村井地震予知の“インチキ”を考える【4】(#1161)
このところ村井氏攻撃みたいな記事が続いていますが、ここで当ブログのスタンスを、改めて明らかにしておきます。
個人攻撃の意図は無い
そういうことです。別に、対象が誰であってもかまいません。
ただ、外部からの「手法に誤りがあるのではないか」という論理的指摘を事実上無視しつつ、強引な理屈を振りかざして、一般人の地震への不安をカネに変えたり、根拠の無い不安をまき散らす行為は、防災に関わる人間として容認しがたいということです。
また、当ブログが指摘しているのは『予知』が当たる当たらないという問題ではありません。村井氏が前提としている情報が正しく無いことが明らかなのに、それを一向に認めずに自説を主張し続けるという、科学者にあるまじき態度をも指摘しているのです。
それからもうひとつ。当ブログは、村井氏が主張する、地震が起きる前に地表面の変動が現れるという理論を否定するものでもありませんし、広範囲、中長期的には何らかの変動が起こるというということも認識しています。
当ブログが一連の記事で指摘するのは、電子基準点のノイズであることが明らかな、短期的で大規模なデータ変動を地殻の“異常変動”として採用し、それに基づく誤った『地震予知』を展開している、ということについてのみです。
それでは、本題に入りましょう。
2パターンを使い分ける
村井氏の『地震予知』理論もしくは観測方法が正しく無いのならば、全然当たらないはずです。では、なぜ的中連発と言われるのか。
それは、村井氏の『予知』にふたつのパターンが存在するからなのです。
ここで、村井氏大好きの有名週刊誌『週刊P』の記事から、少し引用させていただきましょう。昨年、2015年5月に掲載された、村井氏監修による『異常変動全国MAP』というものです。
地震の発生状況に詳しい方は、「ふーん」って思いますよねw
ちなみにこの時の記事には、東京近郊で『大きな変動が観測された』ので、最大警戒が必要とかあります。それから間もなく1年になりますけど。
さておき、上画像をご覧ください。村井氏が指摘する『地震危険ゾーン』です。表示されたエリア内の電子基準点で、上下方向の“異常変動”が観測されたということらしいです。
大きな丸で示された電子基準点では1週間に7センチ以上の変動を観測、小さな点は5センチ以上の変動が観測された、とされています。
岐阜から福島にかけての日本海側に、大きな丸が並んでいるエリアがありますが、数字を見ると、なんと7センチから最大11センチ以上も隆起や沈降が観測されていると。
それは決して地震などに伴ってではなく、静かに地面が上下しているということで、しかもごく短期間に“元に戻って”いるわけです。
それだけでも、「それはノイズだ」と誰もが考えますし、何より電子基準点の運用主体である、国土交通省国土地理院がそう明言しています。でも、村井氏は、それがメシのタネということです。
そこでもう一点注目。この記事は2015年5月のゴールデンウィークに掲載されたもので、観測データは2014年10月5日から2015年3月28日までのもの明記されています。
そういう目で、大きな丸の列をご覧ください。なにか共通点が見えて来ませんか?
これがパターンその1
おわかりいただけますでしょうか?大きな丸が並んでいる場所は、すべて豪雪地帯です。
さらに、小さな点の場所も、ほぼすべてが降雪地帯なのです。
電子基準点の観測データに、大きな誤差が出る理由の筆頭とも言えるのが降雪や積雪であり、これは国土地理院が認めていることです。
いや、認めるというほどのものでもありません。車メーカーが「この車の性能スペックはこうですよ」とリリースするのと同じように、電子基準点を設置した側がその性能を公表しているだけのこと。
もちろん雪だけではなく、厚い雲や強い雨など気象条件の影響も受けます。
だからこそ、国土地理院は「生データには多くの誤差が含まれるので、研究等には誤差を除去したデータを使ってください」と、以前から広報もしているのですが、それを自分の都合で無視する手合いもいる、ということなのです。
ちなみに村井氏、外部からの「GPSの誤差をどう扱っているのか?」という質問に対し、「ビルの反射や樹木の繁茂などによる誤差は除去している」と回答しており、降雪、積雪など気象条件による誤差は含まれていませんでした。
ビルや樹木が原因という、ある程度連続的に出る誤差は気にしていても、気象条件による一時的な異常データは「突発的な地表面変動」として採用しているということを、自ら認めているわけです。
というわけで、上図は電子基準点の“異常変動データ”を元にした村井式警戒マップというわけですが、“異常変動”が観測されていなくても警戒区域となっている場所も多いですし、何より、実際に地震が多発している東北から関東の太平洋岸が、全然警戒区域に入っていませんね。
そんな不思議の理由が、もうひとつのパターンなのです。
次回に続きます。
おっと忘れた。約1年前の村井式警戒マップ、その後今までに、警戒区域内で震度5クラス以上が起きましたか?
■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。
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初めまして
伊牟田勝美と申します。
私も、有料の偽地震予知の蔓延に警戒感を持っております。
有料の地震予知情報を流すJESEAがドコモと提携したことで、地震予知だけでなく、防災の観点からも大きな問題があると感じております。
自ブログでは、本来のブログテーマを逸脱して、JESEAの非難を行っています。
よろしくお願いします。
投稿: 伊牟田勝美 | 2016年3月25日 (金) 23時03分
>伊牟田勝美様
コメントありがとうございます。
これは本当にひどい話ですね。こんなインチキが堂々とまかり通りつつあるのを、なんとか阻止したいものです。
私は科学者ではなく、物理学的なことは理解し切れませんませんが、文系人間として社会学的アプローチによって、村井氏の理屈を否定して行きます。
コメント通知メールの方に、貴殿のブログURLがありまたので拝見しましたが、是非多くの方にお読みいただきたい内容だと思いましたので、私のブログ上で紹介させていただいてよろしいでしょうか。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: てば | 2016年3月28日 (月) 11時46分
「インチキがまかり通りつつあるのを、なんとか阻止したいものです」
私も同じ気持ちです。
本物の地震予知であれば応援したいところですが、JESEAの地震予知は偽物としか思えない代物です。それが有料で配信されていて、しかも蔓延しつつあることを危惧しています。
「私のブログ上で紹介させていただいてよろしいでしょうか」
興味を持って頂いて嬉しく思っています。
どうぞ、ご自由に扱ってください。
納得がいかない部分は、批判していただいて構いません。
(むしろ、色々な考えを聞かせていただきたい)
今後とも、よろしくお願いします。
投稿: 伊牟田勝美 | 2016年3月28日 (月) 21時50分
>伊牟田勝美様
残念ながら、ほとんど偶然で“的中”したのを思い切り持ち上げられて、引っ込みがつかなくなっている感じはありますね。カネも入ったし。
まだ確立した方法が無い世界ですから、方法論を批判する必要は無いのですが、何しろ前提となるデータが無茶苦茶ですからね。問題外です。
それでは、ご好意に甘えまして、貴殿のブログをリンクした記事を上げさせていただきます。まだ全記事を拝見しておらず、文系の私には理解し難い部分もあるのですが、方向性としては同じ方向であると思っております。
記事にも書かれておられるように、何かが何かに影響を与えるという説を唱える際に、そのエネルギー量を無視した話が非常に多く、その時点でエセ科学なのですが。
貴ブログの記事をしっかり拝読し、意見などありましたら、またここでお伝えしたいと思います。
ご配慮いただき、ありがとうございます。
投稿: てば | 2016年3月29日 (火) 15時26分