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2015年4月15日 (水)

【アシアナ航空機着陸失敗】意図的な異常降下か?(#969)

4月14日に広島空港で発生したアシアナ航空A320型機の着陸失敗の状況が、かなりわかってきました。

前記事の後に判明したことや見解をまとめます。

■事故機は計器着陸方式(ILS)で進入していた。ただし、広島空港に東側から進入する際のILS装置は、滑走路の方向を示す電波(ローカライザー)のみで、高度と進入角度を示す電波(グライドスロープ)の設備は無く、着陸直前の高度は自機の高度計と灯火類の目視で行う方式だった。

なお、これは設備の不備ではなく、このような空港は他にも多いごく普通の方式。空港によっては進入方向によってILS装置が設置されていない場合もある。その場合は、精測進入レーダー(PAR=Precision Approach Radar)によって管制官が無線音声で誘導する地上着陸管制(GCA=Ground Control Approach)が行われるのが一般的。

■事故機は滑走路端から約320mの地点にあるローカライザーアンテナに左エンジンを接触させた。報道には無いが、その時点で左翼の高揚力装置(フラップ)や左主脚も接触させていた可能性があり、その時点で左主脚が破損したために、その抵抗で着地後に左に逸れて滑走路を逸脱したものと思われる。


【なぜ高度が低かったか】
事故機はローカライザー電波に乗って、滑走路の方角へ正しく進入してきています。しかし、高度があまりにも低すぎたために事故になりました。

では、なぜ異常な低高度にまで降りていたのでしょうか。ここまで判明したことからは、やはりパイロットの着陸手順無視、見張り不足、もしくは意図的な異常降下が疑われてきます。なおここでの意図的とは、過日のジャーマンウイングス航空機事故のように墜落を狙ったというものではありません。


【着陸時の高度確認方法】
一般的な航空機は、着陸態勢に入ると電波高度計が作動します。これは電波を地上に向けて発射し、その反射波を捉えて高度を測定するもので、非常に精密です。

着陸態勢に入ると、機長もしくは副操縦士のいずれか操縦していない方が、電波高度計の表示高度を連続的に読み上げて操縦手に高度を知らせなければなりませんが、近年の旅客機では、機体が合成音声で高度を読み上げるものがほとんどです。

このため、操縦手は高度計を見ていなくても、音声で高度を確認できるのです。高度の読み上げは、着地直前の高度10フィート(約3m)まで続きます。


もうひとつの方法は目視です。滑走路手前には、PAPI(Precision Approach Path Indicator)と呼ばれる灯火があります。これはプリズムのような働きをするフレネルレンズを使用した灯火で、通常は白い光に見えますが、進入高度が高すぎたり低すぎたりした場合には赤く見えて、パイロットに高度異常を警告します。

下画像で、滑走路左側に見える赤白色の灯火がPAPIです。
Papi
なお、正しい進入角度の場合も、接近するにつれて次第に白色から赤色に見え方が変化します。

ILS装置に進入角度誘導電波(グライドスロープ)が無くても、このふたつの方法によってパイロットは正しい角度と高度で進入しているかを確認することができます。


事故当時は視程6000mということで、灯火類の目視には全く問題は無い気象状況でした。一部に広島空港は急に霧に包まれて視程不良になることがあるというパイロットの声や、衝突直前に霧に包まれたという乗客の証言があることから、低高度での視程はかなり落ちていた可能性が高いのですが、灯火類が見えなくなるほどの状況では無かったはずです。

仮に霧で視界を失ったとしても、それまで正しい角度で進入していれば、いきなり異常な低高度に急降下して事故になることはありません。乗客の証言にも、急降下したとの声は無いようです。


【意図的なアンダーシュートか】
これらの状況を総合すると、滑走路のかなり手前から異常な低高度に下りていた可能性が高くなります。そして、それはパイロットの意思によるものである可能性が高まってきました。

その理由は、前記事に書いた通り、滑走路が雨や雪などですべりやすい時は、なるべく制動距離を長く残したいという心理が働くことと、なるべく滑走路手前に下りることで制動を早く終わらせ、駐機スポットまでの地上走行を短くして燃料を節約したいという考えによるものです。

また、到着が遅れているような場合もなるべく早くスポットに入れて、できるだけ早く再出発の準備を始めさせて遅れを回復したいという心理も働きます。

パイロットは正常な着陸範囲内でも、できるだけ上記のような条件を考えているのです。しかし、今回はその程度があまりにも異常だったということです。

なお、A320型機のようなハイテク機の場合、自動操縦で降下する場合はこのような異常高度に下りる前に自動的に上昇を始めてしまうので、パイロットは手動操縦で降下したものと思われます。仮に自動操縦で降下した場合でも、最終進入(ファイナルアプローチ)から着地までは手動操縦します。

完全自動着陸も技術的には完成されており、それに対応した設備を持つ機体や空港も増えてはいますが、現時点では手動着陸が一般的です。


【未熟なパイロットだったのか】
では、事故機を操縦していたのは、早く下ろしたい一心で高度の確認や見張りをおろそかにするような、未熟なパイロットだったのでしょうか。

実は、早く下ろし過ぎてしまうアンダーシュート事故は、ベテランパイロットほど陥りやすい罠と言われています。過去の同様の事故例では、ベテランパイロットの比率の方がずっと高いのです。

すなわち、腕に自信があるからこそ、最も効率が良いギリギリの着陸を狙っている時に、判断ミスが忍び込むことがあるわけです。

事故当時、機長と副操縦士のどちらがコントロールを取っていたのかはまだ報道されていませんが、機長は8233飛行時間のベテラン、副操縦士は1583飛行時間の中堅クラスでした。

過去には、副操縦士の警告を無視して低高度に下り、機体を誘導灯にひっかけて墜落させた大ベテラン機長もいました。いずれにしろ、降下角度3度とされるグライドスロープ下まで下りることは、それだけで航空法違反行為です。


【パイロットの見解】
例によって、元パイロットや航空評論家によるコメントが出始めています。その中のひとつに、『事故機のパイロットは視程不良の中で滑走路を目視しようとするうちに機首が下がり、高度を下げすぎてしまったのではないか』という、あくまでミスというニュアンスのものがあります。

仮にそうであっても、それをカバーしあうためにパイロットは2人いるわけですし、それ以前に滑走路手前600m程で目視できなければ、着陸復航(go around 着陸のやりなおし)をしなければならないのです。しかしこれもパイロット心理で、着陸復航をすれば燃料も時間も無駄になりますから、できることならやりたくないというのが本音でしょう。

だからこそ個人的判断で左右されないように、規定化されているのです。でも、それが無視されたのだとしたら、ミス以前の重大な違反行為ということになります。

今回の事故は、どう見てもシステム的問題ではなく、パイロットの規定違反、判断ミス、意図的な異常操縦が絡んだ事故にしか思えません。


【乗客はどうしたら良いかという問題】
ここまで判明した内容から、今回の事故を考察してみました。さらに詳細が判明した後、もう一度くらい関連記事を書こうかと思います。

一方、こんな機体に乗り合わせてしまったら、我々は『生き残る』ために何ができるかという問題について、実は過去記事で触れています。次回はその記事とリンクしながら、我々ができる対処方法について考えてみたいと思います。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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