“地震が無い”ボルネオ島でM6.0(#1003)
日本時間の6月5日、マレーシアのボルネオ島北部でマグニチュード6.0の地震が発生しました。震源深さは約10kmの、いわゆる直下型地震です。
この地震で震源近隣のキナバル山では多数の落石が発生し、登山客に犠牲者が出ています。
【地震が少ない地域】
人的被害はさておき、気になることは今回の震源付近は地震が非常に少ない地域だということです。
ボルネオ島の西から南に連なるスンダ列島からニューギニア島に至る線は、オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界域であり、2004年のスマトラ沖地震(マグニチュード9.1)をはじめ、何度も巨大地震が発生しています。
ボルネオ島の東側はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界域であり、こちらも地震が多い場所です。
このように、ボルネオ島の西、南、東を取り巻くようにプレート境界があるのですが、そこから外れたボルネオ島を震源とする地震はごく少ないのです。
下図は、理科年表2002年版より引用させていただきました。1975年から1994年の20年間に起きた、震源深さが100kmより浅いマグニチュード4.0以上の震央図です。
図のほぼ中央、緑色に着色したのがボルネオ島です。周囲を囲む超多発地域の中で、ぽっかりと空白になっている静かな場所なのです。
本題とは離れますが、日本列島付近も見てください。南西諸島と小笠原諸島も含め、真っ赤です。日本列島はそういう場所であるということも、改めて認識しましょう。もちろんこの図は、震災前のデータです。
さておき、今回の震源となったボルネオ島北部は、マレー半島やボルネオ島南部に比べれば少し地震が多いのですが、その差はわずかであり、大きな被害が出るような大規模地震が起きた記録も見当たりません。
ボルネオ島北西側のマレー半島も含めて、一般には地震が無い場所と認識されているくらいです。
しかし地震が全く無いわけではなく、ざっと調べたところ1990年代にはかなり揺れの大きな地震が2回起きているようで、道路に少しヒビが入るくらいの被害はあったようです。
もっとも、それがボルネオ島を震源とする地震かどうかはわかりませんでした。周辺で大地震が頻発していますから、ボルネオ島も大きく揺れることはあるでしょう。
いずれにしろ、今回のように山が大きく崩れるような規模の地震は、事実上初めてと言って良いのではないでしょうか。
【東側で多発している】
ボルネオ島の東側に当たるニューギニア島付近では、このところプレート境界型の大規模地震が多発しています。
今回の地震は、広い意味でその地震の影響を受けたものではないかとも考えられます。
地震が極端に少ないボルネオ島でも、やはり活断層は存在するのです。そして、そこに僅かでもストレスがかかるメカニズムがあるからこそ、断層が動いて地震が発生したわけです。
近隣のプレート境界域での地震多発も含め、プレート相互の動きにかつてと違いが出てきたのかもしれません。一説に、2004年のスマトラ沖地震、2011年の東日本大震災、そして他の地域での大規模地震多発傾向が、地球的規模での地震活動期に入ったためとも言われています。
今回のボルネオ島地震は、プレート境界域における動きの変化が、近隣の浅い活断層にストレスを与えて動きを誘発したという見方もできるかと思います。
それが正しいかどうかに関しては長期的な評価が必要ですが、仮に正しいとすれば、“地震が少ない”と言われる地域でも、再びこのような地震が起きる可能性があるということでしょう。
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