2023年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

« 小笠原諸島で深発地震・最大震度5強(#995) | トップページ | 最良の緊急地震速報システムとは(#997) »

2015年5月31日 (日)

5/30巨大深発地震に関する考察(#996)

昨日5月30日に小笠原諸島西方沖で発生した深発地震は、その後の精査によってマグニチュードは8.1に、震源深さ682kmに訂正されました。

規模はかなり小さくなったものの、深発地震としては過去に例の無いマグニチュード8超で、震源深さはこれも観測史上初もしくはほとんど例の無い深さだったことがわかりました。記録的な巨大深発地震だったことには変わりありません。

地上の震度にしても、昔から地震のモニターを続けて来た管理人にも深発地震で地上の揺れが震度5強にまで達したことは記憶にありません。それも、深さ100~200km程度ならともかく、ほとんど上層マントル内の682kmという深さなのです。

地球の表面を覆う地殻の厚さが最大でも60㎞程度であることを考えると、682㎞というのがいかに深い場所かということがわかります。


【広い意味で震災の影響か】
深発地震は、震災後も特に増えることもなく、ほぼ一定のペースで散発的に発生しています。発生する場所もプレート境界域に限らず様々な場所に散らばっており、目立って集中するような場所もありません。

下図は、東日本大震災から約3ヶ月後、2011年6月1日から一週間に発生した地震の震央図です。東大ハーベスト震源マップから転載させていただきました。

図中、濃い青の点が震源深さ300~700kmの深発地震を表しています。
110601w
ご覧のように、青い点は浅い地震とは全く無関係かのように、あちこちに平均的に散らばっています。震災直後の余震超多発期でさえ特に増えるわけでもなく、どこかに集中するわけでもなかったのです。

また、どの青い点もひとつしか無いことにも注目です。このような深発地震は1回発生して終わりであり、普通は余震が起こることも無いのです。ですから、今回の地震後に行われた気象庁の発表でも、『経験的に余震が起こる可能性は低い』と発表されたわけです。


深発地震が発生する場所の中でも、太平洋プレートと北アメリカプレートの境界付近である小笠原諸島近海の海底は比較的発生が多い場所ではありましたが、浅い地震の発生とはほとんど関連が見られず、あくまで散発的に、最大でもマグニチュード7クラスが時々起こる程度だったのです。

深発地震は揺れの周期が長くなるので地物への破壊力はそれほど大きくなく、過去には最大でも震度4程度でしたから、過去には被害が発生するようなことも無かったはずです。 深発地震で被害が発生したのも、我が国の地震観測史上でも初めてのことではないかと思われます。


しかし、被害云々以上に注目すべきは、そのような深い場所でも巨大地震が発生するエネルギーが蓄積されていた、すなわち岩盤に巨大なストレスが加わっていたということです。

過去に例のないような巨大深発地震が発生した裏には、やはり東日本大震災後の巨大地殻変動の影響があったと見るべきでしょう。

しかし、それがどのようなメカニズムなのか、再び発生することがあるのか、他の現象を誘発することがあるのかなどは、現代の科学では解明できません。


【“あの程度”でも大混乱】
せめてもの幸運は発生が土曜日の夜だったことで、これが平日の通勤時間帯などだったらば、停電、交通機関の混乱、エレベーターの停止などで、さらに大規模な混乱となり、二次被害も多発したでしょう。

最大手のエレベーター管理会社だけでも7000件もの停止報が入ったとのことで、その他も含めれば、何万という数のエレベーターが停まったはずです。最近は自動管制のエレベーターが多いのですが、係員が点検しないと運転再開できないことも多いのです。 果たして、現実的な時間内に対応し切れるのでしょうか。残念ながら、ほとんど無理でしょう。

“あの程度”の地震でもこのような状況ですから、さらに大きな地震だったらどうなるか。そして、そこにあなたがいたらどうなるか。我が事として考えなければなりません。


【これからのこと】
今後も、深発地震自体を脅威と考える必要は無いでしょう。今回のような巨大深発地震自体も、滅多に発生しないはずです。

しかし、過去に起きなかったことが今回起きた、そしてそれが震災の影響を最も受けているはずの、太平洋プレートと北アメリカプレートの境界域で起きたということが重要なのです。

深い場所に大きなストレスが加わっているのならば、浅い場所にも同様のストレスが加わっていると考えなければなりません。メカニズム的にも整合性があることです。

そして、その範囲には過去に巨大地震が起きたものの、その後数百年も沈黙している震源域も存在します。

それだけなく、現実に日本列島各地で火山活動の活発化や地震の多発が見られているのです。この状況を危機と考えない理由は、何ひとつありません。


今回の深発地震は、直接の被害はそれほど大きくありませんでした。しかし、我が国だけでなく世界の地震史上に残る程の大事件でした。 それが何を意味するか、真剣に考えなければなりません。

でも、地震のメカニズムなどどうでも良いのです。

ただ、そろそろ何か起きるかもしれない。起きる前に、できる対策をしておかなければならない。それに尽きるのです。

それは、出来合いの防災セットを買うことだけではありません。その前に、やるべきことはいくらでもあります。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

« 小笠原諸島で深発地震・最大震度5強(#995) | トップページ | 最良の緊急地震速報システムとは(#997) »

日記・コラム」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 5/30巨大深発地震に関する考察(#996):

« 小笠原諸島で深発地震・最大震度5強(#995) | トップページ | 最良の緊急地震速報システムとは(#997) »