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2015年1月15日 (木)

池上彰防災特番にもの申す!

昨日1月14日の晩、当ブログ読者の方からメールをいただきました。

『今、テレビで防災番組やってますが、見てますか?』

普段民放をほとんど観ない管理人ですが、すぐにチャンネルを合わせました。

阪神大震災20年 生死を分けたドキュメントが語る!池上彰の生きるための選択という番組で、制作は大阪のMBS、東京のTBS系列で放映されていました。


最初の30分ほどは観られなかったのですが、“あの”池上彰氏がやる番組ならばと、結構期待して観始めたのです。

何にしろ、こういう番組が制作されること自体は歓迎すべきなのですが、その内容はというと、疑問だらけではありましたので、敢えて記事とします。


【“釜石の奇跡”の真実?】
番組は、過去の災害で起こったことをドラマで再現し、そこから教訓を見いだすという体裁でした。最初に観たのは東日本大震災における、いわゆる”釜石の奇跡”を題材にしたもの。これは釜石市の小中学生の99.8%、当日登校していた全員が津波から生き残ったという『奇跡的な』事実です。

それが成功したのは、群馬大学の片田教授のチームが、現地で2004年から続けていた防災教育の成果であることは疑いありません。子供が自分で判断し、率先して避難する意識と体制が作られていたのです。

それに関する解説もそれなりにあったものの、再現ドラマでは、まるでひとりの女子中学生が、地震の直後に
「津波が来る!避難すっぺ!」
と叫んだことで、皆が動き出したというニュアンスでした。

テレビ的には『ジャンヌ ダルク』的な存在が無いと画にならないということでしょうか。

そして、避難を始めた中学生の姿を見て、近隣の小学校でも避難すべきと判断して合流したようなニュアンスでしたが、あれは、避難時には中学生が近隣の小学生を誘導・支援するという体制が当初から作られていたためであり、決して“奇跡の連鎖”などではありません。あくまで、教育と訓練の成果なのです。

なのにドラマは、ひとりのヒロインが奇跡の連鎖を引き起こしたという“感動的な”演出が前面に出たものでした。


片田教授の教えである『想定にとらわれるな』、『最善を尽くせ』、『率先避難者たれ』という3つの心得を、教育を受けていない視聴者に印象付けるためかもしれません。しかし、陳腐な感動ストーリーへのテレビ的なすり替えは許容できません。

ドラマは、最も象徴的な釜石東中学校、鵜住居(うのすまい)小学校の事例を再現したものでしたが、あれが奇跡の連鎖ならば、釜石の他の小中学生もほとんど生き残ったという事実の説明にはなりません。

子供たちを生き残らせたのは、あくまで正しい知識と普段からの教育・訓練の成果なのです。


【何を今更?】
震災で離ればなれになった母親と幼稚園児が、地元コミュニティラジオの安否放送が元で再会できたという“感動的な”再現ドラマもありました。

曰く、だから防災グッズには必ずラジオを、電池消耗に備えて手回し発電式を、という話です。もちろん間違いではありませんが、今更たっぷり時間をかけてやる内容でしょうか。

災害で停電し通信も途絶した場合、ラジオが事実上唯一の情報収集手段となります。でも、手回し発電ラジオはずっと前から防災グッズの定番でもあります。

親子が再会できたのはラジオがあったからだけでもなく(再会を早める効果はあったでしょうが)、地元情報を詳細に流すコミュニティラジオという存在あってのことでもあります。ラジオの話など、どうにも感動的な再会物語をやるためのフリにしか見えません。


【本当は役に立たない?】
阪神・淡路大震災では、『通電火災』の問題が露呈しました。停電状態で避難した無人の家が、通電が回復した時にスイッチが入ったままの発熱器具、破損した家電、損傷した屋内配線などから出火して火災となったのです。

それを防ぐため、避難時には電気のブレーカーを切ることが推奨されています。

番組では、切り忘れを防ぐ器具として、震度5強程度の揺れでブレーカーを遮断する簡単な器具が紹介されました。

揺れでボールが落ちることでトグルスイッチを落とす非常に簡単で低コストの器具で、機能的なアイデアはまあ良いかと思います。避難時のブレーカーの切り忘れは防げます。

でも、管理人は絶対につけませんね。なにしろ強い地震が来たら、通電していても確実に“停電”させて暗闇にしてくれるのですから。

ブレーカーが落ちるタイミングは、一番強い揺れが来た時。まさに家を飛び出そうとするか、強い揺れに耐えている時です。その時いきなり真っ暗。周りは明るくても、うちだけ真っ暗。強い地震が来ても、確実に停電する訳ではないのです。実際に、東日本大震災時の関東南部は震度5強の揺れに見舞われましたが、ほとんど停電は起きていません。あのレベルで強制的に暗闇にさせられるとは。

これなど、トリビア的アイデアの象徴みたいなものでしょう。造ったメーカーさんへ言うことはありませんが、それをデメリットも言わずに紹介するテレビって。いわゆる賑やかしネタに過ぎません。


【共助には高い壁がある】
阪神・淡路大震災では、発災後に生き埋めや閉じこめられた人が約35000人あり、その約77%、約27000人が近隣の住民によって助け出されました。それが紹介され、だから近隣の『共助』は大切、普段からのご近所付き合いも大切だと、定番のお話もありました。

全く、その通りです。でも長年に渡ってそう言われ続けて、多少は改善したのでしょうかね。もちろん、特にお年寄りが多い地域などでは、積極的な取り組みによって体制が強化されている事例も少なくありません。

問題は都市部です。理屈はその通りでも、防災のためのコミュニティ強化など、事実上ほとんど改善されていないのではないでしょうか。

現実には、各戸の状況や要配慮者の存在などの情報を共有しようと思うと、そこにはプライバシーや個人情報の壁が立ちはだかるのです。都市部ならではの、生活時間の違いも大きな壁です。

できることだけやっておけば良いという考え方もありますが、根本的改善にはなりません。そんな問題をさておいて、必要だ大切だというだけの話は耳タコです。

ソリューションを示さずに、専門家を呼んで正しい理屈だけを言っていれば良いのなら楽なものです。せめてどこかの具体的取り組みを紹介するなど、メディアの力を生かした企画があればと思うは、管理人だけではありますまい。

かく言う管理人、自宅マンションの防火管理者で、防災指導者でもあります。

さて、長くなりましたので、次回へ続きます。次回は、管理人が一番問題だと思った部分です。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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コメント

私も視聴しました。ごもっともの内容でしたね。投稿された「本当は役に立たない?」は参考になりました。 いつもありがとうございます。

>黒須様

正直、呆れました。まあ、ただの防災ネタトリビア番組です。阪神・淡路大震災20年という節目にやるようなものじゃありません。新しいネタはなにひとつ無いし。

あまりに呆れたので、いつものイニシャルトークをやめて全部書きました。

まだ続きます。もっと問題があるんです。

件の番組、僕も途中から視聴しました。
ブレーカーを自動的に切るグッズは被災者の声を元にして商品化されたものですね。
すでに設置してる方々は、もちろん身近にライト類は置いてるであろうし、てばさんもそうでしょう。
日中に地震が起きる確率は半分ですし。
装置をはずす必要はありませんが、少し細工をしても少し強い揺れで切れるように改良するのは簡単でしょう。

「釜石の奇跡」ドラマは僕には新鮮で良かったです。正直またかと思ってうんざりしかけましたが、今までとは違った切り口で紹介してくれたので、工夫してくれてるなと感じ入りました。
片田チルドレンの今後には相当期待しております。

>PAKAさん

被災者の声を反映したものということが免罪符になるわけではなく、被災者の希望を完全に反映したものであるとも限りません。強い地震でブレーカーを落とすという機能については有効でも、避難行動に関するデメリットが大きいと考えています。

暗い時間に発災する可能性が、「半分もある」のです。建物によっては、昼間でも視界失うこともあります。手近にライトを備えていても、現実的には、激しい揺れの最中にライトを手に取れる確率は、ほとんどありません。私は寝ている時でもポケットにフラッシュライトが入っている「異常な人」ですが、私の家族は既にそこまでの意識はありません。

一般に、子供やお年寄りなどに瞬間的な対応を求めるのも困難です。強い地震が来たら我が家は停電するという情報を共有していたとしても、すべての人が合理的な判断と行動ができるとは限りません。

汎用品は、いろいろな意識の人が深く考えずに有効に使えるものでなければならず、その点で家庭用としては問題が大きいと考えています。


釜石の再現ドラマは、エンタメとしては新鮮な切り口でした。でもあの「奇跡」の本質は、日頃からの正しい教育訓練の賜物であったということであり、その本質を薄めてしまっていることが問題なのです。

私も、片田教授の教えが「当たり前」になることを願ってやみません。教授は、最初は大人への啓蒙から始めました。しかしほとんど効果が見られなかったので、子供が自主的に判断するメソッドへ転換したのです。

若い人への教育訓練こそが必要ですね。

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