【関東・東北大水害】避難すべきかせざるべきか、それが問題だ(#1060)
どのタイミングで避難すれば、このような状況に陥らずに済むのか
関東・東北大水害に関する一連の記事は、とりあえずこれで最後にしたいと思います。 今回は、『いつ避難すべきか』という問題について。
【オール オア ナッシング】
当ブログ読者様に聞かれました。もし管理人があの水害現場に住んでいたら、実際に避難したかどうか。
答えとしては、まずあの状況では軽度にしろ水害が発生する可能性が非常に高いと判断していました。自宅が浸水危険地域にあるならば、事前に確実にやったはずなのは、地上に置いてある車とバイクの避難。ショッピングセンターなどの立体駐車場に停めさせてもらうでしょう。もちろん料金は払います。
ちなみに管理人宅は8階建てマンションの2階で、その条件ならば、堤防決壊の可能性が予想されても、事前避難はせずに自宅待機したはず。浸水しても水深3メートル以上にはならない、つまり2階ならば冠水しないと考えたでしょう。自宅には、インフラが止まっても数日は持ちこたえられる備蓄もありますし、トイレの手当もできます。もし2階が冠水しても、ある程度の装備を持って上階に避難することもできます。
但し、氾濫危険水位を超えてまだ上昇すると判断されたならば、その時点で避難行動をしたでしょう。氾濫危険水位ならば、すぐに堤防が決壊するようなことはあまり考えられないからです。 もし一気に計画高水位(設計上耐えられる最高水位)を超えたり、越水が始まってしまった場合は、避難中に濁流に襲われる可能性が高くなるので、その場合は自宅待機したでしょう。
一戸建ての場合ならば、車やバイクの避難はもちろん、電気製品や貴重品を2階に上げる事前対策をして、自宅待機したでしょう。
ただ、大水害発生の可能性が非常に高いと判断したならば、家族は事前に避難場所に行かせたでしょう。小さな子供やお年寄りなど災害時要配慮者がいるのなら、なおさらです。
なお余談ながら、災害などでパソコンが浸水や破損をすると、機械自体はともかく貴重なデータが失われます。その対策として、管理人は保存すべきデータはすべて外付けのハードディスクに保存しています。避難時には、それだけ外して持ち出せば良いわけです。
もし管理人があの現場にいたら、こんな感じだったと思います。
でも、本当に大水害が起こるかどうかは、堤防が決壊するかどうかにかかっています。決壊すれば生命に関わる大水害、それが無ければせいぜい軽い冠水程度という、“オール オア ナッシング”の状況です。
そこで実際に事前避難するかどうかの判断は、とても難しいと言わざるを得ません。基本的に、みんな家を離れたく無いのです。
【判断に必要なもの】
ここまでに必要な判断材料は、下記の通り。
・大水害が発生する可能性のある気象状況か(気象情報)
・自分の居場所に水害の危険があるか(ハザードマップ)
・最悪の状況で自宅が構造的に持ち堪えられるか(自宅の構造や場所)
・孤立した場合、独力で持ち堪えられるか(装備や備蓄の状況)
これらの要素を勘案し、事前避難や対策をするかどうかを考えます。そして、実際に豪雨などの中では、以下の情報が必要です。状況によっては、緊急避難が必要となります。
・周辺での被害発生状況(ラジオ・テレビ・防災行政無線など)
・危険な河川の水位状況(ラジオ・テレビ・ネット・防災行政無線など)
・自宅周囲の状況(目視)
・夜間・豪雨下を安全に移動できる装備(事前備蓄)
周辺での被害発生状況からネット情報を除外するのは、個人発信の情報は、非常に曖昧で間違いが多く、時に悪意によるニセ情報が含まれるからです。あくまで参考程度とし、できる限り公式情報で裏付けを取るべきです。
但し、スピーカーによる防災行政無線放送は、特に暴風雨下では良く聞き取れないことが多いので、あまり期待できません。
河川の状況は、ラジオ、テレビ、ネットで公式情報が流されますので、それによって行動を決めます。
もし近くの河川の水が堤防を越える『越水』が発生したり、決壊の危険があると判断され、自宅から避難場所への経路が安全と判断されるならば、緊急避難すべきでしょう。しかし、少しでも危険があると判断されるならば、無理すべきではありません。
そこまで行かなくても、『計画高水位』を超えた場合はもちろん、『氾濫危険水位』を超えた場合も、緊急避難を考えるべきです。
そこで大切なことは、ある場所で堤防が切れた場合、自分の居場所がどうなるかを事前に知っていなければならない、ということ。一気に水が押し寄せるような場所で外に出るのは、自殺行為ともなりかねません。
結局、自治体による避難勧告や指示の発表は状況の参考にはなりますが、実際に自分が避難すべきかどうかの判断には、あまり役に立たないのです。
最後は、あくまで自己判断です。 その場合、避難勧告や指示が出ていようといまいと関係ありません。必要と判断したら迷わず動く、不要と判断できる確実で合理的理由があるなら、何が出ていようと留まるのです。
【困難な判断をするために】
土砂災害が起きそうな場所ならば、とにかく早い段階で避難するに限ります。
しかし、堤防の決壊などによる水害は、その発生を予測することが非常に困難です。切れれば大水害、切れなければただの豪雨というオール オア ナッシング。
そこで確実に生き残り、財産も守るために必要な考え方を述べて来ましたが、つまるところ『備蓄と情報』に尽きるわけです。
まず、自宅に備蓄があれば、孤立しても家に留まるという選択肢ができる。
市町村単位で避難勧告や指示が出ても、堤防が切れても、自宅に危険が及ばないことがハザードマップなどで事前にわかっていれば、避難する必要もない。
状況の推移、例えば近くの川の水位情報がリアルタイムで把握できていれば、避難の可否を判断できる。
緊急避難が必要ならば、夜間や暴風雨下を移動できる装備の有無が、その速度と安全性を左右する。緊急行動時には、1分の差が生死を分けることがある。
そして、避難の可否を判断する際には“無駄足9割”の覚悟で。何も無ければそれでよし。10%の危険のためでも、実際の行動に移しておけば、100%生き残れるのです。
【本当に大切なことは何か】
このように、事前情報とリアルタイム情報に加え、判断を実現するための装備があるかどうかが、気象災害における正しい判断のために必須であり、行動の選択肢を大きく増やすのです。
ですから、“本当に大切なこと”は、まず自分の居場所の危険を知り、起こりうる災害の被害を知り、それに対応した行動をいくつも考え、判断に必要な情報取得手段と実用的な備蓄をすることなのです。
その考え方と備蓄は、もちろん気象災害だけでなく、他のあらゆる災害に共通して役立つものでもあります。
このように“本当に大切なこと”は、災害トリビアのようにわかりやすくもなく、知っても「なるほど!」と手を打つようなカタルシスもない。正直、面倒くさい。そして実践しようとすれば、結構複雑で思うようにはいかないのです。
でも、そのような備えを実際にやっているかどうかで、あらゆる災害に直面した時に、結果は確実に違って来るのです。
そういう備え無くして、やれ長靴を履くなだの、やれ水のうで防水だの、枝葉末節の、しかもろくに使えないトリビアで喜んでいる場合ではない。
この先、自然災害はさらに過激化、重大化して行くのは疑い無いのです。そんな中で、脅し文句とトリビアだけで商売している『防災の専門家』の言うことを真に受けるのは、もうやめにしませんか。
もちろん、真摯に活動している『専門家』が大多数です。でも商売絡み、特にメディアに良く登場する、商業ベースの連中は、本当に酷い。
ほとんど批判されることもない、そういう『防災の専門家』の行状についても、これからも当ブログは指摘して参ります。
■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。
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