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2015年12月15日 (火)

【シリーズUDL28】衛生編11・2トップ体制で戦おう(#1099)

Myouban_3
ダイヤの原石?いえ違います今回の主役です


■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。被災生活の概念です。

今回は、UDLにおける身体の衛生維持に役立つアイテム、最後の4つめです。


【体臭予防に効果的】
4つめは、ミョウバンです。ミョウバンとは何かというと、いくつかの金属塩が結びついた複合塩の総称ということで、結局のところ良くわかりませんがw、天然でも産出される物質です。

ともかくも、我が国では古くから漬物の発色を良くしたり、野菜のアクを抜いたり、中華麺に添加する『かんすい』として利用されきた、安全な食品添加物です。

なんでも、ヨーロッパでは、古代ローマ時代から天然のミョウバンを消臭剤として使っていたとのことで、“世界最古のデオドラント剤”だそう。その効果は折り紙付きです。


【重曹で良くない?】
でも、このシリーズ記事で2番目に紹介した重曹と、効能がかぶりますね。重曹だけあれば十分じゃないかとも思えますが、ミョウバンを別に用意する意味もあるのです。

その最大の理由は、弱アルカリ性を示す重曹に対して、ミョウバンは水に溶かすと弱酸性になるということ。


アルカリ性の重曹は、油を溶かす効果で皮脂を取り除くのに加えて、本来は弱酸性である皮膚の酸性が強くなると出る臭いを中和して消してくれます。

一方、酸性のミョウバンは、細菌の繁殖を抑制することで、細菌が汗の成分を分解すると出る、イヤな臭いを抑えてくれます。

特に、アルカリ性であるアンモニア系の臭いを中和するので、汗くささを抑える効果が高いのです。

細菌の繁殖が抑えられれば、臭いだけでなくその他の皮膚トラブルも出にくくなりますから、風呂に入れないUDLの、強い味方というわけです。


重曹とミョウバン、このふたつを併用すれば、重曹で臭いの“原料”である汗や皮脂を取り除き、ミョウバンで臭いの“工場”である細菌の繁殖を抑えられます。さらに、酸性及びアルカリ性の臭いを中和して消すという、相互補完効果があるわけです。

また、アルカリ性の重曹を多用することで、本来は弱酸性の皮膚がアルカリ性に偏りすぎてトラブルを起こさないように、酸性のミョウバンで中和することができます。


【世界最古はダテじゃない】
ミョウバンの効果はそれだけではありません。

アルカリ性の臭いを中和して消すだけでなく、ミョウバンの金属分子が臭い物質の分子に作用して、臭い物質自体を分解する効果もあります。

さらに、発汗そのものを抑える、制汗作用もあるのです。そのメカニズムは良くわかっていませんが、とにかく汗の量を減らしてくれます。

その効果は、全身にミョウバン水を浴びると汗が出なくなりすぎて、体温調節に支障を来すことがあるほど。特に子供、お年寄り、病気の方、身体の弱い方が使う際には、細心の注意が必要です。

使い方については記事最後で詳しく触れますが、さすがに“世界最古のデオドラント剤”、実に優れモノです。

これが、スーパーや薬局などで、50グラム100円程度で入手できるのです。家の防災用備蓄に、一袋放り込んでおきましょう。

もちろん、平時から使っていればなお良し、ということで。


【ミョウバン水の作り方】
ミョウバンの市販品は、一般的には粉末です。結晶のままのものや焼ミョウバンと呼ばれるものは、すりばちなどで粉状にして使います。

UDLに限らず、例えば腋の下の汗や臭いを抑えたい場合は、粉末を直接腋の下に塗ってしまって大丈夫。でも、水に溶かした方が、何かと使いやすいでしょう。


■ミョウバン水(原液)の作り方■
水500cc当たり15グラム強(小さじ3杯強)のミョウバンを入れて、良く振って溶かす。濃度の目安は、ミョウバン1に対して水30。

溶けきらない場合は、そのまま1日ほど放置しておく。溶けて透明になったら完成。

ミョウバン水は、常温保存ならば長くても2週間程度を使用限度の目安にしましょう。ミョウバンはとても安価ですから、UDLでも水が使えるならば、こまめに作りましょう。


【ミョウバン水の使い方】
肌に使う際は、原液を水で6倍から10倍に薄めます。500ccの原液があれば、ミョウバン水を最低3リットル作れます。


次に、禁止事項。

・顔に使ってはいけない
危険な物質ではありませんし、粉を直接肌に塗っても大丈夫なくらいですが、顔は止めた方が良いそうです。その理由は調べても良くわかりませんでしたが、専門家からのアドバイスです。

・全身にかけたままにしない
前述の通り、ミョウバンには制汗作用がありますから、全身にかけてそのままにしておいたりすると、発汗を抑えすぎて、特に夏場には体温調節に支障を来すことがあります。

腋の下や股間など、汗と臭いを特に抑えたい場所にはたっぷり使い、その他の皮膚にはさらっとかけて、良くふき取っておきましょう。

特に子供、お年寄り、病気の方、身体の弱い方の場合は十分な注意を。


続いて、注意事項

・かぶれることもある
人によっては肌に合わず、かぶれなどの症状が出ることがあります。最初に、少量でパッチテストをしてから使いましょう。

ミョウバンの濃度を薄めると問題が出なくなることもありますので、心配な場合は試してみてください。

・口に入れない
ミョウバンは、特に毒性は無い食品添加物です。しかし、うがいには向いていません。うがいは重曹水で。


【2トップでUDLを戦い抜け】
インフラが止まるUDLでは、風呂に入れません。そして、なかなか清潔な下着や服が着られません。

でも、汗をかいたり汚れたりする仕事が、山ほどあります。

その中で身体をできるだけ清潔に保ち、臭いを抑え、皮膚トラブルを防ぎ、そしてなにより、気分的にさっぱりするために、衛生編では4つのアイテムを紹介しました。

中でも、身体全体の衛生のために、重曹とミョウバンという“2トップ”体制をお勧めします。

その効能もさることながら、とても安価で、平時から使えて、水に溶かすだけという手軽さなど、備えておくメリットは絶大です。


【衛生編の最後に】
このように、少しの知識と備えでものすごく楽ができるのに、巷の防災情報には、なぜこのような情報がほとんど無いのでしょうか。

インフラが1ヶ月とか止まることが想定されるのに、ウエットティッシュなどの備えを勧めるようなのばかりですよね。 そうでなければ、紙製下着や下着ライナーが役立ったとかいう、非常にわかりやすいトリビア的情報ばかりで。

それは、メディアに良く出る商業ベースの『防災の専門家』の大半が、まず衛生という概念を甘く見ていること(重視するための基本的知識も無い)、こういう安価なものを紹介しても儲からないこと、情報の受け手も、衛生対策情報をあまり欲していないことなど、理由はいろいろあります。

しかし、現実の災害現場からの声が確かにあり、それに応える情報が存在するのです。もう、『本当に役に立つこと』のセレクションを、自分の商売を優先する『防災の専門家』に任せるのは、止めにしませんか。

そんな手合いはこれからもメディアには登場し続けるでしょうが、我々は過度に単純化されてバイアスがかかり過ぎて『本当は役に立たない』情報を捨て、自ら『本当に役に立つこと』を知るために、能動的に調べてはいかがでしょうか。


つまるところ、災害だとかUDLだとかはどうでも良いのです。いつも使えるものが使えない過酷な環境で、いかに

『健康に、楽に過ごせるか』

そのための、ほんの少しの備えと手間が、天地の差を生むというだけのことです。

都市伝説ではありませんが、備えるか備えないかは、あなた次第です。そして、備えたあなたは、確実に“楽ができる”のです。


これで、衛生編を終わります。




■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。

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コメント

こんにちは。

重曹、クエン酸、ミョウバンは三種の神器ですよね
万能な感じが

重曹やクエン酸は食用と掃除用と揃えてますね
特別に買い揃えるのではなく生活に溶け込んでいるものをなるべく利用してコストを抑えていきたいもんです

>whokiさん

さすがの品揃えですね!こんなに安くて使えるもの、防災分野ではほとんど無視ですもんね。ここにも'男目線'に偏り過ぎの弊害が。

クエン酸は、今回はオミットしました。とりあえず2種類あればいいかなと。また機会があれば。

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