【パリ同時テロ関連03】そして、我が国の状況は(#1088)
我が国の対テロ作戦の急先鋒を担う秘密部隊、陸自中央即応集団特殊作戦群の隊員
今回は、フランスで発生したような大規模テロ行為が、我が国で実行可能なのかについて考えます。
当記事は、前記事をお読みになった上でご覧ください。
【パリ同時テロ関連02】テロは思いつきではできない(#1087)
【大規模テロを実行するためには】
これまで述べたように、テロの最大の目的は“どこで殺戮が起きるかわからない”という恐怖を煽り、大衆の厭戦気分を醸成することにあります。
そして、大規模テロの実行には、十分な能力を持ち、良く訓練された実行犯と支援メンバーが、綿密な計画の下に長い時間をかけて準備することが必須です。
その間、当局の監視網に察知されずに機密を保持するためには、細心の注意と有効な『隠れ蓑』が必要なのです。
フランスのテロを見て、同様のテロがすぐにでも我が国で起きるかもしれないと恐怖を感じてしまったら、それはテロリストの“思う壷”ということです。
【浸透には『顔』が重要】
前記事に挙げたフランスの状況と、我が国を比べてみてください。
我が国において、かつてから存在する外国人コミュニティは、その多くが東アジアに由来するモンゴロイド人種のものです。すなわち、一般的日本人と風貌が近い。
近年はその他の民族の居住者もかなり増えていて、各国からの外国人観光客も、あちこちで見かけるようになりました。
しかし、日本人があまり立ち入れないような閉鎖的な外国人コミュニティはほとんど形成されておらず、実在する外国人コミュニティも、同一の民族、宗教、文化、思想などで高度に均質化されているわけでもありません。
しかも、やはり東アジア系人以外が街中にいると、それが大都市でも、やはりまだ“目立つ”のです。
すなわち、東アジア系人以外が溶け込める、良く似た『顔』の環境は非常に少なく、さらには民族的、宗教的にもテロリストを支持する可能性がある集団でもないので、その中で地元在住者以外が長期に渡って秘密活動を行うのは、非常に困難だと言えるでしょう。
それは一方で、日本人も含めた東アジア系人ならば比較的やりやすい、ということも意味しますが。
フランスの場合、地元出身者がテロリスト支配地域に渡航し、訓練を受けて帰国してもその事実が把握し切れず、再び元のコミュニティに溶け込んでテロを実行するという、いわゆる『ホームタウンテロ』が、最も容易と言える状況があるのです。
【武器は調達できるか】
言うまでもなく、我が国における銃器の管理体制は世界最高とも言えるレベルです。猟銃一挺が紛失しても大騒ぎになりますから、ましてや軍用銃を国内で調達するのは、事実上不可能。
爆薬にしても、軍用のプラスチック爆薬の入手はまず不可能。ダイナマイトでも、鉱山などから盗み出すくらいしか方法がありませんし、それはすぐに発覚するでしょう。
アンホ爆薬を自作しようとしても、原料を“怪しい外国人”が大量に買い付ければ非常に目立ちますし、『隠れ蓑』のコミュニティが無ければ、集積や加工も困難です。
一方で、国内に闇の銃器や爆薬が存在しないわけではありません。反社会勢力による密輸と集積が行われており、時々摘発されてニュースになります。
さらに、詳しくは書きませんが、“その他の勢力”による、武器の集積が行われている可能性もあります。
もし国内の反社会勢力や“その他の勢力”がテロリストと結託して武器や爆薬を供給したとしたら。その可能性がゼロだと断定するのは楽観的に過ぎますが、現実的に懸念するほどではないとは思われます。
何より、現有の反社会勢力にしても“その他の勢力”にしても、市民の大量殺戮を狙うテロリストと結託する『メリット』が、あまり考えられません。但し、可能性のひとつとしては想定しておくべきでしょう。
なお、テロの方法は銃器や爆薬だけでなく、交通機関を機械的に破壊したり、毒物などを使用する方法も考えられます。しかし、我が国をターゲットとするテロリスト集団の“得意な方法”ではなく、他の地域でも行われていませんから、やはり銃器と爆薬による方法を最も警戒すべきでしょう。
【果たして可能なのか】
以上のような条件からしても、我が国の国内で大規模テロを行うのは、非常に困難なのです。
もちろん、警戒が手薄な地方ならば、実行できる可能性は多少は高まります。しかしテロの本来の目的は、これまで述べたように『敵』の中枢や象徴的な場所を無差別攻撃して大被害を与えることで、大衆に恐怖を植え付けることです。
ですから、狙われるのは大都市やそれに準ずる場所の、非常に混雑する場所と時間帯ということになります。
果たして、それは可能なのか。次回は、我が国で想定されるテロ行為の、具体的可能性を考えます。
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私はそっち方面はとんとダメなのですが、
『中国と一戦を交える事態になれば、彼の国の国家動員法の定めにより在日中国人は自動的に中国政府の指揮下に入る。すでに潜伏している工作員の煽動によって国内にはテロの嵐が吹き荒れるだろう』
『自衛隊はすでに都市部でのゲリラ対策として陸上自衛隊の編成・配備を進めている。戦争が起きればゲリラ兵は問答無用で排除するのが常識』
みたいな言説を目にしたりします。在日韓国人についても似たような話を見聞きするのですが、てばさん的にはこの手の話の信ぴょう性はいかがなものでしょうか?確かにありえるよな~と思う反面、国民性から言ってもあり得ない展開(テロが起きても世論としては外人の排除には向かわず、右往左往するだけ)のようにも思います。
何事も起きなければそれでいいんですけどね・・・。
投稿: tnt | 2015年11月18日 (水) 17時52分
>tntさん
正しくもあり、間違いでもありますね。
一戦交えると言っても、局地的な紛争程度では有り得ない事態です。宣戦布告を交わす、全面戦争状態ならばということですね。
あと、人がいればどこでもテロ行為ができるというのも妄想。軍事的攻撃を行うには、武器はもちろん十分に訓練を積んだ人員が必要です。それに、自殺攻撃をするわけではありませんから、攻撃後は離脱しなければなりませんが、それができないわけですから、現実的にはあり得ません。
では安心かというと、そうでもない。少ないながらも、有事には軍事的活動をする前提で在住している、その手段を持った人間は確実にいます。但し、主にテロ行為ではなく、諜報活動とサボタージュということになります。
平時でも、本国政府の意向を受けて市中の情報を収集している外国人はたくさんいます。さらに、長期間在住したり留学したりして、日本企業に就職して要職についている人物でも、中には「スリーパーエージェント」が紛れているのは確実でしょう。
普段は善良な一市民として暮らし、何も無ければ日本に骨を埋めることもある。「スリーパー」、つまり眠っているのです。しかしもし有事になったら「目を覚まして」諜報活動、サボタージュ、産業や情報などの撹乱作戦を行うのです。
日本周辺の東アジア各国政府の意向を受けた、そのような人物が存在するのは確実です。ちなみにサボタージュとは、サボるの語源でもありますが、例えば仕事中にわざと手を抜いて誤操作をして混乱を起こすような小さなものから、発電所や交通インフラなどの重要施設を内部から破壊するなどの大規模なものまであります。
そういう人物やネットワークが存在しているのは確かなのですが、我が国の公安警察なども活動していますから、完全に野放しというわけでもありません。
とりあえず、在日外国人が本国の指示で、いきなりゲリラ化して襲い掛かって来るようなことは、ほとんど無いと言えるでしょう。
確かに、陸上自衛隊も対ゲリラというか、市街地戦闘を想定した訓練を重視しはじめています。記事に写真を掲載した、陸自の特殊作戦群はその筆頭です。対ゲリラ戦闘だけでなく、平時は訓練の名目で各地で情報収集をしているはずです。
ただ、ゲリラとは民間人に紛れて小単位で行動しますから、自衛隊でも一網打尽というわけには行きません。なお、ゲリラは戦時国際法では戦闘員とは認められず、犯罪者の扱いとなります。ハーグ陸戦条約などによる戦闘員の条件は、非戦闘員と識別できる服、装備、徽章などをつけていること、指揮官が存在してその指揮下で行動することなどです。
ですから軍事的攻撃を行うゲリラは一般に戦闘員とは見なされず、捕虜等の扱いを定めたジュネーブ条約も適用されませんから、まず警察や自衛隊が「無力化」することになり、拘束した場合は刑法で処罰されることになるでしょう。戦闘行動中に発見されたら、「問答無用に排除」されるでしょうね。但し、多くの場合は隠密行動となりますから、大規模な戦闘にはならないでしょう。
一般国民ですが、東日本大震災被災地では、火事場泥棒だけでなく、実は「日本人ではない人々」による略段、暴動、女性への暴行が少なからず発生しています。その際、これも報道されませんが、地元住民が「自警団」を作って警戒したという例は多いのです。
有事になれば、必然的にそのような動きが出てくるでしょう。実際に敵対行動がなくても「敵性国民」ですから、何をされるかわからないという恐怖からの行動です。かつての関東大震災時のように、それが暴走しないとは限りません。
まあ、有事でも強硬な外国人排斥論者が言うほど怖ろしい事態にもならないでしょうが、そのような人々が「工作員」と呼ぶような人物も、確実に存在する。そういった感じでしょう。
投稿: てば | 2015年11月19日 (木) 15時21分