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2015年11月14日 (土)

薩摩半島西方沖でマグニチュード7.0、津波発生(#1084)

11月14日午前5時51分頃、九州の薩摩半島西方沖、約160kmの深さ約10kmを震源とするマグニチュード7.0の地震が発生し、佐賀県白石町で最大震度4を観測しました。

この地震で、種子島・屋久島地方、奄美群島・トカラ列島、鹿児島県西部に津波注意報が発表され、中之島で30cmの津波を観測しました。


【かなり静かな震源域】
この地震の震源域、薩摩半島西方沖はかなり静かな震源域であり、東日本大震災後にも、特に活発化するような動きはありませんでした。

この周辺で起きる地震は、ほとんどが震源深さが「ごく浅い」から10km程度で、稀に深さ150km以上の深発地震が起きています。年間の有感地震発生回数も、平均して10回あるかないかくらいで、小規模地震がほとんどです。

2015年に入ってからは、5月27日にマグニチュード4.1、最大震度1が起きていますが、その地震は深さ150kmで発生しているので、今回の地震とは無関係です。浅い地震は、今回の一連の地震が、年初めての有感地震ということになります。

2007年まで遡って記録を調べても、以後この震源域で起きた最大の地震はマグニチュード4.9でしたから、今回の地震は飛びぬけて大きな規模だったと言えます。


【意外に小さかった?】
今回の地震で、{あれ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

深さ10kmという浅い海底でマグニチュード7.0ですから、地上がもっと大きく揺れたり、大きな津波が発生してもおかしくなかったのではないかと。

もし陸地の地下で同様の地震が起きたら、地上の揺れは震度6強以上となって、大被害が出る規模の地震だったのです。

津波にしても、一般的には深さ10kmの海底でマグニチュード6台後半以上の地震が起きた場合には、もっと大きな津波が発生するはずです。なのに今回は、最大でも高さ30cmでした。


【場所とメカニズムのおかげ】
この地震で地上の最大震度が4と、あまり大きくならなかった最大の理由は、震央の場所(下図参照)です。下図は、気象庁ウェブサイトからお借りしました。
20151114
今回の震央は、薩摩半島西方沖震源域の中でもかなり西寄り、すなわち陸地から約160kmも離れた遠い場所だったからです。

しかし、なぜ津波がとても小さかったのでしょうか。


この地震について、気象庁から発表がありました。この地震のメカニズムは、『北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型』ということです。このメカニズムのおかげで、津波が非常に小さかったのです。

津波は、地震によって海底が変形すると、それによって大量の海水が押し上げられたり落ち込んだりして発生します。すなわち、海底に垂直の動きがあった時に、大きな津波になりやすいのです。

しかし横ずれ断層では、断層自体に垂直方向の動きが少ないために、それによる海底の動きも小さかったので、津波が小さかったということができます。

もちろんこれは偶然ではなく、この震源域に横ずれ断層が存在して、今回はそれが動いた結果ということです。もしこれが、深さ10kmの正断層もしくは逆断層による地震だったら、大津波警報が出てもおかしくないレベルの津波が発生したかもしれません。


【忘れてはならないこと】
注意すべきは、今回震源域周辺で発生する地震のすべてが横ずれ断層によるものとは限らない、ということです。

今回の地震規模は非常に大きかったため、周辺の他の震源域に影響を与えていないとは限りませんし、すぐ近くに他のタイプの断層があるかもしれません。

さらに、今回はたまたま陸地から遠い海底で、メカニズム的に津波もごく小さかったのですが、このような規模の地震がいつどこで起きてもおかしくないという現実を、改めて突きつけられた、ということでもあります。被害は事実上ありませんでしたが、今回は間違いなく“大地震”だったのです。

このような巨大エネルギーが溜まった断層が、どこかの陸地の直下や浅い海底にもし眠っていたら、いや、どこかに必ず眠っているはずなのです。

そして、日本列島は東日本大震災以降、巨大な地殻変動は未だ収束していませんし、震災以前よりはるかに地震発生回数が多い状態が続いています。

いつかどこかで確実に起きる大地震が、平常時よりはるかに起きやすい状態が続いているということを、改めて良く考えて、しかるべき行動と備えをしてください。

起きてから嘆いても、後の祭りです。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


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