【徹底的に防水・防寒を考える03】足を濡らすな!
今回は、足の【防水・防寒】について考えます。
当ブログ読者の方はご存じかと思いますが、管理人は常に水害避難時は長靴を履くなという“指導”に反論して来ました。
一般に、長靴を履くなと言われる理由は、たったひとつ。長靴より深い水に入ると、中に水が入って重くなる上に脱げやすいから、ということ。実際に、深い水中で長靴が脱げて履き物を失ったという事例も、多少はあるのでしょう。しかし、それほど多い訳でもないはずです。
ならば水が入らない、もしくは入りにくくすれば、脱げやすいという問題は解決できるわけです。
【長靴はなぜ必要か】
管理人がなぜ長靴に拘るかというと、避難中と避難後に是非ともその機能が必要と考えるからです。
想像してみてください。防水性の無い靴で水や泥の中を歩けば、当然ながら濡れてドロドロです。避難所に着いて靴を脱いでも、中までドロドロ。乾かす場所も普通は無く、せいぜい翌日には、またその靴を履かなければならないでしょう。冬場だったらその冷たさは相当なものですし、濡れているうちはどんどん体温を奪って行きます。
冬場に足が濡れていることの辛さ、ご存じですか?寒冷地ならば、凍傷の危険もあります。
そして、浸水して泥が積もった家の後片づけなどをする時に、長靴でなければまたドロドロになって冷えまくる。長靴ならば、暖房のある場所で逆さまにしておけば、中はすぐ乾きますし、履いているだけでも中の水分は蒸発します。しかも防水・防風性と保温性に優れたゴムですから、冷え続けることはありません。
それ以前に、街中で普段履く運動靴やスニーカーは靴底のパターンが細かくて、水中や泥の中ではとても滑りやすいのです。その点長靴は、泥地を歩く前提のギザギザのソールになっています。泥でも脱げない、滑りにくいという点で理想的なのは紐で編み上げるコンバットブーツやハイカットのキャラバンシューズでしょうが、中まで濡れて乾きにくいという欠点もあります。それに、そんな靴は持っていない人の方が多いでしょう。
その点長靴は、対策をすれば濡れにくい、脱げにくい、滑りにくい、冷えにくい、乾きやすい、そして手に入りやすいのです。 それでも、平気で“紐をきつく締められる運動靴”とかを奨める”防災の専門家”が結構います。そんな輩に一言言いたい。「まず自分でやってみろ」と。
ちなみに、管理人は北海道で雪の中を普通のゴム長靴で歩き回っていましたし、過去記事でも書いた通り、深い泥の中に入った経験も多いので、その機能を実感した上でお奨めしています。
【長靴の浸水対策とは】
なにしろ、水害避難時に長靴を履くなと言われる理由は、その機能を一切無視して、ただ”水が入ったら脱げやすいから”だけなのです。それをどう考えるかは皆様次第ですが、以下、管理人流の長靴使用法を紹介します。この内容は、過去記事でも紹介したものです。
避難が必要な時にそんなことをやっている暇は無いとお考えの方もあるかもしれませんが、少なくとも普段緩めている靴紐を締め上げるよりは、ずっと短時間でできることです。それに、水害避難時は地震のようにいきなり飛び出すわけでもありません。
先に申し上げておきますが、以下の方法が現実的、一般的ではないなどとお考えの方は、是非ほかの“防災の専門家”の指導を取り入れてください。確実に足はずぶ濡れですが。ちなみに下記の方法は、広島土砂災害の現場で、一部の捜索部隊も実際にやっていました。これは別に管理人のアイデアではなく、必要な方々は普通にやっていることなのです。“防災の専門家”が知らないだけですね。
さてその方法ですが、何のことはありません。ガムテープで巻いてズボンと密着させるだけです。
カッパのズボンの裾を上に出して巻けば、さらに防水性は上がります。
たったこれだけです。これで、少なくとも水の重さで脱げることはありませんし、泥の中でもかなり脱げづらくなります。 ポイントは、足を深く曲げた状態でガムテープを巻くこと。そうしないと、ズボンやカッパが突っ張ってしゃがめなくなります。
なお、ガムテープは粘着面が水に濡れるとはがれますので、少なくとも三重以上にぐるぐると巻き付けてください。もし素足の場合でも、長時間水中にいるわけでもなし、ぐるぐる巻いてしまいましょう。剥がす時が辛そうですがw
また、上画像二枚目のように、足首の部分に少しキツめに巻くことで、深い泥の中でもさらに脱げづらくなります。
なお、長靴の問題のひとつに、流水の中では抵抗が大きくて足を取られやすいというものがあります。この点は長靴否定派の“防災の専門家”も無視してますが、川釣りなどをやる方は良くご存じでしょう。
もっとも、足を取られるような激しい流れの中を避難する時点で、長靴以前に危険極まり無い状況です。そうなったら、もうどの靴なら安全というレベルではありませんので、とりあえず頭の隅にでも入れておいてください。
■10/4追記
御嶽山頂の捜索をする陸自隊員の足元に注目。
半長靴(はんちょうか)と迷彩作業服の裾をガムテープで巻いています。半長靴自体には完全な防水性はありませんが、雨でぬかるんだ火山灰泥の侵入・付着対策です。これが考え抜かれたプロのやり方です。長靴(ながぐつ)を履くななどと言うトリビア披露ごっこなどに関わらずに、我々も真似すれば良いだけのことです。
■当記事は、カテゴリ【防災用備品】です。
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コメント
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ここのブログはいつも読ませて頂いてます。
足を濡らさない、ということはとても大切ですね。
長時間、足を濡らしたままだと、塹壕足炎というものに罹患しますので、ガムテープ+長靴は理にかなっていると思います。
個人的には、ガムテープは耐水性が無いのでアメリカで良く使われる【ダクトテープ】の方が良いかなと思います。
足をビニール袋で包んでガムテープ、なんてのも良いかもしれません。
投稿: クマ | 2014年10月 5日 (日) 23時19分
追記です。
靴が濡れた場合の危険性は冷えだけに留まりません。
一度冠水した道路を帰るハメになりましたが、革靴、スニーカーに限らず、靴ひもが濡れれば縮みます。
解けなくなるのです。
この時に靴底に水と一緒に石などの異物が侵入します。
大人なら凌げるかもしれませんが、子供なら動けなくなってしまうでしょう。
非常に危険です。
投稿: クマ | 2014年10月 5日 (日) 23時44分
>クマさん
コメントありがとうございます。ご愛読に感謝です。
記事でも時々触れていますが、私もミリタリー関係にはかなりうるさいのです。災害対策の答えの多くはミリタリーにあると思い、利用できることをできるだけ紹介したいと思っています。
足の濡れに関しては、まさに一次大戦の塹壕戦で問題となった塹壕足のことも例に挙げようと思ったのですが、何日も水に漬かっている状況は無いかなと思い、書きませんでした。個人的には書きたかったのですがw
ガムテープの件にしても、正直なところダクトテープを薦めたかったのですが、入手しずらいしコスト高なので見送りました。画像の陸自隊員が巻いているのは、ガムテープではなくてダクトテープですよね。本当はあれが欲しいところです。
ただ、泥の中のバイクレース時に、モトクロスブーツの上にガムテープを巻いて数時間激しく走っても、三重くらいにしておけば剥がれなかったという経験がありますので、それもあってお薦めした次第です。
そんな時は、レジ袋を『履いて』からブーツを履くなんてこともやってました。その方法もかなり効果的ですよね。
靴紐の件にかんしては、確かに綿の紐だと解けなくなりそうです。私はナイロン紐のブーツでしか水中歩行の経験が無いので、その状態での石などの混入も含めて、そこまで頭が回っていませんでした。今後の記事に反映させていただきたいと思います。
最大の問題は、そういう現実的なことを“防災の専門家”が知らないということなのですが。
投稿: てば | 2014年10月 6日 (月) 09時52分