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2014年8月25日 (月)

また訳のわからないことを

某有名週刊誌に、富士山の内圧が臨界状態だとかいう記事があるのをネットで見つけました。なんでもフランスの地球科学研究所が日本の観測データを再分析して判定したとかしないとか。まあその真偽については語りません。そんなもの管理人にはわかりませんし。

ただ、その記事にあったコメントがあまりに笑止千万というか噴飯モノというか、“専門家”として許し難いものであったので、そこを指摘したいと思います。@niftyニュースからオリジナル記事を一部引用させていただきます。

(以下引用)--------------------
 「日本のハイネットシステムというネットワークが収集したデータを基に、地球内部のエコー測定が行われました。以前はただのノイズとして除去されていたデータに焦点を当て、日本の地下にある断層などのマップを作成。すると、3・11で地殻が最もダメージを受けたのは東北ではなく、富士山の地下400キロであることが判明したのです」(サイエンス記者)
(引用終了)--------------------

『サイエンス記者』なる人物が、フランスの分析を説明しています。問題は最後の部分。
『地殻が最もダメージを…富士山の地下400キロであった…』
これ、笑えませんか?

地殻の厚さは、海洋底で約6km。陸地下の厚いところでもん30~40kmしかありません。深さ400kmとなれば完全にマントル内ですよ。それを平然と“地殻”とのたまう『サイエンス記者』様。無能かニセモノのどちらかですね。もしかして、フランスの研究所が“地殻”と言っているのなら、ソースが怪しいのかw記事では“フランスの地球科学研究所”というだけで、それ以上の情報はありませんし。

次のネタ。

(以下引用)--------------------
 1707年11月23日に富士山で始まった宝永大噴火では、東南の斜面が大爆発し、約12億トンもの溶岩や火山灰が噴き出て江戸の町にまで火山灰が降り積もったとふされる。
 「特筆すべきは、噴火発生の49日前の10月4日に、遠州灘沖と紀伊半島沖を震源とするM8クラスの南海トラフ巨大地震が発生している点。3・11を考えれば、今も同じような状況にあるということです」(前出・サイエンス記者)
(引用終了)--------------------

また『サイエンス記者』様です。一見、まともですね。でも問題外。1707年の富士山宝永噴火は、確かに現在で言う南海トラフ地震の49日後に起きました。でもこれは南海トラフ地震が富士山の噴火活動を誘発したものであり、本震の後に大規模な直下型地震、地鳴りなどが繰り返されてから噴火に至ったものです。

では、東日本大震災は富士山噴火を誘発するのか。南海トラフ地震は海側のフィリピン海プレートと陸側のユーラシアプレートの相互関係で発生するものですから、太平洋プレートと北アメリカプレートの相互関係で発生した東日本大震災とは、直接的には関連がありません。東日本大震災によって引き起こされた大規模な地殻変動が、大局的に富士山や南海トラフに影響を与えていることは否定できませんが、宝永噴火を引き起こした南海トラフ地震と東日本大震災は、メカニズム的に全くの別モノなのです。

それ以前に、地震の49日後に、多くの前兆の後で噴火したケースと、地震から3年半近く経って前兆が無い状況を『同じような状況にある』とする発想は、ほとんどエセ科学かオカルトの世界。あの世界で良くある強引な関連付けです。つまり、かつて大噴火の前に大地震があった→また大地震があった→今回も大噴火が起こる、という感じで、地域やメカニズムを一切無視してこじつけるような手法です。

管理人は思いました。この『サイエンス記者』は実在しないのだと。恐怖を煽るために仕立てられた架空キャラなのでしょう。

最後は、実在の人物です。氏名の部分はイニシャルに変えさせていただきます。

(以下引用)----------------------
防災ジャーナリストのW氏が言う。
 「活火山の中で最も観測網が発達しているのが富士山ですが、想定の範囲内でしかシグナルは出せない。我々が避難する時間の余裕も与えず活動を開始するのか--それは神のみぞ知るなのです」
(引用終了)----------------------

この御仁、以前当ブログでネタにさせていただいた、『大地震後は見慣れたランドマークが崩壊して帰り道がわからなくなるから、コンパス(方位磁石)を常時持ち歩け』という、非常にユニークwな主張をされている方です。

それはさておき、神のみぞ知る、ですか。アオってますね。“ジャーナリスト”なのに。

火山噴火は、前兆が長く続くこともあれば短時間で噴火に至ることもあります。短時間だった例としては、最近では霧島の新燃岳が挙げられます。それでも、噴火のしばらく前にはマグマの上昇による火山性微動、火山性地震が確実に観測されるのです。数十万人が完全に避難できる十分な時間があるかどうかは“神のみぞ知る”ことかもしれませんが、静かな山がいきなりドカンは無いのです。

それこそ富士山が噴火、それも大規模に噴くのなら大量のマグマの上昇があるわけで、静かなままのわけがない。それに、富士山の噴火をアオる人は、宝永噴火の前に激烈な前兆現象があったということをみんな無視するんですよね。いきなり噴く方が怖い=数字になるから。

まあそれが商売のメディアならともかく、それに乗っかって訳わからんことを言ってるのが“防災ジャーナリスト”ですからねえ。まあ、こんなものでしょ。この世界。責任も問われないから、好きなこと言える“専門家”だし。


この先、いつか富士山が噴く日も来るでしょう。すぐかもしれないし、ずっと先かもしれません。また南海トラフ地震と連鎖するかもしれません。どうなるかは神のみぞ知る、ということは確かでしょうけど。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


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