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2015年9月14日 (月)

【関東・東北大水害】大水害は何故起きたか?(#1055)

Kinugawa2015
鬼怒川堤防が決壊した茨城県常総市の空撮画像


台風17号及び18号崩れの温帯低気圧による豪雨は、関東から東北の各地に甚大な被害を及ぼしました。

被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。実は管理人、最大の被害となった茨城県常総市の隣、守谷市にかつて住んでいたこともあり、被災地域はよく知る土地なのです。 できることなら後片づけボラに駆けつけたいのですが、諸般の事情で残念ながら行けません。

それでは、このあと何回かに渡って、この豪雨災害について考えて行きたいと思います。


【何が起きたのか?】
秋雨前線に台風18号が接近した時点で、管理人はなんらかの気象災害の発生は避けられないと考えておりました。直前の記事今回は雨台風+αだ(♯1052)では、『起こるべくして起こる災害』という表現をしました。

それでも、実際には想像とはかなり違った様相となりました。当初は、台風がもたらした暖かく湿った空気が大陸の冷たく乾いた空気とぶつかることで発生する、非常に強力な積乱雲による災害を想像していたのです。

ですから、記事では短時間の集中豪雨や、それに加えて竜巻、突風、落雷などの災害も多発しそうだというニュアンスになっています。しかし、そうではありませんでした。


【双子台風による予想外の影響】
実際には、台風や台風崩れの温帯低気圧からかなり離れた関東と東北で、長時間に渡る豪雨となりました。竜巻、突風、落雷などによる被害は発生していません。

この状況は、以下のように説明されています。


・本州を横断して日本海に抜けた台風18号崩れの温帯低気圧に向かって、南から暖かく湿った空気が流れ込んだ。

・台風崩れの低気圧は、偏西風に動きを妨げられ、速度が非常に遅かった。

・低気圧へ向かって本州の南海上から流れ込む暖かく湿った空気(暖湿流)と、東側の太平洋上から接近した台風17号がもたらした暖湿流が、関東上空でぶつかった。

・南と東から流れ込む暖湿流がぶつかることで、非常に強い雨雲が発達し、豪雨となった。両者の温度差はあまり大きくないのでそれほど不安定な状態にはならず、竜巻や落雷被害を起こすような強い積乱雲にはならなかった。

・台風17号、18号ともに動きが非常に遅かったため、暖湿流同士がぶつかる境目で豪雨が続く『線状降雨帯』が、長い時間に渡って形成された。

・南北に延びた『線状降雨帯』は、低気圧と台風の動きに伴って非常にゆっくりと北へ移動し、東京・埼玉・栃木・茨城・福島・宮城に豪雨被害をもたらした。

・特に栃木・茨城では、南北に流れる鬼怒川流域に重なるように『線状降雨帯』が停滞したため、流域での甚大な被害につながった。


【全地球的な状況による影響】
今回の豪雨災害を巨大化させた最大の要素は、双子台風の接近ということが言えそうです。もし仮に台風18号だけだったら、これほどの豪雨にならなかったことは間違いありません。

では、なぜ珍しい双子台風となったのか。今年はこれが初めてではありませんし、太平洋地域全体で見ても、台風 やハリケーンの“同時多発”が何度も起きています。

今年は、赤道上を巨大雲の集団が周期的に移動する『マッデン・ジュリアン振動』(MJO)と呼ばれる現象や、平年とは異なる海域の水温が上がる『エル・ニーニョ現象』などの相乗効果で、台風やハリケーンが“同時多発”しやすい状態になっているとのこと。

それによる双子台風の発生が、今回、豪雨災害をより巨大化させたということができます。

巨大災害となった直接の原因は堤防の決壊ですが、それ以前に水が堤防を越えて流れ出す『越水』が発生したり、堤防が設計上耐えることができる水位(計画高水位)を超えるような状況が各地で発生しています。治水計画での想定を超えた、膨大な降水量となったのです。


【今年だけなのか?】
では、あくまで今年だけが特殊な状況だったのでしょうか。

今後、双子台風が何度も発生するという状況が、すぐに普通になっていくとは思えません。しかし、全地球的な気候変化は、過去には無かった状況を、次々に生み出しています。

何よりも、台風や低気圧が大型化、強力化して行くことは間違い無いと言えるでしょう。気候全体も、より暑く、より寒くとういうように“極端化”が進むでしょう。

その中で起きる気象災害も、過去よりも確実に大型化、激甚化して行くことは間違いありません。


それに対する備えが及ばないこともあります。でも、備えによって、多くの命やモノを救うことができるのも確かです。何より、気象災害は誰でも「予測できる」「時間的余裕がある」のです。

そこでどうするかは、あなた次第です。


次回も、豪雨災害について考えます。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

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コメント

家内の親戚がまさに決壊した土手の辺りに住んでまして、ケガはないものの田んぼがやられたり、ご近所が流されたりと大変な様子です。あの辺りは関東有数の穀倉地帯でそろそろ収穫の時期でもありますので、地区によっては一週間の差ですべてが流されてしまったところもあるんじゃないでしょうか。原発事故の風評被害もありましたしホントに胸が痛くなります。
来週法事で行く予定なのですが、状況が状況なだけにどうしようか思案中です。。。

>tntさん

なんだかtntさんと私の関係した土地、カブることが多いですね。

それにしても、まさにあの辺りですか。震災の津波被害並みの状態になっているようですね。

確かにあの辺りは、ちょっと郊外に出ると北海道かと思うくらい広大な田園が拡がっていますね。報道に乗らない部分でも、かなり大きな農作物被害も出ているでしょう。本当に、災害は理不尽です。

常総市の一部の旧名は水海道(みつかいどう)ですからね。低くて水が出やすい湿地につけられる地名です。旧来、水害の危険性がある場所ではあります。

こういう時だからこそ、行かれるのがよろしいかと私は思います。被災地の方は、外の人に実情を見て欲しいと思われているでしょうし。私も行きたいのですが、なかなか。

これがもう2年も前の災害なのですね。
現在の北九州の豪雨被害のニュースに心を痛めつつも、今後はますます前代未聞の気象条件が当たり前になるだろうことに、少々暗澹とした気持ちになります。
引っ越しの際に、浸水の心配のない、周りに比べて若干高い土地のなおかつ3階を選びましたが
、あまりに豪雨が酷いと今度は傾斜地の土砂の流出などがありそうですね💧

>ぼたもちさん

あれからもう、いやまだ2年しか経っていないのですね。近年は、豪雨災害の頻度が急激に高くなっています。

各地で震度5クラスが続き、西日本では豪雨災害。さらに鹿児島で5強。まさに”災害列島”です。

繰り返される犠牲に、自主防災ってなんだろう、何か役にやっているんだろうか?などと疑心暗鬼になってしまいますが、いや確実に目立たないところで被害を減らしているのは間違いありません。

この先、気候は確実に亜熱帯化して行き、いろいろな気象現象が、より”容赦なくなって”行くのは確実です。

すむ場所を選ぶ場合には、水害や土砂災害の危険を事前に知り、そこを避けるだけでほとんどの被害を防げます。賢明な選択ですね。

ところで、こんなところでお答えするのもアレなんですが、以前いただいたコメントに関する記事は、どう書いても過激というか、かなり炎上覚悟にならざるを得ず、しかしそうでなければ書く意味も無い、という感じです。

被災地の現実をリアルに語れば、不謹慎だとか差別的だとかという批判に晒されるのは確実なので、当ブログの主旨とは相入れないのかなと。

よって、大変申し訳ありませんが記事化は見送らせてください。

しかし、表に出ない過酷な現実が確実に存在する、ということだけは、忘れてはならないのです。

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