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2015年12月 3日 (木)

【ヲタ目線地震教室24】震源までの距離を一瞬ではじき出す(#1094)

今回は、観測点から震源までの大まかな距離を計る方法です。


【地震を感じたらまずやるべきこと】
それは言うまでもなく、安全の確保です。それが必要無い程度の揺れだった場合にのみ、震源推定をやってみましょう。

あなたは、P波のガタガタ、ビリビリという揺れを感じて、「あ、地震だ」と気付きました。

余談ながら、そういう時、屋内ならば思わず天井を見上げてしまいませんか?それはある意味で、本能的な行動。潜在的には、誰でも”地震=押し潰される”という恐怖があるわけです。だから、つい上を見てしまう。

でも、実際の避難行動に移ると、真上方向への意識がおろそかになりがちなのも事実。しかし、あなたを押し潰すかもしれない危険は、常に真上から落ちて来るのです。避難行動に移ってからも、真上の危険を確認し続けるように、普段からして意識しておいてください。


さておき、P波の縦揺れを感じた瞬間に、震源推定のために始めることがあります。それは、カウントアップ。秒数のカウントです。

揺れ始めからの秒数を数えて、S波のよこ揺れが始まるまでの時間を計るのです。

実際には、揺れを感じた瞬間にカウントを始めるのは難しいですから、管理人の方法は下記のような感じです。

・揺れを感じる
・地震かどうか判断する
・地震だと判断したら、揺れの大きさを判定する
・危険は小さいと判断したら、カウントアップを始める

ここまでで、管理人の場合は大体3秒くらいかかります。なので、この段階で4秒からカウントを始めるのです。1~2秒の誤差が出るのは致し方なしかと。

震源がごく近い場合には、この段階でもうS波のよこ揺れが始まっていますから、たて揺れの時間は大体何秒くらいだったか、後から思い出す感じです。

実例をご覧ください。


【こんな感じでやります】
去る9月12日の午前5時49分頃、東京湾直下の深さ57kmを震源とする(速報では深さ70km)マグニチュード5.2の地震が発生し、東京都調布市で震度5弱の他、広い範囲で震度4を観測しました。

管理人はこの時、西新宿のビルの4階にいまして、かなり大きなたて揺れを感じましたので、上記のようなカウントアップをしました。

そして地震発生の約25分後、地震情報を確認した後に、下画像のツイートをしました。
Tweet

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この時は、S波のよこ揺れが始まるまでに約8秒。震源までの距離が大体わかりました。そして、震度4とされたよこ揺れには、上下動の成分を大きめに感じたこともあり、震源はかなり近い場所だと、瞬間的に判断できたのです。

では、震源までの距離を算出した方法とは。


【八掛けしてみる】
まず、P波のたて揺れを感じてから、S波のよこ揺れが到達するまでの秒数を計りました。

次に、その秒数を八掛けにする、すなわち0.8を掛けます。そしてその数値を10倍すると、震源までの大まかな距離(km)が算出できるのです。

S波到達までの秒数をA、震源までの距離(km)をBとすると

B=A×0.8×10

となります。
  
上記の地震の場合、8秒に0.8を掛けると6.4、10倍すると64(km)となります。では、実際の距離は?


【ちょっと数学を】
この地震の場合、管理人がいた西新宿から東京湾の震央までの距離は、ほぼ30kmでした。64kmよりだいぶ短いですね。計算が間違えているのでしょうか。

いえ、そうではありません。30kmとは、あくまで震源直上の地表面である震央までの距離です。震源は、そこから真下に57km潜った場所です。

そこで、地下の震源から、観測点の地表までの距離を算出してみます。

直角三角形の二辺の長さが決まれば、残るもう一片の長さが決まるという『三平方の定理』(ああ懐かしいw)により、震源から観測点の距離が算出できます。

観測点と震央の水平距離が30km、そこから垂線を下ろし、57km潜った場所が震源です。これで、直角三角形の二辺の長さが決まりました。

これを『三平方の定理』の公式に当てはめると、震源と観測点を結ぶ斜辺の距離は、約64.4kmとなります。概算数値の64kmとほぼ同じです。

秒数のカウントを感覚でやっていること、秒数に掛ける0.8という数字が大まかな値であること、震源とはピンポイントではなく、ある程度の広がりを持つ範囲であることを考えると、出来すぎともいえる数値です。

人間が感覚でカウントした秒数に、大まかな0.8を掛けてドンピシャの数値ということは、むしろ偶然に過ぎません。今回はたまたまこうなりましたが、本来これほどの精度を持つ方法ではありません。

この方法で判定するはピンポイントの震源ではなく「どこの震源域が動いたのか」ということであり、その程度の精度の方法ということです。

なお、この地震の場合は震源が観測点と近かったために、観測点から地表の震央までと、地下の震源までの距離の差が大きくなりました。

この差は、観測点と震源との距離が長くなるほど、小さくなります。観測点が東京ならば、例えば約200km離れた福島県沖の地震では、震源の深さによる距離の差を考慮する必要は全くありません。

この方法では、「大体あの辺り」ということがわかれば十分なのです。


【方角と距離に加えて】
ここまでで、観測点から震源の大まかな方角と、大体の距離がわかりました。しかし、方角は観測点から二方向のどちらかですから、これだけでは震源の推定はできません。

これらの情報に、さらにいくつかの情報を加味することで、震源の場所を絞り込んで行くことができます。

次回は、その方法です。

■数値を訂正しました■
当初、観測点から震央までの距離を40kmとしていましたが、30kmに訂正しました。震央の場所を誤って計測してしまった結果です。しかしその数値で計算しなおした結果、より震源までの実距離に近い数値が算出されましたので、この方法の有効性が改めて確かめられました。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。


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