2023年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

« 【シリーズUDL21】衛生編4・こんなのならさらにお手軽(#1078) | トップページ | 『津波防災の日』だったそうで(#1080) »

2015年10月31日 (土)

【ヲタ目線地震教室21】生き残るためにまず知り、そして感じること。(#1079)

Quake_graph
細かいP波の揺れの後に、大きなS波が襲って来る

久々に復活の【ヲタ目線地震教室】、今回からは新テーマ、地震の揺れ方と震源の推定方法についての話です。

でも、素人が地震の揺れ方から震源の推定なんかしても、そんなの趣味のお遊びに過ぎない思われるでしょう。まあ、その通りですw

しかし地震の揺れ方を知っていいれば、揺れを感じた瞬間に危険な地震がどうか判断できますから、避難行動における『命の一秒』を、稼ぎ出せる可能性が高くなるのです。

震源推定はそのオマケみたいなものですが、ご自分がお住まいの地域で起きやすい地震の“クセ”を知っておくことも、避難行動のスピードを上げるために役立つのです。


【最初にP波が到達】
まず、地震動の基本についておさらいしておきましょう。

地下で断層の破壊、すなわち地震が発生すると、震源から最も速い速度で広がっていくのが、P波(初期微動)です。このため、地表ではまず最初にP波を感じることになります。Pはprimary(プライマリ)の頭文字で、「最初の」という意味です。

P波はいわゆる「たて揺れ」で、ガタガタ、ビリビリ、ブルブルという細かい揺れとして感じられることが多いのですが、震源が観測点の真下に近い場合、いわゆる直下型地震の場合は、中規模以上になると、下から突き上げるような「ドン!」や「ドドド!」という強い揺れを感じることもあります。

突き上げられるような「ドン!」や「ドドド!」を感じた場合は、最も危険とされる直下型の、かなり大きな地震です。数秒以内に激しい揺れが襲って来る可能性が非常に高いので、すぐに身を守る行動に移らなければなりません。

なお、P波のたて揺れは建物などに対する破壊力は小さく、人が歩けないほどの揺れになることはありません。恐ろしいのは、その後に到達するS波です。


【次が本番のS波】
P波の次に地表に到達するのが、S波(主要動)です。Sはsecondary(セカンダリ)の頭文字で、「二番目の」という意味です。

S波はいわゆる「よこ揺れ」で、P波よりはるかに揺れる速度も振幅も大きく、建物などに対する破壊力も、P波よりはるかに大きくなります。S波による激しい揺れが始まると歩けなくなるどころか、四つん這いにさえなれないこともあります。

なお、S波は一般的には「よこ揺れ」と言われますが、地震の規模が大きい、震源にごく近いなどの場合は、かなりたて揺れの成分も発生します。大地震の被災者が「上下左右に振り回すような揺れだった」と証言することがあるのは、このためです。

そうなると、耐震強度が低い建物が倒壊する、ガラスや壁材が落下する、固定していない家具などが一気に倒れたり、激しく移動するということなどが起こります。

ですから、身を守る行動は最初のP波を感じた段階ですぐに始めて、S波が到達する前に安全を確保しなければなりません。

しかし、震源が観測点にごく近くて浅い直下型地震の場合は、体感的にはP波とS波がほぼ同時に来るように感じることもあります。その場合、避難行動をする時間の余裕がほとんどありませんから、最も危険な地震と言えます。

さらに、震源からの距離が近い場合には、揺れの周期が比較的短かくなりやすく、その揺れが建物や崖などに大きな破壊力をもたらしやすいという意味でも、最も危険な地震なのです。

建物の中でそのような地震から身を守るためには、“自分が動けなくても大丈夫な対策”をしておかなければなりません。それは建物の耐震強度を上げ、家具・備品類を固定し、ガラス等の飛散防止対策などをしておくことです。

最も危険な直下型地震の典型は、1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)や、2004年の新潟中越地震などです。


【P波とS波は速度が違う】
P波とS波は地中を伝わる速度がかなり違うため、観測点に到達する時間差は、震源の深さも含めた観測点と震源との距離によって決まります。

言うまでもなく、観測点と震源が近いほどP波とS波の時間差は小さく、震源との距離が伸びるほど、その時間差が大きくなります。

このことを利用して、地震の距離と規模を直感的に判断することができます。

まずP波によるガタガタ、ビリビリ、ブルブルという揺れを感じた時点で、それなりに大きな地震だとわかります。P波はS波に比べて振幅が小さく減衰しやすいので、規模が小さかったり震源からの距離が遠いと、P波を感じられないことも多いのです。

そしてP波を感じてから短時間でS波、よこ揺れが来れば、震源が比較的近い地震であることがわかります。

一方、P波が長い時間続いて、なかなかS波を感じられない場合は、震源はかなり遠いものの、地震の規模はかなり大きいということがわかります。

減衰しやすいP波が、身体に感じられる大きさで遠くから到達している時点で、かなり大きな地震というわけです。

その場合、観測点に次に来るS波の揺れは比較的周期の長い、ユサユサとした大きめの横揺れの可能性が高くなります。地震波は、震源との距離が長くなるほど、揺れの周期が長くなる性質があるからです。

東日本大震災(東北地方太平洋地震)で、大阪では震度3だったにも関わらず、長周期地震動が発生して高層ビルを大きく揺らしたのが、典型的な例と言えましょう。 震源から1000km以上、震源域南端からも600km以上離れた場所にあのような地震動が到達したのは、マグニチュード9.0という超巨大地震だったが故です。

長周期の揺れは、特に中高層建物を振り回すように大きく揺らし、室内に被害をもたらしやすいのです。P波を感じてから避難行動ができる時間は比較的長いのですが、どう動くか考えておかないと、とっさの判断ができなくなりやすいので、普段からの避難行動シミュレーションと、実際に身体を動かす訓練をしておくことが、何よりも大切なのです。

防災グッズを揃える前に、まずはそこからです。モノの対策が一通り済んでいるなら、すぐに今日から。


このような知識と見方に加え、ある程度の経験もしくは訓練があれば、P波を感じた瞬間、そしてその後数秒のうちにその地震が自分にとって危険な地震なのか、その後に何が起きるのかを、瞬間的に予想して行動することができるようになるわけです。

なお、実際の地震波はP波とS波の他に、地表面を伝わって来る地震波である表面波(レイリー波、ラブ波)や、地球内部で反射、屈折して地表に届く後続波、海底地震の際に海水中を伝播してくるT波など、様々に分類されます。

しかし、それは地震学者と地震ヲタだけの世界なのでw、基本的にはP波とS波の性質がわかっていれば良いでしょう。

次回は、震源の推定方法です。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

« 【シリーズUDL21】衛生編4・こんなのならさらにお手軽(#1078) | トップページ | 『津波防災の日』だったそうで(#1080) »

地震関連」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

« 【シリーズUDL21】衛生編4・こんなのならさらにお手軽(#1078) | トップページ | 『津波防災の日』だったそうで(#1080) »