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2014年8月 2日 (土)

川を甘く見るな!

8月1日、神奈川県、丹沢のオートキャンプ場で四輪駆動車が増水した川に流され、乗っていた家族4人のうち子供2名を含む3人が死亡または行方不明になるという、痛ましい事故が起きました。この事故はなぜ起きたのか、報道から考えて見ます。

報道からわかることは、以下の通り。
■現場は、四輪駆動車で浅い川を渡って行くオートキャンプサイトだった。
■夕方から夜にかけて、川の上流域で時間雨量50mmを超える雷雨が降り、川が増水していた。
■父親が売店に行ったところ、「川が増水して危険だら避難した方が良い」と勧められた。
■家族4人が車に乗り、管理棟などがある安全な場所へ向かって川を渡っている時に流された。

報道映像などからわかることは以下の通り。
■乗っていた車は乗用車ベースの四輪駆動車で、車高が低く、タイヤも乗用車タイプのもので、不整地の走破性は高くないタイプだった。
■結果的に、キャンプサイトは冠水しなかった。
■周囲の山の斜面を登れば、キャンプサイトが冠水しても人は避難することはできた。

以上のような状況下でいくつかの判断ミスが重なった結果、惨事に繋がりました。ミスをまとめます。
■上流域での豪雨や川の増水を把握していなかったか、していても危険だと判断していなかった。報道によれば、売店で言われるまで避難の意思は無かったと思われる。
■自分の車の走破性を把握しておらず、増水した川渡りの経験も多くは無かったと思われる。周囲は既に暗く、ヘッドライトの明かりだけで増水した川に入ったと思われる。
■そのような状況で、渡河可能か十分な調査・判断をせずに、家族全員を乗せていきなり川に入ってしまった。

報道にはありませんが、キャンプサイト側の対応にも疑問を感じます。
■本人が売店に行かなければ、避難を勧告しなかったのではないか。
■避難方法を指示したのか。しなければ、荷物や車を守るために渡河を試みることは十分に予想できる。慣れた人間が渡河場所や方法、限界などを指導すべきではないか。


では、このような場合はどうしたら良いのでしょうか。

まず大前提として、夏場に山間部でキャンプなどをする場合、川から十分な高さがある場合を除き、付近や上流での激しい雷雨による増水を、常に想定していなければなりません。ラジオでは局地的な情報はあまり得られませんので、ネットで気象レーダー画像を見るのが良いでしょう。しかし山間部では圏外のことも多いので、地元の気象に詳しいキャンプサイト管理者などから、避難のタイミングや方法などについて、十分な情報を得ておく必要があります。

次に緊急避難場所。もし全体の避難が間に合わない状況になった場合に備え、同行者と緊急避難場所を打ち合わせておく必要があります。冠水が始まったらこの斜面に登れ、水が少しでも来ていたら荷物はすべて放棄、というような打ち合わせをしておけば最短時間で避難でき、同行者が離散する心配もありません。

この事故においては車の走破性と、恐らく運転者の判断力と運転技術の問題もあったと思われます。管理人は、かつて北海道で大型四駆車(ハイラックスLN46)でオフロードを走っていましたが、その経験からしても、被害者が乗っているような車高の低い乗用車ベースの四駆で、少しでも増水した川に入る勇気はありません。タイヤ半分の水深でも流速が上がっていたら、すぐにボディに水流が当たり、一気に押し流されるでしょう。あのタイプは、タイヤが4つとも駆動するだけの乗用車に過ぎないのです。せいぜい雪道に強いくらいで、オフロードをガンガン走れる車ではありません。

しかも夜間、水面をライトで照らしても水深も流速もほどんとわかりません。さらに渡河中は大きく揺れてライトが前方を照らすとは限らず、ほとんど盲目走行になった可能性があります。

流れの速い部分では、恐らくエンジンが載った重い前部を軸に回転し、車が上流を向いた可能性が高いと思われます。そうなると水しぶきがフロントガラスにかかり、ワイパーを動かしても視界はほぼ無くなります。そうでなくても、流され始めてしまうと一切のコントロールは不能となります。これは津波や洪水で流されるのと同じことです。

現実の状況はどうであれ、少なくとも渡河中に流されて転覆しているということは、技術云々以前にあのような車で渡河できるレベルでは無かったということです。しかし実際に自分の車の走破力を把握している四駆ドライバーは少ないでしょうから、そんな車が集まるキャンプサイトでは、非常時のための情報提供や指導が必須だと思うのですが、その辺はどうだったのでしょうか。


もっとも、冠水するかもしれないという段階で、車も荷物も放棄して避難するというのは、相当な覚悟が必要です。せめて車は守りたい。もし管理人が、そのような状況だったらどうするかについて考えました。

まず、管理者などと連絡を取って、出来る限りの情報を集めます。それを元に川を実際に見て、渡河可能かどうか判断します。確信は持てないけれど大丈夫そうならば、まずは家族を安全な場所に避難させた上で、一人でトライするでしょう。一人ならば、流されてもなんとかなります。もちろんライフジャケットや浮きになるもの、レスキューハンマーなど、最大限の準備をした上でです。

しかし夜間に増水した渓流に流されたら、相当な幸運に恵まれない限りは最悪の結果になるでしょうから、かなり危険なトライです。少しでも不安があったら、やるべきではありません。

渡河に成功したら、すぐに戻ってさらに増水する前に、全員乗って脱出します。必要な情報、技術と経験があれば、一度できたことは大抵またできるのです。しかし現実的には、四駆ドライバーでもそんな経験を積む機会はなかなかありません。であれば、できることはただひとつです。

危険が予想される場所で過ごす時には、事前に集められる情報を徹底的に集め、危険度が高いと思われたら早め早めに安全な場所へ移動することしかありません。雷雨で川が増水する場合はほんの数分のうちですから、気がついてからでは手遅れのことが多いのです。雷雨が来る晩に、川の中州でしこたまビールを飲んで寝てしまうなど、管理人は怖くてできません。

今回の事故の場合も、結果論を言えば無理に避難しなくても大丈夫だったわけですが、その場合でも山の斜面に登り、真っ暗なな中で川の水が減り始めるまでずっと監視していなければならなかったでしょう。

今まで何度もそんなレジャーに行って、危険な目に遭ったことが無いという方も多いでしょうが、その理由は簡単です。「運が良かった」のです。

そしてこの先、ゲリラ的な短時間豪雨はさらにその頻度と強度を増して行くでしょう。つまり、今回の事故のような状況が増えて行くということは間違いありません。絶対に、川を甘く見てはいけないのです。


■8月5日追記
記事本文では、『山の斜面を登って避難できた』と書きましたが、その後の報道で山の斜面との間にも川がある、いわゆる中州であることがわかりました。当初の報道映像では山側の流水が見えにくかったせいもありますが、まさかあんな低い中州にキャンプサイトを作るわけが無いという思い込みもありました。しかし、それは事実だったのです。

あきれて物が言えないとはこのことでしょう。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

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コメント

本日の報道では、川の中洲のキャンプ場自体が、県の許可を得ずに川の流れを変えて造成されたもので、緊急時の避難マニュアルも特に無かったとの事でした。


川の中洲なんて、普通は怖いので子連れでテントは張らないと思うんですよ。
でも、業者の入っているキャンプ場なら安全性は確保されているのかな? と一瞬考えてしまう。
いい加減な対応の、キャンプ場に腹がたって腹がたって。


しかし、そういった運営の事情もコミで、自分で判断しないといけないんですよね…。キャンプ場にもうかうか行けないsweat01

>ぼたもちさん

コメントありがとうございます。

記事でも指摘した通り、やはりキャンプ場側にも問題がありましたね。雷雨程度で戻れなくなる中州にキャンプサイトを作って、出入りもあまり管理していなかったようで。あんな場所、雷雨が来る夏場は閉鎖すべきレベルですよ。

でも中州にいたのはあの一家族だけで、他はみんな安全な場所にいたようですね。四駆乗りがどれだけいたかはわかりませんが、大抵の人は真っ当な判断力を持っていたと思いたいです。

川に囲まれた中州で、水面との高低差がほとんど無く、雷雨が来るというだけで、本来ならば自然に危険だと思う場所です。しかも、あの車は四駆としてのオフロード走破性など無いに等しい。あんなもので、危険な場所でオフロードごっこやろうという発想が理解できない。駆動力以前に、あの場所ではすぐに腹をこすってしまったはず。

それでも行く客と行かせるキャンプサイト側、両方の過失です。

街の住人は自然についての知識は少ないのは当然かもしれませんが、セルフディフェンスとフェイルセイフの発想があれば、「ちょっと考えればわかる」のです。それも無謀な若者や一人の話じゃなく、家族連れですからね。

キャンプサイトに行く際は、もちろんしっかりした対応のところが安心ですが、自分でちょっと判断すれば、大抵は大丈夫ですよ。まあ、行く前にクチコミなどを良く見ておいた方がいいですね。

私は元四駆乗り兼オフロードライダーで、川渡りなどの経験が豊富だからこそ、怖さもわかってます。平常時でも、流れる水の威力は見かけからは想像できないほどの凄さなのです。それを知っていればこそ、わからない人に危険を伝えず、事故に至った背景に腹が立って。

結局、ブログでいつも指摘している、他人任せの低い防災意識の象徴みたいな事故です。亡くなった方が不憫でなりません。

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