2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

« SMC防災研究所は幽霊組織か?w | トップページ | エアアジア機が消息断つ »

2014年12月27日 (土)

根拠はどこに?【続々々・間違いだらけの防災情報】

さて、『防災・危機管理ジャーナリスト』を名乗るW氏のコメント、後半部を見てみましょう。まずはコメントを。下記太字部分です。

『我々は間違いなく、富士山大噴火や三陸地震、南海トラフ巨大地震、関東地震があった貞観時代(859~877年)と同じ環境に置かれている。』


【平安中期は大変な時代】
東日本大震災後には、前回の三陸巨大津波を引き起こしたとされる、貞観地震に注目が集まりました。

貞観時代を含む平安時代中期頃は、現在より日本列島各地の地質活動が活発だったのは確かなようです。現在わかっている、貞観時代近辺の主な地震・火山災害を列挙してみます。

・850年11月 出羽国地震(現在の山形・秋田県地方 推定M7)
・863年7月 越中越後地震(現在の新潟・富山県地方)
864年7月  富士山の貞観大噴火(約2年に渡る山麓噴火。後に青木が原樹海となる溶岩原を形成)
・864年11月 阿蘇山噴火
・867年3月 鶴見岳(大分県)噴火
・867年6月 阿蘇山噴火
・868年7月 播磨・山城地震(現在の兵庫・京都地方 推定M7)
・869年1月 摂津地震(現在の大阪府北部)
869年7月 貞観地震(東日本大震災級の三陸沖巨大地震及び巨大津波)
・871年5月 鳥海山(山形・秋田県境)噴火
・874年3月 開聞岳(鹿児島県)噴火
878年10月 相模・武蔵地震(現在の神奈川・東京地方 推定M 7.4)
・880年11月 出雲地震(現在の島根県 推定M 7)
887年8月 仁和地震(南海トラフ地震と推定 M8~8.5クラス)

太字は、W氏のコメントで列挙されている事象ですが、貞観時代を含む850年から887年に渡る37年間には、日本列島のあちこちで他にも地震と噴火が相次いでいたことがわかります。

さて、そこで問題になるのは、果たして平安中期と現在が『間違いなく同じ環境に置かれている』のか?何か根拠があるのか?ということです。

そこでW氏のコメントをもう一度見てください。提示しているのは、富士山噴火、三陸地震、南海トラフ地震、関東地震の4つです。


【効果的なプロモ?】
W氏がピックアップしたのはとても“キャッチーな”4つの災害です。誰もが知っている、誰もが恐れている、そして被災人口が最も多い災害だけが選ばれています。

これは管理人の想像とお断りしておきますが、もしそれが意図的なものならば、やはり災害を怖れる“お客様”を増やすために効果的な事象がピックアップされたようにも見えます。

もっともコメントが全部掲載されず、要約されていることは文面を見ればわかりますから、もしかしたら他の災害にも言及されていたのかもしれませんが。


ともあれ、三陸沖貞観地震の再来とされる東日本大震災の後、富士山噴火、南海トラフ地震、首都圏地震の可能性が高まったのではないかと懸念されているわけですが、それらが比較的短い時代にまとめて起きたのが、平安時代中期ではあります。

では、現在は本当に『同じ環境』なのでしょうか。


【根拠はどこに?】
大前提として、専門家やジャーナリストを名乗る者が、無根拠のことを事実と断言したり自分の想像や主観をいかにも裏付けがある事実のように粉飾して発言することは許されません。

改めて、平安中期に起きた4つの災害の時系列を見てみましょう。

864年7月 富士山噴火(866年頃まで継続)
(5年経過)
869年7月 貞観地震・津波(三陸沖地震)
(約9年経過)
878年10月 相模・武蔵地震(関東地震)
(約9年経過)
887年8月 仁和地震(南海トラフ地震と推定)

年表で見ればすぐでも、こうして見ると結構時間が開いているのがわかります。全体的な地質活動が活発な時代ではありますが、直接的な連鎖ということでは無さそうです。

富士山は山麓噴火であり、約2年という長期間に渡って溶岩が流出するという、爆発的噴火である後の宝永噴火とは全く異なるタイプの噴火でした。

現実的には富士山噴火が三陸沖地震のトリガーとなる可能性は考えられず、南海トラフ地震は、ほぼ周期的発生を繰り返しています。貞観地震から仁和地震は約18年経過しており、少なくとも直接的連鎖とは言えません。

もちろん、貞観地震後には巨大な地殻変動が発生したでしょうから、その大局的影響を受けている可能性は考えられます。しかし、その後も発生を繰り返している南海トラフ地震と三陸沖巨大地震が近い時期に起きたのはこの時代だけでもあります。

断言はできないものの、平安時代中期の地震・火山災害の集中は、この時代特有の地質活動によるものという可能性の方が大きいように見えます。


翻って現在。当時と似ているのは、三陸沖で巨大地震が起きたということのみです。少し長い目で見ると、1995年の阪神・淡路大震災以降、全体的に地震活動が活発化しているという見方もありますが、平安時代中期ほど有意な相関が見えるわけでもありません。

それに、小規模の火山噴火はや噴気は数年ごとくらいにあちこちで起きています。御嶽山で大きな被害が出て、その後噴火の兆候を示す山が報道されたので目立ちますが、それほど特別なことはではありません。

W氏も含めた一部の『専門家』は、御嶽山噴火の後に火山が活動期に入ったと言っていますが、それは長期的評価を伴わなければ言えることではありません。ほんの半年以内に噴火と兆候が続いたから活動期とアオるなど、科学をナメるなという話です。

これは地震や噴火が予知できるできないという話ではなく、単純に統計的な話です。


【根拠は見えない】
そう考えると、平安時代中期と現在が『全く同じ状況』という意見はあくまで主観的なものであり、多少似て来ている、特にいち時代を抜き出して見るとその印象が強くなるというレベルでしょう。つまり、根拠は薄弱です。

それはもちろん大災害がしばらく起きないということではなく、可能性は常にあります。少なくとも、東日本大震災による地殻変動という、はっきりとした理由があります。

しかし、巨大災害が比較的短い時間に集中した平安時代中期と現在が、『全く同じ環境』であるということの根拠にはなりません。あくまで前半部と同じで、「私はそう思う」というレベルに過ぎないのです。


【アオりに騙されるな】
もっとも、そんなことは重要では無いのです。

何度も繰り返していますが、商業ベースで防災のプロ、専門家、ナントカジャーナリストとか名乗る手合いの一部がいかに不良情報を撒き散らしているか、それが無批判で拡散されているかということを知ってください。

防災情報なんて、多少の基礎知識を持って、公開されている情報をそれなりに組み合わせれば、誰でもそれっぽいことを言えるんですよ。管理人もその一人ですがw


災害予知や災害対策は絶対ということがほとんど無い世界ですから、どんな曖昧なことでも正論に見せかけるのは簡単です。最後には、

『いつ、どこで、何が起きてもおかしくない』という、“究極の正論”を言っておけば良いのですし。


なんだかんだと言って個人攻撃みたいで後味が悪いのですが、巷にはこんな不良情報が山ほどあるということを知っていただき、皆様自身でよく吟味していただければと思います。

『専門家』が言うから、必ずしも正しい、必ず役に立つとは限らないということを申し上げて、このシリーズを終了します。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


« SMC防災研究所は幽霊組織か?w | トップページ | エアアジア機が消息断つ »

日記・コラム」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/543100/60874296

この記事へのトラックバック一覧です: 根拠はどこに?【続々々・間違いだらけの防災情報】:

« SMC防災研究所は幽霊組織か?w | トップページ | エアアジア機が消息断つ »