【ヲタ目線地震教室16】光の正体ついに解明か?(#1022)
松代群発地震で観測された「白色蛍光灯のような」発光現象
(気象庁松代地震観測所ウェブサイトから転載させていただきました)
これまで述べて来たように、地震の前に不思議な発光現象が起こることがあるという事実は、否定できません。
しかし、その発生メカニズムには諸説あるものの、未だに決定的な説明はされていません。
一説には、ある程度の規模の地震前に発光現象が起こる条件が揃う確率は、0.5%未満とも言われています。大きな地震は世界各地で起きる中で、実際に目撃された例の少なさからしても、それはあながち間違ってはいないようにも思えます。
【電磁波の強さがポイント】
改めてまとめますと、地震前の発光現象は、電磁波が関係することは間違いないようです。
そして、地震前に地中から空中へ電磁波が放出されることがあるのも、ほぼ間違いありません。その電磁波が、上空80km以上にある電離層に影響を与えることは、事実と言って良いでしょう。
そこで最大の問題となるのは、少なくとも現時点で理論的に考えられる、または観測された電磁波の強さでは、空気中で何らかの媒体を発光させるには、全くエネルギー不足であるということです。
もし、地震前に強力な電磁波が発生することがあるという事実が確認されれば、多くの謎を解くことができます。
【最新理論とされるもの】
最近、これは“決定版”ではないかと言われる理論が発表されました。
米国のサンノゼ州立大学とNASAエイムズ研究センターに所属する物理学者、フリーデマン フロイント氏が発表した理論です。
少し長くなりますが、ナショナルジオグラフィック日本版から一部を引用させていただきます(下記太字部分)
力が加わった玄武岩や斑れい岩に、電荷の“充電スイッチ”が入る。
そこに地震波がぶつかると、岩石内の電荷が解放される。
地質的な条件、「岩脈」と言われる垂直構造も重要だ。マグマが垂直の割れ目に流れ込んで冷えた地盤で、地下100キロに達する場合もある。
ここで玄武岩や斑れい岩が電荷を解放すると、地下から地表へ向けて一気に駆け抜けていくことになる。
電荷は結合して一種のプラズマのような状態になり、猛スピードで移動し、地表ではじけて空中放電を起こす。
これが色鮮やかな光の正体だ。
というものです。地中を縦に貫く岩盤「岩脈」がいわばコンデンサのような働きをして、電荷を空気の絶縁を破壊するほどの強さにまで強め、それが空中に電磁波として発射されることで放電現象を起こすということです。
なお、前述した「発光の条件が整うケースは0.5%未満」というのも、フロイント氏の発表によるものです。
【その他の条件とは】
フロイント氏の理論では、発光現象はマグマ由来の火成岩が縦方向に深くまで貫入した地殻構造我ある場所、つまり火山付近でなければ起きないことになります。
過去に発光現象が起きた場所に、すべてそのような構造があることが確認されたかどうかについては、記事では触れられていません。
ただ、松代群発地震で発光現象が起きた場所は、皆神山を中心とする古代の火山付近であったことは事実です。
特殊な電磁波の発生に加えて、松代群発地震で観測や推測されたように、気象条件や希ガスなどの放出によっても、光り方や色などが影響される可能性も考えられます。
地中から“揺り出された”希ガスの影響で夕焼けがより赤く見えるということも、もしかしたらあるのかもしれません。
一方、昭和南海地震で発光現象があったとされる、四国沖の南海トラフ付近の条件がこの理論にあてはまるかどうかについては、残念ながら管理人は情報を持っておりません。
海底火山のような構造も考えられますので、可能性は十分にありますが。
ただし、上記の理論が正しいかどうかに関わらず、発光の原因はそれが唯一ではなく、その他の理由で起きる可能性も捨て切れません。
今後の研究に期待したいと思います。
【様々なパターンがある】
過去の目撃証言によれば、地震前の発光現象は空が光るだけでなく、球状の光が空を漂った、地面から炎のように立ち上った、地上から空に向かって伸びる一瞬の閃光だったなど、様々なパターンがあります。
色も赤系が比較的多いものの、白、青、虹色などいろいろあります。
いずれも、良く見れば他の自然光とは明らかに違うのですが、確実に識別できるとは限りません。
余談ながら、管理人が防災ヲタになるきっかけとなった、小松左京氏の小説『日本沈没』(1973年)でも、伊豆半島を襲う大地震前の発光現象が、「幕電」として表現されています。
それは松代群発地震での「白色蛍光灯のような」光(撮影は1966年)に似た表現であり、参考にされたのかもしれません。
管理人はそれ以来、今に至るまで大きな地震の前には不思議な発光が起きるかもという意識を持ち続けて来ましたが、実際に説明不能の発光現象を見たことは一度も無いのです。
もっとも、大きな被害が出るレベルの地震に遭遇したことも無いのですが。
【光を見てしまったら】
上記の「最新理論」が正しいとすれば、発光現象はどこでも起きるものではなく、その機会も滅多に無いということになります。近年は監視カメラの発達で不思議な発光が捉えられる機会も増えましたが、それでも目撃証言はかなり限られています。
問題は、他の自然光や人工光と誤認しやすいということです。
例えば、夜間に遠くの雲の中で稲光が光ったりすると、地表からの光で空が光るような、松代の「白色蛍光灯のような」光とそっくりに見えることも少なくありません。 管理人も、昔はずいぶんと誤認したものです。
東日本大震災後の大きな余震では、仙台市郊外の変電所でスパークが発生した様子がお天気カメラに捉えられてリアルタイムで放送されたことがありますが、それが地震による発光現象だと、未だにまことしやかに語られていたりもします。
何にしても、これまで述べたような不思議な発光現象を見てしまったら、その直後から1週間程度の間は、大きな地震に警戒すべきでしょう。
とりあえず、我々にできるのはそれくらいです。
地震前の発光現象については、これで終了します。
■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。
« 【シリーズUDL08】水編6・水はとにかく重いということ(#1021) | トップページ | 新幹線火災事件についての考察(#1023) »
「地震関連」カテゴリの記事
- 長野県南部で震度5強(#1328)(2017.06.25)
- 茨城県北部で震度6弱(#1304)(2016.12.28)
- 福島県沖でM7.4・津波発生(#1294)(2016.11.22)
- 鳥取県中部で震度6弱(#1286)(2016.10.21)
- 鹿児島県沖永良部島で震度5弱(#1271)(2016.09.26)
この記事へのコメントは終了しました。
« 【シリーズUDL08】水編6・水はとにかく重いということ(#1021) | トップページ | 新幹線火災事件についての考察(#1023) »
コメント