【関連記事リンクつき】台風6号は温帯低気圧へ(#986)
米海軍調査機関Naval Research Laboratory発表の台風6号及び温帯低気圧の予想進路(5月12日)
台風6号は5月12日午後1時現在、沖縄本島付近を北東へ進んでいます。
中心気圧は990ヘクトパスカルと、かなり勢力が弱まりましたが、現時点では狭いながらも暴風域を伴っています。
今後温帯低気圧へと弱まりながら北上が予想されていますが、本州南海上で温帯低気圧に変化した後に、再び発達することが予想されています。
しかし、台風でなくなるからと安心はできません。いわゆる爆弾低気圧と同じような性質になるのです。
【これは幸運ではない】
台風6号が弱まったのは、東シナ海付近の水温が平年よりも高いながらも、まだそれほど高温になっていなかったためでしょう。 『猛烈な』勢力を維持するほどの水蒸気が供給されなかったのです。
しかし、だからこれからも大丈夫ということではありません。夏に向かって海水温が高まるのは確実なので、夏場以降になれば強い勢力を保ったまま北上することになります。
それ以前に、赤道付近からフィリピン付近まで、この季節に『猛烈な』台風が北上して来たということ自体が、すでに大きな気候変動が起きていることの証左なのです。
さらに、後から台風7号が6号と同じようなコースで追いかけて来ています。7号がどこまで発達するかわかりませんが、5月中旬までに7つの台風が発生したことも、日本の台風観測史上初めてのことです。
変化は、確実に進んでいます。
【これからどうなるか】
大きな気候変動はさておき、台風6号の今後について。
本州から見れば、台風ではなくなるようでひと安心です。しかしそれは暴風被害の可能性が小さくなるというだけのことで、また別の危険が迫っています。
強い低気圧が本州南岸を北上するのは、前記の通り爆弾低気圧の発生と同じような状況です。
現時点では、大陸方面の空気は夏場よりはるかに冷たく、乾いています。そこへ強い低気圧が本州南岸に近づくことで、日本列島上空へ大陸の冷たく乾いた空気を引き込みます。風は、気圧の高い場所から低い場所へ向かって吹くからです。
そして、台風崩れの低気圧が南方から引っ張ってきた暖かく湿った空気とぶつかります。すると高層の空気が冷たく乾いていて、一方低層の空気が暖かく湿っているという、大気が不安定な状態になります。
冷たい空気は密度が高く重いので低層に、暖かい空気は密度が低く軽いので高層にあるのが本来の姿『安定した』状態です。それが逆転するから、不安定となるわけです。
大気が不安定な状態になると、低層の暖かく湿った空気は高層の冷たく乾いた空気層の中で強い上昇気流を起こし、含まれた水蒸気が急激に雲となって発達します。
局地的に豪雨、落雷、雹、突風、竜巻をもらたす強い積乱雲の発生です。
局地的とは言っても、低気圧の移動に伴って積乱雲は連続的に発生しますので、被害をもたらす強さの積乱雲がどこに発生するかはわかりません。山際など地形的に強い上昇気流が発生しやすい場所では、その可能性が高くなります。
南方海上からやってきた台風崩れの低気圧は、一般に通常の低気圧より含まれる水蒸気量が多いので、より強い積乱雲を発生させることが考えられます。
【備えるべきこと】
雷がゴロゴロ鳴って、強いにわか雨に慌てて雨宿りできる場所を探すなどというのは、ある意味で風流な夏の風物詩です。
しかし、もうそんなのんきなことを言っていられない時代なのかもしれません。まだ5月の今から、激しい雷雨に対して具体的に備えなければならないのです。
強い積乱雲の発生で想定される被害は以下の通り。
■短時間の記録的豪雨による土砂崩れ、山間部の鉄砲水、土石流、市街地の内水氾濫
■竜巻や局地的な突風(マイクロバーストなど)による被害
■落雷による人的被害や停電、火災
■降雹による建物、車や農産物への被害
この中で、特に致命的な被害に発展しやすいのが土砂災害、竜巻、落雷です。
屋外に出ている方はもちろん、土砂災害の危険地帯や低地にお住まいの方は、台風崩れだからもう大丈夫などと言う間違った認識は絶対にせず、新たな危険に対して具体的に備えてください。
特に、土砂災害への備えとは、早い段階での安全な場所への避難、事実上これしかありません。
それ以前に、傘が役に立たない程の豪雨と強風に見舞われる可能性がどこでもあるのです。まずはその対策からでしょうか。
【過去記事リンク】
土砂災害、竜巻、落雷の危険を避ける方法に触れた過去記事をリンクします。実は、既に竜巻関係の過去記事へのアクセスが急増しています。既に備えを始められている方が多いということかと。当ブログがお役に立てれば幸いです。なお、過去記事にはブログランキングへのリンクが設置されていますが、既に参加しておりませんので、クリックしないでください。
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