直下型地震ってなに!?
あの記事以来、我ながらタイトルがちょっとあざとくなって来ましたねw
ここ数日で、ある検索フレーズが急上昇してきましたので、それについて一言。
そのフレーズとは『長野地震は直下型地震か』というもの。長野地震とは、去る11月22日に発生した『長野県神城断層地震』のことと思われます。
あの地震は典型的な内陸直下型地震だったわけですが、このような疑問が検索上位に上がってしまうということに、ちょっと驚いていたりもします。
しかしそれも無理からぬ部分もあるかと思いますので、少し解説させていただきます。
【直下で起きれば直下型地震】
東日本大震災以降、地震のタイプについて目にすることが増えました。一般的なものは、下記の2種類になるかと思います。
・プレート境界型(海溝型)地震
・直下型地震
この他、当ブログでもスラブ内地震、アウターライズ地震、深発地震などいろいろ登場しますが、それらは地震発生のメカニズムや発生場所による細かい分類であり、あまり一般的なものではありません。
上記2種類のうち、『プレート境界型(海溝型)地震』とは、地球を覆うプレートの境界で発生する地震のことで、東日本大震災や想定される南海トラフ地震はこのタイプです。震源はプレート境界のすべり面となるため、日本列島付近では震源深さが20~30km程度となるのが一般的です。
なお日本列島付近のプレート境界の多くが海底にあり、そこに形成された海溝付近で地震が発生するため、海溝型地震とも呼ばれるわけです。
しかしプレート境界は海底とは限らず、米国西海岸のサンアンドレアス断層のように陸上にある場合もありますから、プレート境界型地震イコール海溝型地震というわけではありません。
過去に巨大地震が起きていないのであまり取り沙汰されませんが、日本列島を構造的に分断する糸魚川‐静岡構造線(フォッサマグナ)は、北アメリカプレートとユーラシアプレートのプレート境界が地表に現れている大断層帯ということができます。
あの付近に大きなストレスがかかりやすいメカニズムでは無いために、フォッサマグナ中心付近で巨大地震が起きる可能性は高くありません。しかしストレスがかかっていない訳ではないので、フォッサマグナ周辺の破砕帯内での浅い地震は起き続けるでしょう。
破砕帯とは、巨大断層付近に存在する岩盤が破砕された、つまり多くのヒビが入った領域であり、中小規模の断層が集中している部分です。
今回の長野県神城断層地震は、フォッサマグナ東側の破砕帯内の断層が動いた、典型的な『直下型地震』だったわけです。
【直下型地震は存在しない?】
では、『直下型地震』とは何でしょうか。
実は、『プレート境界型地震』のように明確な定義が無いのです。乱暴に言ってしまえば、どこかの直下で起きた地震はすべて直下型地震であり、発生メカニズムによる『直下型地震』という分類は存在しないのです。
『直下型地震』とは発生メカニズムではなく発生形態による分類ですから、一言に直下型と言っても複数のタイプがあります。
例えば、南関東の地下は北アメリカプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートが三層に重なっていますが、その境界で地震が起きれば、“プレート境界型の直下型地震”となります。
俗に言う『東京直下型地震』も、発生メカニズムで言えば地表近くの浅い断層が動く地震、プレート境界で発生する地震、プレート岩盤内で発生する地震(スラブ内地震)という3種類が起こる可能性があるわけです。
それらどのタイプでも、東京直下で起きたら『東京直下型地震』となるわけで、そのような関係がわかりづらさの一因でしょう。
【直下型地震は怖い?】
実際に、怖いのです。過去に大きな被害が出た直下型地震の典型は、1995年の阪神・淡路大震災を筆頭に、2004年の新潟県中越地震などが挙げられます。
これらの地震は、内陸部の深さ10km程度の浅い断層が動いて発生したもので、これが一般的な『直下型地震』のイメージでしょう。
一般に、震源に近いほど揺れが強くなりますが、震源が浅いということは垂直距離も近いということと、浅い地震の場合は周期1~2秒程度の破壊力の大きな揺れが発生しやすいことで、大きな被害が生じやすいのです。
では、浅い断層の直下型地震が最も怖いかというと、そうとも言い切れないのでややこしくなります。
これは主に東京を始めとする南関東の話ですが、その地下は前述のようにプレートが三層構造になっています。もしその境界で地震が発生した場合は、他の2タイプ、浅い断層の地震やプレート岩盤内の地震より、はるかに大規模になる可能性があるのです。
世界各地で起きる巨大地震を見てもわかるように、プレート境界には他の地震よりはるかに大きなエネルギーが蓄積されており、それが一気に放出されると、地震の規模は他のタイプに比べてはるかに巨大になる可能性があります。
一時期、東京に震度7が来るとかで騒ぎになりました。あれは最上層の北アメリカプレートとその下のフィリピン海プレートの境界が、それまで予想されていたより10kmも浅い場所にあることがわかったため、その境界で想定される最大級の地震が発生した場合、地上の揺れが震度7レベルにまで達する可能性が出てきた、ということでした。
つまり、東京に震度7をもたらす可能性があるのは“プレート境界型直下型地震”というわけです。
【実は名前が無い】
南関東の場合は、直下の浅い場所にプレート境界があるという特殊な状況です。しかし一般的な『直下型地震』とは、陸地直下またはごく近くの深さ10km程度までの浅い断層が動く地震という認識で良いでしょう。
でも、そのタイプの地震には一般的な呼称が無いので、陸地直下で起きた場合には『直下型地震』と呼ばれています。直下の直は、地表からごく近いというニュアンスですね。
細かい理屈はともかく、直下型地震はその発生メカニズムに関わらず、地上の構造物に大きな被害をもたらす可能性が非常に大きい地震であり、その確率の高低はあるものの、日本列島のどこでも起きる可能性があるということは覚えておくべきでしょう。
どこの話でも、決して対岸の火事では無いのです。
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