故の時には遺体収容などの拠点となった群馬県藤岡市のすぐ近くにいました。事故からしばらくの間、家の近くには警察や自衛隊の臨時ヘリ基地が設営され、周辺のホテルなどには全国から犠牲者の遺族が集まるなど、騒然とした中で日々を過ごしました。もとより航空機好きの管理人ですし、決して他人事とは思えない事故なのです。

余談ながらその後、あの事故については個人的にかなり情報を集め、一時はネット上で議論もやっていました。そこで遭遇したのが、薄弱な知識と情報を元に『米軍機が撃墜した』だの『自衛隊の標的機が衝突した』だの主張するエセ科学系や陰謀論者で、あの手の人種とは議論しても無駄なんだなということを痛感したのですが、それは余談。

当時はマスコミの報道基準も今より甘く、かなり凄惨な現場映像も公開されました。それをきっかけに、航空機事故を始めとする重大事故や災害における人体の損傷についても知識を深め、それは現実的な対策として、当ブログ記事にも反映されています。


あの事故から時間が経つにつれて、現場のあまりに凄惨な状況をさらに知ることになりましたが、そこで思ったのが、自分がその現場にいたら何を感じ、何ができるだろうかということだったのです。例えば、自分が派遣された自衛隊員だったら、あの現場に躊躇無く入って行けただろうかと。

もっとも、最初から何も感じない人がいるはずもありません。でも、必要ならばやらなければならない。無理矢理にでも"慣れる”ことが求められるのです。それが義務や任務ではないバイスタンダーでも、遺体の中から生存者を探し、激しく損傷した外傷の応急処置をして、速やかに医療関係者に引き継ぐ行動が、救命率を上げることになります。そこで怖いだの気持ち悪いだの言っている暇はありません。

もちろん、見ず知らずの他人のために限ったことではありません。それ以前に、そこで苦しんでいるのが自分の家族や大切な人だったら、ということです。そこで、ただ呆然と立ち尽くすことしかできない人ではありたくない。

管理人のそういう思いの原点は、もう30年も前のことになる、あの事故だったのです。その後阪神・淡路大震災、福知山線脱線転覆事故、東日本大震災の状況を見聞して、さらにその思いは強まっています。いずれの場合もバイスタンダー、つまり救護が義務ではない、そこに居合わせた人々の無償の努力によって、多くの命が救われたのです。


今回はほとんど管理人の私事になってしまいましたが、ではこれまで述べたような意識を持って備えていれば、人はみな積極的にバイスタンダーとして積極的に活動できるようになるのでしょうか。

実はそこにもうひとつ、大きな心理の壁があるのです。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。


2014年8月10日 (日)

【地震関連情報】青森県東方沖で震度5弱

本日8月10日午後12時43分頃、青森県東方沖、深さ51kmを震源とするマグニチュード6.1の地震が発生し、青森県七戸町で最大震度5弱を観測しました。

気象庁の発表によると、この地震は西北西-東南東に圧力軸を持つ逆断層型地震、つまりほぼ東西方向に圧縮された太平洋プレート岩盤内の比較的深い部分で発生した『スラブ内地震』で、広義における東日本大震災の余震です。

このタイプの地震は主に宮城県沖と福島県沖での発生が多く見られ、青森県東方沖での発生はあまり多くありません。これは、青森県東方沖では震災による地殻変動の影響が宮城・福島沿岸より小さいからと考えられます。宮城県沖の震災本震震源域から比較的離れているために、震災後における太平洋プレートの変位量及び加速度が、宮城・福島沖ほど大きくないからということでしょう。

この地震が起きる前日、8月9日には宮城県沖で同じタイプの小規模地震が3回連続で発生しています。今回の地震がそれらの地震と直接の関係があるかどうかは定かではありませんが、少なくとも東北地方沿岸部において、未だに震災の余震が多発する状況であるということはわかります。

ただ、震災後3年半が経過する中でその発生頻度は次第に落ち、震度4以上となる回数も減って来てはいます。でも今回のように、時々震度5弱クラスを発震するポテンシャルは十分にあるということです。今後もこの傾向は何年にも渡って続き、小規模地震が発生するなかで時々震度4~5弱、場合によっては5強クラスが発生する可能性が考えられます。


現在でも、東日本を中心に日本列島各地で震災前をはるかに上回る数の地震が発生する状況が続いています。震災直後の危機的状況はとりあえず脱したとは考えられるものの、いつどこで大規模地震が発生してもおかしくないことに変わりは無いということを、いつでも意識していなければなりません。

現在、台風11号の影響により各地が豪雨や暴風に見舞われていますが、そんな中で大地震が起きないとは誰にも断言できません。豪雨や暴風の中で地震からの避難行動をしなければならなくなったら、あなたの備えで対応できますか?

この機会に、いま一度考え直してみてください。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

2014年8月 8日 (金)

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル19】鉄道の危険

■当記事は過去記事の再掲載です。内容は加筆修正しています。


今回からは家から離れて、生活の中にある「その他の危険」を考えて行きます。最初は、鉄道を中心とした交通機関の危険です。


まず、乗車中に地震に遭遇する可能性が最も高い、通勤電車から始めましょう。通勤電車に乗っていて大地震が来たら、何が起こるのでしょうか。

そこで誰もが一番恐れるのは脱線転覆だと思いますし、その可能性は否定できません。ただ、ひとつ良い情報があります。最近の鉄道車両は、昔の車両に比べて車体が軽量化され、さらに設計技術の進歩と様々な対策によって、脱線転覆しずらくなっているのです。

さらに軽いということはブレーキも良く効くようになり、ブレーキをかけた時の停止距離も短くなっています。ですから、昔の車両に比べて、物理的な危険はかなり小さくなっていると言えます。

1995年の阪神・淡路大震災では、震度6強~7の地域を走行していた電車が何編成も脱線して大きく傾きましたが、完全に横倒しにまでなった車両はほとんどありませんでした。下写真は、管理人の記憶では一番大きく傾いた車両だと思われます。しかしこれも高架上の留置線に停まっていた無人の編成であり、走行中にこのようになった車両は無かったかと思います。
01
現代の大都市圏を走る車両は、アルミやステンレスなど軽量素材の使用と機器の軽量化で、この当時よりさらに軽くなっていることが多いのです。

このように軽量化によって転覆しずらいだけでなく、強い揺れを受けた際の衝撃荷重が小さくなることで、脱線する可能性も小さくなっているわけですが、地震による「軌道変位」、つまり線路の変形が起きてしまった場合(下写真)には、走行中の列車は確実に脱線することになります。ただその場合でも、転覆に至らなければ乗客の被害はかなり小さくなるのです。
Photo
【阪神・淡路大震災における軌道変位の実例】

しかしあまり考えたくありませんが、地震によって橋が落ちたり、高架橋が完全に崩壊したり、脱線した車両が橋脚などに衝突するケースも無いとは言えません。その際には、軽量化のデメリットが現れることもあります。軽量車体は、昔の車両に比べて変形しやすいのです。

これは2005年の福知山線脱線転覆事故でも指摘されたことです。(下画像)衝突した車両が、ビルに巻き付くように変形しているのがわかります。
Fukuchiyama00
正直なところ、こうなるとお手上げです。でも、実際にはここまでの事故は滅多に起きないでしょうし、事前に乗客自身がリスクを減らす行動をすることもできますので、それについては後述します。

一方、2004年の新潟県中越地震では、震央付近を走行中の上越新幹線車両が脱線して、大きく傾きました(下画像)。
200
この車両は200系という全鋼製車体で重いタイプの車両でしたが、この事故の後、もしあれが新型の軽量アルミボディ車両だったら転覆していたかもしれないと指摘されました。車体が重かったから、脱線しても転覆しないで「滑って」行ったのだと。高速で運動エネルギーの大きな新幹線車両では、軽量化が逆に問題を大きくする可能性があるのです。

この時は、積雪地特有の「排雪溝」が有利に働いた面もあります。線路脇に雪を落とすための溝があり、車体がそこにはまって滑ったために、それ以上傾かなかったことが画像からもわかります。でも積雪地以外に「排雪溝」はありません。

そこで、この事例を教訓として現在の新幹線には様々な改良が施されています。まず「脱線防止ガード」の設置(下写真で線路間にある黒い板)。
Photo_3
地震で強い揺れが予想される地域で、線路の内側にガード板を設置することで、地震で片方の車輪が浮かび上がっても、もう片方の車輪がずれてすぐに脱線しないようになっています。

そして車両の台車には、「L型車両ガイド」が設置されました(下画像は、JR東日本のWEBサイトからお借りしました)
Photo_2
台車の軸箱下に逆L型のガイドをとりつけ、脱線した場合でもガイドがレールにひっかかり、線路から大きくずれるのを防ぐ器具です。

施設や車両の対策に加え、最も大きな対策が「新幹線早期地震検知システム」(JR東日本での愛称は「ユレダス」)の採用です。これは「緊急地震速報」と基本的には同様のシステムで、沿線各地に配置された地震センサーで、最初に発生するたて揺れ(P波)を検知した直後、その後に来る横揺れ(S波)が大きくなると予想される地域を走る全車両に向け、自動的に非常ブレーキをかける指令を送るというもの。

このシステムの効果は、東日本大震災で最大限に発揮されました。関東から東北にかけての全新幹線車両が最短時間で停止し、震源に最も近かった、つまり時間的に最も余裕が無かった編成でも、強い揺れが来る前に安全速度にまで減速できていたのです。もちろん脱線も起きなければ、けが人のひとりも出ていません。

ただし、これはP波とS波の間にある程度の時間ができる、震源との距離が遠い地震の場合に最大の効果を発揮するもので、P波とS波がごく短時間差で来る直下型地震の場合は、特に震央近くでの効果は小さくなります。しかし数秒でも早く減速できる効果は絶大ですし、震央から距離が開くほど、その効果は増して行きます。

総合的に見れば、2004年の新潟県中越地震当時に比べて、新幹線の安全性は数倍以上になっていると言えるでしょう。新幹線のような高速列車の場合は、航空機に乗っている時のように個人でできる対策はごく限られて来ますので、このような安全システムの進歩は何より心強いものです。言うまでも無く、この分野において我が国は世界一の技術と経験を持っているのです。

さて、地震による鉄道の危険性がある程度わかったところで、次回は通勤電車で強い地震に遭った時には何が起きるかについて考えます。


■当記事は、カテゴリ【災害対策マニュアル】です。

2014年8月 7日 (木)

エボラ出血熱アウトブレイク!

西アフリカ地域で、エボラ出血熱が過去最悪レベルのアウトブレイク(感染爆発)に発展しつつあり、死者数は既に約900人に上っています。

エボラ出血熱とは、ジャングル内の小動物と考えられているウイルス宿主(しゅくしゅ)から人間に感染するとされるウイルス感染症で、感染すると体内外から出血して衰弱し、高い確率で死亡に至る最悪レベルの感染症です。

現時点では、死亡率は過去最悪のレベルまで達していませんが、今後アウトブレイクが終息に向かうにつれて、最悪の場合80%程度まで上昇することが懸念されています。

エボラ出血熱には効果的な治療方法は見つかっておらず、あくまで対症療法を行うのみです。現地では十分な防疫・治療体制が取られていないケースも多く、医療関係者への感染、死亡も起きはじめている、極めて深刻な事態となっています。

現実的な対応策としては、患者の血液、体液、便などへの接触防止と感染者の移動禁止しかありません。ウイルスは細菌と違って生体の中でしか生きられません。ですから感染者の回復または死亡によってウイルスが死滅するのを待つしかないのです。

その間、新たな感染者を出さないようにしないとなりませんが、現地では医療関係者の数や体制が不十分で、住民への対策も徹底されておらず、現時点では封じ込めに成功しているとは言えない状態です。

一部地域から現地への航空路が運休するなどの対応が取られ始めていますが、中東地域へ感染者が移動して死亡した事例も発生しており、他地域への感染拡大が懸念されています。

アジア地域は、西アフリカ地域との直接交流は少ないものの、感染者が他地域を経由して飛び石的に移動して来る可能性は捨てきれず、決して対岸の火事と安心できる状況ではありません。

感染から発病までの潜伏期間は3〜4日程度とされ、初期症状は風邪に似ているそうです。その間に、感染に気づかずに移動してしまう場合もあります。

今後は、感染地域の完全封鎖、国境封鎖などより厳重な対策が行われると思われますが、徹底されない可能性もありますから、全地球的な危機と認識しなければならない状況です。現在認識されているうちで最悪と言える感染症が、その猛威を振るいはじめているのです。


エボラ出血熱の恐怖については、米国の作家トム・クランシーの長編国際サスペンス小説『合衆国崩壊』に詳しく描かれています。米国が中東某国による同時多発的なエボラ出血熱テロに遭うというフィクションですが、ウイルスの威力、感染する状況、症状、そして封じ込めへの対策などについて詳細なリサーチを基に描かれていますので、興味のある方はご一読をお勧めします。

アウトブレイクが大規模化してしまった場合の恐怖が、非常にリアルに描かれています。エボラウイルスとの戦いは目に見えない敵と人類の壮絶な戦争であり、決して絵空事ではないのです。

その戦いは“地域紛争”から”内戦”のレベルに入りつつあります。今後の推移と情報に注目したいと思います。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。



台風11号予想日米比較

強い勢力を持つ台風11号HALONG(ハーロン)が接近しています。今後は日本列島に接近し、西日本に上陸する可能性が高くなって来ました。上陸が予想される場所は、高知県付近とされていますので、再び付近が豪雨に見舞われる可能性があります。接近中の大雨も含めて、厳重な警戒が必要です。

さて、この時点での気象庁の針路予想と米海軍のNRL(Naval Reserch Laboratory)発表の予想を比較してみます。まず、気象庁発表の図表をお借りしました。
T115day

続いてNRAサイトからお借りした図表。表示時刻はグリニッジ標準時です。(日本時間マイナス9時間)
T11usa

現時点ではNAR発表の方が若干東寄りのコースを取る予想になっていますが、概ね同じと言って良いでしょう。いずれにしても、九州から四国地方が再び豪雨に見舞われる可能性が非常に高いので、先の豪雨に遭っている場所では、氾濫や土砂災害に対してより一層の警戒と対策が必要です。

水防対策以外では、山崩れや土石流災害に備えて、危険地帯の方は台風接近前に安全な場所へ避難、移動されることをお勧めします。繰り返し豪雨を受けることで、脆弱性のある斜面は非常に崩れやすくなっているからです。手遅れにならないうちに、早めに行動してください。

■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年8月 6日 (水)

【ニュース解説】高校生が雷撃受け重体

本日8月6日、非常に強い雷雨に見舞われた愛知県扶桑市で、野球の練習中だった高校生が落雷を受け、心配停止状態になっています。時事通信ニュースから記事を引用させていただきます。

(以下引用)--------------- 
【高2男子、落雷で重体=野球部の練習試合中-愛知・扶桑】
6日午後1時15分ごろ、愛知県扶桑町斎藤の私立誠信高校から「雷が落ち、負傷者がいる」と110番があった。グラウンドで練習試合中だった同校野球部2年の安藤翔輝さん(17)が意識不明の重体で、同県一宮市の病院に救急搬送された。他にけが人はいない。
 県警犬山署などによると、野球部は同0時40分ごろ練習試合を開始。大雨で中断したが、天気が良くなったと判断して再開した直後、マウンドにいたピッチャーの安藤さんに雷が落ちたという。直後は心肺停止状態で、その場で自動体外式除細動器(AED)による蘇生措置を受けた。
(引用終了)----------------

この事故当時、現地では強い雷雨が上がり、天候が回復していたと言い、報道によれば『ほとんど雷鳴も聞こえない』状態だったそうです。それでも落雷が発生しました。

このように、雷雲が非常に強力な場合、遠くでゴロゴロ聞こえている状態や、場合によっては雷鳴は全く聞こえず、上空も明るい状態で落雷するということもあります。

今日の愛知県地方は大気が非常に不安定で、名古屋市で時間雨量100mm(レーダー解析)を記録するなど、非常に強い雷雲が発生している中での事故でした。

開けたグラウンドの中で、マウンド上にいた(報道による)ピッチャーに落雷したのは、マウンド上がグラウンドの中で相対的にもっとも高い場所だったからということができます。雷は大抵の場合、その場所で一番背の高いものに落ちるのです。野球の場合、構えたバットも危険となります。


この事故のように、落雷の危険は雷鳴や上空の様子だけでは判断できないことがあります。発生している雷雲が非常に強力な場合、その周辺部の広い範囲でも落雷の危険があると判断しなければなりません。特に河川敷、グラウンド、田畑など開けた場所や、強い雷雲が発生しやすい山間部では特別な警戒が必要です。

それを周囲の様子だけから判断するのは困難なことも多いので、そのようなアウトドア活動をする前には、まずその日の気象情報を確認し、『大気が不安定』、つまり強い雷雲が発生しやすいかどうかを知っておく必要があります。

そして現地ではスマホや携帯電話で気象レーダー画像をこまめに確認し、強い雷雲が近づいている場合には、速めに避難すべきです。強い雷雲はひとつだけでなく、連なって移動してくることも多いので、常に“次”を警戒し続けなければなりません。

強い雷雲がまとまって、直系10km以上にも渡って強い降雨をもたらすような、『スーパーセル』と呼ばれるレベルになると、豪雨、落雷に加えて竜巻が発生する可能性も高くなります。

この先、このような過激な気象状況がますます増えて行くことは確実ですので、過去の経験則にとらわれず、最大限の情報収集と警戒をしていないと、突然生命の危機に晒される事も確実に増えて行くのです。

それが、あなたやあなたの大切な人に起きないという保証は、どこにもありません。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。


【中国・雲南地震関連】防水・防寒を強化せよ!

中国、雲南省で8月3日に発生したマグニチュード6.5の地震被害が拡大しています。既に確認された犠牲者数は400人を超え、被災者数は109万人に上ると言われています。

この地震の詳細なデータはまだ入手できていないのですが、発生場所と被害の状況からして、浅い断層が動いた『内陸直下型地震』と考えられます。

被害が拡大している大きな理由のひとつは、建物の構造です。倒壊した建物は2万5500戸に上るのされますが、その多くが現地の伝統的な煉瓦積みや土壁に瓦葺きという構造でした。このような建物は強い地震で倒壊しやすく、煉瓦や壁が割れて崩れることによって、屋内や周囲の生存空間が著しく小さくなるのです。これは、土壁の建物が多いイランなどで、比較的小さな地震でも多数の犠牲者が出る状況と似ています。

今後救出作業が進むにつれて、さらに被害が拡大するのは間違いなさそうです。最新の報道では、川の上流部に形成された山崩れによる土砂ダムの水位が上がり、決壊の危険が大きくなっているとのことです。


この地震被害でひとつ注目すべきは、強い余震の多発はもとより、被災地が強い雷雨に見舞われているということです。このため、山崩れによる道路の寸断とも併せて、救出作業が難航しています。

ただでさえ広大な中国のさらに山間部、しかも豪雨ですから、その困難さは想像するに余りあります。中国よりはるかに狭く、人員、資機材を世界最高レベルで集中的に投入できた東日本大震災でさえ、救出作業はあれほど難航したのです。

問題は、家を失った被災者です。豪雨を凌げる避難所なども、我が国ほど整備されていないでしょう。天候と地震との関係は全く偶然です。我が国においては、今回のような荒天下での巨大災害は事実上起きていないようですが、これは単に幸運だったと言えます。

しかし東日本大震災は寒い季節に起きましたし、翌日に起きた長野県栄村地震の被災地は、豪雪に閉ざさされていました。それだけでも被災者には非常に過酷な状況でした。

最悪のケースを想定すれば、例えば今回の四国豪雨の最中に東南海・南海地震が起きないとは、誰にも言えないのです。

我が国においては過去にあまり実例が無いだけに、個人の災害対策において『防水・防寒』対策が手薄になりがちなことを、当ブログでは当初から指摘して来ました。

でも、今回の雲南地震のようなことも、当然ながら起こるのです。もし今の季節に日本のどこかで地震が起きたら、被災地は激しい雷雨や台風などの荒天に見舞われることになるのです。瓦礫の街を大型台風が直撃するような状況、想像したことはありますか?それは決して絵空事ではありません。

さらに、これも我が国では過去にほとんど例が無いのですが、猛暑の季節に大地震が来てライフラインが途絶したら、『安全・衛生』の問題も急浮上してきます。あらゆるものの腐乱が進み、飲み水の危険も増え、トイレの処理不良による感染症も発生するでしょう。

衛生不良の問題は、目に見えないだけに軽視されがちですが、真綿で首を締めるようにじわじわと、しかし確実に、大規模に襲って来るのです。十分に飲み水が確保できない猛暑の中で下痢になるだけでも、すぐに生命に関わる状況に陥ってしまいます。

ですから、今回の雲南地震を他山の石として、皆様の災害対策の中での『防水・防寒』と『安全・衛生』についてチェックし、不備があれば強化されることを強くお勧めします。

具体的に備えておくべき装備については、当カテゴリの次回記事でまとめます。


■当記事は、カテゴリ【防災用備品】です。

2014年8月 4日 (月)

【防災の心理33】隠された“本当のこと”を知るために

今回の内容は、果たして書くべきかどうかしばらく悩みましたが、敢えて書くことにしました。しかしどうにも煮え切らない内容にならざるを得ず、最初にその点はお詫びしたいと思います。

さて、現実の「死」のイメージがほぼ完全に覆い隠された世の中でそれを能動的に知り、事故や災害から「生き残る」ためのモチベーションを高めたいと思ったなら、どうすれば良いのでしょうか。

その方法はあります。でも、積極的にお勧めはしません。何故なら、その方法では防災のためには不要な、本来目にすべきでない情報も見てしまう可能性が高いからです。その方法を行うためには、見る側にも高い意識と自制心、そして自己責任が求められます。

何より、現実の映像はあまりにもショッキングで、その精神的負担は非常に大きいことを覚悟しなければなりません。そして、かなり誤解を受けやすい行為でもあります。「あんなものを見て、おかしいんじゃないか」と。昨今の猟奇的事件などと絡めて、人格を疑われることもあるでしょう。それもあって、お勧めはできないのです。


管理人個人としては、覆い隠された「本当のこと」をこの目で確かめたいという思いを、強く持っています。ボランティアとして震災後の福島へ行き、リスクを侵して原発事故警戒区域内にも入って、その凄惨な現実を目の当たりにしても来ました。もちろん現実を見るためだけではなく、ボランティア活動の一環としてですが。

そのような行動をする理由のひとつとして、自分が実際に巨大災害に遭遇した時に、現実の凄まじさに圧倒されて後ずさりしたくない、そこで必要とされる行動を躊躇なくできるようになりたいという思いが強いのです。だから自己責任で、「ブルーシートの向う側」の映像などにも触れています。言うなれば、そんな場面に頻繁に立ち会っている警察、消防、救急隊員や医療関係者、災害派遣の自衛隊員などの意識に、少しでも近づきたいという感じでしょうか。


そのような「ブルーシートの向う側」の情報は、ネット上にあります。主に海外のものですが、交通事故、暴動、爆弾テロ現場、戦場などの映像です。最近はシリア内戦、ウクライナ内紛などの最前線からの映像もたくさん入ってきています。一般市民が巻き込まれている映像もかなりあり、凄惨の極みです。

そんな状況で人間が陥る状態は、巨大災害下と非常に似ています。日常が一瞬で地獄に変わり、人間の意識も尊厳も省みられない、圧倒的で破壊的な「死」に蹂躙される現実は、見る者に本能的な嫌悪感を抱かせます(そうではない場合もあるから問題なのですが)

しかし、それが現実であるということを受け入れ、ある日突然それが自分の目前に現出するかもしれないということを意識して"慣れて”おくため、そして、災害時にそうならないためにどうするかを真剣に考えるためならば、見ておくのも良いでしょう。

但し、そのような映像に付随して、ただ嫌悪を催すような不愉快な情報があることも多いので、どこで見られるかなどという情報は記しません。あくまで自己責任で、情報の選別力が問われる部分でもあります。ネットで検索すれば、様々な映像が見つかるでしょう。


今回は批判や誤解を覚悟の上で、あまりにも覆い隠された「死」の現実に対するアンチテーゼのひとつとして、かなり迷った末にこの記事をアップしました。繰り返しますが、興味本位で見るべきものではありませんし、非常に誤解を招きやすいことでもあります。そして、強い精神的ショックを受けるでしょう。あくまで自己責任で、「本当はどうなのか」を知るために限っていただければと、管理人は願っています。

結果的に不十分な内容で、なんだか「振り」のようになっている部分も否めませんが、災害犠牲者の存在を忘れず、同じような悲劇を繰り返さないためのモチベーションを高めるために役立つならばという考えで、こういうやり方もあるんだというふうにご理解いただければと思います。

結局、あまりにも現実の恐怖か隠されすぎているために、興味本位でそのような映像を集めたサイトなどが繁盛してしまっているというのも、一面の真実でしょう。基本的には、公式に現実の姿を「教育」するためのメソッドが必要ではないかと考えています。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

2014年8月 2日 (土)

川を甘く見るな!

8月1日、神奈川県、丹沢のオートキャンプ場で四輪駆動車が増水した川に流され、乗っていた家族4人のうち子供2名を含む3人が死亡または行方不明になるという、痛ましい事故が起きました。この事故はなぜ起きたのか、報道から考えて見ます。

報道からわかることは、以下の通り。
■現場は、四輪駆動車で浅い川を渡って行くオートキャンプサイトだった。
■夕方から夜にかけて、川の上流域で時間雨量50mmを超える雷雨が降り、川が増水していた。
■父親が売店に行ったところ、「川が増水して危険だら避難した方が良い」と勧められた。
■家族4人が車に乗り、管理棟などがある安全な場所へ向かって川を渡っている時に流された。

報道映像などからわかることは以下の通り。
■乗っていた車は乗用車ベースの四輪駆動車で、車高が低く、タイヤも乗用車タイプのもので、不整地の走破性は高くないタイプだった。
■結果的に、キャンプサイトは冠水しなかった。
■周囲の山の斜面を登れば、キャンプサイトが冠水しても人は避難することはできた。

以上のような状況下でいくつかの判断ミスが重なった結果、惨事に繋がりました。ミスをまとめます。
■上流域での豪雨や川の増水を把握していなかったか、していても危険だと判断していなかった。報道によれば、売店で言われるまで避難の意思は無かったと思われる。
■自分の車の走破性を把握しておらず、増水した川渡りの経験も多くは無かったと思われる。周囲は既に暗く、ヘッドライトの明かりだけで増水した川に入ったと思われる。
■そのような状況で、渡河可能か十分な調査・判断をせずに、家族全員を乗せていきなり川に入ってしまった。

報道にはありませんが、キャンプサイト側の対応にも疑問を感じます。
■本人が売店に行かなければ、避難を勧告しなかったのではないか。
■避難方法を指示したのか。しなければ、荷物や車を守るために渡河を試みることは十分に予想できる。慣れた人間が渡河場所や方法、限界などを指導すべきではないか。


では、このような場合はどうしたら良いのでしょうか。

まず大前提として、夏場に山間部でキャンプなどをする場合、川から十分な高さがある場合を除き、付近や上流での激しい雷雨による増水を、常に想定していなければなりません。ラジオでは局地的な情報はあまり得られませんので、ネットで気象レーダー画像を見るのが良いでしょう。しかし山間部では圏外のことも多いので、地元の気象に詳しいキャンプサイト管理者などから、避難のタイミングや方法などについて、十分な情報を得ておく必要があります。

次に緊急避難場所。もし全体の避難が間に合わない状況になった場合に備え、同行者と緊急避難場所を打ち合わせておく必要があります。冠水が始まったらこの斜面に登れ、水が少しでも来ていたら荷物はすべて放棄、というような打ち合わせをしておけば最短時間で避難でき、同行者が離散する心配もありません。

この事故においては車の走破性と、恐らく運転者の判断力と運転技術の問題もあったと思われます。管理人は、かつて北海道で大型四駆車(ハイラックスLN46)でオフロードを走っていましたが、その経験からしても、被害者が乗っているような車高の低い乗用車ベースの四駆で、少しでも増水した川に入る勇気はありません。タイヤ半分の水深でも流速が上がっていたら、すぐにボディに水流が当たり、一気に押し流されるでしょう。あのタイプは、タイヤが4つとも駆動するだけの乗用車に過ぎないのです。せいぜい雪道に強いくらいで、オフロードをガンガン走れる車ではありません。

しかも夜間、水面をライトで照らしても水深も流速もほどんとわかりません。さらに渡河中は大きく揺れてライトが前方を照らすとは限らず、ほとんど盲目走行になった可能性があります。

流れの速い部分では、恐らくエンジンが載った重い前部を軸に回転し、車が上流を向いた可能性が高いと思われます。そうなると水しぶきがフロントガラスにかかり、ワイパーを動かしても視界はほぼ無くなります。そうでなくても、流され始めてしまうと一切のコントロールは不能となります。これは津波や洪水で流されるのと同じことです。

現実の状況はどうであれ、少なくとも渡河中に流されて転覆しているということは、技術云々以前にあのような車で渡河できるレベルでは無かったということです。しかし実際に自分の車の走破力を把握している四駆ドライバーは少ないでしょうから、そんな車が集まるキャンプサイトでは、非常時のための情報提供や指導が必須だと思うのですが、その辺はどうだったのでしょうか。


もっとも、冠水するかもしれないという段階で、車も荷物も放棄して避難するというのは、相当な覚悟が必要です。せめて車は守りたい。もし管理人が、そのような状況だったらどうするかについて考えました。

まず、管理者などと連絡を取って、出来る限りの情報を集めます。それを元に川を実際に見て、渡河可能かどうか判断します。確信は持てないけれど大丈夫そうならば、まずは家族を安全な場所に避難させた上で、一人でトライするでしょう。一人ならば、流されてもなんとかなります。もちろんライフジャケットや浮きになるもの、レスキューハンマーなど、最大限の準備をした上でです。

しかし夜間に増水した渓流に流されたら、相当な幸運に恵まれない限りは最悪の結果になるでしょうから、かなり危険なトライです。少しでも不安があったら、やるべきではありません。

渡河に成功したら、すぐに戻ってさらに増水する前に、全員乗って脱出します。必要な情報、技術と経験があれば、一度できたことは大抵またできるのです。しかし現実的には、四駆ドライバーでもそんな経験を積む機会はなかなかありません。であれば、できることはただひとつです。

危険が予想される場所で過ごす時には、事前に集められる情報を徹底的に集め、危険度が高いと思われたら早め早めに安全な場所へ移動することしかありません。雷雨で川が増水する場合はほんの数分のうちですから、気がついてからでは手遅れのことが多いのです。雷雨が来る晩に、川の中州でしこたまビールを飲んで寝てしまうなど、管理人は怖くてできません。

今回の事故の場合も、結果論を言えば無理に避難しなくても大丈夫だったわけですが、その場合でも山の斜面に登り、真っ暗なな中で川の水が減り始めるまでずっと監視していなければならなかったでしょう。

今まで何度もそんなレジャーに行って、危険な目に遭ったことが無いという方も多いでしょうが、その理由は簡単です。「運が良かった」のです。

そしてこの先、ゲリラ的な短時間豪雨はさらにその頻度と強度を増して行くでしょう。つまり、今回の事故のような状況が増えて行くということは間違いありません。絶対に、川を甘く見てはいけないのです。


■8月5日追記
記事本文では、『山の斜面を登って避難できた』と書きましたが、その後の報道で山の斜面との間にも川がある、いわゆる中州であることがわかりました。当初の報道映像では山側の流水が見えにくかったせいもありますが、まさかあんな低い中州にキャンプサイトを作るわけが無いという思い込みもありました。しかし、それは事実だったのです。

あきれて物が言えないとはこのことでしょう。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2014年8月 1日 (金)

【防災の心理32】本当に必要な「教育」とは?

連日、紛争地域からのニュースが届きます。自爆テロで数十人死亡、○○地区の戦闘で千人以上死亡、長期の内戦で数万人が死亡等々。しかしそんなニュースを見ても、その現場の凄惨なイメージを想像し、恐怖を感じる人は少ないでしょう。自分に関係の無い海外の話なら尚更です。

では、東日本大震災直後を思い出してください。○○町で数百人が死亡、○○海岸で千体以上の遺体を収容というような、現代の我が国ではだれも考えなかった、まるで戦時のような"異常な"ニュースを、連日目の当たりにさせられました。

それでも、そんなニュースはあくまで「数字」に過ぎず、そこから根源的な死の恐怖を感じることはなかなかできません。家族を失って嘆き悲しむ人の姿を見ても、悲惨さは伝わっても、恐怖と苦痛の中で亡くなった人々の現実を感じることはできません。

でもそこには凄惨な大量死という現実が確かに存在し、それこそが巨大災害における恐怖の本質です。しかしそのイメージはほぼ完全に覆い隠され、現場にいた人々以外には、本当の恐怖は伝わっていないのです。管理人は震災の二ヶ月後から福島と宮城の津波被災地に入りましたが、その頃には現場に立ってさえ、そこで起きた大量死という現実の断片さえも感じることはできませんでした。あくまで、想像するだけだったのです。

ではそこで何があったのか。そこにいた人々は何を見たのか。管理人の知人に、震災の二日後、3月13日に宮城県の津波被災地に救援物資を届けた人がいます。詳しい場所は記しませんが、そこで見たことを伺いましたので、敢えてそのまま記します。非常に凄惨な内容ですので、ご注意ください。

『海岸沿いの道を走っていると、何キロにも渡って波打ち際に遺体が浮いていた。子供の遺体もたくさん見えた。街に入ると、高さ10メートルにもなるがれきの山がいくつもできていたが、どの山も半分くらいが遺体で覆われていた。ほとんどの遺体は、がれきの濁流に巻き込まれたために激しく損傷し"普通の状態”ではなかった。しかし血は水で洗い流され、傷口はみな白くなっていた。街全体に、死臭が漂っていた。』

被災地にいた人々が目にした、現実のごく一部です。生き残った人々はその中で家族や知人を探し、消防、警察、自衛隊員などは、そんな遺体を捜索、収容したのです。それがどんなに悲惨で過酷なことであったか、想像できるでしょうか。


今震災では、行政、メディア、そして個人が膨大な量の映像をリアルタイムで撮影しています。その中には、そのような現実を映し出したものも少なくないはずですが、これほどの超巨大災害にも関わらず、本当に悲惨な映像は、見事なまでに我々の目に触れることはありません。

前記事でも書きましたが、管理人はそれらを全部公開しろと主張しているのではありません。十分な配慮は必要なのです。興味本位で見て良いものでもありません。ただ、「これでいいのか?」という思いも強いのです。

2万人以上の人が亡くなったり行方不明になっているのに、そして同じような危険が他の多くの人々にも降りかかる可能性が小さくないというのに、その最も本質的な恐怖であり、最も避けなければならない「死」を、これほどまでに覆い隠すことが、果たして正しいのだろうかと。然るべき機関などが、然るべき方法で、十分な配慮の下で「教育」のために公開する必要があるのではないかと。

事故でも災害でも、そこで起こる凄惨な「死」を直視させて現実の恐怖を感じさせることが、個人の防災意識と災害対応力を最大限に発揮させ、ひいては犠牲者を減らすための最も効果的な方法ではないかと、管理人は考えるのです。実写がダメならアニメでもCGでも、とにかく現実の恐怖を「教育」するという発想はできないものでしょうか。


前記事をお読みいただいた読者の方から、以下のようなメッセージをいただきました。
『私の通った女子高では、交通事故や火災の現場、遺体安置所、病院の中などの映像を、年に数回、全校生徒に見せていた。でも今はもうやっていないようだ。』

管理人の免停講習の話もそうですが、以前はそういう「教育」も行われていましたし、今も少しはあるかもしれません。でもそれが「悲惨すぎる」とか「ショックが大きすぎる」などという"配慮”によって、ほとんど無くなってしまっているようです。若い人にこそ、そのような「教育」が必要だと思うのですが。


近年、小学校などでスタントマンが交通事故を再現して、その危険を教育するメソッドが行われているそうです。それを見た子供たちには、きっと一生ものの高い安全意識が植え付けられるでしょう。あんなに怖い、痛そうな事故には絶対に遭いたくたくないと。そういう思いを植え付けることが安全・防災教育の根源に無ければ、その効果は半減してしまうでしょう。要は、本能的な恐怖をかき立てるのです。

そして高校生くらいになったら、さらに現実の恐怖を直視させる防災教育と、救命救急講習を必修とするくらいになればいいなと、管理人は思うのです。我が国は、世界でも有数の災害大国なのですから。


さて、ここまで管理人の考えを述べて来ましたが、上記のような「教育」がすぐに実現するとも思えません。もしあなたが事故や災害の悲惨な現実を直視し、自らの安全・防災意識を高めたいと思われたら、どうすれば良いのでしょうか。

次回に続きます。


■当記事は、カテゴリ【防災の心理】です。

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