村井地震予知の“インチキ”を考える【5】(#1162)
村井氏の『地震予知』理論は、電子基準点が「垂直方向に大きく動いた」時から半年くらいの間に、周辺地域で大規模地震が起こる」というものです。
なのに、下図の通り、電子基準点の動きがあまり無い地域(下図の関東地方、南海トラフ付近、南西諸島など)も、『地震警戒ゾーン』とされていますね。
その一方で、現実に地震が多発している、東北から関東の太平洋岸は『警戒ゾーン』ではありません。何故なのでしょうか。
これがパターンその2
電子基準点は、全国各地にほぼ平均的に設置されています。
なのに、西日本での『異常変動』はほとんど見られません。このデータは冬場をまたいだものなので、降雪地域と重ねてみると、とても興味深いのですけどね。
さておき、西日本には『異常変動』がごく少ないのに、広大な『警戒ゾーン』が。これが村井式の“パターンその2”です。
ちょっとおさらいしますと、“パターンその1”は、電子基準点のノイズによる異常データを実際の地殻変動であると強弁して、その変化が現れた地域で大規模地震が来る可能性が高いとしていること。
当然ながら、こちらはほとんど当たりません。ただ、『警戒ゾーン』がやたらと広くて期間も長いので、その中で起きた地震を“的中”と騒いで盛り上げていますw
そしてパターンその2は、もう電子基準点なんかオマケなんですね。
上図で『警戒ゾーン』とされている南海トラフ周辺は、前兆があろうが無かろうが、地震警戒地域の筆頭です。
南西諸島でも、東日本大震災後に実際に地震が急増していますし、火山噴火も起きている。誰が見ても地震警戒地域です。
北海道の南半分も、北海道で最も地震多発地帯の筆頭とも言える浦河沖から、日高山脈付近、そしてこちらも“地震の巣”である根室付近までが、しっかりと『警戒ゾーン』に入っています。
そんなメジャーな警戒地域を、さも自分の理論で感知したごとく、シレっと警戒ゾーンに加えているわけです。そこに電子基準点の『異常データ』が少ない理由など、知らぬ存ぜぬという感じで。
上図を見てください。『南海・東南海警戒ゾーン』、『南西諸島警戒ゾーン』、『北海道釧路・根室・十勝警戒ゾーン』の中に、対象期間中に『異常データ』を検知したとされる電子基準点は、ひとつも無いいか、ほとんど辺縁部にちょっとあるだけです。
しかも、『南海・東南海警戒ゾーン』の区域が、公式に発表されている南海トラフ地震の予想震源域よりかなり内陸寄りで、淡路島や瀬戸内海まで含まれています。
上図は、四国新聞の記事からお借りしました。ご覧のように、南海トラフ地震の震源域とされているのは、瀬戸内海の南岸より内陸側までなのです。
これは、山陰地方(そこも降雪地帯です)にたったふたつだけ『異常データ』が出た電子基準点があることと、無理矢理整合性を持たせた結果でしょうね。
さらにうがって見れば、人口集中地域を危険指定することで、メルマガ登録数に数千から万単位の違いが出るでしょうし。まあ、それが最大の理由かなw
こんな技もある
村井氏は、陸上にある電子基準点の変動(とされる異常データ)から、地震を『予知』しています。
ならば、海底で起きる地震は『予知』できないはずですが、南西諸島や、別の時には小笠原諸島周辺での地震も警戒せよとか言っています。
その根拠は、島に設置された電子基準点の『異常データ』。たった1~2ヶ所の『異常データ』で、その周辺の広大な海底を警戒ゾーンとしてしまう。
考えてみてください。島とは、海底からそびえる高い山であり、海上に出ているのは、その山頂です。
すなわち村井氏の理屈は、例えば東海や関東など、いやもっと広い範囲で起きる地震の前兆が、富士山頂で数センチの動きとなって現れるというのと一緒なんですね。
測量学の権威かもしれませんが、地球物理学完全無視の理屈なんですよ。
そうまでしても、元来地震が多発している地域を警戒指定しておけば、よりたくさん“的中”を宣言できて、宣伝効果抜群ということは、間違いありません。
もう何でもアリだw
当記事冒頭で挙げたもうひとつの疑問、実際に地震が多発している、東北から関東の太平洋岸が、なぜ『警戒ゾーン』に指定されていないのか、ということについて。
東北地方の『警戒ゾーン』は、電子基準点の『異常変動』が集中している、奥羽山脈を中心とした内陸部になっています。 言うまでもなく、奥羽山脈周辺、特に日本海側の電子基準点は豪雪地帯です。
太平洋及び日本海沿岸部の電子基準点で、ほとんど『異常変動』が観測されていないために、村井氏独自の「奥羽山脈」という地域が出てきています。
しかし、奥羽山脈直下での地震はごく僅かに過ぎませんし、過去にも、被害が出るような大規模地震は、ほぼ発生していません。
上図は、東北大学発表の震源図からお借りした、本日3月28日から過去1ヶ月の震源図(無感地震を含む)です。ご覧のように、奥羽山脈地域は地震の発生自体が非常に少ないのです。
上図からもわかる通り、東北から関東の太平洋岸を『警戒ゾーン』に指定できたら、最も効率良く“的中”を量産できます。
この地域は、毎日のように有感地震が発生し、数ヶ月に1回は震度4~5弱クラスが起きていますから、村井氏のように半年タームで危険と言っていれば、中規模以上の地震を、ほぼ確実に“的中”させられるのです。
管理人が過去記事でやった『予知ゲーム』でも、東北から関東の太平洋岸を対象に、たった1週間で的中率約83%という、自分でもビックリの結果を叩き出しました。すなわち、”誰でも当てられる”震源域なのです。下記は検証記事へのリンクです。
ちなみに、管理人の『予知』で起きた地震は、最大で震度4クラスを『予知』しながら、すべて震度1~2クラスでした。でも、3月22日には、管理人の『予知』エリアのひとつでもある茨城県北部で震度4が発生しました。
もし、管理人が村井氏と同じように、『予知』期間を半年、いや2ヶ月間に設定していたら、見事に震度4的中を宣言できたのですがw
さておき、東北から関東の太平洋沿岸は、東日本大震災被災地です。他のどこより注目度が高く、どこよりも地震情報に過敏な地域でもある。しかし、その地域の電子基準点では、ほとんど『異常変動』は観測されていない。
そんな状態で、ろくに根拠もなく『警戒ゾーン』とすることははばかられた、ということでしょうか。誰でも当てられる多発地域で、“的中”大会をやれば、さらに批判が殺到するし、“的中”させた根拠も説明できない。
逆に、もし前兆現象が全く検知されないままに大規模地震が起きてしまったら、信頼度はガタ落ちになる。そしてそれは、震度5弱レベルならば確実に起きるし、さらなる大規模地震が起きる可能性が、未だ最も高い地域のひとつでもある。
だから、“障らぬ神に祟り無し”ということだったのかなと。
ちょっと前までは。
次回に続きます。次回は、結構面白いと思います。3月29日、午前6時アップ予定です(珍しく告知)
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