« プロドライバーの実際【2】(#1119) | トップページ | 【再掲載】小説・生き残れ。【7/22】(#1121) »

2016年1月27日 (水)

【シリーズUDL32】心理編4・情報の土台を得よ(#1120)

■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。被災生活の概念です。


被災直後にラジオを聴けても、その頃には広域の大まかな情報ばかり。それでも、心理的な意味はあるのでしょうか。

【土台が無いと組み立てられない】
もちろん、被災直後にはどんな情報でも欲しくなるものです。まず何が起きたかを把握できなければ、それからどうするかを考えることもできません。

でも、発災後しばらくの間はあまり詳細な情報は入りませんし、混乱によって錯綜することも普通です。ラジオを聴いていたとしても、放送されるのは下記のようなニュースの繰り返しだけになるでしょう。

以下、東京直下で巨大地震が起きた直後を想定した、ラジオニュース放送をシミュレーションしてみます。

『・・・先ほど、関東地方で非常に強い地震を感じました。このスタジオでも激しい揺れを感じ、棚が倒れたり、壁にヒビが入るなどの被害が出ています。現在は揺れを感じていませんが、この後も強い余震が繰り返し予想されます。どうか、落ち着いて行動してください。火の元を確かめてください。周りを見て、落ちて来るものに注意してください。家から避難される際は、電気による火災を防ぐために、ブレーカーを切ってください。

ただいま入りました情報です。気象庁によると、この地震の震源は東京湾北部、地震の規模はマグニチュード7.8、震源の深さは20kmと推定されています。なお、この地震によって、東京湾では若干の海面変動があるかもしれませんが、津波の心配はありません。この地震による、津波の心配はありません。しかし、念のため海岸や河口近くには近づかないでください。

この地震により、都内及び周辺部の交通機関は、軒並み運転を見合わせています。詳しい情報は、入り次第お伝えします。

消防庁によると、東京都墨田区、台東区、江東区などで多数の火災が発生しており、延焼しているということです。また、江東区などの埋立地では、地盤の液状化が発生している模様です・・・』

こんな放送、実際に聴きたくないですよね。この後に、凄まじい被害情報が飛び込んでくるのを予想させます。

これはあくまでシミュレーションですが、発災後5~10分くらいまでは、この程度の情報があれば良いくらいの感じでしょう。気象庁からの地震情報と津波情報は、発震から3分後くらいに発表されます。放送局などとの通信回線がダウンしていなければ、そのくらいで発表されるでしょう。

この放送を、あなたは海岸部でもなく、大火災危険地帯でも無い場所で聴きました。自分の周囲の情報は含まれていませんが、何が起きたか、という正しい情報が早い段階で得られることが、何より大切なのです。もちろん、近くに危険があることがわかれば、次の行動を選択しやすくなります。

この段階で、あなたが周囲を見て得られる被害状況とラジオ情報が統合されて、あなたの中で『情報の土台』ができます。自分にとって今何が危険か、これから迫って来る危険は何か、この場から移動すべきか留まるべきかなどの、基本的な情報です。

それが無いと、例えば誰かがパニックに陥って「津波が来る!」と叫んだだけで、あなたもパニックに陥って危険な行動をしてしまうかもしれませんし、避難するならば大まかにどの方向なのか、というような判断もできません。緊急時の避難行動は、あくまで“自分の意思で”決めなければなりません。

このように、特に発災害初期には大まかでも正しい情報を得て、あなたが得た周囲の情報と併せて考えることが、落ち着いて次の正しい行動に繋げるために絶対に必要なのです。そして、ラジオがあれば、引き続き正しい情報が得られるという、大きな安心感があります。

大災害に巻き込まれた直後で、しかも『情報飢餓』状態のあなたは、平時に思っている以上に簡単にパニックに陥ってしまうということを認識してください。それを防ぐための最良で最も確実な方法が、いつでもラジオ(可能ならばAMラジオ)情報を得られるようにしておくことなのです。


【利己的と言われようとも】
ここからは、実際の被災現場でのラジオの使い方を考えます。

まず、あなたが出先にいて、周りにも多くの人がいる場所だとしましょう。その場合、あなたはどちらのラジオを持っていたいですか?
Radioa

Radiob

ここではAM,FMという違いは抜きにして、管理人ならば、迷わず下のイヤホンタイプを持ち歩きます。実際には、管理人はFMラジオつき携帯音楽プレイヤーをEDCしており、もちろんイヤホン専用です。

なぜイヤホン専用かというと、まずスピーカー式より消費電力がずっと少ないということ。じゃあスピーカー付きをイヤホンで聴けばいいじゃないかとなりますが、今は大災害下、異常事態なのです。

もしあなたがスピーカー付きラジオを持っていて、周りは持っていないとしたら、何が起きますか?当然、音声をスピーカーに出してみんなに聴かせてくれということになる。当然、最大音量で。でも周囲は騒然としていて、大声で叫ぶ人もいる。単純に、小さなスピーカーではなかなか聴き取れませんし、電池の消耗も早い。

さらに、あなたがそこから移動しようとしても、ではラジオ情報はこれでおしまいと、周りが納得すると思いますか?皆、情報飢餓で興奮状態なのです。「もう少し聴かせてくれ!」だの「自分だけ良ければいいのか?」とか騒ぎ出すのは必至。

それどころか、「行くならラジオを置いていけ!」とか言い出したり、力づくで奪おうとする輩がいても決しておかしくない。

このような状況は、確実に起こります。既得権、この場合はラジオ情報を得られるという権利を得た群集は、群集心理もあって、確実にあなたに難題を突きつけてきます。好意でみんなに聴かせたのに、終わろうとした瞬間には、あなたは“情報が無い人々から情報入手手段を奪う悪人”という立場になってしまう。場合によっては、肉体的攻撃もあり得るでしょう。

災害被災者の声として、ラジオは常時聴いていないと不安だった、というものがあります。これは後述する避難所などでの対策にも関わってくるのですが、とにかく、一度聴かせてしまったらキリが無い、というのは確かなのです。

だから、最初から聴かせない。聴かせられないようなものにしておくべきです。もし周囲への情報の伝達が必要ならば、あなたの口からすれば良い。情報は、まずあなたが確実に得ることができなければ、EDCをしている意味もありません。他人より備えているあなたは、備えていない人よりアドバンテージを得る権利があるのです。


こういう考え方は、利己的で自分本位だと思われるでしょう。ある意味で、その通りです。「私はみんなに聴かせてあげる」というのも、自由です。

ただ、地域や会社などのコミュニティ内とかならともかく、雑多な人間が集まる大都市圏では、上記のようなことが起こってもまったくおかしくありません。その覚悟が無く、後で「こんなはずじゃなかった」という後悔をしたくなければ、まず自分が確実に情報を得て、行動の自由も確保しておける方法を採られることをお勧めします。

次回は、避難所の心理とラジオについてです。


■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。

« プロドライバーの実際【2】(#1119) | トップページ | 【再掲載】小説・生き残れ。【7/22】(#1121) »

シリーズUDL」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/543100/63128789

この記事へのトラックバック一覧です: 【シリーズUDL32】心理編4・情報の土台を得よ(#1120):

« プロドライバーの実際【2】(#1119) | トップページ | 【再掲載】小説・生き残れ。【7/22】(#1121) »