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2015年12月17日 (木)

【ヲタ目線地震教室27】おまけ・震源推定の実例(#1100)

ふと気がついたら、通算1100号記事でございます。

震源推定シリーズは、一旦は前回で最後にしようと思ったのですが、どうにも実際のイメージがしずらいなと言う感じなので、もう1回やります。


【震災前の昔話です】
管理人は、かつて東京都内、台東区上野の近くに通う勤め人でした。

余談ながら、台東区や墨田区は、1923年(大正12年)の関東大震災で、広い範囲が火災で焼き尽くされました。

現代でも、一歩裏町に入れば当時とあまり変わらないような木造建物の密集地や細い路地があり、防災的にはかなりシビアな地域と言えます。

ですから、自然に「今ここで大地震が起きたらどう行動しよう」という意識が、普段から否応無しに高まっていました。

そしてその頃、震源推定で同僚を驚愕させたことがありましたので、その時どういう流れで推定したのかを、実際の事例として紹介したいと思います。


【ドンぴしゃでした】
その話は東日本大震災の何年も前で、関東南部でも震度3以上の地震など半年に1回あるかないかという、とても“平和”な時期でした。

もちろん、個人的に蓄積できていたその場所の地震データも、震災後に比べれば非常に少なかったのです。それでも管理人は、ある程度のパターンは把握できていました。地震ヲタですから。

その地震は、茨城県県南部の千葉県境寄りが震源で、震源深さ70km、マグニチュードは確か4.9だったでしょうか。台東区上野辺りは、震度4の揺れとなりました。

その地震の震源などを、我ながら出来すぎというくらい、ぴたりと当てられたのです。


【人間緊急地震速報発表】
それは、ブルブルという感じのたて揺れから始まりました。管理人は8階建てビルの5階にいましたが、ビル全体が震えるような感じ。

満載のダンプカーが走るそばで感じるような、かなり鋭い感じの、管理人流の表現では「エッジが立った」たて揺れです。それまで滅多に感じたことのない強さでしたから、すぐに「結構近い、そして大きめ」と判断しました。

そして、管理人は同フロアにいた人に声を掛けました。
「震度4くらい、来るぞ!」
横揺れが来る前に警報する、人間緊急地震速報でしたw

もちろん、秒数カウントを始めています。そして約6秒後に、ビルがミシっとしなる様な、大きな横揺れが来ました。まさに震度4レベル。

こんな風に、管理人は緊急地震速報が無い時代にそれをやっていたのですから、そりゃ変人扱いされますってw


【推定開始】
P波とS波の時間差が約6秒だったので、0.8をかけて10倍して、震源までの距離は大体48kmくらい。

管理人は、その時点で震源を茨城県南部、埼玉県南部、東京湾付近に絞り込んでいました。過去多かった(とは言っても当時は年数回)パターンから、そう判断しました。

そして横揺れです。まあ避難の必要なしという感じなので、揺れ方に集中します。

まず最初の大きな揺れの振幅がかなり大きめ。これは結構深い震源だなと。10kmくらいの浅い震源ならば、もっと細かくて速い揺れになるはず。

揺れの方向は、東西に近い方向が強いなと。ならば、やはり茨城南部か、東京湾付近か。しかしP波S波の時間差から、そこは近すぎる。

ならば茨城南部かと思い、さらに揺れに集中します。ゆさゆさと振幅が大きめながら、これも管理人の表現ですが「芯のある」揺れです。わかりやすく言うと、揺れの速度が早めで、振り回されるような感じがする揺れです。

ずっと遠い地震ならば、もっと「ふわふわとした」感じになるはずですし、P波S波の時間差からも、それほど遠くありません。距離的にも揺れ方からも、茨城県南部の可能性が高くなってきました。

揺れはそのまま徐々に減衰し、1分程度で感じなくなりました。でも、最後の方でかなり細かい揺れがしつこく残っていたのが、管理人は気になっていたのですす。


【審判の時w】
揺れが収まると、毎度ながら「いまのどこ?」という質問が飛んできます。別に格好つけるつもりは無いのですが、やはりここは地震ヲタとしてビシっと決めたい。

まず震源域。茨城県南部、それも千葉県境に近い(推定距離と揺れ方から判断)

マグニチュードは5前後(推定距離と揺れの大きさの経験則から判断)

そして震源深さは50km・・・と一度は言ったものの、揺れの「エッジ」がそれほど立っていないと感じたこと、最後の方に結構しつこく揺れが残っていたことから、いやもっと深い、70kmだなと訂正したのです。

震源が遠いか深いかで、揺れは振動周期が長くなって「エッジ」が弱くなり、揺れる時間が長くなる傾向があるわけです。

今の地震は深めの地震だとはわかったものの、深さ50km程度では、もっと早めに収束するはず、あれだけ残っていたのなら、70kmはあったはずだと。

それを図にすると、下図のようになります。地図は、関東南部で地震が多い場所とそのタイプ、青い円は上野から40kmの範囲、グレーの部分は、上野からほぼ南北方向を示し、赤い×印が震源です。
1

実際の震源は上野から北北東方向で、震央までの距離は40km弱。算出された48kmよりは短いですが、震源が深さ70kmであることと、秒数カウントにかなり誤差が含まれることを考えれば、許容範囲と言えます。

このように、震源までの大まかな距離と方角、揺れ方に加え、その場所での過去データを勘案することで、かなり正確に震源推定ができる、という例でした。


この地震、気象庁発表によれば、マグニチュードが推定より0.1小さかった他はドンぴしゃということで、管理人はさらに地震変態の地位を確固たるものにしたのでしたw

特に、震源深さを言い直して当てたということが「なんでだ?」と不思議がられましたが、細かい情報と感覚の積み重ねからの判断だった、といわけです。


【イメージしていただけましたか?】
実際には、こんな感じで震源推定をやっているわけです。

現在はもう上野には通っておりませんが、東日本大震災後に関東でも地震が超多発したために、関東地方の地震情報は、感覚的なものも含めて膨大な量が蓄積できています。

ですから、震源推定の精度もより上がってはいるのですが、何しろこんなのは“ゲーム”に過ぎませんから、わからなくても全く問題はありません。

ただ、揺れを感じた瞬間に固まらず、それが自分にとって危険な地震かどうかという判断が素早くできるようになるための、ひとつのトレーニング方法というところでしょうか。


これで、震源推定に関するシリーズを終わります。さて、次は何をやろうかな。


■当記事は、カテゴリ【地震関連】です。

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