【ヲタ目線地震教室18】かわいそうな彩雲w(#1033)
当ブログ過去記事(カテゴリ【エセ科学・オカルト排除】)では、いくつかの『地震雲』とされる雲について、「そんな形の雲は存在しない」ということを明らかにしました。
『地震雲』とされる雲は他にもあり、(しかも増えている!)それらをひとつひとつ否定して行くこともできます。でも、結局いたちごっこなんですよね。
なんたって、ちょっと不気味な雲が出たら、何でも『地震雲』にされちゃうんですから。
そこで、個別の雲についての解説と併せて、なぜ『地震雲』がこれだけウケるのかについても、考えて行きたいと思います。
【“ニューカマー”登場】
まずは、東日本大震災の後に『地震雲』のスタメン入りしたと思われる、2種類の雲について考えてみます。
まずは「彩雲」。“我に追いつくグラマンなし!”のあれではなく(すいませんヒコーキヲタネタですw)、雲の一部が虹色、特に赤や緑に染まる現象です。
我が国では、彩雲は古くから“吉兆現象”として見られてきました。つまり、それを見たら良いことが起こるという。 それが、今は一部の人々にとって“恐怖の前兆”なのですから、彩雲が不憫で不憫でw
彩雲は、いろいろな条件が揃わないと見られません。そこがポイントだったりもしますが、昔から意識している管理人でも、過去に5~6回程度しか見た記憶がありません。最初に見たのが小学生の時だったのは、はっきり記憶しています。気象図鑑で見たレアな現象を目の当たりにして、大喜びしたものです。それが今はねえw
【彩雲なんて存在しない】
いきなりの全否定ですが、当然ながら、雲の種類としての彩雲というものは存在しません。
だから『地震雲』信者が言う「彩雲が出た」ということ自体がナンセンスなのです。
なぜ雲が虹色に染まるかという理由は、もう大体おわかりですよね。要は虹が見えるのと同じことが、雲の中で起きているだけのこと。
ついでに言えば、二重の虹が見えたりすると「地震が起きるかも」と騒ぐ人もいますが(虹が不憫でw)、雨上がりにかかる虹は『常に二重に出ている』ということも覚えておくべきかと。それが普通の現象なのです。
しかし、外側の虹は内側より薄くなるので、多くの場合肉眼では見えません。空気中の水分や太陽光の強さや方向などの、ある条件が揃った時だけ、下画像のように肉眼で見えるほどの“濃さ”になるわけです。
今度虹が見えた時は、虹の橋の外側をよーく見てみてください。うすーい虹が見えることもありますよ。下画像は、かなり良く見えている状態です。なお、外側の虹は、内側の虹と色の並び順が逆になっています。
あ、また脱線したwさておき、虹とは太陽の白色光が空気中の水滴がプリズムの働きをすることで、七色に分かれて見えるという現象だということは、小学校で習いました。
だから、虹は太陽と逆の方向に見えるということも。太陽に向ったら、見えないわけです。と、いうことは?
【見えているのはあなただけ】
空に彩雲が見えた。写真を撮ってネットにアップして「彩雲が出たから云々」などとやる人は、彩雲がだれにでも見えていると思っているのでしょうね。
でも残念ながら、見えているのはあなただけでは無いですが、“太陽に対してあなたと同じくらいの角度にいる人だけ”なのです。
それは、太陽光の方向を中心にして大体30~40度から広くても60度くらいの間。すなわち、そこから外れた人たちからは、ただの白い雲にしか見えていないのです。残念でしたw
それくらいレアな現象だからこそ、吉兆現象と言われて来たわけなんですが。単純に、すごく美しいし。
なお、彩雲が赤や緑に見えることが多いのは、雲の水滴がプリズムの働きをする『回析』の過程で、光の波長によって屈折度が異なることによるものです。
【不気味=地震という児戯】
そもそも、彩雲が『地震雲』の仲間に入れられてしまったことに、電磁波がどうのというエセ科学的にも、何の根拠もありません。
まず彩雲という現象を知らず、滅多に見られない珍しい現象を見てしまったからなんとなく不安、ならば地震かもという、子供じみたと言ったら子供に失礼というくらい、無茶にも程がある理屈なんですから。
で、誰かがそう言い出せば、後はもう“そういうもの”として拡散されてしまって。
このパターンは彩雲に限らず、他の『地震雲』でも似たり寄ったりなんですけど。
【彩雲のメカニズム】
これはもうウィキペディアでも見ていただいた方がよろしいかと思いますがw(ウィキにはいい画像がありますよ)、簡単にまとめます。
まず、太陽が透けて見えるくらいの、まだらで薄い雲であること。雲全体が染まることもありますが、厚い雲の端の、薄い部分にだけ現れることもあります。
そして、雲が水滴であること。多くの場合、雲の粒は氷ですが、氷の粒では彩雲のようにきれいに『回析』されません。上空の気温が比較的高かったり、雲の粒が過冷却で水滴の状態を維持している場合です。
そんな雲を、“程良い角度”で太陽光が通り抜けると、地上から彩雲が観測されるというわけです。多くの場合、太陽と観測者の間付近に雲がある時に見られます。
前述の通り、雲が虹色に染まっているのではなく、雲を通り抜けた太陽光が虹色、特に赤や緑に見えている現象なのです。
どこが地震の前兆なんだか。
【おまけ】
似た現象で、彩雲と混同されることも多い現象があります。
それは『環水平アーク』。多くの場合『幻日』を伴います。下画像は1年程前に管理人が撮影したもので、生まれて初めて実物を見ることができました。
これは、雲の中の氷の粒(氷晶)によって太陽光が『回析』されて起こるもので、環状の虹色の光が見えますが、彩雲とは別モノです。
画像では、左の木の上に見える明るい光が本物の太陽、右端の光が『回析』によって現れた“幻の太陽”、幻日(げんじつ)です。これは彩雲よりはるかにレアな現象です。これが見られると、ニュースになるくらいですから。
もちろん、現れる理由もメカニズムも明らかな気象現象であり、地震とは何の関係もありません。
いい加減、だれかの勝手な思いこみに振り回されるの、やめませんか?
こんな感じで、いつの間にか『地震雲』の仲間にされてしまったかわいそうな彩雲の名誉回復、できたでしょうかw
さて、次回はこれも比較的ニューカマーの、うろこ雲について考えましょう。
■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。
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