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2015年10月19日 (月)

【シリーズUDL18】衛生編1・UDLは見えない強敵との戦い(#1071)

■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。当ブログが提唱する被災生活の概念です。

Enemies
UDLでは、このような見えない敵とも戦わなければならない


今回から、UDLにおける衛生について考えて行きます。

【忘れられがち、しかし不可欠】
UDL対策というと、つい水、食品や住環境のことに偏り、衛生の維持については忘れがちです。衛生の敵は主に細菌やウイルスであり、その正体が見えないのも大きな理由でしょう。

しかも、衛生対策をしても、目に見える劇的な効果はほとんどありません。ふと気がついたら体調不良も病気も無いくらいの感じで。だから、「これがあれば大丈夫!」というような、トリビア的話題にもならない。

耳目を惹きやすい話ではない、すなわちウケないから、『商業ベースの防災の専門家』もほとんど無視する。


モノの面から見ても、出来合いの“防災セット”の中に、ウエットティッシュ程度以上の、例えばケガ用以外の消毒剤のような衛生グッズが入っていること、まずありませんよね。売る側もユーザーも、その重要さをあまり認識していないし、流通やコストの問題で、そういうものをきっちり入れたら商売のうま味が減るからでしょう。

さらに、消毒剤などは使うためにそれなりの知識と技術が必要なので、そもそも万人向けのセットにはそぐわないのです。

しかしインフラが止まり、肉体的、精神的ストレスが大きなUDLでは、対策の有無がとても大きな差となって、確実に現れます。 だから、“本当に必要なもの”は、あなた自身で備えなければなりません。


衛生対策は単純に病気を防ぐだけでなく、メンタル面にも効果的です。

水や食品の保存状態、さらにはトイレの状態も劣悪で、身体どころか手さえ自由に洗えないUDLでは、目に見えない細菌やウイルスを消毒する手段があるだけで大きな安心感があり、心の安定にもつながります。過酷なUDLでは、不安要素はひとつでも減らすべきなのです。

極端な話、もしあなたが俗に言う『潔癖性』、さらに言えば強迫神経症と呼ばれるような状態だとしたら、そんなUDLで心の平穏が保てるでしょうか。UDLでは、普段の衛生管理がほとんどできなくなるのです。

もしご自分にそういう不安が少しでもあるのなら、迷わず十分な対策を。そこまで行かなくても、過酷なUDLで自分や家族の健康を守るためには“絶対に必要”という認識をするべきジャンルなのです。

埃まみれで後片付けをした後、水が出ないトイレに行った後、その手のままで食事したり赤ちゃんに触れることになったりしても、備えていなければ後の祭りですよ。

それでも、『防災の専門家』は衛生にほとんど触れませんね。防災グッズに専用の衛生用品がほとんど無いということと無関係ではありません。ユーザーの意識が低い、すなわちたくさん売れないから商売にならないし、耳目を惹くトリビアも少ないから、紹介しても話題にならないし。

でも、世間など関係ありません。あなた自身で、あなたと家族を“自然の敵”から守るのです。

【目前の敵は最強の敵ではない】
例として挙げるにはいろいろご意見もありましょうが、象徴的な話をひとつ。ジャングルや山中で戦う兵士の話です。

そのような場所を専門とする部隊の兵士に対しては、戦闘技術に劣らぬほど徹底的に、衛生管理の教育が行われます。それは“屈強な兵士”のイメージを覆すほど微細に渡り、まるで女性の肌ケアのようなことも含まれる、細かい対策です。

ジャングル戦での衛生状態は非常に劣悪であり、その中で移動や野営をしている時間が長くなります。その間に何も対策をしていないと、すぐに“自然の敵”にやられてしまい、屈強な兵士でさえ、敵と戦う前に動けなくなってしまうことがあるのです。

ジャングルには、あらゆる敵が潜んでいます。細菌、ウイルス、アメーバやそれを媒介する生物、毒虫、毒蛇、有毒植物など。それも普段接していない、耐性も免疫も無いようなのがうじゃうじゃいるのです。 それはある意味で銃を持った敵より怖ろしい、気がつかないうちに接触したが最後、身体の中から蝕ばまれる“最強の敵”なのです。


例えば、きちんと教育された兵士は、ジャングル内を移動する際は暑くても腕まくりをしません。何故なら、草の葉でこすったわずかな傷が激しく化膿したり、そこから毒素が入ったり、細菌やウイルスに感染することが普通に起こるからです。

ですから、僅かでも身体に傷がついたら、すぐに抗生物質などで治療します。当然、十分な衛生装備品を持参しています。

ジャングルではない日本の山の中でも、肌を出しているとウルシなどを触ってかぶれたり、ダニ類に噛まれたりして、最悪の場合は生命に関わる感染症にかかります。

そこで「自分は大丈夫」などと根拠もなく無視していると、突然倒れて敵と戦えなくなるだけでなく、仲間にも負担をかけることになる。だから優秀な兵士ほど、衛生には気を配るのです。水や食料にも細心の注意を払うことは、言うまでもありません。


という話、UDLと無関係だと思われるかもしれませんが、過酷な環境下で人間が“自然の敵”と戦うための、象徴的な例として挙げました。

もちろん、UDLでもジャングルよりははるかに安全です。それでも、身体も服もモノもろくに洗えない、水や食品が傷みやすい、トイレが劣悪、疲労やストレスで免疫力が低下している、病原体が拡散しやすい、人が密集する場所で伝染が起きやすいというUDLの状況は、“都会のジャングル”と言っても過言では無いのです。


茨城県常総市の水害現場では、後片付け中にケガをした方が土中にいる破傷風菌に感染して発病しましたが、所詮ひとりだけと甘く見ていませんか?

そこまでの重症より前に怖れるべきは、細菌やウイルス感染による発熱、下痢、食中毒などです。大災害被災地では実際に多発しているものの、その程度の話はニュースにもなりません。

しかし、治療が十分に受けられず水分も十分でない環境では、特にお年寄りや子供には致命的な結果になりかねない重大事です。体力のある方でも、過酷なUDLで寝込みたくはないでしょう。細菌やウイルス感染症には抗生物質が効果的であることが多いのですが、医師の処方がなければ入手できません。しかし、十分な医療が受けられる可能性が低いのが、UDLなのです。

東日本大震災後の被災地では、特にお年寄りが感染症による衰弱で亡くなることががかなりありました。しかし分類上は『災害関連死』としてひとくくりにされているし、メディアも取材しない(事実上できないし問題提起するつもりも無い)ので目立たないだけです。


【自分でできることは何か】
そんなUDLにおいて、衛生のために自分で備えられることは何でしょうか。

大きく分けてふたつの分野があります。ひとつは身体の衛生、もうひとつは水や食品も含めた環境の衛生です。当シリーズでは、それらの問題をなるべく安価で入手しやすいモノを使い、しかも効果的に解決する方法を考えて行きます。

具体的には過去記事で触れた方法の再録がほとんどとなりますが、改めてまとめたいと思います。


■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。

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