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2015年4月

2015年4月28日 (火)

【支援先リンクつき】ネパール地震は巨大被害に(#977)

Nepalquake
Nepalquake2
崩壊した煉瓦造建造物には生存空間が少なく、犠牲者を増やしている


ネパールの地震被害が、当初の想像以上の規模に拡大しています。未だ山間部に点在する村などの被害は確認されておらず、今後もさらに拡大するものと思われます。

前記事でも触れた、1934年に発生したビハール・ネパール地震の被害規模を超える可能性も高くなってきました。人的被害だけでなく、当時よりはるかに拡大した街域やインフラの被害も比較にならないほど甚大であり、より大きな支援が必要になっています。

日本政府は、ネパールに対して10億円規模の緊急無償資金協力を行うことを決定し、必要に応じてさらに追加も検討しているとのことです。

文末に寄付先のリンクを掲載しますので、我々も少しでも多くの支援をお送りできればと思います。ネパールからは、東日本大震災の際に支援物資を送っていただいています。


【ネパール地震のタイプは】
この大地震のタイプについてかなり情報が集まって来ましたので、まとめてみます。

■震源はカトマンズの北西約80km、震源深さ約15km、マグニチュード7.8(当初発表の7.9から修正)だった。

■揺れている最中の映像によると、カトマンズ付近では震動周期が1秒程度の短周期地震動に見える。

■カトマンズ市街では煉瓦造りの建物だけでなく、鉄筋コンクリート造りの建物も多数崩壊している。

■エベレスト山麓付近(カトマンズから北東方で、震源とは反対方向)でも強い揺れが長時間続き、なかなか収まらなかったとの証言がある。それより震源に近いカトマンズでも、強い揺れが1分以上続いたとの証言がある。

■エベレストの登山ベースキャンプ(標高5300m)よりずっと上で大規模な岩屑崩落が複数発生したようで、それが大規模雪崩を誘発している。

■その他の山間部でも、落石や山崩れが多発している。


これらの情報からわかることは、

■浅い断層が動いた内陸直下型地震である。インドプレートによる北向きの圧縮力が卓越した地域のため、逆断層型地震である可能性が高い。

■震源が比較的浅いため、建造物に大きな破壊力をもたらす、震動周期が1~2秒程度の通称キラーパルスに近い揺れが発生している。

■その中でも比較的短い震動周期のため、山や崖に対してもかなり大きな破壊力をもたらしている。

■かなり広い範囲の断層が連鎖的に破壊されたと思われ、そのため強い揺れの持続時間がかなり長かった。 現時点では想像だが、当初の震源から東方向、カトマンズやエベレスト方面に向かって断層の破壊が進んだ可能性がある。

このようなことかと思われます。


【日本の地震との比較】
まず、深さ15kmという浅い断層が広い範囲に渡って破壊された内陸直下型地震ということからは、1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)と非常に良く似たタイプと言えます。

阪神・淡路大震災では、震動周期1~2秒程度のキラーパルスが強く発生しました。地盤構造などの条件は異なりますが、あの地震に比較的近い揺れが発生していたと思われます。

阪神・淡路大震災の震源(断層破壊開始地点)は深さ16km、マグニチュード値は7.3でした。ネパール地震はマグニチュード7.8でその差は0.5ですが、これは放出されたエネルギーが3倍以上であることを意味します。マグニチュード値が0.2上がるとエネルギー量は約2倍に、1上がれば約30倍に、2上がれば約1000倍になります。

なお、震源からかなり離れたエベレスト付近で非常に長い揺れが観測されたのは、地震の主な揺れ成分であるP波、S波の後から、さらに速度が遅い表面波が到達したためと思われます。

このように、震源からの距離が遠い場合、P波、S波に続いて最後に地表面近くを伝わってくる表面波が到達するために、揺れの持続時間がより長くなります。

東日本大震災で、特に関東以西で非常に長い揺れを感じたのは、連続して多数の地震が発生したということもありますが、最後に本震の表面波が追いついて揺れを引き延ばしたということでもあります。


もうひとつ似たタイプの地震として、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震が挙げられるかと思います。

この地震では、震動周期0.2~0.5秒程度という極短周期地震動が卓越しました。この揺れは建造物への破壊力はあまり大きくない一方、山や崖などに対して大きな破壊力をもたらします。

このため建物被害は少なかったものの、震源近くの栗駒山系で巨大な山体崩壊を引き起こしました。さらに駒の湯温泉上流の土砂崩れによって大規模土石流が発生し、多くの方が犠牲になりました。

今回のネパール地震は両者の中間的な性質の巨大地震だったと考えられ、建物にも山にも大きな破壊力をもたらしてしまったと思われます。


【少しでも多くの支援を】
世界各地で次々に巨大災害が発生し、支援すべき対象もどんどん増えてしまっています。

しかし、小さな支援でも数がまとまれば大きな力となります。下に代表的なネパール地震緊急募金先のリンクを掲載しますので、東日本大震災への支援のお返しの意味も含めて、できる範囲での支援を,当ブログとしてもお願いしたいと思います。

Yahoo! ネパール地震被害緊急支援募金

日本赤十字社 2015年ネパール地震救援金

ユニセフ ネパール大地震緊急募金

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月26日 (日)

【ヲタ目線地震教室06】押し込まれると逆断層(#976)

今回は逆断層についてです。


【逆断層には2つのパターン】
逆断層とは、正断層とは逆に、水平方向に圧縮力がかかった岩盤の境目やヒビに沿って、一方が他方へ乗り上げるようにズレる断層です。

逆断層には、大きく分けて2つのパターンがあります。

まずひとつは、圧縮力がかかった岩盤ならばどこにでも存在する可能性がある、一般的とも言えるタイプです。
1
上図のように、圧縮力によって一方が他方に乗り上げるようにせり上がります。この模式図は地表面で起きているようなイメージですが、その多くは地下で発生するものです。


逆断層型地震の典型は、東日本大震災後に多発するようになったスラブ内地震です。

スラブとは岩盤のことで、この場合はプレート境界面や地表面に近い断層ではなく、岩盤内の比較的深い場所(深さ40~90km程度)で起きる地震を指しています。

スラブ内地震は、海洋プレートが大陸プレート下に潜り込む圧縮力によって、地下の岩盤が圧縮されて逆断層を形成することで発生します。(下図の3)
Photo
東日本大震災ではプレート境界面が大きく破壊されたため、“つっかえ棒”を失った太平洋プレートの動きが速まりました。そのため地下により大きな圧縮力がかかることで、多発するようになっています。

宮城県から福島県の沿岸部で、震源深さ40~70kmで発生している地震のほとんどが、逆断層型のスラブ内地震であると考えて良いでしょう。

この地震は、プレート境界型地震ほど巨大化することはありませんが、時々地上の揺れが震度5弱程度、まれに5強程度になる規模で発生しています。

その他の地震でも、日本列島の内陸部や沿岸部の海底で起きる震源深さ20~90km程度の地震の多くは、逆断層型と考えて良いでしょう。


【日本付近のプレート境界も逆断層】
もうひとつの逆断層は、圧縮力がかかっている地殻プレート境界域です。下図のような断層(構造線)も、一方が他方に乗り上げるようにズレるので逆断層の一種です。
Photo_2
上図では、右側の海洋プレートが、左側の大陸プレートの下に潜り込んでいます。日本列島の太平洋岸にあるプレート境界(構造線)も、このような構造です。

そんな場所では大陸プレートの先端部が海洋プレートと一緒に引きずり込まれて行き、強い圧縮力によって曲げられて、ひずみエネルギーが溜まって行きます。

そして、大陸プレート岩盤が変形できる限界(弾性限界)を超えると、大陸プレートの先端部が跳ね上がるようにズレて(上図の点線)プレート境界型の大規模地震を引き起こすわけです。

東日本大震災では、大陸プレート(北アメリカプレート)の先端が跳ね上がって海側に動いた距離が最大で20~30mに達したらしく、それが巨大地震と巨大津波を引き起こしました。陸上でも、宮城県の金華山付近では約5mも海側に動いたのです。

逆断層の話がプレート境界域の話になりつつありますがw、このまま行きます。ヲタ目線ですから。


【プレート岩盤どうしが強く貼りついている】
岩盤の弾性限界に加えて、大陸プレートが跳ね上がる限界を決めるもうひとつの要素は、ふたつのプレートが貼り付いている力の強さです。

ふたつのプレート境界面は、普通は強い力で貼り付いていて、その部分は固着域(アスペリティ)と呼ばれます。固着域の貼り付きが強いほど、大陸プレート先端部は大きく曲げられて行きます。

蓄積されるひずみエネルギーも大きくなり、固着域が大きくはがれて跳ね上がった時には、より大きなエネルギーが解放される、すなわち大規模地震となります。

東日本大震災では、地下深くから上昇して固着域に浸透した水によって固着域が滑りやすくなったことが、巨大地震を誘発した理由のひとつだという説もあります。


【スロースリップの功罪】
一方で、固着域(アスペリティ)の貼り付きが弱い部分では、スロースリップ(ゆっくり滑り)という現象が起きることがあります。

これは、プレート境界面の固着域が一気にはがれるのではなく、ゆっくりはがれてズルズルと滑る現象です。このため、『ずるずる滑り』と呼ばれることもあります。

この場合は、大陸プレートにあまり大きなひずみエネルギーが溜まらないうちに滑り出してエネルギーを解放するので、その場所で巨大地震が起きる可能性が小さくなります。

しかし、良いことばかりではありません。ゆっくり滑りが起きた場所の近くに強い固着域があったら、大陸プレート岩盤の動きにムラが出て横方向(プレート境界線と平行)の引っ張りや曲げ応力が加わることになり、別の断層の動きを誘発する可能性が高まります。


【千葉沖を危険視する専門家も】
2014年1月初旬には、房総半島沖でスロースリップが観測されています。その動きも含めた総合的な判断によって、房総半島沖付近でマグニチュード6.5程度の地震が「1年程度」の間に起きる可能性があるという、専門家の指摘がありました。

それから1年と3ヶ月ほど経ちましたが、まだ起きていませんね。でもこの先起きないということでも、その見解が間違いだったということでもありません。あくまで、可能性は存在するのです。


次回は、横ずれ断層です。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


2015年4月25日 (土)

【寄付先リンクつき】ネパールでM7.9の巨大地震(#975)

Nepar1
ネパール地震・完全に崩落した仏塔(ストゥーパ)

Nepar2
ネパール地震・鉄筋コンクリート建物も崩壊

Nepar3
ネパール地震・歴史的建造物にも大きな被害

日本時間の4月25日、ネパールの首都カトマンズの北西約80km地点の深さ約15kmを震源とするマグニチュード7.9の地震が発生し、大きな被害が出ています。なお、震源は有名なマナスル山、もしくはアンナプルナ山の南側山麓に当たる場所のようです。


【ヒマラヤ山脈の由来と地震】
震源はヒマラヤ山脈の南側で、北側のユーラシアプレートに対して南側からインドプレートが北向きに押しこんで来ている地殻プレート境界線に当たります。なお、ほぼインド亜大陸(インド半島)とインド洋の一部が含まれるインドプレート単独で呼称する場合と、その南側に連なってオーストラリア大陸まで含む地殻プレートまで併せて、インド・オーストラリアプレートと呼称する場合があります。

インド亜大陸は、太古の時代には海上で独立した陸地でしたが、インドプレートの北向きの動きに乗って北上し、ユーラシアプレートに衝突したとされます。インドプレートは地殻の厚さが比較的薄く質量が小さいと考えられ、マントル対流の影響を強く受けて、比較的速い速度で現在も北上し続けています。

その結果、当初は浅い海だったプレート境界部分が強い圧力によって隆起し、世界で最も高く険しい山脈を形成しました。それがヒマラヤ山脈です。ヒマラヤ山脈はインドプレートとユーラシアプレートのまさに境界部分を東西に伸びています。

ヒマラヤ山脈は、海底で形成された平坦な地層がインドプレートの圧力によって曲げられ、押し上げられた褶曲山脈とされており(異論もあるようですが)、山脈の各所で捻じ曲げられた地層が見られること、8000mを超える高度の地層から、サンゴや貝類など暖かく浅い海にいた古代生物の化石が発見されていることからも、海底が強い力によって押し上げられたということは間違いありません。

ヒマラヤ山脈南側に位置するネパールはこのような構造を持つ場所のため、、過去にも大規模地震が何度も起きている“地震の巣”のひとつです。


【約80年振りの巨大地震か?】
過去の記録を取り急ぎ調べてみたところ、ネパール国内を震源とする大規模地震のうち、記録に残る最大のものは1934年に発生したビハール・ネパール地震と思われます。

今回の震源とはかなり離れていますが、ネパール東部のヒマラヤ山脈山腹で発生した推定マグニチュード8.1の地震で、隣接するインドのビハール州も含めて死者・行方不明者は1万人を超えたとされています。なお、当時のネパールはいわゆる鎖国政策を採っていたため、ネパール国内での正確な被害規模はわかっていません。

今回の地震の規模はマグニチュード7.9ということで、おそらくそれに次ぐ規模の大規模地震と思われ、この時点でも被害が急速に拡大し続けています。今後より広域の調査が進めば、さらに巨大な被害が明らかになるものと思われます。

なお、1934年のビハール・ネパール地震では、高さ35mの仏塔(ストゥーパ)が倒壊して高さ6mになってしまったと記録されていますが、掲載画像のように、今回も同じような事態が起きています。


【恩返しのとき】
今回のネパール地震は、国際的に大きな支援が必要な被害規模に発展しそうです。

東日本大震災に際しては、ネパールからも毛布5000枚などの緊急支援をいただいています。たった毛布5000枚ではありません。経済規模や輸送手段を考えたら、我々の感覚と想像をはるかに超える大きな支援なのです。

先のバヌアツサイクロン災害に続いてしまいましたが、失礼な表現ながら、決して経済的に豊かとは言えない方々が支援してくださったことへの恩を、この機会にお返ししようではありませんか。

様々な支援の仕方がありますが、確実なのは赤十字を通じての支援です。当記事執筆時点ではまだ日本赤十字のレスポンスは無いようですが、わかり次第リンクしたいと思います。

■4月26日追記
現時点では日本赤十字社のネパール地震寄付窓口は開設されていないようなので、Yahoo!のネット募金窓口を掲載します。なお、募金先は主に日本赤十字社となります。

Yahoo!のネット募金は、募金額と同額をYahoo!が負担して募金するために、募金額が2倍になります(上限2000万円)クレジットカード及びTポイントカードのポイントも利用できます。

【寄付が2倍】ネパール地震被害緊急支援募金

※ソフトバンクのスマートフォン利用の方は、上記リンク先から別の専用ページにジャンプできます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月24日 (金)

南米チリで大規模噴火(#974)

Photo_2

日本時間の4月22日、南米、チリ南部のカルブコ火山が大規模に噴火しました。

カルブコ火山(スペイン語でボルカンカルブコ)はチリ南部の人口約17万人の都市、プエルトモントから北西方向に約35kmにある2000m級の成層火山で、54年ぶりの噴火だそうです。

街に近くて見通しが良いために、壮絶な噴火映像ばかり話題になっていますが、我々が注目すべきは、そこではないのです。


【巨大地震後には火山噴火が】
当ブログでも何度も触れていますが、人類の観測史上、マグニチュード9クラスとそれに近い規模の地震が発生した後には、例外なく近隣の火山が噴火しています。それも、ひとつの例外を除いて地震発生から1年半までの間に噴火が起きています。その唯一の例外となっているのは、東日本大震災です。

チリでは、2010年2月にマグニチュード8.8の巨大地震が発生しており、日本にも三陸地方に約1m程度の津波が到達しました。今回のカルブコ火山噴火も、その地震の影響と考えることができます。しかし、地震後の噴火は今回が初めてではありません。

地震発生から約1年4ヶ月後の2011年6月、チリ南部のコルドンカウジェ火山群にあるプジェウエ山が約50年ぶりに噴火しました。

さらに今年2015年3月には、同じくチリ南部のピジャリカ山が15年ぶりに噴火していますから、すでに3回目の大規模噴火となるのです。どちらの火山も震源域近と地殻プレート境界に近く、巨大地震の影響を受ける場所にあります。

ちなみに、前記のプジェウエ山は1960年5月にチリ南部沖で発生した、人類の観測史上最大となるマグニチュード9.5の直後にも噴火しています。その時の噴火は、地震発生からたった38時間後でした。


【誰もが気になるあの山は】
プレート境界型巨大地震の後には震源域近隣の火山が噴火する。それはある意味で“当たり前”なのですが、東日本大震災後には、震源域周辺にあるどの火山も、事実上沈黙を続けています。震源に近い宮城県の蔵王に、小規模噴火の兆候がわずかに出ているくらいです。

あのような巨大地震の後に、何故噴火の兆候すらほとんど無いのか。震災の影響によってこの先どこかが噴火することがあるのか、それとも噴火が無くて、人類初の経験となるのか。それは専門家にも判然としません。ただ、基本的にはいずれどこかが噴火するという前提で考えておかなければなりません。

ちなみに、特に専門家の見解は見当たらないものの、管理人としては小笠原諸島の西之島の噴火が震災の影響を受けたものではないかと考えています。

それでも、噴火したのは震災から3年も経ってからでした。しかし現在も続く西之島噴火は、規模、期間共に陸上で起きていたら巨大被害をもたらすレベルなのに、遠い海上の無人島のせいで、誰も気に留めていないようですが。

では、富士山はどうなんだと。富士山は、1707年に発生した現在で言う東海地震の49日後に、最後の噴火をしています。ということは、再び東海地震が発生した時には、噴火の可能性が高まると考えて良いでしょう。プレート境界型大地震の後の噴火が、我が国でも過去にはしっかり起きているのです。

東日本大震災による地殻変動の影響を富士山が何らかの形で受けていることは確実ですが、現時点では噴火に繋がるような具体的な兆候は皆無です。それに、東日本大震災震源域付近の地殻プレート構成と富士山近隣の地殻プレート構成が異なっているために、連鎖噴火する可能性は理論的にも説明できません。

一部で言われるような富士山噴火の「兆候らしきもの」は、ほとんどが裏付けのないデマ、個人的印象、エセ科学そして商業メディアのアオリです。地温が上がって氷穴の氷が溶けたとか山体膨張して亀裂が入ったとか言われていますが、それらを裏付けるような観測データは、現時点では全く無いのです。


【日本列島付近と似た構造】
話をチリに戻しましょう。南米大陸西岸のチリ周辺の地殻構造は、日本列島周辺と似ています。陸側のプレート(南アメリカプレート)に対し、海側のプレート(ナスカプレート)が東向きに動いてきて、南アメリカプレートの下に潜り込んでいます。

南米大陸周辺の地殻プレート構成と、巨大地震震源とカルブコ火山の場所を図にまとめてみました。縮尺の関係で割愛しましたが、上記のプジェウエ山とピジャリカ山は、カルブコ山の北方に位置します。
Photo_3

チリ南部の沿岸では、この他にもかなり大規模な地震が多発している、世界有数の“巨大地震の巣”です。図には、人類の観測史上最大となる、マグニチュード9.5の震源域もオレンジ色で示しました。


このように、地殻プレート境界域で巨大地震が発生すると、境界に沿って並んでいる火山のどこかが噴火するということが、少なくとも人類の観測史上はあまねく繰り返されて来ました。

しかし、東日本大震災の影響を最も受けているはずの、北海道の太平洋岸から東北地方の各火山は、あれから4年以上経つというのに、ごく一部の軽微な噴火兆候を除いて不気味なほど沈黙したままです。

今回のチリ、カルブコ火山噴火は、文字通り“対岸の火事”ではありません。本来ならば、とっくに日本で起きているはずの出来事なのです。


■当記事は、カテゴリ【火山災害】です。


2015年4月22日 (水)

【ヲタ目線地震教室05】引っ張られて正断層(#973)

ちょっとマニアックな地震の話になると、断層の種類も話題になります。

この類の話は、知っていても防災・減災のためにはほとんど役に立たないのですが、とりあえず触れておきましょう。ヲタ目線ですから。


【断層は3種類】
断層は、大きく分けて3つに分類できます。正断層・逆断層・横ずれ断層です。

このうち、横ずれ断層は動く方向によって右ずれと左ずれに分類されますが、これはズレる方向による違いなので、ここでは特に分類しません。

当シリーズ記事でも触れましたが、断層のでき方には2種類あります。

異なる地殻プレートまたは異なる地質の地盤が大規模に接している境界部分(構造線)と、岩盤にある方向から力がかかり、岩盤が割れたり引き裂かれたりしてズレた部分です。

それぞれの断層について解説していきましょう。


【正断層は引っ張る力で】
まず、正断層(せいだんそう)です。これは、岩盤に水平方向に引っ張る力(張力)がかかることによって岩盤が引き裂かれ、引っ張られた側の岩盤が下向きにズレたものです。

メカニズムは異なりますが、イメージ的には岩盤の中で地滑りが起きたような状態です。
Photo
なお、これから掲載するの一連の模式図は断層が地表面に現れたようなイメージになっていますが、多くの場合は地下で起きています。

もちろん、浅い断層が大規模に動いた時は、地表面に断層が現れることもあり、それが海底で起きれば津波が発生します。また、過去に断層の動きでできた崖や段丘などの地形も、各地に存在します。


【正断層型地震の例】
正断層で発生する地震の典型的な例として、大陸プレートの下に潜り込む海洋プレート(太平洋プレートなど)の沖側で起きる、アウターライズ地震が挙げられます。

アウターライズ地震は、海洋プレート沖側の盛り上がり部分(アウターライズ)が、プレート境界型(海溝型)大規模地震後に加速した沈み込み速度について行けず、プレート表面近く(一般に深さ10km以浅)に大きな張力がかかることによって発生する正断層型地震です。(下図の1)


一方、大陸プレート側でもプレート境界型(海溝型)大規模地震によってプレート境界が破壊されて岩盤が海側に移動することで、内陸の浅い部分に張力がかかります。その張力によって、主に深さ10km以浅の正断層型地震が多発するようになります。(下図の2)

なお、このような地震には特に名前はありませんが、当ブログでは(震災の影響によって誘発された)『内陸の浅い地震』というような表現をしています。
Photo_2

東日本大震災後、アウターライズ地震は青森沖から福島沖で何度か発生しています。海底の比較的浅い部分で発生するので、断層の動きによる海底の変形を伴いやすく、津波が発生しやすい地震です。

しかし震源が陸地からかなり遠いために、地震自体は大規模でも陸上の揺れはあまり大きくならず、その割には大きな津波が来ることがあります。いわゆる津波地震とは、アウターライズ地震のことです。


内陸の浅い地震は、海洋プレート側の陸地ではなく文字通りより内陸で起きやすいのが特徴で、東日本大震災後には、特に東北地方の日本海側で頻発しています。一例として、秋田県内陸北部及び秋田県内陸南部で起きている震源深さ10km以浅の地震が、震災の影響による典型的な正断層型地震と言えます。

ここでは震災の影響による正断層型地震の例を挙げましたが、日本各地にも正断層は数多く存在し、そこで地震が起きれば正断層型地震となります。

次回は、逆断層です。

■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


2015年4月21日 (火)

【ヲタ目線地震教室04】震源とは“始まり”の場所(#972)

前回の断層の話に、ちょっと補足です。

地殻プレートの境目は確かに断層の一種ではありますが、そのように異なった地質や構成の岩盤が大規模に接している部分は、構造線とも呼ばれます。

日本列島の主な構造線は、下図の糸魚川-静岡構造線と中央構造線です。
Photo
糸魚川-静岡構造線は北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界面、中央構造線はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界面に続く、異なる地質と構造の接触面というわけです。

なお、構造線とは言うものの、岩盤の接点は線ではなく面です。線で表すのは、あくまで境界線をイメージした便宜的な方法です。

一般に、巨大な力がかかる構造線や大規模断層の両側には破砕帯と呼ばれる岩盤がもろくなってヒビが多い部分があり、その中には中小規模断層が多く存在します。


【震源はどこだ?】
東日本大震災の後、こんな図を良く目にしました。
Photo_2
東日本大震災は、×印の場所を震源(震央)としてマグニチュード9.0の地震が起きた、という理解をされている方も多いと思います。

でも、それは違います。×印の場所は、あくまで断層のズレが始まった地点に過ぎないのです。確かに最初は×印の場所、深さ約24kmでかなり大規模に断層(地殻プレート境界面)がズレる、大きな地震が起きました。でも、それだけではマグニチュード9.0には達しません。

その大きなズレに誘発されて、ズレの範囲が主に南方へ、一部は北方へ拡大して行き、約100秒の間に東西約200km、南北約500kmという広大な範囲で、断層のズレや破壊が連鎖したのです。破壊が及んだ範囲が、震源域と呼ばれる区域です。

そして、最初に起きた一連のズレや破壊が一段落するまでの約100秒間に放出されたエネルギーの総量が、人類の観測史上5番目の規模となる、マグニチュード9.0というわけです。それ以後に震源域内で発生した地震は、余震として区別されています。


このようなメカニズムは、東日本大震災のようなプレート境界型(海溝型)地震だけではありません。内陸直下型地震を引き起こす、浅い断層でも同様です。

1995年の阪神・淡路大震災では、野島断層帯が動きました。野島断層帯の断層面は淡路島を縦断するように伸び、その先は神戸市街の直下まで続いています。

まず最初に、淡路島北端部に近い海底、深さ約16kmの断層面で、岩盤のズレが始まりました。その後、神戸の街に向かっ続く断層面で、連鎖的に岩盤のズレが発生して行ったのです。つまり、始まりは海底だったものの、神戸市街直下でも断層のズレが連続して起きているのです。

それら一連の断層破壊で放出されたエネルギーの総量がマグニチュード7.3となり、動いた断層面の直上付近では、観測史上初の震度7を記録しました。つまり、淡路島付近の海底で起きた地震が近くの神戸の街を破壊したのではなく、淡路島付近の海底から始まって神戸市街の直下まで達した断層のズレによる、文字通りの内陸直下型地震だったわけです。


このように、大規模地震は一点で起きるものではありません。多くの断層や断層面の破壊が連鎖的に発生することで、大きなエネルギーが放出されて大規模地震となるのです。震源または震央として示される場所は、あくまで断層の破壊が始まった場所に過ぎません。一般に、地震の規模が大きくなるほど、広い範囲での断層のズレや破壊が起きているわけです。

ここでひとつ用語の意味を確かめておきましょう。震源とは、地下で断層の破壊、すなわち地震が起きた地点のことで、さらに詳しく言えば、断層の破壊が最初に始まった場所です。これに対して震央とは、震源の直上に当たる地表面の地点のことです。ですから、一般的に目にする二次元の震源図は、厳密には震央図というわけです。


【活断層ってなんだろう?】
ところで、断層の話になると必ず出るのが、活断層という言葉。イメージ的には、なんだかいますぐ動きそうな、危険極まりない断層のような感じです。

でも、内陸直下型地震を起こすような中小規模の活断層は、実は滅多に動きません。断層ひとつあたりで見れば、一般的には数万年に一度くらいの頻度に過ぎないのです。

では、なぜ特定の地域に地震が集中して起きるかというと、そこに断層がたくさんあるから。岩盤が弱く、力が集中する場所にはたくさんのヒビ、すなわち断層が集中しているのです。それがちょこちょこ動くことで、中小規模地震が頻発することがあるわけです。

また、大きな断層が存在する場所でも、その中の小さなヒビがひとつふたつ壊れただけならば、小規模地震で終わります。上記のように、大規模地震とは断層の一ヶ所で起きるものではありません。


【定義ははっきりしない】
では、活断層とはどんな断層のことなのでしょうか。

実は、厳密な定義は存在しないのですが、原則的には『過去のある時期から現在までに動いた、もしくは動いた可能性のある断層』ということになります。

ただし、『ある時期』という部分に約200万年前から数万年前まで、研究者によってその定義には実に広い幅があります。でも、一般的には、数十万年前(20~30万年)までに動いた可能性のある断層、ということで良いかと思います。

しかしまあ、人間が判断するのがおこがましくなるような悠久の時間軸を扱う話ではありますね。人類なんか影も形も無い頃からの歴史を遡るのですから。

ともあれ、過去に動いたことがある断層は、またいずれ動く可能性が大きい。だから、“活きている”断層、活断層と呼ばれるわけです。ただし、火山噴火と同じように人間世界の時間軸内で必ず動くかというと、そうとは言い切れません。あくまで、可能性の問題です。


さらに、ある場所に断層が見つかっても、それが活断層かどうかは、厳密には断層面を掘り返してみて、地層のズレなどから過去の動きの痕跡と時期を調べなければなりません。現実的には、それは地表面にごく近い断層でしかできませんし、ボーリング調査もできる場所が限られますから、大抵の場合はあくまで「活断層の可能性がある」というレベルの判断となります。

ただし、そこに断層があるということは、過去には大きな力がかかっていたということで、その力が現在も続いていることがはっきりしていれば、そこは間違いなく活断層と言うことができるでしょう。


でも、活断層かどうか以前に、日本列島だけでも未だ見つかっていない断層がどれだけあるのか、それさえも良くわかっていないというのが現実でもあります。

■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

2015年4月16日 (木)

【アシアナ航空機着陸失敗】事故の原因考察と我々ができること(#971)

Ashiana1
広島空港で着陸に失敗したアシアナ航空A320型機

今回で、とりあえず広島空港のアシアナ航空機事故については一区切りつけようと思います。これまでわかった状況から事故の原因についてまとめと、乗客の対処法を考えます。


【規定違反とストレス】
まず、状況と管理人が考察した原因についてまとめます。

■夜間、雨、気流の乱れの中を、進入角度誘導装置(グライドスロープ)が無い滑走路へ向かって降下する過程で、パイロット(おそらく機長)に滑走路を早く視認したい、なるべく滑走路手前に下ろしたいという心理が働き、かなり早い段階から本来の降下経路の下まで高度を落としていた。事実ならば航空法違反行為。

■最終進入の段階で、低い雲または霧によって視程が急激に悪化し、500~300mほどになった。滑走路灯火や進入角度指示装置(PAPI)も目視できなくなり、本来は着陸復航(go around)をしなければならない状況で着陸を強行した。もちろん重大な運行規定違反。

■着陸できなければ、着陸復航だけでなく視程が回復するまでの上空待機や、回復しなければ代替空港へのダイバードが必要になるので、早く下ろしたいパイロットに大きなストレスが加わっていた。

■ほとんど盲目飛行の中で、滑走路を視認するためにさらに高度を落とした。本来は高度を監視していなければならない、操縦していないパイロット(おそらく副操縦士)も監視を怠ったていたか、操縦手に警告しても聞き入れられなかった。

■本来の進入高度より30mほども低いことに気づかないまま滑走路に進入し、高さ6.5mのローカライザーアンテナに機体を接触させた。


というような事故だったと思われます。過去にも、悪天候や視程不良の中で無理な着陸を強行し、事故につながった例はかなり多くあります。また起きてしまったのです。


【乗客はどうすべきか】
航空機事故の場合、乗客ができることはかなり限られます。しかし、生き残る可能性を高めることはできます。


航空機事故の多くは、離陸後3分間と着陸前8分間に集中しています。それを合わせた11分間が、航空の世界では『魔の11分間』(Critical 11 minutes)と呼ばれる所以です。

ですから乗客である我々も、その間には何かが起こるかもしれないという前提で、すぐに非常体制に移行できる備えをしておかなければなりません。特に夜間、強風、雨、雪などの悪条件下では、異常事態の可能性が確実に高まるのです。

ちなみに管理人は、離陸時にはエンジン音に耳を澄まし(離陸時の事故原因の多くはエンジントラブルです)、着陸時には外を見られれば高度を見ながら、再度非常口の場所を確認し、しっかり足を踏ん張ってすぐに耐衝撃姿勢に移行できるようにしています。それを機体が着地して、十分に減速するまで続けます。

あまり頻繁に航空機に乗らない管理人ではありますが、それでも横風着陸で滑走路逸脱寸前まで行った経験もあります。


今回の事故もそうでしたが、事故発生時には機内照明が消える可能性が高いので、飛行機に乗る時でも必ずLEDライトがポケットの中に入っています。国内、国際線とも、搭乗前のチェックで問題になったことはありません。 緊急脱出時には荷物を持ち出せませんから、身につけておくことが必須なのです。

このような対応について、過去に記事にしていますのでご覧ください。

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル23】飛行機の危険
この記事には、東日本大震災の時に起きた、信じられないような本当の話も併記しています。


離着陸時に事故が多いとはいえ、高度が低い場合が多いので、対応ひとつで生き残れる可能性が大きく高められるのです。

ひとつ重要なことは、離着陸時にはキャビンアテンダントも着席しているので、突然非常事態に陥っても乗客への指示や補助ができなかったり、遅れたりすることが多いということです。


【空でも防災・減災の心構えを】
今回の事故でも、最初にアンテナに接触した衝撃の後、乗員から耐衝撃姿勢の指示などは無かったようです。乗客が「頭を抱えろ!」と叫んでいたという証言があるくらいで。きっと旅慣れた方か、航空機に詳しい方だったのでしょう。立派な行動です。

何が凄いと言って、とっさの時に「頭を抱えろ!」という言葉にしていること。これが「耐衝撃姿勢取れ!」だったら、その姿勢がわからない人は動けません。しかし「頭を抱えろ!」という、誰もがわかる言葉に置き換えていることが素晴らしいのです。

航空機事故の場合、激しい減速ショックで前のシートに顔面を叩きつけられて打撲や裂傷、足が前に投げ出されてシートにぶつかることによる下肢損傷、首が激しく振り回されることによる頸椎損傷、シートベルトが腹に食い込むことによる内臓損傷が起きやすくなります。

それらをなるべく防ぐ姿勢が「安全のしおり」にある耐衝撃姿勢なのですが、頭を両腕で抱えるだけでも、それにかなり近い効果が生まれるのです。

頭を抱えれば自然と前のめりになりますから、前のシートとの距離が縮まってぶつかった衝撃が弱まりますし、腕で顔面をガードできます。さらに腕で頭を押さえることで、首が振り回されることもかなり防げます。首にも力が入ります。

加えて、前のめりになれば自然と足を踏ん張る形になり、シートベルトもぴんと張って、身体の移動距離を小さくして衝撃を弱める効果が高まるのです。

でも、とっさの時に「頭を抱えろ!」とは、なかなか言えません。おそらくその方は、普段から「こうなったらこうしよう」と考えていたのだと思います。それこそ『その場所で何が起きるかを知り、その時どうするかを考えておく』という、まさに防災・減災の心構えそのものなのです。

もし管理人が乗り合わせていても、おそらく「頭を抱えろ!」とは言えなかったでしょう。貴重な教訓とさせていただきます。ついでに、乗員訓練のヲタ知識を加えて、「全身緊張!」も付け加えようと思ったのでした。

さておき、今回の事故では機体が停止した後もキャビンアテンダントもパニックに陥っていたようで、落ち着いた避難誘導などは無かったそうです。


【具体的な行動指示を】
もうひとつ気になったのが、脱出後に乗客が撮影した動画です。暗闇の滑走路脇で、どんな立場の方かわかりませんが、誰かが叫んでいます。

「安全な場所に避難してください!」

周りは何もない暗闇で、「安全な場所」とは?これではダメです。「地震に注意しましょう」と一緒です。

このような場合には、具体的な指示が必要なのです。実は管理人、このような場合の行動は考えています。もしあの場にいて、乗員などからの指示が無かったらこう言うでしょう。

「走れ!(機体から)100m以上離れろ!爆発の危険あり!」
海外だったら、とりあえず英語でも言おうと。文法などどうでもいいのです。
「Run! Run! three hundred feets! (expect fire!)](300フィート走れ!火が出る!)

もちろんもっと距離を取った方が安全なのですが、一刻を争う状況ですから、とりあえず100mは全力で走って距離を取れ、ということです。そして自分が安全距離を取ったら、夜間ならばライトを掲げて、

「このライトに集まれ!」
「Gather here!」 (ここに集まれ!)

と叫ぶでしょう。非常時の指示は具体的に、シンプルに、力強くが大切です。家族などを集合させるにも救援を待つのにも、非常事態ではまず具体的な安全確保と集結および状況把握をしなければなりません。

ここでひとつヲタ知識ですが、パイロットが乗員乗客に耐衝撃姿勢が必要であることを通告する場合は、機内放送などでこの言葉を言います。

『Brace! Brace! Brace!』

「ブレイス(固定)せよ!」と英語で3回繰り返すのが、世界共通の規則です。これを聞いてしまったら、いよいよ危険な状態だという認識をしなければなりません。

その実例が見られる、一時話題になったyoutube動画をリンクさせていただきます。9分30秒くらいから機長のアナウンスが始まります。
youtube動画 ジェットスター緊急着陸 福岡発関空行き
https://youtu.be/7dZwF4KGhzg

もう一本、グアム空港でのノースウエスト航空機の胴体着陸から緊急脱出までの映像です。CAが叫んでいる言葉は「Bend over, heads down!」(前にかがんで、頭を下げて!)です。
youtubed動画 胴体着陸 BELLY LANDING 緊急脱出 emergency exit

もちろん、今回の事故のようにこの映像のような余裕が無いこともあるのです。


【機上でもセルフディフェンスを】
特に離着陸時の非常事態では、自分の判断で非常体制に移行し、脱出して安全を確保できる可能性を高めなければなりません。そのためには、「何か起こるぞ」という前提で、心構えと必要な知識を備えておく必要があるということです。

他人に言われなくても、自分で自分を守る。それが一番なのですから。

最後に。下画像は、2013年7月にサンフランシスコ空港で発生した、アシアナ航空ボーイング777型機の着陸失敗事故のものです。今回の事故も、こうなっていても全くおかしくなかったのです。軽傷者だけで済んだのは、ただ幸運だったとしか言えません。
Ashiana2


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2015年4月15日 (水)

【アシアナ航空機着陸失敗】ほとんど盲目着陸だった?(#970)

今回も広島空港で発生したアシアナ航空機着陸失敗事故の関連記事です。連投になってしまい、興味の無い方には大変恐縮ではありますが、判明する状況がどんどん変わってくるために、解析内容を修正せずにはいられないことをご容赦ください。


【視程はかなり悪かった?】
事故直後の報道では、広島空港周辺の視程は6000m以上あったとされてました。しかしその後、低高度では霧が発生しており、視程は1800m程度だったとの報道がありました。

広島空港に事故機と同様に東側から進入する場合、最終進入時の視程が1600mを切ったら着陸を中止して着陸復航(go around)するように規定されており、着陸可能なギリギリの視程だったとされました。

さらにその後、着地直前には視程が500~300m程しかなかったのではないかとの報道も出てきました。

それが事実ならば、本来は着陸不可能の視程不良の中で着陸を強行したことが、事故に繋がった最も大きな原因だということができるようです。

着陸をやり直せば到着が大幅に遅れますし、燃料も余計に消費します。パイロットとしては、多少の悪天候でも「一発で下ろしたい」わけで、その理由は前回記事で述べた通りです。しかし、これはもちろん重大な規定違反です。


【ダックアンダーに陥った?】
報道に登場した『元日本航空機長』氏の見解では、視程不良の最終進入時、パイロットは滑走路を良く見ようとしてつい前のめりの格好になり、そのまま無意識に操縦輪を押して頭下げ姿勢になって高度を失ってしまうことがあるそうです。

これを、アヒルが頭を下げる行動になぞらえて『ダックアンダー』と昔から呼ぶそうですが、その見解には疑問符がつきます。

ほとんどの旅客機は、パイロットの正面に自動車のハンドルと似た操縦輪があり、それを前後に押すことで機首を上げ下げします。椅子から伸び上がって前のめりの姿勢になれば、確かに操縦輪を押してしまいやすい格好になります。

しかし、事故機のエアバスA320型は操縦輪方式ではなく、パイロットが片手で操作するジョイスティック型の操縦棹方式です。下画像で、赤い矢印で示したのがA320型機のジョイスティック型操縦棹です。
A320
果たしてこの操縦装置で『ダックアンダー』が発生するのかは、検証されていないはずです。

このコメントしたのは、日本航空の元機長でした。過去記事でも触れたことがありますが、日本航空にはこのような操縦装置を持ったエアバス機は過去から存在しておらず、すなわち日本航空の元機長は、このタイプの操縦経験は無いのです。

いずれにしろ、異常な低高度に下りたのがどんな理由だとしても、それをチェックして警告できなかったもうひとりのパイロットの責任も重大です。それはもちろん着陸時のプロシージャ(手順)を無視したものなのです。もっとも、過去にも他のパイロットの警告を無視して事故に繋がったケースは少なくなく、今回もそうかもしれませんが


【DFDRの解析を待つしかない】
事故機の機長はどこかに雲隠れしてしまったそうで、全く言葉もありません。あとは、機体から改修されたデジタルフライトデータレコーダー(DFDR)の解析により高度・速度・操作内容などが判明すれば、どんな飛行が行われたのが明らかになりますから、それを待つしか無さそうです。

明らかなことは、何らかの事情で異常な『アンダーシュート』の状態に陥り、本来は40~50mの高度で通過するローカライザーアンテナ上を、アンテナの高さ6.5mよりも低い、地面すれすれの異常な低高度で進入したということです。

管理人としては、やはりその裏でパイロット心理、時間や燃料の節約のために視程が悪くてもなるべく一発で下ろしたいということと、視界が悪く滑りやすい気象状況下では、なるべく早く着地したいという考えが影響したものと考えています。

乗客の証言にも、降下率が高かったとか急降下したとかの声がありませんから、おそらくかなり早い段階からグライドパス下の異常な低高度に下りていた可能性が高いと思われます。


【次回は対処法です】
とりあえず事故原因の解析めいたことはこれで終わりにし、後は事故原因が明らかになるのを待ちたいと思います。もしとんでもない理由が出てきたら、また書くかもしれませんが。

今回の事故は、アンテナへの衝突時や滑走路逸脱時の衝撃で負傷した方が多く出てしまいましたが、同様の事故でも、例えばアンテナ衝突時に主翼燃料タンクが破損していたら空中で爆発炎上した可能性もありますし、叩きつけるようなハードランディングになっていたかもしれません。

また、着地後も主翼やエンジンが地面に強くひっかかれば、そこを支点にして『グラウンドロール』と呼ばれる状態になって機体が転覆し、さらに爆発炎上したかもしれません。

この程度の被害で済んだのは、ひとえに幸運だったと言えるのです。

では、我々が乗っている飛行機がこんな状態に陥ったらどうするか。次回はそれについて考えます。


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【アシアナ航空機着陸失敗】意図的な異常降下か?(#969)

4月14日に広島空港で発生したアシアナ航空A320型機の着陸失敗の状況が、かなりわかってきました。

前記事の後に判明したことや見解をまとめます。

■事故機は計器着陸方式(ILS)で進入していた。ただし、広島空港に東側から進入する際のILS装置は、滑走路の方向を示す電波(ローカライザー)のみで、高度と進入角度を示す電波(グライドスロープ)の設備は無く、着陸直前の高度は自機の高度計と灯火類の目視で行う方式だった。

なお、これは設備の不備ではなく、このような空港は他にも多いごく普通の方式。空港によっては進入方向によってILS装置が設置されていない場合もある。その場合は、精測進入レーダー(PAR=Precision Approach Radar)によって管制官が無線音声で誘導する地上着陸管制(GCA=Ground Control Approach)が行われるのが一般的。

■事故機は滑走路端から約320mの地点にあるローカライザーアンテナに左エンジンを接触させた。報道には無いが、その時点で左翼の高揚力装置(フラップ)や左主脚も接触させていた可能性があり、その時点で左主脚が破損したために、その抵抗で着地後に左に逸れて滑走路を逸脱したものと思われる。


【なぜ高度が低かったか】
事故機はローカライザー電波に乗って、滑走路の方角へ正しく進入してきています。しかし、高度があまりにも低すぎたために事故になりました。

では、なぜ異常な低高度にまで降りていたのでしょうか。ここまで判明したことからは、やはりパイロットの着陸手順無視、見張り不足、もしくは意図的な異常降下が疑われてきます。なおここでの意図的とは、過日のジャーマンウイングス航空機事故のように墜落を狙ったというものではありません。


【着陸時の高度確認方法】
一般的な航空機は、着陸態勢に入ると電波高度計が作動します。これは電波を地上に向けて発射し、その反射波を捉えて高度を測定するもので、非常に精密です。

着陸態勢に入ると、機長もしくは副操縦士のいずれか操縦していない方が、電波高度計の表示高度を連続的に読み上げて操縦手に高度を知らせなければなりませんが、近年の旅客機では、機体が合成音声で高度を読み上げるものがほとんどです。

このため、操縦手は高度計を見ていなくても、音声で高度を確認できるのです。高度の読み上げは、着地直前の高度10フィート(約3m)まで続きます。


もうひとつの方法は目視です。滑走路手前には、PAPI(Precision Approach Path Indicator)と呼ばれる灯火があります。これはプリズムのような働きをするフレネルレンズを使用した灯火で、通常は白い光に見えますが、進入高度が高すぎたり低すぎたりした場合には赤く見えて、パイロットに高度異常を警告します。

下画像で、滑走路左側に見える赤白色の灯火がPAPIです。
Papi
なお、正しい進入角度の場合も、接近するにつれて次第に白色から赤色に見え方が変化します。

ILS装置に進入角度誘導電波(グライドスロープ)が無くても、このふたつの方法によってパイロットは正しい角度と高度で進入しているかを確認することができます。


事故当時は視程6000mということで、灯火類の目視には全く問題は無い気象状況でした。一部に広島空港は急に霧に包まれて視程不良になることがあるというパイロットの声や、衝突直前に霧に包まれたという乗客の証言があることから、低高度での視程はかなり落ちていた可能性が高いのですが、灯火類が見えなくなるほどの状況では無かったはずです。

仮に霧で視界を失ったとしても、それまで正しい角度で進入していれば、いきなり異常な低高度に急降下して事故になることはありません。乗客の証言にも、急降下したとの声は無いようです。


【意図的なアンダーシュートか】
これらの状況を総合すると、滑走路のかなり手前から異常な低高度に下りていた可能性が高くなります。そして、それはパイロットの意思によるものである可能性が高まってきました。

その理由は、前記事に書いた通り、滑走路が雨や雪などですべりやすい時は、なるべく制動距離を長く残したいという心理が働くことと、なるべく滑走路手前に下りることで制動を早く終わらせ、駐機スポットまでの地上走行を短くして燃料を節約したいという考えによるものです。

また、到着が遅れているような場合もなるべく早くスポットに入れて、できるだけ早く再出発の準備を始めさせて遅れを回復したいという心理も働きます。

パイロットは正常な着陸範囲内でも、できるだけ上記のような条件を考えているのです。しかし、今回はその程度があまりにも異常だったということです。

なお、A320型機のようなハイテク機の場合、自動操縦で降下する場合はこのような異常高度に下りる前に自動的に上昇を始めてしまうので、パイロットは手動操縦で降下したものと思われます。仮に自動操縦で降下した場合でも、最終進入(ファイナルアプローチ)から着地までは手動操縦します。

完全自動着陸も技術的には完成されており、それに対応した設備を持つ機体や空港も増えてはいますが、現時点では手動着陸が一般的です。


【未熟なパイロットだったのか】
では、事故機を操縦していたのは、早く下ろしたい一心で高度の確認や見張りをおろそかにするような、未熟なパイロットだったのでしょうか。

実は、早く下ろし過ぎてしまうアンダーシュート事故は、ベテランパイロットほど陥りやすい罠と言われています。過去の同様の事故例では、ベテランパイロットの比率の方がずっと高いのです。

すなわち、腕に自信があるからこそ、最も効率が良いギリギリの着陸を狙っている時に、判断ミスが忍び込むことがあるわけです。

事故当時、機長と副操縦士のどちらがコントロールを取っていたのかはまだ報道されていませんが、機長は8233飛行時間のベテラン、副操縦士は1583飛行時間の中堅クラスでした。

過去には、副操縦士の警告を無視して低高度に下り、機体を誘導灯にひっかけて墜落させた大ベテラン機長もいました。いずれにしろ、降下角度3度とされるグライドスロープ下まで下りることは、それだけで航空法違反行為です。


【パイロットの見解】
例によって、元パイロットや航空評論家によるコメントが出始めています。その中のひとつに、『事故機のパイロットは視程不良の中で滑走路を目視しようとするうちに機首が下がり、高度を下げすぎてしまったのではないか』という、あくまでミスというニュアンスのものがあります。

仮にそうであっても、それをカバーしあうためにパイロットは2人いるわけですし、それ以前に滑走路手前600m程で目視できなければ、着陸復航(go around 着陸のやりなおし)をしなければならないのです。しかしこれもパイロット心理で、着陸復航をすれば燃料も時間も無駄になりますから、できることならやりたくないというのが本音でしょう。

だからこそ個人的判断で左右されないように、規定化されているのです。でも、それが無視されたのだとしたら、ミス以前の重大な違反行為ということになります。

今回の事故は、どう見てもシステム的問題ではなく、パイロットの規定違反、判断ミス、意図的な異常操縦が絡んだ事故にしか思えません。


【乗客はどうしたら良いかという問題】
ここまで判明した内容から、今回の事故を考察してみました。さらに詳細が判明した後、もう一度くらい関連記事を書こうかと思います。

一方、こんな機体に乗り合わせてしまったら、我々は『生き残る』ために何ができるかという問題について、実は過去記事で触れています。次回はその記事とリンクしながら、我々ができる対処方法について考えてみたいと思います。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

広島空港でアシアナ航空機が着陸失敗(#968)

Asiana
広島空港で滑走路を逸脱したしたアシアナ航空A320型機。乗客の脱出用シュートが展張されている。(NHKテレビからのキャプチャ画像をお借りしました)

本日4月14日の午後8時過ぎ、広島空港に着陸しようとした韓国のアシアナ航空A320型機が滑走路を逸脱し、乗客にけが人が出ているとのことです。

現時点(14日午後11時40分)の時点でわかっている状況は以下の通り。

■滑走路端手前300mの地点にある計器着陸装置(ILS=Instmental Landing System)の一部、ローカライザー送信アンテナに左側第1エンジンを接触させている。

■着地時に異常な頭上げ姿勢になり、機体尾部を滑走路に接触させている。

■着地後滑走路を左側に逸脱し、草地上を滑走して、機首を反対方向に向けて停止。左側主脚が折損または破損しているように見える。

■当時の天候は雨。霧がかかっていたようだが、視程は6000mあったとされる。降下中気流の乱れがあり、かなり揺れが大きかった。


【アンダーシュート事故】
現時点で不明なのは、事故機がどのような着陸方式を採っていたかです。夜間で雨ながら視程は6000mあったとのことで、パイロットの目視による有視界方式(VFR=Visual Fright Rules)でも着陸は可能な状況でした。しかし、一般的には計器着陸(ILS)または着陸誘導管制(GCA=Ground Control Approach)によって、計器の指示または音声交信によって誘導されていたものと思われます。

いずれの方式だったとしても、事故の直接的原因は『アンダーシュート』と呼ばれる異常操縦です。これは滑走路の着地点よりずっと前に高度を落としすぎてしまうことで、このためにエンジンがローカライザーアンテナに接触してしまったのです。

接触によって速度が落ち、さらにパイロットが異常な低高度から高度を回復しようとして操縦棹を引いた可能性が高く、そのために異常な機首上げ姿勢で着地、尾部を滑走路に接触させたと思われます。なお、機体尾部にはこのような事態に備えてテールスレッド(尾部そり)が装着されており、軽くこすったくらいでは機体が破損しないようになっています。

しかし、異常姿勢からのハードランディングとなって大きな衝撃が加わり、そのためにコントロールを失って滑走路を左側に逸脱したものと思われます。左側主脚は着地時に破損した可能性もあり、そのために滑走路左側へ逸脱して行ったものと思われます。


【パイロット心理の罠もある】
この事故の原因として、パイロットの心理が考えられます。計器や無線交信の指示通りに降下していれば、このような事故は起こりません。しかし、夜間、霧などの視界不良、雨や雪で滑走路が滑りやすい状況などでは、パイロットには機体をなるべく滑走路の手前に下ろして、十分な制動距離を残したいという心理が働きます。

また、なるべく手前に下ろせば制動が早く済み、滑走路からより駐機スポットに近い誘導路に入ることができます。そうすれば地上走行距離が短くなるので、燃料の節約にもなります。この理由は、コスト削減がシビアな最近の航空業界では、かなり重視されているものです。

一般的には上記のような理由により、パイロットはなるべく早く着地させようという心理が働きます。事故当時の広島空港は夜間、小雨で滑走路が濡れている状況だったこともあり、パイロットにアンダーシュートを誘発するような心理が強く働いたことは考えられます。

正確な原因は現時点では不明ですが、なるべく手前に下ろしたいというパイロット心理により、計器もしくは音声交信の指示し従わずに高度を落とし過ぎたことが原因である可能性が高いと思われます。

もちろん、計器の指示を外れれば警告表示が出ますし、音声交信の指示を無視しても警告されます。それを無視したのか、もしくは可能性は小さいながら、機長が有視界方式による着陸をリクエストして、無理な操縦をした可能性も現時点では否定できません。


【その他の理由も考えられるが】
可能性としては、ILS誘導電波の異常や機体側のシステムエラーも考えられますが、確率的には上記のようなヒューマンエラーの可能性が最も高いと思われます。

続報が出ましたら、また記事にします。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月14日 (火)

山手・京浜東北線が9時間以上ストップ(#967)

4月12日(日)の早朝、東京のJR秋葉原-神田駅間で架線柱が転倒し、その撤去作業のために山手線と京浜東北線が9時間以上に渡って運転を見合わせました。


【現場へ行きました】
実は管理人、事故発生日の朝には近くにいましたので、現場へ行ってみました。早い話が野次馬ですが、現場付近の高架下は人もあまりおらず、実に静かなものでした。そこが現場だということを、地上の通行人もあまり気づいていなかったようです。下画像は、高架下から管理人が撮影しました。
Stem
高架橋上の架線柱が、大きく傾いています。

次の画像は頂き物ですが、午前7時ごろ、現場を徐行して通過する電車内から撮影したものです。
Stem2

管理人が現場に着いたの時間は午前10時頃で、まだ架線柱が傾いたの倒れたのという情報しか無い段階でした。現場の様子(画像のものしか見えませんでした)から想像した状況は、架空電車線(架線)に張力を与えるための装置がついた柱が、その張力で傾いたのではないかということでした。ならば基礎の施工不良辺りかなと。

一枚目画像の、傾いた柱についている二本の筒状のものが、架線に張力を与える装置です。

しかし二枚目画像で倒れた柱上部のトラス部分が切断されているのを見て、お役ご免で撤去を待っている柱であると気づきました。本来は二本の柱がトラス構造のビームて繋がれている門形の構造物なのですが、トラスが切断されて構造強度がかなり落ちていたのです。しかし、まだ隣の張力装置(テンショナー)付きの柱とは張力ワイヤーで繋がっていて、二本が連鎖的に傾き、倒れたこともわかりました。

一枚目画像の傾いた柱は、まだ一方がトラスビームと繋がっていたために、転倒を免れたようです。なお、転倒した柱は架線柱ではなく、架線に給電するための電線を支持する「電化柱」だったそうです。


【これが平日だったら!】
事故の状況はともかく、これが平日だったなら、大変な混乱になっていたことは想像に難くありません。さらに、他の線区、例えば東海道本線にも影響していたならば、通勤列車だけでなく長距離列車もすべて立ち往生という状態になったのです。

それ以前に、倒れた柱が列車を支障、早い話が衝突したり脱線を招いたりすることも無かったとは言い切れません。そう考えると、事故は起きてしまったものの、実に幸運が重なったということもできます。

ひとつ条件が違っていたら、さらにとんでもない混乱になっていたかもしれないのです。今回は、あくまでかなり幸運でした。しかし、つくづく何が起きるかわからないなと、現場に立って改めて思ったのでした。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月13日 (月)

【ヲタ目線地震教室03】断層ってなんだろう(#966)

前回記事では、地震の基本的なメカニズムについて触れました。

早速余談ではありますが、あのようなメカニズムのために、地球上では地震がやたらと起きる場所と、ほとんど起きない場所があります。

北米大陸の東海岸は地震が起きにくい場所の典型のひとつなので、1900年代初頭からニューヨークの摩天楼のような高層ビルが造られ、一部は今も現役です。耐震構造とかを考える必要が無かったわけですね。

なお、米国東海岸でも地震が全く無いわけではなく、ワシントンD.C.在住の日本人に伺ったところ、日本で言う震度1~2程度はたまにあるそうです。ごくまれには震度3くらいは起きるそうで、そうなると現地の方々は日本人から見ると滑稽なほどパニックに陥るとのこと。

でも、地震被害を気にしなくて良い暮らし、実にうらやましい。


【地球上は断層だらけ】
さて、ここからが今回の本題です。地震の話には必ず断層が登場します。では、断層とはなんだろうと。

言うまでもなく、断層ができたり動いたりすることが、地震の原因そのものです。すなわち、断層ができる力が加わっていない場所や断層が無い場所では、地震は起きません。

ここで非常に大ざっぱに言ってしまえば、断層とは岩盤の割れ目です。それができる原因には主に2種類あり、まずひとつは地殻プレートの境界部分。地球表面を覆う地殻プレートが他の地殻プレートと接している部分は、全て断層となります。地球上は巨大断層だらけであり、プレート境界型地震はそこで発生します。
Plate2

もうひとつは、強い力が加わった岩盤が割れて、ずれた部分です。加わる力は主に地殻プレートの運動によるものですが、火山の影響でできることもあります。 様々な場所に様々な力がかかり、岩盤の構成も様々ですから、地球上のありとあらゆる場所に断層は存在し、それが動けば地震となります。


ここでまた脱線しますが、いわゆる火山性微動や火山性地震とは、マグマが岩盤内を上昇して圧力が上がり、マグマ溜まりの周りの岩盤をミシミシと押し広げることで起きる小規模の地震です。このため断層による地震とは地震波の波形が異なり、それ自体が大規模化することはありません。

しかしマグマ上昇の圧力が非常に高くなったり、地下の水蒸気圧力が非常に高くなる大規模噴火の直前になると、マグマ溜まりの周囲の岩盤にかかる大きな力によって新たな断層が形成されたり、既にある断層を大きく動かすことがあります。

そうなるともう火山性地震ではなく、火山の影響で起きた一般的な断層地震ということになり、大規模化することもあります。典型的なのが1707年の富士山宝永噴火(マグマ噴火)や1888年の会津磐梯山噴火(水蒸気爆発)で、噴火直前には山体直下付近が震源と思われる直下型地震が発生したことが記録されています。特に富士山宝永噴火では、被害が発生するレベルの直下型地震が多発したとのことです。

なお、富士山宝永噴火は今で言う南海トラフ地震ひとつ、東海地震の49日後に起きましたが、東海地震はプレート境界型地震であり、その後に起きた前兆地震は富士山直下付近の断層を震源とする内陸直下型地震です。メカニズム的に全く別モノなのです。東海地震が富士山のマグマ上昇を誘発し、その影響で内陸直下型地震が起きたという関係になります。

脱線ついでに、富士山大噴火を“予言”する(むしろ“期待”と言っても良いかもw)方々のほどんどは、実際にあった激しい前兆現象を無視していますね。もちろんいつかは富士山も噴くことがあるかもしれませんが、大規模に噴くのならば、山体膨張や地温上昇より大きな前兆現象が観測されるはずです。

むしろ、富士山より箱根山系の方が・・・というのは管理人の個人的印象ということにしておきます。

あれ?すっかり火山の話になってしまったw次回は断層の話に戻しましょう。


【今回のポイント】
この際だから火山の話もポイントに入れますw

■断層とは、大ざっぱに言えば岩盤の割れ目(不連続面)である。

■地殻プレートの境界面はすべて断層。大きな力がかかって岩盤が割れ、ずれた部分も断層。かかる力は主に地殻プレートの移動によるものだが、火山のマグマ上昇でも起きることもある。

■火山の大規模噴火直前には、マグマや水蒸気の圧力により、火山性ではない直下型地震が誘発される可能性が高い。

■細かい前兆(らしきもの)だけで、大規模噴火を無闇にアオるな。

最後にまた脱線。富士山噴火の前兆だとか言われるものには、全く関係無いものも多いのです。例えば、富士山麓の鳴沢林道の「亀裂」とされたものは雨水による陥没に過ぎませんし(山に入る人なら良く見ている現象です)、河口湖の異常渇水も、当初は水位計の故障で異常値が出て騒ぎになっただけで、あの程度の渇水自体は過去から何度も起きていることです。

世に出る情報には、いろいろな意志が絡んでいます。地震や噴火の情報に限らず、『本当にそうなのか?』という視点を、常に忘れずに。
(一体何の記事だこれはw)


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

2015年4月10日 (金)

【ヲタ目線地震教室02】地球の中は流れている(#965)

今回は、地震とは何かということについて考えてみましょう。


【地球は動いている】
とりあえず、一応基本的なことから入ります。

地球の表面の深さ10~60kmくらいまでは、卵の殻に例えられる固い岩盤である、地殻に覆われています。その下には、地殻よりは柔らかい岩盤である、マントルと呼ばれる部分があります。

マントルも岩盤なのですが、非常に長い時間のうちには、水のような流体と同じ性質を見せます。“流れる”のです。地球深部の熱で加熱された部分が軽くなり、地球表面に向けて沸き上がってきます。地球の内部では、高温高圧の地球中心部というコンロで熱せられたマントルが、あたかもお湯が沸く時のような対流を起こしているわけです。

マントルが湧き出る部分には海底山脈である海嶺が形成され、所々にはマグマが湧き上がるホットスポットができ、激しく活動する火山が形成されます。ハワイ諸島やアイスランド島が典型的なホットスポットです。

地球表面近くにまで沸き上がったマントルは、新しい地殻を作りながら横方向へ流れはじめ、その上に乗った地殻ごと動かして行きます。その速度は、年間数cm程度。

その動きによって起こるのが、大陸移動説やプレートテクトニクス理論とされているもので、要は大陸が乗った地殻は常に動いているわけです。

このため、太古にはひとつの巨大な陸地(超大陸パンゲアと通称)だった大陸が引き裂かれて移動しながら現在のような形になったとされ、それは現在も続いているのです。

実際に、現在の大陸の海岸線の形は引き裂かれた当時の形を残している部分も多く、例えば大西洋を挟んだ北米、南米大陸の東岸とアフリカ大陸の西岸を近づけてみれば、パズルのように、ほとんどぴたりと合うわけです。


【行き場所が無くなる】
このような働きにより、地球の表面はいくつかの地殻プレートに分割されて、常に動いています。

例えば、ハワイ諸島は年間数cmずつ日本列島に近づいていますし、伊豆半島はかつては島だったものが、日本列島にぶつかって、常に押しつけられています。伊豆半島で浅い震源の地震が多いのは、押しつけられる力による岩盤のひび割れ、すなわち活断層が多いことによるものです。


さて、マントル対流によるプレートの移動は、ある問題を引き起こします。移動する地殻プレートが隣の地殻プレートとぶつかると、それ以上移動できなくなります。

行き場所を失った地殻プレートは、仕方がないので隣の地殻プレートの下に沈み込んで行くことになります。日本列島の太平洋側はこの典型的な場所のひとつで、西向きに動いてくる海側の太平洋プレートが、陸側の北アメリカプレートやユーラシアプレートの下に沈み込んでいます。

下図は、日本列島付近の地殻構造を模式的に表したものです。
Overturn

日本列島付近は、陸側のユーラシアプレートと北アメリカプレートに対して東側から太平洋プレートが押し込んで来ていて、さらに南側からはフィリピン海プレートが刺さるように押してきていると言う、地球上で最も複雑な地殻プレート会合点ということができるでしょう。地震の巣にもなるわけだ。
Photo

地殻プレートが動く方向によっては、隣の地殻プレートと横方向にこすれ合っている場所もあります。北米大陸西海岸にあるサンアンドレアス断層は、そんな横ずれ断層の典型です。この断層は、太平洋プレートと北アメリカプレートの境界が地上に現れている、非常に珍しい場所でもあります。下画像は、サンアンドレアス断層の空撮画像です。壮大な“地球のヒビ”です。
St_andreas

【そりゃ地震も起きますよ】
このように、地球が生み出す巨大な力によって、地球上のあちこちで巨大な岩盤同士が常にグリグリ、ズリズリとこすれ合わされているわけで、そこでは当然、固い岩盤もぼろぼろになって、ヒビだらけになります。

こすれ合わされている部分の周りでも、岩盤に大きな力がかかっていますから、弱い部分にヒビができやすくなります。

それが時々、力に耐えられなくなってバキっと割れたりズリっとずれたりすることで発生する衝撃が、あたかも水中を伝わる波紋のように地中を広がって地表面を揺らす、それが地震というわけです。

地震は人間の生活に危害を及ぼしますから、当然忌み嫌われます。でも、地球さんにしてみれば、たまにセキやクシャミするように身震いを繰り返しているだけの、当たり前のことなのです。


【今回のポイント】
ある防災記事で、どこかの教授が妙なことを言っていました。曰く『地震や火山活動は地球の営みであり、災害だけでなく長い目で見れば人間にも多くの恵みをもたらす(温泉とかすばらしい景色とか肥沃な土壌とか)だから、怖れるだけでなく感謝の気持ちも持たなければならない』とか。

ご自分の家ぶっ壊されたり家族が犠牲になっても、同じことが言えますかね。人間の寿命が1000年くらいあったら考えてもいいかなと。全く、お気楽なものだw

さておき、今回のポイントです。

■地球深い部分の熱によって、地球内部ではマントルが対流していて、それによって表面の地殻プレートが動いている。

■地殻プレートの境界付近やその周辺では、岩盤の沈み込みや横ずれによって巨大な力がかかり、岩盤がもろくなっている。それ以外でも、力がかかる場所では同様のことが起きている。

■それが時々大きく割れたりずれたりして起こる衝撃波が、地震である。


ということでよろしいかと思います。


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2015年4月 9日 (木)

管理人のトラベルEDCを紹介します(#964)

今回は、管理人が実際に旅行に持って行った、トラベルEDC装備を紹介します。

Tedc2

移動手段は主に鉄道で期間は3日半。その旅支度に、画像の9種類を加えました。それぞれ解説して行きます。なお、収納は両手が空けておけるリュックサックです。


【トラベルEDC装備品紹介】
1■防煙フード
ホテル内や鉄道のトンネル内での火災避難に対応(青函トンネル発煙事故のようなこともあるのです)
フードを膨らませて頭からかぶることで、5分間以上呼吸をすることができます。

2■軍用ポンチョ
当ブログに何度も登場しているアレです。高性能だけど畳むとコンパクトなのが旅行にぴったり。激しい雨はもちろん、防風・防寒衣としての機能も抜群です。拡げるとグラウンドシートや簡易テントにもなります。駅や空港で足止めを食ったり、立ち往生した列車などの中で長時間過ごすような場合にもいろいろ使えます。

3■ウインドブレーカー
今回は4月の西日本ということで、上衣はTシャツにスウェットパーカーという軽装でした。そこで寒さや小雨に備えて、コンパクトなナイロン製ウインドブレーカーを持参しました。寒い時や小雨くらいで快適なのはもちろんですが、事故や災害に遭遇して屋外で過ごす時には、とにかく「寒くない」ということが重要なのです。ポンチョと併用すれば、かなりの寒さに対応できます。

4■衛生セット
普段EDCしているものをそのまま持参。内容はマスク3枚、絆創膏10枚、ラテックス手袋3組です。マスクはいつでも持っていたいものですし、絆創膏は、ケガ用というよりは主に靴ずれ防止・治療用です。

5■LEDライト(2本)
コンパクトで明るいもの(26ルーメン)を2本セレクト。一本は常時ズボンのポケットに、もう一本は予備電池と一緒にリュックの外ポケットに収納。あらゆる緊急事態でライトは重要な装備ですが、荷物を失う状況も考えて常時1本は身につけていたいものです。これが車の旅ならば、管理人は80ルーメンの強力な奴をもう一本追加します。

6■モバイルバッテリー
今回は5000mA/hと5300mA/hの2個をセレクト。スマホだけならば5回程度フル充電できる容量です。大型の10000mA/hも持っていますが、旅先では小型2個の方が使いやすいのでこのスタイル。各種機器への接続ケーブルやバッテリーを充電するためのケーブル類も忘れずに。使ったら、電源取れる場所ではすかさず補充電を。

なお、画像左側のPanasonic QE-PL202は5300mA/h容量で、フル充電状態なら付属の広角LEDライトを30時間以上点灯させられます。光が拡散するタイプなので、ランタン代わりとしても便利なものです。

7■予備乾電池類
心配性のw管理人が持参した電池はこれが全てではないのですが、一応参考までに。単4電池4本と単4→単3変換アダプター2個。これは乾電池が必要な機器の数で調整してください。変換アダプターがあれば、持参する電池の種類を少なくできます。

8■レスキューホイッスル
当ブログ記事【レスキューホイッスルトライアル】で、当ブログとしてベストバイとした、コクヨ製の『防災の達人』です。旅行だけでなく、普段からEDCしています。

9■浄水ストロー
商品名Mizu-Q。どんな場所に放り出されても、とりあえず飲料水が確保できれば、その後の選択肢が大きく広がります。生きるための水は、危険でなければなんでも良いのです。川の水などでも、次亜塩素酸ナトリウム粉末で消毒し、不純物を浄化するフィルター入りのストローで吸うことで、飲み水に変えることができます。40グラムにも満たないこれ1本あるだけで、渇きで苦しむ可能性がほとんどなくなるのです。


【各自でアレンジを】
以上が、今回の旅の内容に合わせて管理人がセレクトしたEDC装備です。重量は合わせて1300gくらいになり、徒歩も多い鉄道の旅では決して軽い負担ではありませんが、これだけあることの安心感は絶大なものです。
もちろん、車の旅ならばさらに装備を加えて行きます。

ただ、この内容が絶対ということではありません。皆様それぞれのお考えや状況で、アレンジしてみてください。あそこに書いてあったから持って行ったというのでは、イザという時に使い方がわからなかったり、その存在を忘れてしまうこともあります。

まずご自分で考え、選び、その上で装備することで、どんな装備もその機能を最大限に発揮することができるでしょう。


■当記事は、カテゴリ【防災用備品】です。

2015年4月 8日 (水)

【青函トンネル発煙事故】旅先で命を救うもの(#963)

Tappi
竜飛海底駅構内へ避難する乗客。この画像だけでも3つのライトが確認できる
(NHKテレビからのキャプチャ画像をお借りしました)


4月3日、JR北海道の特急電車が青函トンネル内で発煙事故を起こし、乗客が下車避難しました。まず事故の状況を考察し、報道からわかった点についても考えてみます。


【海底トンネルは急勾配】
長大山岳トンネルならば、湧水が片方の出口に向かって流れるように一方に向かって勾配をつける『片勾配』や、両方の出口に向かって流れるように、山形の『拝み勾配』と呼ばれる形になっています。

一方、海底トンネルはその性格上必然的に、海底部分に向かって坂を下り、そこから陸上へ向かって坂を上る『突っ込み勾配』という形になり、勾配の角度はかなり急になります。

余談ながら、海底トンネルはこのような形状のために自然の排水ができず、湧水はポンプで汲み上げて排水しなければなりません。このため、海底トンネルを遮断しようと思ったら、トンネルの破壊などは必要ありません。ポンプを止めさえすれば、海底部分から染み出す湧水で短時間のうちに通行不能になってしまうのです。ですから、海底トンネルのポンプ室は厳重に警備されています。もちろん、テロ対策です。


さておき、海底トンネルはこのような形状のために、ほぼ半分の長さに渡って急勾配を延々と上らなければなりませんから、動力車のモーターやディーゼルエンジンなど機器に大きな負荷がかかります。世界トップクラスの長大海底トンネルである青函トンネルは、列車にとって非常に過酷な場所なのです。

今回の発煙事故も、海底部分から青森県側に向かう上り勾配で発生しました。その原因はまだ明らかではありませんが、高い負荷によって機器が異常を起こしたということでしょう。


【なぜすぐに停まったか】
トンネル内で発煙や火災が発生した場合、旧国鉄の運行規定では、すぐに列車を停車させることになっていました。しかし1972年に福井県の北陸トンネル(13870m)で発生し、死者30人、負傷者714人という大惨事となった『北陸トンネル火災事故』を契機に運行規定が見直され、車両の通気をできるだけ遮断した状態で、トンネル外まで走り抜けてから停車するよう変更されました。

今回の青函トンネル事故では発煙が発見されてすぐに停車していますが、これには青函トンネルならではの理由がありました。

長大海底トンネルや長大山岳トンネルでは、列車や車が走るトンネル(本坑)の脇に、もう一本トンネルがあることがあります。これはトンネル掘削時には『調査坑』と呼ばれるもので、本坑を掘る前にまず小さなトンネルを掘り、土質などを調査するためのものです。本坑完成後は『作業坑』などと呼ばれ、保守作業や緊急避難用に使われています。

青函トンネルは超長大トンネルであり、発煙地点から出口までまだ相当の距離があったこと、上り勾配のほぼ中間点にある『竜飛海底駅』を通過した直後であったことなどから、すぐに停車して乗客を作業坑経由で竜飛海底駅に避難させるのが最良と判断されたのでしょう。

本坑と作業坑は防煙扉で遮断でき、竜飛海底駅からはケーブルカーと階段で地上へ出ることができるのです。今回の事故では発煙だけで済みましたが、これが火災に発展していても、乗客は無事避難することができたでしょう。


【防災EDC意識は高まった?】
管理人は鉄道ヲタでもあるので前置きが異常に長くなりましたが、ここからが本題です。

この事故のテレビ報道では、竜飛海底駅の監視カメラ映像が流されました。作業坑から続々と駅に入って来る乗客の姿が映っています。なお、青森県側の竜飛海底駅と北海道側の吉岡海底駅は保守用の拠点であって客扱いはしておらず、かつては行っていた見学会も、現在は行われていません。


ニュースで監視カメラ映像を見た管理人は、正直なところ意外に思いました。カメラに映る30人のひとり以上くらいの割合で、かなり強力なLEDライトを手にしていたのです。LEDライトであることは、光の色でわかります。

車両から出て非常口から作業坑に入るまではほぼ真っ暗なので、その段階でライトを点けてそのまま来られたのでしょう。でも、照明がある作業坑内で仕舞った方も多いでしょうから、実際にはもっとたくさんの方がライトを持っていたと思われます。


【アウェイでこそ!】
発煙事故を起こしたのは特急電車で、乗客の多くは観光や仕事で旅行中の方だったはずです。その旅装備にLEDライトを入れている方があんなにいるんだなということに、管理人はちょっと感動しました。あの列車は北海道から青森に行く特急でしたので、乗客に東日本大震災を近くで体験した方が多かったせいもあるかもしれませんが、ライトを持った人があれだけいるんだと。

旅装備はできるだけ軽くしたいものです。でも、イザという時のためのEDCという意識がずいぶん浸透して来ているのだなと。防災EDC装備は、不案内な旅先などのアウェイでこそ威力を発揮するものであり、十分な明るさのライトは、アウェイ用EDC装備の筆頭に挙げられるものです。

あれだけの数のライトがあれば、仮に何百人もの人が真っ暗なトンネルの中を避難することになっても、かなり視界が確保できたでしょう。もちろん、持っている本人の安全と安心感は絶大です。暗闇の中で、自分の『周囲3m』の危険を発見し、行く先の状況を確かめるために不可欠の装備なのです。


今回の事故は、『世の中こういうこともある』という、ひとつの教訓として受け止めるべきでしょう。これがもし巨大地震だったら、照明が完全に失われたかもしれませんし、長さ10kmを超えるような長大トンネルでなければ、普通は作業坑もありません。停電すれば電車は動けなくなります。鉄道に限らず、車で同じような状況に遭う可能性の方が、むしろ高いでしょう。

というわけで、日常生活はもちろん、アウェイに出られる際にも、是非とも防災EDC装備をお忘れなく。ここではライトのことだけですが、他に欲しいものがいろいろあります。


【ご参考までに】
実は管理人、先日東京から博多や大阪をまわって、3日半に渡る鉄道の旅をしてきました。

その旅に持参した管理人の鉄道旅行用EDC装備を、次回記事で紹介します。ぜひご参考にされてください。EDC装備の撮影を口実に、まだ旅装を解いていないのです。本当は面倒なだけかもですがw


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月 2日 (木)

夢か精神論か?首都直下地震減災基本計画(#962)

カテゴリ【日記・コラム】の前回記事(#960)では、政府が策定した南海トラフ地震災害応援計画について記事にしました。今回は、同じく政府が閣議決定した、首都直下地震の減災基本計画についてです。


【1日早かった?】
この閣議決定は、3月31日に行われました。その報道を見た管理人は、「あれ、今日は4月1日だったっけ?」くらいに思ったのです。これ、ジョークでしょう?と。

基本計画は主に10年後の2024年度末での達成を目標にしていますが、その骨子について要約します。

■想定死者数
2万3千人 → おおむね半減させる

■想定全壊・焼失家屋数
61万棟 → おおむね半減させる

■住宅の耐震化率
79%(全国・2008年))→ 95%(2020年)

■木密地域での感震ブレーカー設置率
ほぼ0% → 25%

■東京、神奈川、千葉、埼玉の危険な密集市街地
2500ヘクタール → 100%解消に近づける(2020年)

■家具の固定率
40%(2013年) → 65%

■東京、神奈川、千葉、埼玉の公共防火拠点耐震化率
92%(2013年) → 100%


首都直下地震における予想死者数は、その7割が火災によるものと想定されているために、家屋の倒壊を減らして出火も減らすことと、『通電火災』を減らすことに重点を置いた内容になっています。

皆様は、この計画をどうご覧になりますか?管理人としては、達成できるのは最後の防火拠点100%耐震化のみ、後は半分も達成できないどころか、2~3割も達成できれば良いのではないかくらいに思っています。


【雑巾は乾ききった】
企業のコスト削減努力を『乾いた雑巾を絞る』ようだと比喩することがありますが、この計画はまさにそれではないかと。

市民の防災意識の著しい向上は、事実上20年前の阪神・淡路大震災に始まり、そして東日本大震災を経験してピークに達し、それから4年が経過して、早くも下降線をたどっているのが現実でしょう。個人レベルでの災害対策は、“やる人はとっくにやっている”のです。つまり、雑巾は乾ききってしまった。

その中で、個人に小さくないコスト負担と大きな手間を強いる対策を劇的に進めて行こうというのが、この計画なのです。過去10年だけを見ても、例えば住宅の耐震化率はほとんど向上していません。

危険な住宅密集地に至っては、10年どころか事実上数十年も手つかずなのです。なのに、あと10年で耐震化をほぼ完成させようと。

企業のコスト削減目標ならば、達成しなければ明日の仕事は無いのですから、文字通り『死守』が至上命題です。でも、首都直下型地震の発生確率が今後30年のうちに70%と聞いたところで、現時点で手をつけていない層が動き出すとは思えません。

これが独裁国家ならば、『国民の安全のために』強制移住させてでも達成するのでしょうが、民主的法治国家においてできる手段は『対策のお願い』と『補助金制度』くらい。強制力は全く無く、仮に条例などで強制力を持たせても、未達による罰則があるわけでもなし。

ここで、管理人が公開しているyoutube動画をひとつご覧ください。過去記事の【バーチャルシミュレーション】用に制作したものですが、東京都内で最も倒壊・火災危険度が高い場所のひとつとされている街の(ごく一部の)映像です。

東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で、このような場所の危険を10年でほぼ100%無くそうというのが、今回の計画なのです。

youtube動画 『東京地震災害危険地帯を行く(その2)』(6分10秒)
https://youtu.be/GpRT4fbG5-k

計画では、このような場所での対策として『建て替えや移転を促す』とされていますが、建て替えられないから昔からこのままなのだし、街全体の危険を減らすという理由で、長年馴染んだ街を離れる人がいるでしょうか。もちろん、行政が代替地を用意してくれるわけでもありません。

移転する人がいたとしてもごく僅かなのは確実で、大勢にはほとんど寄与しないことは明らかです。


【壮大な机上の空論】
企業ならば、こんな壮大な計画をブチあげてほとんど達成できなければ、普通ならば責任者のクビが飛びますね(普通じゃないことも多いですがw)

この計画を、敢えて解りやすい実名を挙げて比喩すれば、伝統的にトヨタが圧倒的に強い名古屋周辺で、日産が『10年で50%のシェアを取る』と言い出したに等しいというか、それ以上困難というか。

もしそれをやろうとすれば、まずは販売補助金攻勢は不可欠なわけですが、行政にはその財源が十分にあるかどうかも不明確で、補助金があっても、皆が「これはやっておいた方が得だな」と思えるような額ではないでしょう。

もし破格の補助金が出せたとしたら、今度は自助努力で対策を進めた人との不公平がハンパなくなるという問題も出てきます。あり得ない話でしょうけど。

残念ながら、今回の基本計画は未達必至どころか、ボロボロの結果になるでしょう。壮大な机上の空論としか言えません。責任論?バカバカしくてそんな議論もしたくない。誰かのクビが飛んだら、犠牲者が減るわけでもなし。


【批判だけじゃなんですから】
当ブログのスタンスは、「巨大災害からあなたや大切な人を救うのはあなた自身だ」というものです。

もちろん、行政の努力によって改善されることも多いのですが、それはあくまでマクロの話。あなたを傷つけるのは、言うなればあなたの『3m以内』にある、ミクロの危険要素なのです。

ならば結局、巨大災害から『生き残る』ためには自分の周りの危険を知り、その避け方を知り、危険要素をできるだけ取り除き、そして『生き延びる』ために十分な備蓄をせよ、という『自助』に行き着くしかないのです。

防災・減災のために必要なのは、自ら備える『自助』、近隣のコミュニティで助け合う『共助』、そして行政による『公助』の3つです。

そこで、当ブログとしては『自助8割』を提唱します。

共助と公助は、基本的に無くて当然、あったらラッキーくらいに考えましょう。でも、スポーツ選手が言う「練習は裏切らない」と同様に、『自助は(絶対に)裏切らない』のです。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年4月 1日 (水)

【エイプリルフールウソニュース】防災新時代!個人で精密測位へ(#961)

24satellite
地球を取り巻く24個のGPS衛星のイメージ


いよいよ誰でも手軽に精密測位できる時代になるようです。P-CASTニュースから記事を引用させていただきます。

(以下引用)------------------

日本の国土交通省、防衛省、米国防総省と米国のIT大手アップルコンピューターは31日、ニューヨーク市内で記者会見を行い、共同開発した個人測位システムのアウトライン発表した。

それによると、米国が運用する全地球測位システム(GPS)と日本の測位衛星「みちびき」からの測位電波を統合して演算することにより、日本列島周辺において個人が持つスマートホンの位置情報を、ミリ単位の精度にまで高めることができるという。

このシステムを利用することでナビゲーションの精度が飛躍的に向上するのはもちろん、スマートホンに記憶させた地点の地殻変動を、高さも含めてミリ単位で測定できるようになる。それにより、大規模地震や火山噴火の前などに起きる地表面の変動を個人レベルで精密測定することが可能になり、学術利用はもとより個人の防災対策への応用も期待されている。国土交通省省の担当官は、『特定の場所で大きな変動が継続した場合は、大地震や火山噴火の可能性を考えて防災対策を強化していただきたい』とコメントしている。なお、解析された変動データは専用サイトで公開されるという。

一方、個人のスマートホンに蓄積された測位データは自動的に送信され、集積されたビッグデータを解析することで、従来の数十倍という精度で地表面の変動が測定できるようになる。この方法は、人が行ける場所ならば測位点を理論上無限に増やすことができ、多数のデータを比較参照することで、地殻変動以外のノイズを除去するのにも有効だという。なお、自動送信されるデータは位置情報のみであり、個人情報が漏洩する可能性は一切無いとのこと。

アップルコンピューターはこの席で、精密測位専用スマートホン『iphone G』を近日中に発売すると発表した。さらに、他社の端末でも利用できる無料専用アプリの配布も順次行って行くとのこと。このアプリは、測定データを過去の変動データ及びビッグデータ解析結果と照合し、その場所での地震危険度を数値で表す機能を備えているという。

特筆すべきは、このシステムを将来的にロシアの衛星測位システム「GLONASS」(グロナス)、中国の「北斗」とも統合運用すべく、米国が中心となって両国と交渉を進めているということ。それが実現すれば、全地球上での微細な変動がより詳細に捉えられるようになり、防災対策の充実や災害時における救援の迅速化が期待される。また、軍事的に非常に重要な意味を持つ衛星測位システムの統合運用が一部でも実現すれば、宇宙空間や電波の平和利用としても象徴的な出来事となろう。

(引用終了)--------------------


なんともすばらしい話ですね。個人のスマートホンで巨大地震の前の隆起や沈降、水平移動がミリ単位で測定でき、地震の危険性を数値で警告、しかも将来は日米露中が協力・・・


なんて時代、いつかはが来るのかなw

ウソニュースでしたwww

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