プロドライバーの実際【2】(#1119)
旅客自動車の数だけ、様々なプロドライバーがいる(画像はイメージです)
今回は、旅客輸送ドライバーが持っている、第二種運転免許(以下、二種免許)の実際について考えます。
【プロの証ではあるけれど】
二種免許には、大型自動車(バス等)、中型自動車(マイクロバス等)、普通自動車(タクシー、代行車等)、大型特殊自動車(旅客用雪上車等)、牽引(連接バス等)の5種類があり、カッコ内の自動車等で有償旅客輸送をするドライバーが持っているものです。いわば、プロドライバーの証というわけです。
管理人は普通二種免許を持っていますが、実際に旅客輸送ドライバーをやった経験はありませんので、プロ見習いと言ったところでしょうか。でも、私用で運転も“二種持ち”のプライドがありますから、常に安全でスムースな走行を心がけています。
ちなみに、交通事故の経験は20年以上前の一種時代、無謀な割り込みをしてきた車と接触した物損事故1件のみで、自分が第一当事者(過失割合が大きい)となった事故は、一度もありません。
さておき、ほとんどの二種ドライバーは、プロとしての技術と意識を持っています。しかし、例えば東京都内のタクシーのように、混み合う場所を中心に1日250km以上走り、勤務も長時間に渡りますので、タクシーの事故発生率だけで比較すると、一般ドライバーの10倍近くに上るのです。
ただ、事故を起こすドライバーには、かなり偏りが見られるのも事実です。皆様も経験ありませんか?タクシーなどに乗って、「この運転手大丈夫か?」と思われたようなこと。実際、運転技術だけでなく、これでプロか?というようなドライバーも、確かにいます。
“二種持ち”なのに、何故なのでしょうか。
【免許はなんとかなる?】
一般的なイメージだと、二種免許を取るには、とても高いハードルがあるように思えるかもしれません。
でも、はっきり言いましょう。二種免許取得はそれほど難しくはありません。
もちろん、一種免許よりずっと高い技術と正確な操作が求められます。それでも、二種免許を取る人は最低でも3年の運転経験(免許期間)が無ければなりませんし、実際取得する人は、経験10年以上のベテランドライバーが大半なのです。
ですから、教習所では技術を覚えるというより、身体に染み着いた悪いクセを抜く方が、はるかに大変というくらいなものです。
それでも、該当する車両の運転経験がそれなりにある人ならば、きちんと練習すれば、誰でもとは言いませんが大抵の人は合格することができるでしょう。
もっとも、大人数を輸送する大型、大型特殊、牽引二種免許は、普通二種免許より技術的ハードルはずっと高くなります。少なくとも、バスなど大型車両の二種ドライバーは、運転操作の技術的にはかなりのレベルにあります。
【半分が落ちる?】
二種免許は難しいという“伝説”のひとつに、試験を受けても半分くらいは落ちる、というものがあります。実は、それも事実ではあります。
まず、大型以上の二種免許は、少し前まで運転免許試験場での検定、いわゆる『一発試験』でしか取れませんでした。これは、きちんと練習しても初回合格は難しく、練習していなければ何度やっても無理、というくらいの厳しさです。
なお現在は、大型二種免許は教習所を卒業することで実地検定免除になりましたが、大型特殊、牽引二種免許は、今でも『一発試験』のみです。
加えて、もうひとつの事実。普通二種免許も含めて、教習所卒業の人でも合格率は50%程度だと。教習所を卒業していれば、技能検定は免除されるのですが。
これはすなわち、多くの人が“学科で落ちる”からなのです。
二種の学科は、基本である一種のおさらいに加えて、旅客輸送のための法律や意識、技術を学びます。 例えば、現在は一種免許取得時に救命救急講習を3時間受講しますが、二種では倍の6時間。旅客が負傷した場合に、より高度な手当てをするための技術を学ぶわけです。
では、二種免許ならではの学科問題が難しいかというと、それほどではありません。実は、大抵の人が“一種問題でやられる”のです。教習所では、一種の内容はわかっているという前提で、短時間の詰め込みという感じですので、なおさらです。
さらに現実問題として、二種免許取得者は何年も前に一種免許に合格した、それなりの年齢になっている人が多いわけです。
そのため、学科試験をナメてかかって十分に復習しなかったり、自分が免許を取った時と法律や規定、解釈が変わっている部分を理解していなかったりすることによる落第者が、非常に多いのです。
10年以上前に免許を取った皆様、円形交差点(ランドアバウト)の走り方、わかりますか?w
この画像の手信号は、昔は全方向に対して赤信号と同じ、とされていましたが、現在は画像のように『警察官の正面に並行する交通に対しては黄信号と同じ』に変わっています。
そういうことも結構ありますので、しっかりと復習しておかないと、あっさりと落第してしまうわけです。
なお、学科試験の落第者は、普通二種免許受験者に偏っています。取得のハードルが大型などに比べて比較的低く、受験者も多いので、ナメてかかる人も多いというわけです。
【プロ意識の源とは】
ここまでお読みいただいて、いかがでしょうか。“二種持ち”でも、それほどのものじゃないとお感じになられたのでは。
その通りなのです。二種免許を持っているということは、旅客輸送に必要な最低限の技術と知識を学んだというだけのことで、残念ながらすべての二種ドライバーが高い技術とプロ意識を持っている、というわけではありませんし、仮に運転の腕が良くても、接客業としての意識や能力に欠ける人も散見されるのも現実です。
プロドライバーとしての技術と意識は、あくまで個々人それぞれの研鑽や、所属会社の教育によって育まれるものなのです。
そして現実には、あのスキーバス事故のような会社(健康診断もせず、技術的に不安でも乗せ、運行管理もずさん)や、ガラが悪いと言われるようなタクシー会社も、少なからず存在します。
次回へ続きます。
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