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2015年4月16日 (木)

【アシアナ航空機着陸失敗】事故の原因考察と我々ができること(#971)

Ashiana1
広島空港で着陸に失敗したアシアナ航空A320型機

今回で、とりあえず広島空港のアシアナ航空機事故については一区切りつけようと思います。これまでわかった状況から事故の原因についてまとめと、乗客の対処法を考えます。


【規定違反とストレス】
まず、状況と管理人が考察した原因についてまとめます。

■夜間、雨、気流の乱れの中を、進入角度誘導装置(グライドスロープ)が無い滑走路へ向かって降下する過程で、パイロット(おそらく機長)に滑走路を早く視認したい、なるべく滑走路手前に下ろしたいという心理が働き、かなり早い段階から本来の降下経路の下まで高度を落としていた。事実ならば航空法違反行為。

■最終進入の段階で、低い雲または霧によって視程が急激に悪化し、500~300mほどになった。滑走路灯火や進入角度指示装置(PAPI)も目視できなくなり、本来は着陸復航(go around)をしなければならない状況で着陸を強行した。もちろん重大な運行規定違反。

■着陸できなければ、着陸復航だけでなく視程が回復するまでの上空待機や、回復しなければ代替空港へのダイバードが必要になるので、早く下ろしたいパイロットに大きなストレスが加わっていた。

■ほとんど盲目飛行の中で、滑走路を視認するためにさらに高度を落とした。本来は高度を監視していなければならない、操縦していないパイロット(おそらく副操縦士)も監視を怠ったていたか、操縦手に警告しても聞き入れられなかった。

■本来の進入高度より30mほども低いことに気づかないまま滑走路に進入し、高さ6.5mのローカライザーアンテナに機体を接触させた。


というような事故だったと思われます。過去にも、悪天候や視程不良の中で無理な着陸を強行し、事故につながった例はかなり多くあります。また起きてしまったのです。


【乗客はどうすべきか】
航空機事故の場合、乗客ができることはかなり限られます。しかし、生き残る可能性を高めることはできます。


航空機事故の多くは、離陸後3分間と着陸前8分間に集中しています。それを合わせた11分間が、航空の世界では『魔の11分間』(Critical 11 minutes)と呼ばれる所以です。

ですから乗客である我々も、その間には何かが起こるかもしれないという前提で、すぐに非常体制に移行できる備えをしておかなければなりません。特に夜間、強風、雨、雪などの悪条件下では、異常事態の可能性が確実に高まるのです。

ちなみに管理人は、離陸時にはエンジン音に耳を澄まし(離陸時の事故原因の多くはエンジントラブルです)、着陸時には外を見られれば高度を見ながら、再度非常口の場所を確認し、しっかり足を踏ん張ってすぐに耐衝撃姿勢に移行できるようにしています。それを機体が着地して、十分に減速するまで続けます。

あまり頻繁に航空機に乗らない管理人ではありますが、それでも横風着陸で滑走路逸脱寸前まで行った経験もあります。


今回の事故もそうでしたが、事故発生時には機内照明が消える可能性が高いので、飛行機に乗る時でも必ずLEDライトがポケットの中に入っています。国内、国際線とも、搭乗前のチェックで問題になったことはありません。 緊急脱出時には荷物を持ち出せませんから、身につけておくことが必須なのです。

このような対応について、過去に記事にしていますのでご覧ください。

☆再掲載☆【対災害アクションマニュアル23】飛行機の危険
この記事には、東日本大震災の時に起きた、信じられないような本当の話も併記しています。


離着陸時に事故が多いとはいえ、高度が低い場合が多いので、対応ひとつで生き残れる可能性が大きく高められるのです。

ひとつ重要なことは、離着陸時にはキャビンアテンダントも着席しているので、突然非常事態に陥っても乗客への指示や補助ができなかったり、遅れたりすることが多いということです。


【空でも防災・減災の心構えを】
今回の事故でも、最初にアンテナに接触した衝撃の後、乗員から耐衝撃姿勢の指示などは無かったようです。乗客が「頭を抱えろ!」と叫んでいたという証言があるくらいで。きっと旅慣れた方か、航空機に詳しい方だったのでしょう。立派な行動です。

何が凄いと言って、とっさの時に「頭を抱えろ!」という言葉にしていること。これが「耐衝撃姿勢取れ!」だったら、その姿勢がわからない人は動けません。しかし「頭を抱えろ!」という、誰もがわかる言葉に置き換えていることが素晴らしいのです。

航空機事故の場合、激しい減速ショックで前のシートに顔面を叩きつけられて打撲や裂傷、足が前に投げ出されてシートにぶつかることによる下肢損傷、首が激しく振り回されることによる頸椎損傷、シートベルトが腹に食い込むことによる内臓損傷が起きやすくなります。

それらをなるべく防ぐ姿勢が「安全のしおり」にある耐衝撃姿勢なのですが、頭を両腕で抱えるだけでも、それにかなり近い効果が生まれるのです。

頭を抱えれば自然と前のめりになりますから、前のシートとの距離が縮まってぶつかった衝撃が弱まりますし、腕で顔面をガードできます。さらに腕で頭を押さえることで、首が振り回されることもかなり防げます。首にも力が入ります。

加えて、前のめりになれば自然と足を踏ん張る形になり、シートベルトもぴんと張って、身体の移動距離を小さくして衝撃を弱める効果が高まるのです。

でも、とっさの時に「頭を抱えろ!」とは、なかなか言えません。おそらくその方は、普段から「こうなったらこうしよう」と考えていたのだと思います。それこそ『その場所で何が起きるかを知り、その時どうするかを考えておく』という、まさに防災・減災の心構えそのものなのです。

もし管理人が乗り合わせていても、おそらく「頭を抱えろ!」とは言えなかったでしょう。貴重な教訓とさせていただきます。ついでに、乗員訓練のヲタ知識を加えて、「全身緊張!」も付け加えようと思ったのでした。

さておき、今回の事故では機体が停止した後もキャビンアテンダントもパニックに陥っていたようで、落ち着いた避難誘導などは無かったそうです。


【具体的な行動指示を】
もうひとつ気になったのが、脱出後に乗客が撮影した動画です。暗闇の滑走路脇で、どんな立場の方かわかりませんが、誰かが叫んでいます。

「安全な場所に避難してください!」

周りは何もない暗闇で、「安全な場所」とは?これではダメです。「地震に注意しましょう」と一緒です。

このような場合には、具体的な指示が必要なのです。実は管理人、このような場合の行動は考えています。もしあの場にいて、乗員などからの指示が無かったらこう言うでしょう。

「走れ!(機体から)100m以上離れろ!爆発の危険あり!」
海外だったら、とりあえず英語でも言おうと。文法などどうでもいいのです。
「Run! Run! three hundred feets! (expect fire!)](300フィート走れ!火が出る!)

もちろんもっと距離を取った方が安全なのですが、一刻を争う状況ですから、とりあえず100mは全力で走って距離を取れ、ということです。そして自分が安全距離を取ったら、夜間ならばライトを掲げて、

「このライトに集まれ!」
「Gather here!」 (ここに集まれ!)

と叫ぶでしょう。非常時の指示は具体的に、シンプルに、力強くが大切です。家族などを集合させるにも救援を待つのにも、非常事態ではまず具体的な安全確保と集結および状況把握をしなければなりません。

ここでひとつヲタ知識ですが、パイロットが乗員乗客に耐衝撃姿勢が必要であることを通告する場合は、機内放送などでこの言葉を言います。

『Brace! Brace! Brace!』

「ブレイス(固定)せよ!」と英語で3回繰り返すのが、世界共通の規則です。これを聞いてしまったら、いよいよ危険な状態だという認識をしなければなりません。

その実例が見られる、一時話題になったyoutube動画をリンクさせていただきます。9分30秒くらいから機長のアナウンスが始まります。
youtube動画 ジェットスター緊急着陸 福岡発関空行き
https://youtu.be/7dZwF4KGhzg

もう一本、グアム空港でのノースウエスト航空機の胴体着陸から緊急脱出までの映像です。CAが叫んでいる言葉は「Bend over, heads down!」(前にかがんで、頭を下げて!)です。
youtubed動画 胴体着陸 BELLY LANDING 緊急脱出 emergency exit

もちろん、今回の事故のようにこの映像のような余裕が無いこともあるのです。


【機上でもセルフディフェンスを】
特に離着陸時の非常事態では、自分の判断で非常体制に移行し、脱出して安全を確保できる可能性を高めなければなりません。そのためには、「何か起こるぞ」という前提で、心構えと必要な知識を備えておく必要があるということです。

他人に言われなくても、自分で自分を守る。それが一番なのですから。

最後に。下画像は、2013年7月にサンフランシスコ空港で発生した、アシアナ航空ボーイング777型機の着陸失敗事故のものです。今回の事故も、こうなっていても全くおかしくなかったのです。軽傷者だけで済んだのは、ただ幸運だったとしか言えません。
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■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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