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2015年9月

2015年9月29日 (火)

【シリーズUDL17】栄養編6・栄養より大切なこともある(#1062)

■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。当ブログが提唱する、被災生活の概念です。

今回は、栄養編のまとめです。栄養編の基本テーマは、生鮮品が欠乏して、炭水化物に大きく偏るUDLの食生活の中で、いかに各栄養素をバランス良く摂って健康を保つか、そのためにはどのような食品が適しているか、ということです。


【必要な栄養素とは】
ここで改めて、必要な栄養素についてまとめます。カッコ内は、記事で紹介したUDL向けの食品の例です。セレクトした理由は、常温で長期保存可能、比較的安価、どこでも入手しやすい、普段の生活でも利用できるという点です。なお、あくまでUDLを想定したものなので、ここでは各栄養素についての細かい分類は無視します。

・炭水化物(米、麺類、パンなど)

・タンパク質(高野豆腐)

・脂質(オリーブ油)

・食物繊維(乾物類、ドライフルーツ)

・ビタミン類(マルチビタミンサプリメント)

乾パンやアルファ米など非常用食品の備蓄だけしていたり、炊き出しや支援物資だけに頼っていると、炭水化物以外の栄養素が極端に不足することになります。

そこで、上記のような常温保存可能で、わずかな手数で食べられる食品を備蓄しておくことで、過酷なUDLにおいても、バランスの良い食事をすることができるわけです。その効果はUDLが長くなるほど、大きな差になって現れます。

栄養素のバランスを考慮した食事は満足感を高めるだけでなく、身体のバランスを良好に維持することで、過酷なUDLで精神のバランスも良好に保つことにもつながります。

大変な状況を乗り切るには、まず気力。そのためには、食の充実が基本です。特に、家族の食を預かっているあなた、ひどい目に遭っても、落ち込んでいる暇などありませんよ。


記事では、それぞれの栄養価に優れ、安価で手に入りやすく、常温で長期保存でき、平常時の食事や生活でも利用できる食品という考え方でセレクトしましたが、もちろんこれだけではありません。皆様の工夫で、さらに良い備蓄ができるはずです。

他に良いアイデアなどありましたら、是非管理人にも教えてください。


【優れているけど未登場のアレ】
ところで、備蓄用食品の定番でありながら、記事には出てきていないものがあります。缶詰です。

缶詰にはさまざまな種類の食品があり、常温で長期保存でき、火や水が使えなくても調理済みの食品がすぐに食べられるという点において、優れた非常用食品です。

その一方で、内容量の割に重量と体積がかさみ、コスト的にも割高になりやすいので、大量に備蓄しずらいという問題もあります。

それでも、いつでも手軽に食べられる缶詰を無視するのは忍びない。そこで、手に入りやすく安価な上に、栄養価に優れているという視点から、当ブログとしてお勧めの缶詰をピックアップしてみましょう。

なお、記事で紹介している食品類は、すべて管理人自身も備蓄しているものです。


【とりあえずこれから】
当ブログとしてのお勧めは、いわゆるツナ缶(商品名シーチキンなど)です。
Tuna

もちろんノンオイルではなく、オイル漬けのタイプを。せっかく、タンパク質に加えて脂質もたっぷり補給できるのですから。UDLでは、ヘルシーよりカロリーです。これを暖かいご飯にのせてちょっと醤油をたらすだけで、UDLフードとしてはご馳走の類だと、個人的には思います。 常温保存しておけるならば、マヨネーズがあればさらにおいしくいただけますね。

ちなみに、ツナ缶に残ったオイルに綿の紐や紙の小よりなど芯になるものを漬けて火をつけると、代用ろうそくになるという裏技もあります。


なにしろ、タンパク質と脂質の栄養価もカロリー値も高く、応用範囲が広く、何個かパックされて特売されていることも多いツナ缶は、当ブログとしてイチ押しの缶詰です。

ちなみに管理人は最低でも3個パックを3つ、計9缶を常備し、2缶くらい使った時点で3個パックを補充して、先入れ先出しでローテーションするようにしています。もちろん、特売以外では買いませんw


缶詰の備蓄はその他にもいろいろ考えられますし、手軽に食事や料理のバリエーションを増やせるので、是非ともある程度は備蓄しておきたいもの。備蓄用の缶詰を選ぶポイントとしては、やはり普段の生活でも利用できるものにすべきです。

良く、年に一度は備蓄食品の入れ替えのためも含めて、非常食だけの“災害ディナー”を食べて防災意識を高めましょう、などと言われたりもしますが、あれも机上の空論ですよ。

年に1~2回程度の食事で消費しきれるような量の備蓄では、現実のUDLではほとんど意味を持たないのです。ここでは支援物資がある程度入手できることを前提に、1ヶ月程度のインフラ停止と食品補充不能を想定していますし、そうでなくても備蓄はある程度の量がまとまってこそ、初めてその効力を発揮するのです。家族の食事1回分の備蓄など、ほとんど自己満足に過ぎません。無いよりはマシですが。

それに、年何回かの“災害ディナー”など、家族の誰か、主に食を預かるママさんの防災意識がかなり高くなければ、まずやりません。あなた、もしくはご家族にそういう方はいますか?いなければ、きっとやっていませんよね。あれも、メディアが造りだした幻想もしくは仕込みネタがほとんどじゃないですか?


非常食を年に一度食べるくらいでは、被災者の不自由に思いを馳せるくらいなもの。それも無意味ではありませんが、まあ『防災の日』のような一過性のイベントに過ぎません。

本当に有用な家庭の備蓄とは、防災用などと肩肘張らず、普段使っているものがイザとという時にもあれが使える、これも使えるというように、生活にとけ込んでいることが理想です。

それが限られたスペースを有効に生かし、収納場所を把握でき、コスト的にも無駄が少なく、普段使うからこそ消費期限や残量が把握できて、補充も忘れないなどにつながります。防災意識は特別なものではなく、生活の一部でなければならないのです。

あなたの家の防災用備蓄、最後に中身を見たのはいつですか?


【カロリーのこと】
ところで、このシリーズでは主にUDLの食事における栄養素のことを考え、カロリーのことは触れていません。

一般に、成人の場合は一日当たり1800~2200kcalが必要とされていますので、UDLでもとりあえずはその辺りを目指したいもの。でも現実にはなかなか難しいですし、いちいちカロリー計算をして、足りないからとため息をついているようでは、精神面にも悪影響を及ぼしかねません。ですからそこはあまり厳密に考えずに、適当に流すことも必要です。それよりもっと大切なことは、後述します。


余談ながら、過去記事でも突っ込んだのですが、ある週刊誌の記事でどこかの女子大の栄養学の女性教授が、災害対策に詳しいと自称しつつ「成人でも1日400kcal摂れば大丈夫なので、1日分の備蓄はカロリーメイト1箱(ちょうど400kcal)で足りる」とか、バカ丸出しのことを言っておりました。

それは実験室レベルの机上の空論であり、まず自分でやったことは無いでしょう。その空腹感は相当なもの。それに被災直後は避難所に寝転んでいるわけではない。避難行動が一段落しても、家の後片付けをして、負傷者の救護や不明者の捜索もして、食料や水の確保に走り、罹災証明を提出したりと、かなり動き回らなければならないのです。

しかもインフラ停止で暑さ寒さがコントロールしづらく、地震ならば余震や不慣れな環境で良く寝付けず疲労がたまる。そんな被災直後のストレスフルな状況下で、栄養学の教授が「400kcalで足りる」と公式に発言して、それがありがたがってメディアが無批判に拡散する。『専門家』によるこういう低レベルなことがまかり通り、それが批判も排除もされないのが、災害大国日本の現状なのです。どれだけ肩書・メディア信奉者が多いんだ。

しかも、災害対策にちょっと詳しくて、本業がそっちに多少関係のあることならば、「危機管理アドバイザー」とかの肩書を勝手に名乗っている輩、結構多いですね。別に公的資格があるわけじゃなし。そうしておけば、メディアからの取材が入って本業の宣伝と小遣い稼ぎができるからでしょう。東日本大震災以降、“副業”でそんな風に名乗る輩、かなり増えましたね。

テレビで流れたり全国版の有名週刊誌に載るような記事でも、当ブログのように内容に突っ込んでいる例、他にありますか?内容はロクでもないことだらけなのに。他に管理人のようなことをやっている方がいましたら、是非教えてください。別に、自慢したいのではありません。昔から災害大国なのに、1000年に一度レベルの超巨大災害にも遭ったのに、こんなに低レベルでウソだらけのことがまかり通るのが、腹立たしくて情けなくて。


【当ブログのテーマはThink yourself】
また脱線してしまいました。さておき、UDLの食事において大切なことは、栄養よりもまず満足感。できるだけ満腹感が味わえ、飽きが来づらいバリエーションがあり、腹持ちが良いことが必要です。栄養価を考えるのは、その次と言っても良いでしょう。

しかしそれをUDLで実現するのは、当然ながら困難です。でも、理にかなった備蓄と工夫で、何もしていない人よりもはるかに豊かな食が実現することは間違いありません。当ブログで紹介している食品は、満足感の大きさという面も考慮してセレクトしています。

生きるための根幹である食に関しては、たとえUDLだろうと、最初から仕方が無いと諦めずに、できる限り“攻め”の姿勢で行きましょう。そのためには、出来合いの非常食品をちょこっと買って安心している場合ではありません。

あなた自身が考え、普段の生活に災害対策を組み込むこと。それが最良の道です。多少手間がかかっても、その備えと行動が、実際に被災したときに、あなたと家族をずっと“楽に”してくれるのです。

これで、栄養編を終わります。次回からは、衛生編です。


■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。

2015年9月27日 (日)

【シリーズUDL16】栄養編5・食物繊維+αを摂取するために(#1061)

■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。当ブログが提唱する、被災生活の概念です。


今回は、UDLにおける食物繊維の摂取を考えます。

UDLにおける食物繊維の意味は、食品のバランスとか糖の吸収がどうだという普段の概念ではなく、とにかくおなかの調子を整えることに尽きると考えます。

インフラが止まってトイレの環境が過酷になるUDLでは、できるだけいつも決まった時間に、できるだけ短時間で用を済ますことが、ストレス軽減につながるのです。とにかく“快便”であること。

そのために、食事において最も効果的なのが、食物繊維を摂ることなのです。


【普段から不足している】
厚生労働省の指針では、食物繊維を1日当たり20~25g摂ることが推奨されています。しかし、実際には平均値で15g程度の摂取量というのが現状。

普段からそうなのに、食事の内容が限られ、しかも食物繊維を豊富に含む野菜類が決定的に不足するUDLでは、さらに悪化します。“快便”のためには、意識して摂らなければなりません。

それも、生鮮品はあきらめて、常温で長期間保存できる食品からでなければなりません。機能性食品やサプリメントでカバーもできますが、できれば安価で手に入りやすいものにしたいところです。

見づらくて恐縮ですが、参考までに食物繊維を比較的多く含む食品・食材のリストを掲載します。
Photo
これを見ると、UDLでは手に入りづらいものばかりですね。備蓄として実際に使えそうなものは、そば(乾麺)くらいです。

なお、食物繊維には水溶性と不溶性があり、それぞれに身体に対する作用が異なります。理想的には両方をバランス良く摂りたいところですが、ここではあくまで非常時における対応ということで、敢えて分類はしません。


【どれくらいを目標にするか】
理想的には1日20g。しかし普段からあまり足りていないものを、UDLで強化するというのも現実的ではありません。

ただ、UDLでは食事の時間、内容、量、栄養素、環境がかなり偏りがちで、肉体的・精神的ストレスも加わり、ただでさえおなかの調子が狂いがちになります。できるだけたくさん、食物繊維を摂りたいもの。


多くの被災者が言うには、トイレが酷い状態、そうでなくても快適な状態ではないので、できるだけトイレに行きたくなかったと。その結果、ひどい便秘、または下痢をしてしまったという話も多く聞きます。やはり、食べたものはきれいに出さなければなりません。

数日ならともかく、ここで想定している1ヶ月のインフラ停止下では、我慢で済む問題ではないのです。


余談ながら、阪神・淡路大震災では、半壊した無人の建物に侵入し、タンクに水が残っている無事なトイレを見つけては用を足して行く人も少なくなく、『トイレハンター』と呼ばれたとか。これは笑い話ではなく、UDLではそれだけ“流せるトイレ”が貴重になるということです。

そこで、出す方をできるだけ快適にするための、食べる方の工夫の筆頭が食物繊維の摂取というわけですが、さて、どうしましょうか。

学術的な根拠は無いのですが、当ブログでは“ゼロよりマシ”という発想で、とにかく1日5g、できれば10gを目安にしたいと思います。それで、とりあえず1ヶ月。


【どんな食品が良いか】
まず、主食を考えます。米は、数値的には100g中の食物繊維含有量が約0.5gしかありません。しかし、炊いたご飯には高分子のデンプンが生成され、それが大腸の中まで消化されずに到達し、食物繊維と同じ働きをするようになるとのこと。量的にはデータが無いのですが、ご飯を食べるだけで、ある程度は効果が見込めるわけです。

そして、UDLで多くなりがちな麺類。中でも『日本そば』は100g中で約2.7g、通常の一人前で約4gの食物繊維が摂れる最強の麺です。乾麺ならば備蓄食としても最適。そばを1日1回食べれば、目安量の半分くらいは補給できそうです。

一方、中華麺は100g中約2g、パスタ・マカロニ類は約1.5gと、それなりに優秀です。ただ、乾麺類は備蓄しやすくて良い食品なものの、問題はゆでるのに大量の水を使うこと。

水に余裕が無ければ、油で揚げたり炒めたりしていただきましょう。炭水化物、食物繊維に加え、脂質の補給にもなります。

UDLでは、なにも普段の食べ方にこだわる必要は無いのです。ある程度おいしく食べられれば、アイデアと栄養価次第で、何でもアリです。


【より効果的に摂るために】
主食に続いて、食物繊維を特に多く含む食品を考えます。しかし、常温保存が効かない生鮮食品は除外。

すると残ってくるのは、特に家庭の食を預かる方ならばおわかりの方も多いでしょう。乾物類です。かなり優秀なものがあります。 ここで下手な理屈はこねず、食物繊維を多く含む乾物TOP5を挙げてみましょう。カッコ内は、重量比の食物繊維含有量です。

1・寒天 (81.3%)
2・きくらげ (74.2%)
3・ひじき (55.0%)
4・乾ししいたけ (43.4%)
5・わかめ (37.9%)

すごく単純に言ってしまえば、例えばひじきを(乾燥重量)20g食べれば食物繊維が10g強摂れるということ。このように、乾物類には実に優秀な食品が多いのです。これらの食品ををUDLの食事で使うことで、食物繊維の摂取量をぐっと増やすことができます。その重量辺り含有量は、生鮮食品よりはるかに多いのです。

例えば、豚汁を作るにしても、きくらげ、乾ししいたけ、わかめを入れてもいいじゃないですか。寒天は、UDLではちょっと使いづらいかもしれませんが。

この他に青海苔、かんぴょう、昆布も、食物繊維が多い食品です。約30%前後含まれています。


【料理に使わないのならば】
このように、乾物には食物繊維が豊富なものが多いのですが、乾物を直接食べるのは現実的ではなく、調理をしなければなりません。では、調理無しで手軽に食物繊維を補給できるものは無いのでしょうか。

そこで注目したいのが、これ。
Dried_fluits
ドライフルーツです。

常温で長期保存でき、過酷なUDLでの疲労感を癒す甘味であり、そのまま手軽に食べられ、カロリーもそこそこあり、種類によってはビタミン類も豊富で、しかも食物繊維をたっぷりと摂取できるという、実に優れた食品です。

果物の種類によって食物繊維やその他の栄養素の含有量は異なりますが、何しろ天然の食物繊維や栄養素が凝縮されている上に、乾燥させることによって生成された、新たな栄養素を含むものもあります。

ドライフルーツの種類は非常に多いので、あまり理屈っぽく考えずに『とても優れた非常食』として、お好きなものを常にある程度備蓄しておくと良いでしょう。なお、ドライフルーツは重量比のカロリーは低く、良質の糖分を補給できますので、普段のおやつやダイエット食としても優秀です。

糖尿病などで糖分のコントロールをされている方の場合も、果物の糖分は調味料による糖分より血糖値の上昇が緩やかになるため、身体への負担がより軽くなります。


【非常食ばかり食ってるわけじゃない】
災害報道では、非常備蓄食品と炊き出しばかりがピックアップされます。何故なら、それが最も“被災地っぽい”画だからです。自前の備蓄を料理して食事する姿など、全然被災地っぽくない。メディアにとって、被災者は悲惨でかわいそうな存在でなければならず、自分の備蓄で食事をする姿など、メディアには忌み嫌われるのですw

でも、現実の被災地では、カメラが向かない、向かせないそういう人が一番多いのです。当たり前のことですが、メディアに乗る情報は“最も画になるごく一部に過ぎない”ということを忘れてはなりません。


メディアはそれが商売だからともかく、なんだか『防災の専門家』だの『危機管理のエキスパート』だの名乗る連中も、支援物資に頼らずに、自宅の備蓄をやりくりして食いつないでいる、ある意味で『優秀な被災者』のための情報など、ほとんど無視です。

何故なら、当シリーズのような日常と兼用できる食品を勧めても、誰にも『うま味』が無いから。高コストで利幅の大きな非常用品販売者とタイアップしてメディアで売り込めば、売り上げは上がるし紹介者にはキックバックと、両者に『うま味』たっぷりだからです。

こういう関係があるから、『商業ベースの防災の専門家』の言うことは、信用ならんことが多くなるわけですね。仮にタイアップが無くても、メディアのコメントして次の仕事をもらうためには、数字になるキャッチーなことを言うのが一番だから、トリビアばかりになる。それが本当に役に立たなくてもね。


【良い情報は存在する】
何しろ、『商業ベースの防災の専門家』の言うことは、話半分以下で聞くことです。一応、正しいことも言いますよ。でも、それはどこにでもある情報です。管理人のような素人がここまでブログでやっている通り、誰でもアクセスして参考にできる情報ばかりです。その手間をちょっとかけているだけの話。

すなわち、そういう情報はネットでも書籍でも公式資料でも、いろいろ存在するんです。特に、商売っ気がない自治体のウェブサイトなど、探して行くと本当に有用な防災情報がありますよ。でも、そこは商売っ気が無いだけに結構複雑でわかりづらいこともあり、理解するためにはそれなりに基礎知識が必要なことも多いのです。

だから、みんなそれを見ればOKなどと言うつもりもありません。ただ、自ら『本当に役に立つ』情報を欲するならば、断片的で低レベルなメディアの情報など信じずに、ご自分で疑問点をキーワード検索してみてください。良い情報は、意外にたくさんありますよ。


というわけで、最後は恒例の大脱線をしてしまいましたが、栄養編、もう1回やります。


■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。

2015年9月23日 (水)

【関東・東北大水害】避難すべきかせざるべきか、それが問題だ(#1060)

Joso
どのタイミングで避難すれば、このような状況に陥らずに済むのか


関東・東北大水害に関する一連の記事は、とりあえずこれで最後にしたいと思います。 今回は、『いつ避難すべきか』という問題について。


【オール オア ナッシング】
当ブログ読者様に聞かれました。もし管理人があの水害現場に住んでいたら、実際に避難したかどうか。

答えとしては、まずあの状況では軽度にしろ水害が発生する可能性が非常に高いと判断していました。自宅が浸水危険地域にあるならば、事前に確実にやったはずなのは、地上に置いてある車とバイクの避難。ショッピングセンターなどの立体駐車場に停めさせてもらうでしょう。もちろん料金は払います。

ちなみに管理人宅は8階建てマンションの2階で、その条件ならば、堤防決壊の可能性が予想されても、事前避難はせずに自宅待機したはず。浸水しても水深3メートル以上にはならない、つまり2階ならば冠水しないと考えたでしょう。自宅には、インフラが止まっても数日は持ちこたえられる備蓄もありますし、トイレの手当もできます。もし2階が冠水しても、ある程度の装備を持って上階に避難することもできます。

但し、氾濫危険水位を超えてまだ上昇すると判断されたならば、その時点で避難行動をしたでしょう。氾濫危険水位ならば、すぐに堤防が決壊するようなことはあまり考えられないからです。 もし一気に計画高水位(設計上耐えられる最高水位)を超えたり、越水が始まってしまった場合は、避難中に濁流に襲われる可能性が高くなるので、その場合は自宅待機したでしょう。


一戸建ての場合ならば、車やバイクの避難はもちろん、電気製品や貴重品を2階に上げる事前対策をして、自宅待機したでしょう。

ただ、大水害発生の可能性が非常に高いと判断したならば、家族は事前に避難場所に行かせたでしょう。小さな子供やお年寄りなど災害時要配慮者がいるのなら、なおさらです。

なお余談ながら、災害などでパソコンが浸水や破損をすると、機械自体はともかく貴重なデータが失われます。その対策として、管理人は保存すべきデータはすべて外付けのハードディスクに保存しています。避難時には、それだけ外して持ち出せば良いわけです。


もし管理人があの現場にいたら、こんな感じだったと思います。

でも、本当に大水害が起こるかどうかは、堤防が決壊するかどうかにかかっています。決壊すれば生命に関わる大水害、それが無ければせいぜい軽い冠水程度という、“オール オア ナッシング”の状況です。

そこで実際に事前避難するかどうかの判断は、とても難しいと言わざるを得ません。基本的に、みんな家を離れたく無いのです。


【判断に必要なもの】
ここまでに必要な判断材料は、下記の通り。

・大水害が発生する可能性のある気象状況か(気象情報)

・自分の居場所に水害の危険があるか(ハザードマップ)

・最悪の状況で自宅が構造的に持ち堪えられるか(自宅の構造や場所)

・孤立した場合、独力で持ち堪えられるか(装備や備蓄の状況)

これらの要素を勘案し、事前避難や対策をするかどうかを考えます。そして、実際に豪雨などの中では、以下の情報が必要です。状況によっては、緊急避難が必要となります。

・周辺での被害発生状況(ラジオ・テレビ・防災行政無線など)

・危険な河川の水位状況(ラジオ・テレビ・ネット・防災行政無線など)

・自宅周囲の状況(目視)

・夜間・豪雨下を安全に移動できる装備(事前備蓄)

周辺での被害発生状況からネット情報を除外するのは、個人発信の情報は、非常に曖昧で間違いが多く、時に悪意によるニセ情報が含まれるからです。あくまで参考程度とし、できる限り公式情報で裏付けを取るべきです。

但し、スピーカーによる防災行政無線放送は、特に暴風雨下では良く聞き取れないことが多いので、あまり期待できません。


河川の状況は、ラジオ、テレビ、ネットで公式情報が流されますので、それによって行動を決めます。

もし近くの河川の水が堤防を越える『越水』が発生したり、決壊の危険があると判断され、自宅から避難場所への経路が安全と判断されるならば、緊急避難すべきでしょう。しかし、少しでも危険があると判断されるならば、無理すべきではありません。

そこまで行かなくても、『計画高水位』を超えた場合はもちろん、『氾濫危険水位』を超えた場合も、緊急避難を考えるべきです。

そこで大切なことは、ある場所で堤防が切れた場合、自分の居場所がどうなるかを事前に知っていなければならない、ということ。一気に水が押し寄せるような場所で外に出るのは、自殺行為ともなりかねません。

結局、自治体による避難勧告や指示の発表は状況の参考にはなりますが、実際に自分が避難すべきかどうかの判断には、あまり役に立たないのです。

最後は、あくまで自己判断です。 その場合、避難勧告や指示が出ていようといまいと関係ありません。必要と判断したら迷わず動く、不要と判断できる確実で合理的理由があるなら、何が出ていようと留まるのです。


【困難な判断をするために】
土砂災害が起きそうな場所ならば、とにかく早い段階で避難するに限ります。

しかし、堤防の決壊などによる水害は、その発生を予測することが非常に困難です。切れれば大水害、切れなければただの豪雨というオール オア ナッシング。

そこで確実に生き残り、財産も守るために必要な考え方を述べて来ましたが、つまるところ『備蓄と情報』に尽きるわけです。


まず、自宅に備蓄があれば、孤立しても家に留まるという選択肢ができる。

市町村単位で避難勧告や指示が出ても、堤防が切れても、自宅に危険が及ばないことがハザードマップなどで事前にわかっていれば、避難する必要もない。

状況の推移、例えば近くの川の水位情報がリアルタイムで把握できていれば、避難の可否を判断できる。

緊急避難が必要ならば、夜間や暴風雨下を移動できる装備の有無が、その速度と安全性を左右する。緊急行動時には、1分の差が生死を分けることがある。

そして、避難の可否を判断する際には“無駄足9割”の覚悟で。何も無ければそれでよし。10%の危険のためでも、実際の行動に移しておけば、100%生き残れるのです。


【本当に大切なことは何か】
このように、事前情報とリアルタイム情報に加え、判断を実現するための装備があるかどうかが、気象災害における正しい判断のために必須であり、行動の選択肢を大きく増やすのです。

ですから、“本当に大切なこと”は、まず自分の居場所の危険を知り、起こりうる災害の被害を知り、それに対応した行動をいくつも考え、判断に必要な情報取得手段と実用的な備蓄をすることなのです。

その考え方と備蓄は、もちろん気象災害だけでなく、他のあらゆる災害に共通して役立つものでもあります。


このように“本当に大切なこと”は、災害トリビアのようにわかりやすくもなく、知っても「なるほど!」と手を打つようなカタルシスもない。正直、面倒くさい。そして実践しようとすれば、結構複雑で思うようにはいかないのです。

でも、そのような備えを実際にやっているかどうかで、あらゆる災害に直面した時に、結果は確実に違って来るのです。


そういう備え無くして、やれ長靴を履くなだの、やれ水のうで防水だの、枝葉末節の、しかもろくに使えないトリビアで喜んでいる場合ではない。

この先、自然災害はさらに過激化、重大化して行くのは疑い無いのです。そんな中で、脅し文句とトリビアだけで商売している『防災の専門家』の言うことを真に受けるのは、もうやめにしませんか。

もちろん、真摯に活動している『専門家』が大多数です。でも商売絡み、特にメディアに良く登場する、商業ベースの連中は、本当に酷い。

ほとんど批判されることもない、そういう『防災の専門家』の行状についても、これからも当ブログは指摘して参ります。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2015年9月21日 (月)

【関東・東北大水害】役に立ったのなら教えてくれ(♯1059)

さて、今回は以前からまことしやかに拡散されている水害対策が、いかに使えない机上の空論であり、それをしたり顔で拡散している『防災の専門家』が、いかに無知で無責任なのかについてです。


【“本格的な水害”が起きてしまった】
今回の関東・東北大水害(正式には『関東・東北豪雨』と呼称されることになりましたが、当ブログではこの名称を継続します)は、堤防の決壊を伴う“本格的な水害”でした。

豪雨によるがけ崩れ、土石流災害はかなり起きてはいるものの、大きな川の堤防を水が超える『越水』や、堤防の決壊による広範囲の大規模な水害は、かなり久しぶりです。関東地方においては、1981年(昭和56年)と1986年(昭和61年)に発生した、茨城県の小貝川洪水以来と言って良いでしょう。

それから現在までの間には、洪水と言えば小河川の氾濫や、都市部の内水氾濫くらいでした。濁流で家が流されたり、速く深い流れが市街地を襲うようなことは、ほとんど無かったのです。

そんな状況の中、ここ2~3年の間に、あまりにもバカバカしい水害対策が広まってしまいました。


【最良の浸水対策とは】
洪水における最良の浸水対策は、今も昔も土のうを積み上げて防水壁を作ることです。
Soilbag2

Soilbag

まず、土のうの何が優れているのかを考えてみましょう。以下に列挙します。

・土の比重は約1.7。水の約1.7倍の重さがあるので、比重1.0の水には浮かないし、簡単に流されない

・土のうを積み上げて突き固めることで自由に変形し、土のう同士の隙間が密に埋まる。突き固めた土は、水圧がかかっても簡単に変形しない

・土のう自体が変形することで、壁などにも密着し、水の通り抜けを防ぐ

・土が水を吸うことでさらに重量が増し、水圧や流水への抵抗力が増す

こういったところでしょう。ポイントは水よりはるかに重く、水密性が高いということです。土の代わりに水を吸って体積と重量が増える吸水ポリマーを使ったハイテク土のうもありますが、効果は同じことです。


【誰が考えたか知らないが】
しかし、前述の通り近年においては、市街地が大規模で激しい水流に襲われるような水害はあまり起きませんでした。起きるのは、土砂災害を除けば内水氾濫ばかり。すなわち比較的静かにジャブジャブと、床下浸水するくらいが大半だったのです。

そこで、一部の『防災の専門家』は、わけのわからないトリビアを持ち出して来た。良くありがちな“ご家庭でカンタンにできる水害対策”的なノリで。もうおわかりですね。『水のう』による防水です。

これも、当初は内水氾濫による下水道の逆流によって建物内の排水口から水が噴出するのを防ぐ、というのが主眼だったと思います。もっとも、それでもユニットバスの浴槽の下の排水口や、洗濯機トレイの排水口など(多くの場合洗濯機の下になります)、水のうで防水できない場所は多いのです。

一部の関連サイトなどでは、浴槽の中や洗濯機トレイに水のうを置いた画像を掲載しているようなところもありますが、それで浸水を防げるのは、あくまでレアケースなのです。管理人からはたった一言。

「そんなもので防げるものなら防いでみろ」


【ところで水のうとは】
一般に、45リットルくらいのゴミ袋に半分ほど水を入れたものとされます。強度を高めるために、二重にしろとも言われます。下画像は、東京都下水道局ウェブサイトからお借りしました。
Waterbag00
こんな風に、水入りゴミ袋を並べたり、箱に入れて並べたり、さらにブルーシートを巻いたりという感じです。ちなみに、水を20リットル入れれば重量は20kgとなります。

下画像は、東京都の防災訓練時の画像をお借りしました。
Watebag2
Waterbag1
これは中が見えるようにブルーシートをはいでいますが、実際には箱に巻きつけることで、防水壁として作用させるわけです。

公的機関サイトにも載っているし、公式の訓練でもやっている。なのに管理人は何を文句言ってるんだ?と思われた方もあるかと。もちろん、“ある条件下”においては、効果を発揮するかもしれません。でも。

ちなみに、東京都下水道局のサイトには、こう書いてあります。
(水のうだけを並べる場合は)二段重ねできないので、10cm程度の水深が限度です

最初から、その程度なんですよ。上のイラストを良く見てください。仮に水深10cmだとしても、水のうと水のうの間が、その水圧に耐えられると思いますか?軽く水圧がかかるだけで変形して、隙間ができるのは明白。水圧だけではなくて、浮力もかかるのです。さらに、水圧がかかった状態で、水のうと建物の壁などがぴったり密着したままでいられると思いますか?ちょっと考えればすぐわかるのに。

しかも、ゴミなどが衝突して水のうひとつが破れれば、全体が一気に崩壊するのは明らかなのです。そんな薄氷を踏むような脆弱な対策が、なんでこんなに広まってしまったのでしょう。まあ、とてもトリビア的でネタになるから、『防災の専門家』が喜んで広めているんですけどね。

さておき、水のうを箱に入れて何個か積めれば、どれだけ耐えられるのでしょうか。それでも、精々強い流れの無状態で20cmくらいなものでしょうね。つまり、床下浸水レベル。それも、ごく短時間。つまり、関東・東北大水害のような本格的な水害には、全く無意味と言っても良いでしょう。


【良く考えてみよう】
でも、公的な訓練で消防とかも指導しているのだから、管理人の言うことがおかしいと思われる方、まだいらっしゃるかと。でも、“お上”が言うからと頭から信じていると、ひどい目に遭うこともありますよ。そういう例、いくらでもありますよね。

ここでもう一度、東京都の訓練時の画像を見てください。
Waterbag1_2
ここでは、水のうを入れた箱が建物の壁に密着できる状況であり、建物にはドアがあります。このような場合ならば、水のう壁は水の勢いをある程度弱め、水圧は壁やドアに作用して、ドアの隙間からの浸水の量を減らすことができるでしょう。

すなわち、これは水のう壁が最も効果を発揮する状況を作っているということなのです。これはこれで正解ですが、こんな状況ばかりではない。前掲のイラストもそうですけど、ブルーシート無しで水のう入りダンボールを並べる“指導”も、数多くあります。箱と箱の間、当然水がだだ漏れですね。しかも水圧ですぐ動いてしまう。でも、それがまかり通っている。

ここで、当記事冒頭の画像をもう一度。
Soilbag_2
実際には、このように店舗や地下へ続く階段などの開口部からの浸水を防ぎたいケースが多いのではないでしょうか。その場合、水と同じ重さで、水圧や水流で簡単に変形して隙間ができ、ゴミひとつの衝突で簡単に破れてしまう水のうが、果たしてどれだけ役に立つか、良く考えてみてください。

この画像のように水に流れがあるような場合、ここで水のうが踏ん張れるなどと考えるおめでたい方は、よもやいますまい。まあ、役に立たないことでも信じるのは自由ですけど、それを役に立つ情報として拡散するのは、犯罪的ですらあります。

なにしろ、水のうなど実際の災害時にはとても頼れるものじゃない、ということです。少なくとも、関東・東北大水害で水のうが活躍したなどと言うことは皆無でしょう。というか、都市部の軽い水害でも、水のうが大活躍というような話、聞いたことがありません。そういう話がありましたら、是非教えてください。


【誰が広めたか】
水のう利用法は公的な“指導”もされていますし、誰でも堂々と拡散できます。でも、訓練などで実際にやってみたこともない『防災の専門家』が、偉そうに“指導”しているのは不快極まりないというより、役に立たないことを拡散しているということにおいて、犯罪的ですらある。

もし、こんなろくに効果の無い対策を信じて、避難するタイミングを失った人がいたらどうするのか。まあ、知らん顔するのでしょうけどね。

さすがに公的機関の情報には、前記のように『水深10cm程度まで』というような弱点も併記されていますが、『防災の専門家』はそんなことお構いなしで、まるで万能の対策のような言い方。まず大前提として、水のうは土のうの効果には遠く及ばず、避難をする必要が無い程度の水害でしか役に立たないということを周知しなければなりません。


【もしかしたらレベルの話】
結論として、水のうによる防水は、条件が整った場合のみにおいて、もしかしたら役に立つかもしれないというレベルの対策に過ぎないということです。

ですから、水のう利用法をメディアで偉そうにに“指導”していたり、自分のウェブサイトで拡散している『防災の専門家』もいますけど、今回の大水害を受けて、内容ひとつ変更しないのならば言語道断。しっかり監視して行きます。場合によっては、監視だけでは終わらせませんが。

それにしても、メディアが使いやすい商業ベースの『防災の専門家』って、本当にレベル低いね。メディアは実際の効果よりも使いやすい奴を使うから仕方無いかもしれないけど、ちょっとお考えになられた方が良いのでは?視聴者の多くは、あんな奴らをありがたがってはいないと思いますけどね。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2015年9月18日 (金)

【関東・東北大水害】それでもあなたは長靴を履かないか?(#1058)

台風17号と台風18号崩れの温帯低気圧によって関東と東北を襲った豪雨は、各地に大きな被害をもたらしました。

特に関東地方では、堤防が決壊や水が堤防を超える『越水』によって、甚大な被害となりました。


【話題になったあるツイート】
管理人は見ていなかったのですが、災害の最中にあるツイートが話題になったそうです。

そのリプライには「それは知らなかった」とか「勉強になった」とか、好意的なものが大多数で、盛んにリツイートもされたとか。そのツイートとは。

それは、水害被災地域へ向けた、例のアレでした。
『洪水の中を避難する時は、長靴をはいてはいけない。水が入ると脱げやすいし動きづらく危険』(文面はオリジナルではありません)

これは大抵の『防災の専門家』も言いますし、消防や自治体の公式サイトなどにも載っている、ある意味で定番の内容です。それが、今回の水害でかなり広まった感じではあります。

そのことがまた話題となり、ネットニュースなどにも採り上げられていますね。


【それだけじゃダメなんだ】
しかし、当ブログをいつも読んでいただいている方はご存じかと思いますが、管理人はそれを鵜呑みにしてはいけない、何も考えずに従ってはいけないと、否定的な記事を何本も書いています。

もちろん、それは一面で正しいのです。長靴の高さを超える水位ならば中に水が入ってダブダブで重くなり、脱げやすくなる。さらに水に流れがあれば、かなり抵抗を受けるのは、考えなくてもわかります。

では、洪水=長靴禁止と単純に信じれば良いのかというと、現実には決してそうではない。少なくとも、実際にやったことが無い人間が、ネット知識とかの受け売りで“指導”することを信じてはいけない。

現実には、「長靴の代わりになにを履いて避難するか」という部分で、机上の空論がまかり通っているのです。


【メリットとデメリット】
長靴には、水が入ったら重く脱げやすく危険という、大きなデメリットがあります。それだけならば、捨て置けばいい。しかしその一方で、長靴でなければならない、大きなメリットも数多いのです。以下に列挙します。

・ソール(靴底)が柔らかく、加えてブロックパターンなど泥の中でも非常に滑りにくいデザインになっている

・底が見えない水中歩行時、くるぶしの上から膝くらいまでをケガから保護する

・水が入らなければ、保温性能が非常に高い

・泥が入っても少量の水できれいになり、脱いだ後も乾燥が早い

・水が引いた後、汚泥の中の移動や後片づけには必須。

そして最後に逆説的なメリット
・水が入らなければ、水や泥の中で最も快適で脱げづらい

ざっと考えても、これだけのメリットがあるのです。


【机上の空論大会だ】
水害時に長靴を履くなという“指導”は数あれど、じゃあその代わりに何を履いて逃げろという部分で、まあいい加減なことを言う輩の多いこと。特に、商業ベースで『防災の専門家』連中の言うことに酷いのが多い。

では、水中での脱げにくさと安全に関して、理想的な靴を挙げましょう。こんな奴です。管理人の私物です。
Annex_009
編み上げですからいかなる状況でも脱げず、ソールはブロックパターンで泥でも滑りにくく、土踏まず内には踏み抜きを防ぐプレートが入っていて、爪先もプラスチックカップで保護されていて、くるぶし周りのパッドがケガを防ぎ、排水孔もあるので、中に水が溜まったままにならない。

すごいですよね。要は自衛隊や警察、消防などの隊員が履いているのと同等品です。でも、こんなもの普通持っていないwハイカットの登山靴やトレッキングシューズもかなり良いのですが、それも一般的とは言えない。

それに、こんなに優れた靴でも、付着した泥は落としづらく、長靴よりはるかに乾きづらいのです。災害が冬場だったら、そんな靴いつまでも履いていられますか? 避難場所で一旦脱いだドロドロビショビショの冷たい靴、また翌日とかに履きたいですか?

第一、こういう靴はかなりお値段が高い。そういう趣味wを持っている方以外には、現実的ではありません。


こういう靴が一般的でないので、みなさん結構適当なことを言うわけです。その手の記事を見つけたら是非チェックを。こんな感じですよ。

・ひもで締められる靴
・履きなれたスニーカー
・運動靴

こんなの、水や泥の中を一度も歩いたことがない奴が頭で考えただけの、机上の空論そのものですよ。ただ、水中で水が入った長靴より脱げづらいというイメージだけの話。じゃ、脱げなきゃいいのか。

水や泥の中で脱げずに安全に歩くために必要な条件は、以下の通り。

・くるぶし以上の高さがあるハイカット型の靴で、紐やマジックテープでしっかり締められ、履いた後にくるぶしの上の部分まで確実に締められていること。普段履き程度の軽い締め具合では、ハイカット型でも少しの抵抗で簡単に脱げる。もしローカット型の場合は、足が痛いくらいに締めあげてあること。水に入ると、靴自体も紐も伸びて緩くなる。

・靴底がブロックパターンなど大きな目で深い溝になっていること。目が細かいスニーカーやランニングシューズのような底では、すぐに泥が詰まってツルツルになる。脱げる以前に、水中で転ぶ危険が非常に大きい。

さて、このような条件を満たす靴、あなたはお持ちですか?そして、水から上がった後のことを考えると、やっぱり長靴を履きたくなってきませんか?


【モノは使いよう】
しかし、水はすでに膝丈以上。長靴は確実に浸水します。でも、ちょっとした対策でカバーできるんです。

それは当ブログ過去記事でも触れているのですが、まずは画像を再掲載します。
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長靴を履いて、ガムテープでぐるぐる巻きしてしまうのです。二枚目画像のように、上にカッパのズボンをかぶせてガムテープで巻けば、さらに効果的です。

これだけで、かなり長い時間にわたって長靴がダブダブになって脱げやすくなることが防げます。主に女性用の細身の長靴ならば、さらに効果的です。

普段履きの靴の紐を締め上げている時間があるなら、長靴履いてガムテープ巻く方が、はるかに早くて簡単だと思いますが。

こうすることで、水中で重く脱げやすくなるという長靴のデメリットをほとんど無くし、前記のような多くのメリットを享受できるわけです。

だから、管理人は宣言します。もし自分が水害避難をする場合には、上記のような対策をして、長靴を履いて行きます。それが、後々を考えれば一番快適で合理的な選択だからです。別に、何時間も水中を歩くわけでなし。

もし何時間も歩くのならば、迷わず上画像の編み上げブーツにしますけどw

要は、適材適所ということです。


【自分で考えよう】
この長靴の話など、ちょっと聞くと「なるほど!」と感じる、実にトリビア的な話ですから、だれもが安易に引用するんです。テレビなどのメディアで偉そうに“指導”している、自称『防災の専門家』など、キャッチーなこと言ってナンボですから、とにかく適当なことを言う奴が多い。

でも、現場はそう簡単じゃないんですよ。使えないトリビアを信じて酷い目に遭うのがイヤならば、いかなる情報でもまずは自分の生活に落とし込んで、それが本当にできるのか、まずは自分で考えてみましょう。

基本は、過酷な災害下をいかに安全に快適に過ごすか、ということ。平時の目線で一面だけから見ていると、イザという時に酷い目に遭いますよ。


さて、水害に関してはもう一題、長靴の話よりさらに使えないけれど、あちこちでまことしやかに拡散されているネタを、次回記事でぶった切ります。


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2015年9月15日 (火)

【関東・東北大水害】隠れた超絶進化を知れ(#1057)

Dnet
D-NET概念図。これが最先端の救難統制システムだ(JAXAウェブサイトより転載)

前回記事(♯1056)は、毎度問題となる被災地域でのマスコミヘリの行動について触れました。

今回は、十年一日の如く変わり映え問題の一方で、見えないところで超絶進化を遂げている救難ヘリのことについてです。

とは言っても、ヘリ自体のことではありません。


【総力戦の問題】
大災害が発生すると、現場には様々な救難ヘリが集結します。今回の大水害では、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁と、警察、消防、都道府県の防災ヘリ(それぞれ地元部隊+応援部隊)が集結しました。

その数は40機近い規模になりましたが、報道を見てお気づきになられた方はあるでしょうか。過去に比べて、非常にスムースに救助活動が進んだことに。


このような混成救難部隊の最大の問題は、組織ごとに指揮命令系統や無線の系統が異なること。通常の無線交信だけでは、各部隊を横断した統合的な運用が難しいのです。

東日本大震災の救難活動では、まさに過去最大の総力戦が展開されたのですが、その裏では、ヘリの捜索地域が重複したり、捜索地域にムラがあったり、整備や補給の問題で必要な場所に機体を派遣できないというような問題が、かなり起きたのです。

その教訓から、新たなシステムが開発されました。


【今回が初の本格運用だった】
そのシステムとは『災害救援航空機情報共有ネットワーク』(D-NET)と呼ばれる、集中管理型消防防災ヘリコプター動態管理システムです。

これは、消防庁とJAXAが共同開発したもので、平成26年4月から運用が開始されており、今回の大水害が初めての大規模実践運用となりました。

このシステムは、消防ヘリ・防災ヘリ・ドクターヘリ、陸上自衛隊救難ヘリに専用のネットワーク端末を搭載し、各機体の位置、活動状況、整備・補給状況などが、消防の指令本部で一括管理できるというもの。

各ヘリへの指示は、専用端末を介して地図などの画像や短文で行われ、確認された被害状況や他のヘリの位置も表示されます。

これにより各機体を最大効率で運用できたために、非常に迅速な救難活動が実現したのです。報道ではほとんど触れられていませんが。

このシステムには、現時点では海空自衛隊、警察、海上保安庁は参加していないようですが、それでも消防指令本部が未対応の各組織と捜索地域などを調整することで、かつてないレベルでの効率運用が実現したわけです。

これはまさに、我が国が世界に誇るべきシステムと言えるでしょう。


【残念だったこと】
このようなシステムに加え、各救難ヘリ部隊では多くの災害出動の教訓から、迅速な出動や支援のための体制を改良し続けており、今回も命令一下、最短時間で出動したのです。

なのに、今回の発災直後には、救助が遅いだのヘリが少ないだのとSNSなどで批判する声がありました。テレビに映る部分だけを見て、言いたい放題。

しかも、それが事情がわからない素人ではなく、防災に関わっている、その世界ではそれなりに名が知れた人もいて、さらには「行政は何をやっているんだ?」とか「現場のことなど誰もわかっていない」とか、他の発言に乗かって批判をする手合いもいたりするのを見て、とても残念な気持ちになりました。

みんな結構年輩で、それなりに防災活動の経験もあるような人たちなのですけどね。

まあ、こういう情報を知らないのはある意味で仕方ないのですが、どうも“まず批判ありき”というような姿勢が、やたらと不快ではありました。

被災者側の立場に立てば、何言っても許されるみたいな風潮も不快です。もちろん問題はいろいろありますけど、防災を標榜し、曲がりなりにもそのための活動をしている人間が、現場も見ずにネット上で偉そうに言うことじゃない。

最前線は、あんたたちよりずっと“わかって”いて、日々進化していますよ。

最後に、D-NETに関する資料ページをリンクしておきます。JAXAのプレスリリースです。文面はかなり専門的で難解な部分もありますが、イラストや図表もありますので、システムのイメージを掴めると思います。

総務省消防庁によるD-NETに対応した集中管理型消防防災ヘリコプター動態管理システムの運用開始について


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2015年9月14日 (月)

【関東・東北大水害】やったもん勝ちを許すな(#1056)

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緊迫の救難シーン。これを撮っているのはマスコミヘリ


ちょっと本題と離れますが、やはりこういう話が出てきました。

今回の関東・東北大水害でも、被災地上空にマスコミのヘリが多数集まったことに批判が集まっているようです。これは20年前の阪神・淡路大震災から強く指摘されて来たことですが、全く改善されていないどころか、悪化の一途という感じです。


【知る権利をタテにするな】
報道ヘリは、国民の『知る権利』をタテにして、被災地上空を飛び回ります。でもその実、要はスクープ映像を抑えたいだけ。最も“数字”になる映像以外には興味は無いのです。

いきおい、最も被害が甚大だったり、過酷な救出劇真っ只中というような場所に集中して、救難活動の邪魔になっているのです。マスコミのヘリがいるせいで、救難ヘリの経路や高度に制限が入ることも少なくありません。

地上の救難活動にも、悪影響を及ぼします。倒壊家屋や被災家屋に人が残っていないか確認する場合、基本的には声を頼りにしますし、サイレントタイムという無音の時間を作って、生存者の声を聞き取ります。でも上空にヘリが常時張り付いていたらサイレントタイムが取れないばかりか、救助隊の指揮命令にも支障を来たします。

一部に、マスコミのヘリが要救助者を発見したという“美談”もあるようですが、そんなものはおまけ。マスコミのヘリがそんなことを大して気にしていないのは、実は放送を見ればわかります。


【捜索なんかしていない】
マスコミのヘリは、主に報道連絡波というマスコミ各社に割り当てられた周波数と、カンパニー波というヘリ基地との交信用周波数で無線交信を行います。

特にテレビ局のヘリは、現場上空では報道連絡波で放送局サイドとの交信を行っており、画角やオンエアのタイミングなどの指示を受けたりします。

今回の水害報道でも、現場上空から記者がレポートする裏に、よく聴くと報道連絡波の交信音声がかぶっていることが良くありました。聞き慣れないと何を言っているか良くわかりませんが、管理人のようなマニアになると、結構わかります。

それを聞いても、眼下で取り残された要救助者が布切れを振って助けを求めている中継映像においても、一度もそれに関する交信が行われたようにはも聞こえませんでした。あくまで放送に関する打ち合わせ的なものが大半で。

そんな映像は、マスコミ的には最も緊迫している“オイシイ映像”に過ぎないということです。仮に要救助者の存在を救難当局に連絡しようとしても、音声通信でその場所をピンポイントで伝えるのは非常に困難で、ランドマークが少ない地方や、ましてや大災害被災地ではほとんど不可能です。狭い範囲では、GPSの座標もほとんど役に立ちません。

ですから、もしマスコミのヘリが要救助者を発見し、速やかな救助に繋がったことがあったとしても、それはあくまで偶然に近いもので、マスコミのヘリが災害時に有用であるという理屈にはなりません。


【バカも休み休み言え】
マスコミのヘリ批判をする報道に、放送関係者のコメントとして、こんなものがありました。放送側からの発言とされていますが、やはりヘリの集中は問題だと。そして最後に、

『・・・できることなら、ドローンを飛ばして撮影したらいい』

これが本当に放送関係者の発言ならば、ほとんど犯罪的です。どうせニセものでしょうが、それにしても無知蒙昧をさらけ出している。


ドローンのような目視やレーダー評定困難な飛行物体が飛んでいたら、その空域には他の航空機は一切進入できなくなります。ただでさえヘリ同士の衝突の危険も大きいのに。

ドローンが救難機の機体に衝突したり、エンジンに吸い込まれたりしたら大事故に発展しますから、空域が完全にクリアになったことが確認されるまで、救難機も近づけないのです。

実際に、最近多発している米国カリフォルニアの山火事現場でも、正体不明のドローンが飛んでいたために消防機が空域に進入できず、消火活動が何時間も遅れたということも現実に起きているのです。なのに、「放送関係者」がドローンを飛ばせだと。

いや、本当はやりたいのでしょう。低コストでものすごい“寄り”の画が取れますから。災害被災地上空のドローン飛行規制をしないと、必ずどこかがやって混乱を引き起こすでしょう。バカな個人がやることも、十分に考えられます。


【具体的な対策を】
大災害時には、自衛隊や警察が空域管制を行い、救難に無関係な機体の空域進入を厳しく制限するなどの対策を行わない限り、スクープ映像を狙う報道ヘリの跋扈を止めることはできないでしょう。

もちろん、過去にはそのような空域管制が行われたこともあります。しかし、報道ヘリは管制の言う事を聞かない。

管理人は、過去のある大事故現場で、航空管制無線を聞いていたことがあります。最初は消防ヘリのみが上空進入を許可されたのですが、気がつくとマスコミのヘリが制限空域内に入っている。無線でも、報道にも進入を許可せよと、かなり感情的な声が飛び交っている。

そのうちに進入が許可されたものの、最低高度制限がかけられた。しかしいつのまにかその高度をはるかに割り込んで降下して、“寄り”の画を撮っている。気がついた管制が高度を上げるように警告しても、知らん顔して低空に張り付いている。しまいには空域退去命令が出て、やっとしぶしぶ離れて行くようなことを実際に目の当たりにもしました。どう見ても、“やったもん勝ち”としか考えていないようで。

もうちょっと書くと、それは航空機の墜落現場でした。高度制限は決してマスコミ対策ではなく、ヘリのダウンウオッシュ(下降気流)が地上の救難活動を支障しないようにというのが主目的だったはず。でもそんなことお構いなく、平気で消防ヘリよりも低い高度にまで降りてきたりもしていました。

すると、あとから集まって来た他社のヘリが「うちも入れろ」と矢のようなリクエストをしてきて、しまいには再び空域は閉鎖されたのです。ヘリの記者にとっては、始末書何十枚書かされようと、それよりスクープ映像という意識がミエミエでしたね。それが現実です。

後で自衛隊や国交省などからマスコミへ指導が入っても、「善処します」とかいいながら同じことやるのでしょうね。何か根本的な対策はないのでしょうか。

今回もやっぱり起きたマスコミヘリ問題。これは我が国だけでなく、メディアが発達したどこの国でも似たり寄ったりのようですが、少なくとも欧米では、航空に関する規制や罰則は我が国より厳格なはず。“やったもん勝ち”が事実上許されているような状況では、また繰り返されることは間違いありません。

今回は報道ヘリについての苦言でしたが、ヘリついでに、あまり知られていない救難ヘリの凄い話を次回はお送りします。


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【関東・東北大水害】大水害は何故起きたか?(#1055)

Kinugawa2015
鬼怒川堤防が決壊した茨城県常総市の空撮画像


台風17号及び18号崩れの温帯低気圧による豪雨は、関東から東北の各地に甚大な被害を及ぼしました。

被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。実は管理人、最大の被害となった茨城県常総市の隣、守谷市にかつて住んでいたこともあり、被災地域はよく知る土地なのです。 できることなら後片づけボラに駆けつけたいのですが、諸般の事情で残念ながら行けません。

それでは、このあと何回かに渡って、この豪雨災害について考えて行きたいと思います。


【何が起きたのか?】
秋雨前線に台風18号が接近した時点で、管理人はなんらかの気象災害の発生は避けられないと考えておりました。直前の記事今回は雨台風+αだ(♯1052)では、『起こるべくして起こる災害』という表現をしました。

それでも、実際には想像とはかなり違った様相となりました。当初は、台風がもたらした暖かく湿った空気が大陸の冷たく乾いた空気とぶつかることで発生する、非常に強力な積乱雲による災害を想像していたのです。

ですから、記事では短時間の集中豪雨や、それに加えて竜巻、突風、落雷などの災害も多発しそうだというニュアンスになっています。しかし、そうではありませんでした。


【双子台風による予想外の影響】
実際には、台風や台風崩れの温帯低気圧からかなり離れた関東と東北で、長時間に渡る豪雨となりました。竜巻、突風、落雷などによる被害は発生していません。

この状況は、以下のように説明されています。


・本州を横断して日本海に抜けた台風18号崩れの温帯低気圧に向かって、南から暖かく湿った空気が流れ込んだ。

・台風崩れの低気圧は、偏西風に動きを妨げられ、速度が非常に遅かった。

・低気圧へ向かって本州の南海上から流れ込む暖かく湿った空気(暖湿流)と、東側の太平洋上から接近した台風17号がもたらした暖湿流が、関東上空でぶつかった。

・南と東から流れ込む暖湿流がぶつかることで、非常に強い雨雲が発達し、豪雨となった。両者の温度差はあまり大きくないのでそれほど不安定な状態にはならず、竜巻や落雷被害を起こすような強い積乱雲にはならなかった。

・台風17号、18号ともに動きが非常に遅かったため、暖湿流同士がぶつかる境目で豪雨が続く『線状降雨帯』が、長い時間に渡って形成された。

・南北に延びた『線状降雨帯』は、低気圧と台風の動きに伴って非常にゆっくりと北へ移動し、東京・埼玉・栃木・茨城・福島・宮城に豪雨被害をもたらした。

・特に栃木・茨城では、南北に流れる鬼怒川流域に重なるように『線状降雨帯』が停滞したため、流域での甚大な被害につながった。


【全地球的な状況による影響】
今回の豪雨災害を巨大化させた最大の要素は、双子台風の接近ということが言えそうです。もし仮に台風18号だけだったら、これほどの豪雨にならなかったことは間違いありません。

では、なぜ珍しい双子台風となったのか。今年はこれが初めてではありませんし、太平洋地域全体で見ても、台風 やハリケーンの“同時多発”が何度も起きています。

今年は、赤道上を巨大雲の集団が周期的に移動する『マッデン・ジュリアン振動』(MJO)と呼ばれる現象や、平年とは異なる海域の水温が上がる『エル・ニーニョ現象』などの相乗効果で、台風やハリケーンが“同時多発”しやすい状態になっているとのこと。

それによる双子台風の発生が、今回、豪雨災害をより巨大化させたということができます。

巨大災害となった直接の原因は堤防の決壊ですが、それ以前に水が堤防を越えて流れ出す『越水』が発生したり、堤防が設計上耐えることができる水位(計画高水位)を超えるような状況が各地で発生しています。治水計画での想定を超えた、膨大な降水量となったのです。


【今年だけなのか?】
では、あくまで今年だけが特殊な状況だったのでしょうか。

今後、双子台風が何度も発生するという状況が、すぐに普通になっていくとは思えません。しかし、全地球的な気候変化は、過去には無かった状況を、次々に生み出しています。

何よりも、台風や低気圧が大型化、強力化して行くことは間違い無いと言えるでしょう。気候全体も、より暑く、より寒くとういうように“極端化”が進むでしょう。

その中で起きる気象災害も、過去よりも確実に大型化、激甚化して行くことは間違いありません。


それに対する備えが及ばないこともあります。でも、備えによって、多くの命やモノを救うことができるのも確かです。何より、気象災害は誰でも「予測できる」「時間的余裕がある」のです。

そこでどうするかは、あなた次第です。


次回も、豪雨災害について考えます。


■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2015年9月12日 (土)

東京湾震度5弱に関する続報(#1054)

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上図は気象庁ウェブサイトから転載させていただきました

本日9月12日午前5時49分頃、東京湾西部の深さ約57kmを震源とするマグニチュード5.2の地震が発生し、東京都調布市で最大震度5弱を観測しました。

発震機構は『北西ー南東に張力軸を持つ正断層型』とのことです。

なお、震源深さとマグニチュード値は、速報値の約70km、マグニチュード5.3から上記の通り訂正されています。また、最大震度5弱が観測されていますが、東京都調布市の観測点ただ1ヶ所だけでの観測ですから、地震計の設置条件や地盤の状態によって少し大きめに計測された可能性が大きいかと思われます。


【比較的珍しい地震】
東京都付近の南関東地下では、上からユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートの三層構造になっていて、一般に下記の5種類の地震が起きる可能性があります。

【1】ユーラシアプレート内の浅い断層が動く地震
【2】ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるプレート境界型地震
【3】フィリピン海プレート内で起こるスラブ内地震
【4】フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界で起きるプレート境界型地震
【5】太平洋プレート内で起きるスラブ内地震
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このうち、いわゆる『東京直下型地震』として被害想定されているのは、二番目のプレート境界型。最大震度は7に達すると可能性もあるとされています。


今日の地震はそれよりも深く、東京湾周辺でもあまり多いタイプではありません。気象庁会見では言及されなかったのですが、約57kmという震源深さと正断層型ということから、上記三番目のフィリピン海プレート内のスラブ内地震かと思われます。

プレート境界型地震ならば、逆断層型になるはずだからです。当初発表の深さ約70kmならば、最下層の太平洋プレート内と考えられますが、57kmならばフィリピン海プレート内の可能性が高いでしょう。

その場合、上記5種類の地震のうち、最も少ないタイプと言えそうです。


【特に心配はいらないか】
今日の地震は、危惧される『東京直下型地震』のうちでもあまり巨大化する可能性のない、特に心配するような地震では無いと言えます。余震活動も活発ではないでしょう。

ただし、これとは別に、大規模な『東京直下型地震』が発生する可能性は常にあるということを忘れてはなりません。

想定される地震が最大規模で起きた場合、東京都内、埼玉県・茨城県南部、千葉県北部、神奈川県東部などで最大震度7~6強に達する恐れがあるのです。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


東京湾直下震源で震度5弱(#1053)

今朝午前5時49分頃の地震、管理人は新宿で遭遇しました。

とり急ぎ、午前6時15分時点の公式ツイッターコメントをアップしておきます。
Image

詳細は気象庁の発表後に。

速報的な内容は主に公式ツイッターアカウントで呟いています。当ブログ公式アカウント(上画像)のフォローをお願いします。

◼︎当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


2015年9月 8日 (火)

今回は雨台風+αだ(♯1052)

台風17号と18号が、日本列島に接近しています。


【今回は、雨】
二つの台風とも、勢力的には強くありません。中心気圧や最大風速だけで判断すれば、大したことないな、考えてしまいそうです。

しかし気は抜けません。今回は、強烈な『雨台風』となりそうです。

しかも豪雨災害に加えて、竜巻、突風、落雷などの被害も伴う可能性が高くなっています。


【秋雨前線を刺激】
本日9月8日、午後12時時点の天気図をご覧ください。
Image_2
気象庁ウェブサイトより

日本列島東岸に沿うように停滞している『秋雨前線』に、ふたつの台風が近づいているのがわかります。

この『秋雨前線』、簡単に言えば大陸側の冷たく乾いた秋の空気と、南洋からの暖かく湿った空気の境界線であり、そこで強い雲が発達することで『秋の長雨』となります。

近年は、南洋の海水温が上がっており、そちらからの空気に含まれる水蒸気量が増えることで、秋口の豪雨も増えています。

さらにそこへ台風が絡むことは、天気予報で言うところの『秋雨前線を刺激』する状態であり、それは短時間で膨大な量の”燃料”を供給するようなものなのです。

台風がもたらす大量の暖かく湿った空気が大陸からの冷たい空気とぶつかり、前線に沿って、すなわち台風からかなり距離がある場所でも、非常に強力な積乱雲が発達しやすい状態になります。

それは前述の通り、記録的豪雨とそれによる水害、土砂災害、竜巻、局地的突風(ダウンバースト、ガストフロント)などで被害が出る確率を、非常に高めているのです。


【もう認めよう】
今年の各地からの気象災害報道を見てもわかる通り、竜巻や突風被害は、ごく当たり前のように起きるようになっています。

思い出してください。10年くらい前に竜巻被害報道を、それを一年に何回も聞いていましたか?

現在の状況を異常気象として捉えるのも自由ですが、理屈はともかく、大都市圏の住宅街や通勤・通学の最中に、普通に竜巻に遭遇する危険があるという時代になっているのです。

もうそれを認めて、異常気象とか騒ぐのはやめましょう。すでにこれが当たり前であり、将来的にはさらに極端化して行くはずです。

今回の台風17・18号接近は、我々の意識変化を試される試金石のひとつと言えるかもしれません。

あなたはこの状況で、起こるべくして起こる気象災害に”漫然と”遭遇して「こんなことになるとは思ってもいなかった」と嘆くような人ですか?

■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。


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