【シリーズUDL04】水編2・UDLの水に潜む危険とは(#1016)
■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。当ブログが提唱する被災生活の概念です。
さて、防災用備蓄の基本として、まず家族の3日分の飲料水を確保しました。しかし、長期のインフラ停止下では、 当然ながら全く不足します。
しばらくすれば、給水車などによる水の支援も受けられることもあるでしょうが、それでも量的にも足りませんし、別の問題もあります。
【ずっと安全ではない】
仮にある程度の飲料水を確保できたとしても、停電で冷蔵庫が使えないUDLでは常温で保存しなければなりません。
ペットボトルの水も、一度フタを開けてしまったら細菌が混入する可能性がありますし、ボトルに直接口をつけて飲んだら、確実に雑菌が混入します。給水車からもらった水でも、容器が滅菌できていませんから、時間が経過すれば細菌が繁殖します。
ペットボトルの天然水には消毒のための塩素が添加されておらず、給水車の水は塩素消毒されているものの、消毒効果は時間と共に消えて行くのです。
特に暑い夏場には、状況によっては2~3日で飲むのは危険なレベルになることもあります。
バケツなど密閉できない容器の場合はさらに危険で、空気中の細菌が混入するだけでなく、そこから水を汲むたびに容器や手についた細菌が混入しますし、空気に晒されていると消毒用塩素の効果が落ちるのも早くなります。
細菌類やウイルスに汚染された水は、健康体の大人には影響が無いレベルでも、子供、お年寄り、病人など免疫力が低い人の健康にとっては、大きな脅威となるのです。
なのに、防災用品として密閉できない水容器が堂々と売られていたりして、しかも「被災者の声を反映」とか唱っていたりして、ほとんど悪いジョークのようなものです。
そんなUDLにおいて、当初の保存水が尽きた後に必要なことは以下の2点。
■手に入った水を安全に保存する
■飲む前に安全な状態にする(浄化)
ということです。
【飲料水の危険とは?】
では、我々の健康に悪影響を及ぼす、飲料水の危険とはなんでしょうか。それは、主に以下の3点です。
■微生物、細菌、ウイルスによる汚染
■異物の混入(水の濁り)
■毒物、化学物質による汚染
『安全な水を作る』ためには、この3つの危険を取り除かなければなりません。ただしUDLにおいては、危険なレベルの毒物や化学物質による汚染を取り除く方法はありません。もっとも、原水に危険な毒物や化学物質が混入していたら、浄水場でも浄化はできません。水質を常にチェックしていて、危険な場合は取水を停止するだけです。
毒物や化学物質に関しては、かなり汚い川の水を飲まなければならない場合でもなければ、特に気にする必要はないでしょう。
【ウイルスは繁殖しない】
水の汚染のうち、もっとも恐ろしいのはウイルスと言えるかもしれません。十分な治療が受けられないUDLでノロウイルスなどに感染すると、激しい下痢などで生命の危険さえあります。
それ以前に、下痢をすると大量の水を飲まなければなりませんから、ただでさえ足りない水を減らすことにもなります。 さらに、排出されたウイルスが他の人に感染しやすくなります。
しかし細菌や微生物と違って、ウイルスが空気中や水中で繁殖することはありません。ウイルスが繁殖するのは、人間など生物の体内、さらに言えば細胞内に入ってからなのです。
問題となるのは、手などについたウイルスが飲料水に入ったり、水の容器に付着することです。忘れないでください。UDLでは、外出から帰ってもトイレに行っても十分に手が洗えないのです。 そして、周りの人の多くがそういう状態だということを。
どこかに付着したり水に混入した状態で、ウイルスは数時間から条件によっては数日間も生き続けることもあります。ノロウイルスなど感染力が強いウイルスは、ほんの数個が体内に入っただけで感染・発病することもありますから、まず第一に水や容器を媒介としてのウイルス感染を防がなければなりません。
水はみんなが飲むものですから、ウイルスが混入していると、一気に感染が広がる可能性があるのです。
なにしろ、ウイルス対策は、まず『混入や付着を防ぐ』のです。それに対し、繁殖を抑えるのは細菌や微生物。どちらの理由でも、前述の通り水の容器からラッパ飲みするのは厳禁です。
【水対策はハイブリッドで】
まとめますと、UDLの水対策で必要なことは、『安全な保存と浄化』です。
さらに、浄水が手に入らなければ、雑用水などからも安全な水を作らなければなりません。
次回からはそれらの具体的な方法に入って行きますが、その方法はいろいろあります。そして、これひとつやっていれば安心というものでもありません。
水対策は複数の方法を併用する、すなわちハイブリッド方式で行うことで、より安全性が高められるのです。
特に、家族の健康を預かる方には是非覚えておいていただきたいことです。
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