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2016年3月

2016年3月30日 (水)

村井地震予知の“インチキ”を考える【7】(#1164)

当シリーズの前回記事までに、村井氏の『地震予知』手法にいかに問題があり、いかに粉飾されたものなのかを述べて来ました。

次は、『的中連発』と一部で言われるのが本当なのかを、検証して行きたいと思います。


メディアのアオりの結果


村井氏の『地震予知』を有名にしたのは、やはりメディアの力です。

その中で、紙媒体としては最も“村井推し”と言える、有名週刊誌『週刊P』の記事から、それを探ってみたいと思います。

なお、『週刊P』から引用させていただく記事は太字表記とし、一部要約しています。

■2013年5月時点での村井氏コメント■
現時点で注意が必要なのは函館周辺。函館の(電子)基準点は、少し離れたところの地震でも前兆現象が観測される。

2003年の十勝沖地震でも、函館基準点は動いていた。浦河沖で小地震も観測されているので、道南の広い地域で警戒が必要。

東北6県のうち、青森の基準点だけは他と動きが異なり、北海道と連動している。距離的にも函館と近い青森は、注意しておくべき。


そしてなにが起きたのか


このコメントに対し、記事では2014年7月8日、石狩地方南部、震源深さ約3km、M5.6、最大震度5弱の地震(下図参照)を“的中”というニュアンスで書いています。

下図は、気象庁の報道発表資料からお借りしたものです。
Ishikari

さらに2014年8月10日、青森県東方沖、震源深さ50km、M6.1、最大震度5弱の地震(下図参照)をも、“的中”という感じ。こちらも、気象庁の報道発表資料からお借りしました。
Aomori

上記ふたつの地震について、記事では『これ(=村井氏の情報に)対して、○○の地震が発生』という書き方であり、普通は“的中”ととられますよね。もちろん、村井氏も“的中”と言われることを受け容れていらっしゃる。


本当に“的中”?


さておき、まず注意していただきたいのは、村井氏の上記コメントは2013年5月です。しかも当時の最新情報ということでもなく、以前から継続的に警戒すべき場所として、道南や青森を挙げているものです。

しかし、上記ふたつの地震はコメント記事の翌年、2014年7月と8月であり、記事掲載時点からも1年以上、村井氏が警戒ゾーンとして設定してからは、もっと長い時間が経っています。

すなわち、大雑把に考えても1年半、もしかしたら2年以上も『警戒ゾーン』とされていた場所ということです。

なお、石狩地方南部の地震は、震源深さ3kmという「ごく浅い」断層が動いた地震、青森県東方沖の地震は、震源深さ50kmという、東日本大震災(東北地方太平洋地震)の余震として多発している「スラブ内地震」であり、両者は全く異なるメカニズムによるものです。

この例に限らず、村井氏の『予知』は、電子基準点の『異常変動』が出た場所の近くで地震が起きる場合は、それがどんな種類の地震だろうとそこの地盤がどうだろうと同じような地表面の変動が現れるという、大雑把極まりない理屈なのです。

せめて、電子基準点の『異常変動』が実際に起きているのならば、多少は説得力も生まれるのですけど。


そこで改めて、上の震源図をご覧ください。警戒すべき場所とされた函館、青森周辺と、実際の震央(図の×印)の水平面での位置関係において、震源深さも発震メカニズムも全く異なる地震の前兆が函館と青森の地表面に出た、しかも十勝沖海底まで連動もするという、地球物理学的にはあり得ない理由を、村井氏は説明していません。

まあ、地球物理学者からは非難轟々で敵対状態ですし、自分は『測量の専門家』だから専門外だと開き直られているようですが、いずれにしろ、全く説明のつかない現象が起きると主張されているわけです。

この例をまとめますと、警戒しろと言ってから少なくとも1年以上の時間が経ち、地図上は一見近いけれど、地盤構造が全く異なる場所で、発震メカニズムが全く異なる大きめの地震がふたつ連続した、しかも当時は震災の余震が、今よりはるかに多発していた時期でもある、

それを、あなたなら“的中”としますか?メディアは話題が欲しいから、怪しい話でも当然のように持ち上げますけど。

この記事手法は他の“的中”記事でも共通で、地面の下のことや地震のメカニズムは一切無視して、震央と水平距離が近ければ“的中”(しかし実際にはあまり近くないw)とする、実に安易な“素人騙し”の類です。


理屈はともかく、この例の場合は、「青森と道南辺りが危ないよ」と1年言っていれば、誰でも“的中”させられるレベルの話だということです。そしてなにより、道南と青森周辺は、もとより地震が多い場所なのです。震災から日が浅かった当時はなおさら。

そして忘れてならないのは、函館、青森が特に危険と言っていたのではなく、あくまで全国あちこち、それも非常に広範囲の『警戒ゾーン』のひとつに過ぎない、ということです。しかし、実際に地震が起きた後に“当たった”部分だけをピックアップすると、さも的確な『予知』をしていたような印象が残るという、ありがちな印象操作でもあります。

ですから、これが村井理論の正当性を証明することには全くなりませんし、決して“的中”とは言えないと言うことです。


まだまだやります


管理人としても、ひとつかふたつの例だけで“インチキ”だと断言するつもりはありません。

まだまだネタはありますよ。 次回へ続きます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月29日 (火)

村井地震予知の“インチキ”を考える【6】(#1163)

今回の本題に入る前に、前回記事で引用させていただいた『週刊P』掲載図の前年、2014年末に掲載された、2014年7月15日から12月6日までの期間に検知された『異常変動』の図表をご覧ください。

季節が変わると地震も変わる?w


Murai1

この図表の観測期間は、上記の通り夏から初冬までです。『異常データ』が観測された地点や数が、前回記事に掲載した、冬を挟んだ季節のものと全く異なることがわかります。地震の発生って、季節に影響されるんですかねw

前記事の掲載図では、豪雪・降雪地域に偏っていた『異常データ』観測点が、上図では全国的にかなり平均して散らばっています。しかも、冬場の『異常データ』が極端に少なかった西日本や、特に九州での観測が目立ちます。このことからも、冬場の『異常変動』が、降雪や積雪による影響である可能性が高いことがわかります。

一方、夏場をまたいだ上図の観測期間の場合は、各地での雨の影響が大きいものと考えられます。この年2014年(平成26年)の8月には、公式に『平成26年8月豪雨』と命名された豪雨が列島各地を襲い、各地で大きな被害が出ているのです。

詳しくはウィキペディア『平成26年8月豪雨』をご覧ください。

上図左上にある変動グラフでも、わざわざ『8月に多くが警戒ラインを超えた』と注釈してありますし、右下のグラフでも、7月から8月にかけての変動が極大化している、すなわちノイズの発生が増えているのがわかります。

これらのことから、各地の『異常データ』、すなわちノイズの原因は、激しい降雨や雷による空電現象などの気象条件によるものである可能性が、非常に大きいと言えます。しかし、村井氏はそれらの異常データが地表面の『異常変動』だとして採用した結果が、この図表というわけです。

もちろん、その後『警戒ゾーン』内での、震度5クラス以上の地震は起きていません。

他にも、この年の11月に発生して、村井式予知に誤った評判を与える結果になった『長野県神城断層地震』など、いろいろツッコミどころはあるのですが、とりあえず今回の本題に入りましょう。

でもその前に、とりあえずこれだけははっきりさせておきましょうか。一部で言われるように、2014年11月22日の『長野県神城断層地震』(最大震度6弱)を村井氏が『予知』したという事実はありません。結果的に『予知』したように見えるだけです。それも、後で詳しく触れます。


東北-関東の太平洋岸に危険は無い?


さて本題です。村井氏による『地震警戒ゾーン』には、実際に毎日のように地震が多発している、東北から関東の太平洋岸が含まれていません。

その理由のひとつは、前回記事で書いた通り、この地域の電子基準点データに大きな変動が見られず、村井理論においては、この地域を『警戒ゾーン』にする根拠が薄弱である、ということでしょう。実際にたくさん起きているのにね。

この地域の『異常変動』が少ないことは、前回と今回記事に掲載の図表をご覧いただければ、一目瞭然です。その状態で、こんなに注目度が高い地域を下手に『警戒ゾーン』に指定したら、タダでさえ多い批判や指摘が激増するのは自明。メルマガ読者も減るかもしれないし。

まあ、どんな理由にしろ、東日本大震災による巨大地殻変動の真っ只中にあり、毎日のように地震が起きていて、数ヶ月に一度以上は震度4~5クラスが起きている地域が『警戒ゾーン』では無いというのが、村井理論の“凄さ”のひとつですね。


あの言葉が聞こえてくる


村井氏の『地震予知』手法を表現するのに、あの言葉が良く聞かれます。

『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』

理論がどうだろうと、単純に地震が多い場所をこれだけ広く指定して、それも半年くらいのタームで警戒せよと言っておけば、今の日本列島は誰でもそれなりの“的中率”が出せるくらい、地震がたくさん起きているのです。

それは、過去記事で管理人自身も証明した通り、何も難しいことではありません。それでも、村井氏の『予知』による、厳密な意味での“的中率”は、たった15%くらいなんですよ。ほとんど当てずっぽうと同じレベルの確率です。

それは、誤った理論によって、滅多に地震が起きそうも無いエリアまでが、『警戒ゾーン』に広く指定されているからというのも、大きな理由ですね。そう言った意味では、今の日本列島でもっとも地震が多発している、東北-関東の太平洋岸を、ぜひとも『警戒ゾーン』に指定したいところ。

それだけで、”的中率”は1割から2割は簡単に上げられます。でもそれをしないは、科学者としてのせめてもの矜持、だと思っていたのですが・・・


ついに撃っちゃったw


村井氏は、今年3月6日にテレビ出演されました。これも、村井氏大好きで鳴らすw『Mr.サ○デー』(フジ○レビ系列)です。

管理人、直接観てはいないのですが、各方面からの話とかyoutubeとかで、断片的ながら情報は得ました。まあ相変わらず村井氏礼賛がすごい番組ですね。でも、今回はほんの少しだけ他の可能性も示唆するような発言がMCからあったりして、局にも批判意見が相当集まっていることを伺わせますね。

さておき、ここでは細かいことは一切無視しましょう。番組で放映された、村井氏による一枚の図表がすべてです。さあ、ご覧ください。

Muraitv_2

うあああああ!いつの間にか東北-関東の太平洋岸が『警戒ゾーン』に入ってる!!!

電子基準点の『異常データ』がものすごく少ない、しかも、今までに村井氏が大規模地震の根拠とする7センチ以上の大変動(=ノイズ)がほとんど観測されていない地域が、いつの間にか『警戒ゾーン』になっているじゃありませんか!

しかも、あれだけ長いこと拘って来た『岐阜-北信越』は消滅し、その他にも北海道南部、九州南部、南西諸島など、大規模地震が“とりあえず起きそうも無い場所”がみんな無かったことになってる!

と、思っていたのですが、番組をご覧になった方からのご指摘で、『岐阜-北信越』は上の画像の後、なんと赤色で表示されたとのこと。そのエリアへの拘りもさることながら、これで日本列島の大部分が『警戒ゾーン』になるという物凄さですw


なにしろ、東北-関東の太平洋岸を加えてしまったということは、ついに日本最大の地震多発地帯の“魅力”に負けたようですね。禁断の“下手な鉄砲”を、一番獲物が多い場所に向けてぶっ放したということですよ。そこには理論も矜持も、全く見当たりません。

それでも関東が残っているのは、なんと言ってもメルマガ最大の“市場”ですし。

これならば、“的中率”は急上昇しますよ。ある意味で、見事な『選択と集中』です。今までの“的中連発”のカラクリをあちこちで暴露されて、いよいよ背に腹は変えられなくなってきた、ということでしょうかね。

さあ、そんな御仁を『地震予知の権威』、『優秀な科学者』、『地震大国の救世主』とか呼んで、まだ崇め奉るのですか?役に立たない情報に、おカネを払うのですか?こんなのと絡んで、企業イメージを悪くするのですか?

村井氏を信奉する皆様、よーく考えてみてください。

このシリーズ、まだまだ続きますよ。

■当記事は、カテゴリ『日記・コラム』です。

2016年3月28日 (月)

村井地震予知の“インチキ”を考える【5】(#1162)

村井氏の『地震予知』理論は、電子基準点が「垂直方向に大きく動いた」時から半年くらいの間に、周辺地域で大規模地震が起こる」というものです。

なのに、下図の通り、電子基準点の動きがあまり無い地域(下図の関東地方、南海トラフ付近、南西諸島など)も、『地震警戒ゾーン』とされていますね。

その一方で、現実に地震が多発している、東北から関東の太平洋岸は『警戒ゾーン』ではありません。何故なのでしょうか。
Muraimap


これがパターンその2


電子基準点は、全国各地にほぼ平均的に設置されています。

なのに、西日本での『異常変動』はほとんど見られません。このデータは冬場をまたいだものなので、降雪地域と重ねてみると、とても興味深いのですけどね。

さておき、西日本には『異常変動』がごく少ないのに、広大な『警戒ゾーン』が。これが村井式の“パターンその2”です。

ちょっとおさらいしますと、“パターンその1”は、電子基準点のノイズによる異常データを実際の地殻変動であると強弁して、その変化が現れた地域で大規模地震が来る可能性が高いとしていること。

当然ながら、こちらはほとんど当たりません。ただ、『警戒ゾーン』がやたらと広くて期間も長いので、その中で起きた地震を“的中”と騒いで盛り上げていますw


そしてパターンその2は、もう電子基準点なんかオマケなんですね。

上図で『警戒ゾーン』とされている南海トラフ周辺は、前兆があろうが無かろうが、地震警戒地域の筆頭です。

南西諸島でも、東日本大震災後に実際に地震が急増していますし、火山噴火も起きている。誰が見ても地震警戒地域です。

北海道の南半分も、北海道で最も地震多発地帯の筆頭とも言える浦河沖から、日高山脈付近、そしてこちらも“地震の巣”である根室付近までが、しっかりと『警戒ゾーン』に入っています。

そんなメジャーな警戒地域を、さも自分の理論で感知したごとく、シレっと警戒ゾーンに加えているわけです。そこに電子基準点の『異常データ』が少ない理由など、知らぬ存ぜぬという感じで。

上図を見てください。『南海・東南海警戒ゾーン』、『南西諸島警戒ゾーン』、『北海道釧路・根室・十勝警戒ゾーン』の中に、対象期間中に『異常データ』を検知したとされる電子基準点は、ひとつも無いいか、ほとんど辺縁部にちょっとあるだけです。

しかも、『南海・東南海警戒ゾーン』の区域が、公式に発表されている南海トラフ地震の予想震源域よりかなり内陸寄りで、淡路島や瀬戸内海まで含まれています。

Nankaitraf
上図は、四国新聞の記事からお借りしました。ご覧のように、南海トラフ地震の震源域とされているのは、瀬戸内海の南岸より内陸側までなのです。

これは、山陰地方(そこも降雪地帯です)にたったふたつだけ『異常データ』が出た電子基準点があることと、無理矢理整合性を持たせた結果でしょうね。

さらにうがって見れば、人口集中地域を危険指定することで、メルマガ登録数に数千から万単位の違いが出るでしょうし。まあ、それが最大の理由かなw


こんな技もある


村井氏は、陸上にある電子基準点の変動(とされる異常データ)から、地震を『予知』しています。

ならば、海底で起きる地震は『予知』できないはずですが、南西諸島や、別の時には小笠原諸島周辺での地震も警戒せよとか言っています。

その根拠は、島に設置された電子基準点の『異常データ』。たった1~2ヶ所の『異常データ』で、その周辺の広大な海底を警戒ゾーンとしてしまう。

考えてみてください。島とは、海底からそびえる高い山であり、海上に出ているのは、その山頂です。

すなわち村井氏の理屈は、例えば東海や関東など、いやもっと広い範囲で起きる地震の前兆が、富士山頂で数センチの動きとなって現れるというのと一緒なんですね。

測量学の権威かもしれませんが、地球物理学完全無視の理屈なんですよ。

そうまでしても、元来地震が多発している地域を警戒指定しておけば、よりたくさん“的中”を宣言できて、宣伝効果抜群ということは、間違いありません。


もう何でもアリだw


当記事冒頭で挙げたもうひとつの疑問、実際に地震が多発している、東北から関東の太平洋岸が、なぜ『警戒ゾーン』に指定されていないのか、ということについて。

東北地方の『警戒ゾーン』は、電子基準点の『異常変動』が集中している、奥羽山脈を中心とした内陸部になっています。 言うまでもなく、奥羽山脈周辺、特に日本海側の電子基準点は豪雪地帯です。

太平洋及び日本海沿岸部の電子基準点で、ほとんど『異常変動』が観測されていないために、村井氏独自の「奥羽山脈」という地域が出てきています。

しかし、奥羽山脈直下での地震はごく僅かに過ぎませんし、過去にも、被害が出るような大規模地震は、ほぼ発生していません。

Tohokuuniv
上図は、東北大学発表の震源図からお借りした、本日3月28日から過去1ヶ月の震源図(無感地震を含む)です。ご覧のように、奥羽山脈地域は地震の発生自体が非常に少ないのです。

上図からもわかる通り、東北から関東の太平洋岸を『警戒ゾーン』に指定できたら、最も効率良く“的中”を量産できます。

この地域は、毎日のように有感地震が発生し、数ヶ月に1回は震度4~5弱クラスが起きていますから、村井氏のように半年タームで危険と言っていれば、中規模以上の地震を、ほぼ確実に“的中”させられるのです。

管理人が過去記事でやった『予知ゲーム』でも、東北から関東の太平洋岸を対象に、たった1週間で的中率約83%という、自分でもビックリの結果を叩き出しました。すなわち、”誰でも当てられる”震源域なのです。下記は検証記事へのリンクです。

管理人、異常な高確率予知に成功?(#1142)

ちなみに、管理人の『予知』で起きた地震は、最大で震度4クラスを『予知』しながら、すべて震度1~2クラスでした。でも、3月22日には、管理人の『予知』エリアのひとつでもある茨城県北部で震度4が発生しました。

もし、管理人が村井氏と同じように、『予知』期間を半年、いや2ヶ月間に設定していたら、見事に震度4的中を宣言できたのですがw


さておき、東北から関東の太平洋沿岸は、東日本大震災被災地です。他のどこより注目度が高く、どこよりも地震情報に過敏な地域でもある。しかし、その地域の電子基準点では、ほとんど『異常変動』は観測されていない。

そんな状態で、ろくに根拠もなく『警戒ゾーン』とすることははばかられた、ということでしょうか。誰でも当てられる多発地域で、“的中”大会をやれば、さらに批判が殺到するし、“的中”させた根拠も説明できない。

逆に、もし前兆現象が全く検知されないままに大規模地震が起きてしまったら、信頼度はガタ落ちになる。そしてそれは、震度5弱レベルならば確実に起きるし、さらなる大規模地震が起きる可能性が、未だ最も高い地域のひとつでもある。

だから、“障らぬ神に祟り無し”ということだったのかなと。

ちょっと前までは。

次回に続きます。次回は、結構面白いと思います。3月29日、午前6時アップ予定です(珍しく告知)


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2016年3月25日 (金)

村井地震予知の“インチキ”を考える【4】(#1161)

このところ村井氏攻撃みたいな記事が続いていますが、ここで当ブログのスタンスを、改めて明らかにしておきます。


個人攻撃の意図は無い


そういうことです。別に、対象が誰であってもかまいません。

ただ、外部からの「手法に誤りがあるのではないか」という論理的指摘を事実上無視しつつ、強引な理屈を振りかざして、一般人の地震への不安をカネに変えたり、根拠の無い不安をまき散らす行為は、防災に関わる人間として容認しがたいということです。

また、当ブログが指摘しているのは『予知』が当たる当たらないという問題ではありません。村井氏が前提としている情報が正しく無いことが明らかなのに、それを一向に認めずに自説を主張し続けるという、科学者にあるまじき態度をも指摘しているのです。

それからもうひとつ。当ブログは、村井氏が主張する、地震が起きる前に地表面の変動が現れるという理論を否定するものでもありませんし、広範囲、中長期的には何らかの変動が起こるというということも認識しています。

当ブログが一連の記事で指摘するのは、電子基準点のノイズであることが明らかな、短期的で大規模なデータ変動を地殻の“異常変動”として採用し、それに基づく誤った『地震予知』を展開している、ということについてのみです。

それでは、本題に入りましょう。


2パターンを使い分ける


村井氏の『地震予知』理論もしくは観測方法が正しく無いのならば、全然当たらないはずです。では、なぜ的中連発と言われるのか。

それは、村井氏の『予知』にふたつのパターンが存在するからなのです。

ここで、村井氏大好きの有名週刊誌『週刊P』の記事から、少し引用させていただきましょう。昨年、2015年5月に掲載された、村井氏監修による『異常変動全国MAP』というものです。

地震の発生状況に詳しい方は、「ふーん」って思いますよねw

Muraimap

ちなみにこの時の記事には、東京近郊で『大きな変動が観測された』ので、最大警戒が必要とかあります。それから間もなく1年になりますけど。

さておき、上画像をご覧ください。村井氏が指摘する『地震危険ゾーン』です。表示されたエリア内の電子基準点で、上下方向の“異常変動”が観測されたということらしいです。

大きな丸で示された電子基準点では1週間に7センチ以上の変動を観測、小さな点は5センチ以上の変動が観測された、とされています。

岐阜から福島にかけての日本海側に、大きな丸が並んでいるエリアがありますが、数字を見ると、なんと7センチから最大11センチ以上も隆起や沈降が観測されていると。

それは決して地震などに伴ってではなく、静かに地面が上下しているということで、しかもごく短期間に“元に戻って”いるわけです。

それだけでも、「それはノイズだ」と誰もが考えますし、何より電子基準点の運用主体である、国土交通省国土地理院がそう明言しています。でも、村井氏は、それがメシのタネということです。


そこでもう一点注目。この記事は2015年5月のゴールデンウィークに掲載されたもので、観測データは2014年10月5日から2015年3月28日までのもの明記されています。

そういう目で、大きな丸の列をご覧ください。なにか共通点が見えて来ませんか?


これがパターンその1


おわかりいただけますでしょうか?大きな丸が並んでいる場所は、すべて豪雪地帯です。

さらに、小さな点の場所も、ほぼすべてが降雪地帯なのです。

電子基準点の観測データに、大きな誤差が出る理由の筆頭とも言えるのが降雪や積雪であり、これは国土地理院が認めていることです。

いや、認めるというほどのものでもありません。車メーカーが「この車の性能スペックはこうですよ」とリリースするのと同じように、電子基準点を設置した側がその性能を公表しているだけのこと。

もちろん雪だけではなく、厚い雲や強い雨など気象条件の影響も受けます。

だからこそ、国土地理院は「生データには多くの誤差が含まれるので、研究等には誤差を除去したデータを使ってください」と、以前から広報もしているのですが、それを自分の都合で無視する手合いもいる、ということなのです。

ちなみに村井氏、外部からの「GPSの誤差をどう扱っているのか?」という質問に対し、「ビルの反射や樹木の繁茂などによる誤差は除去している」と回答しており、降雪、積雪など気象条件による誤差は含まれていませんでした。

ビルや樹木が原因という、ある程度連続的に出る誤差は気にしていても、気象条件による一時的な異常データは「突発的な地表面変動」として採用しているということを、自ら認めているわけです。

というわけで、上図は電子基準点の“異常変動データ”を元にした村井式警戒マップというわけですが、“異常変動”が観測されていなくても警戒区域となっている場所も多いですし、何より、実際に地震が多発している東北から関東の太平洋岸が、全然警戒区域に入っていませんね。

そんな不思議の理由が、もうひとつのパターンなのです。

次回に続きます。

おっと忘れた。約1年前の村井式警戒マップ、その後今までに、警戒区域内で震度5クラス以上が起きましたか?


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月24日 (木)

村井地震予知の“インチキ”を考える【3】(#1160)

今回の本題に入る前に、ひとつニュースがあります。


国土地理院に期待


村井氏は、国土地理院が設置したGPSによる電子基準点の変動データを元に、地震を『予知』するという手法です。

ところが、これまで述べて来た通り、GPS機器や電波の性質上頻発する、ノイズによるデータ誤差をほとんど勘案せず、目立つデータ変動の大半を実際の地殻変動として採用し、地震の前兆だと主張しています。

これに対し国土地理院では、公式ウェブサイトにおいて、生データには多くの誤差が含まれるので、データ誤差を除去せずに使用するなと警告しています。

それはすなわち、生データをそのまま使っているユーザーへ対しての警告でもあるわけですが、“一部のユーザー”は警告を無視して恣意的なスクリーニング、つまり採用したいデータは誤差であっても採用する方法を続けています。

おそらく、そのことへの対策なのでしょう。現在はデータ誤差の発生原因として『電子基準点付近での樹木の繁茂』(その程度で誤差が出るのです)だけを実例として挙げているのに加え、今後は気象条件、積雪、電源ノイズ、メンテナンスの影響など、データ誤差が発生する他の理由も公開して行く、との発表がありました。

これはすなわち、データを正しく使っていないユーザーに対しての、さらに強い警告ということです。

Pdf
上画像は、国土地理院が発表している、電子基準点への樹木の影響を評価する資料からお借りしたものです。電子基準点上空に、これだけ枝がかかるだけでも(画像左側)GPS電波受信に影響があり、異常データが検出されたという実例です。この程度で影響が出るほど、精密な測定を行っているわけです。

今回の国土地理院の発表は、莫大な税金を使って整備された電子基準点データが、国が設置したものだから正確だというイメージだけを利用されて、実は好き勝手な解釈をされて商売に利用されているのを、立場的にも制度的にも看過できない状況になった、ということなのでしょう。

ここまで“インチキ”が広まってしまって、遅きに失した感もありますが、国土地理院の英断と、今後の展開に期待したいと思います。


思考停止していませんか?


その商売の話ですが、村井氏の有料メルマガ購読者は5万人とも6万人と言われています。料金は月額216円。計算してみてください。月額ですよ。さらに、法人契約なども諸々あるわけです。やはり、“震源にはカネが埋まって”います。

それだけ収入があって、各方面から「地震予知の権威」だの「救世主」だの持ち上げられたら、今更「私の理論は間違いでした」と、あなたなら言えますか?wでも、間違いは間違いです。恥を忍んででもそれをやるのが正しい科学者ですが、そうでない科学者もいくらでもいる、ということです。


こんな状況になったのは、情報を受け取る方にも問題が無いとは言えません。

「国が設置した電子基準点データを元に」、「測量学の世界的権威」である「東京大学名誉教授」が主張する地震予知法というだけで、きっと正しいはずだという思考停止をしていませんか?しかも、「テレビや週刊誌で『的中連発』と言っている」し。

そこまで大仕掛けの、壮大な“インチキ”もあるということは、覚えておくべきかと思います。それは、村井氏だけではありません。 いずれ当ブログでも触れますが。

どの研究も、当初は学術的興味や使命感から始まったのかもしれません。でも今は、かりそめの権威と収入を維持するために、ウソの上塗りを続けているようにしか見えませんけど。

こうなって来ると、もう測量学や地震学だのでは無く、社会学、心理学や文化人類学の問題ですねw


実際はこうです


ここで、村井氏の“データ誤用”の実際をひとつ挙げましょう。

挙げる例はひとつですが、これが村井理論の“基本”だということです。そのようなデータの誤用がなければ、村井理論は成立しません。

以下の内容は、村井氏の“インチキ”を検証して告発されている理学修士先生のブログから引用させていただくものです。元データは、国土地理院発表のものです。

引用元は、管理人のブログなんか読まなくても、インチキ地震予知に関してはそちらだけ読まれれば十分というくらいの優れたブログですのでw、リンクさせていただきます。

横浜地球物理学研究所

それではまず、ある期間の電子基準点変動データをご覧ください。下グラフは、ブログ『横浜地球物理学研究所』様(URLは上記)から転載させていただきました。

Plot
突出した点(赤矢印)がひとつ見られますが、これがまさにノイズ。たった1日で地面が4センチくらい盛り上がり、翌日には元に戻るという、あり得ない動きを示しています。

その時に、その電子基準点周辺での地震は、無感地震も含めて無し。それだけでも、異常なデータということがわかります。

ところがこのデータ、実際に村井氏が「異常な変動が起きた」として、その地域での『地震予知』の根拠としたデータそのものなのです。

すごくないですか?『測量学の世界的権威』が、地震ひとつ伴わないこんな激動を、実際に起きたとしているのです。長年測量に関わって来た人が、こういうことが起こると平然と主張する。地面はそんなにサクサク動くものなのですか?

しかし、これが村井理論の基本というか、ほぼ全てと言っても良いものではないでしょうか。

言い換えれば、電子基準点の特性によって不可避の異常データが無ければ、村井氏の『地震予知』は成立しないのです。もし誤差を完全に除去したデータを元にすれば、村井理論においては、数ヶ月以内に日本列島に大規模地震が起きる危険性はゼロ、ということになるのです。

もっとも、異常データを根拠に『予知』された地震、もちろんひとつも起きていませんけどね。 その程度の理屈(とメディアのアオり)で、これだけ“信者”を獲得してカネを集めているという現実、空恐ろしくなりませんか?

次回は、データ誤差が元の根拠が無い『予知』なのに“的中”とされる理由や、実は全然当たっていない現実などを、さらに掘り下げます。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月23日 (水)

ベルギー・ブリュッセルで連続爆破テロ(#1159)

Burussels
ブリュッセル国際空港内の惨状。落下した天井パネルは金属製のようで、人的被害を拡大した可能性もある


2016年3月22日、ベルギーの首都ブリュッセルで、連続爆破テロが発生しました。

事件の概要


事件は、ブリュッセル国際空港の混雑する国際線チェックインカウンター付近で、まずAK47ライフル銃による無差別銃撃から始まりました。

その後に比較的小さな爆発が発生し、その直後、さらに大きな爆発が発生したとのことです。爆発は、ふたりの実行犯が運んでいたバッグに仕込まれた爆弾による自爆攻撃と思われます。爆弾にはスチール製ボルトが多数混入されて、殺傷力が高められていたようです。

空港への攻撃の約1時間後、ブリュッセル市内中心部の地下鉄駅構内(駅間との情報もあり)の車内で自爆攻撃と思われる爆発があり、こちらの爆弾にもスチール製ボルトが混入されていたようです。

外国人も多い国際空港と、EUなどの機能が集中する主要地域の地下鉄駅を、朝のラッシュ時間帯に狙うという手口は、まさにテロ攻撃の“セオリー”です。“敵”の中枢部や象徴的な場所を攻撃することの示威・宣伝効果と、人的被害をできるだけ拡大して心理的恐怖を植え付けるのが、このような攻撃の目的です。

我が国でもかつて、いわゆる「地下鉄サリン事件」が発生しましたが、あの事件も東京の霞ヶ関という中枢部へ向かう地下鉄車内で、朝のラッシュ時間帯に実行されました。手段が異なるだけで、あの事件と全く同じであり、それが無差別テロ攻撃の本質と言えるでしょう。

今後も、無差別テロ攻撃は同様の戦術で行われるでしょうが、警戒が厳重な場所を敢えて避け、警戒が手薄な、一見意外な場所を攻撃する、守備側の裏をかく戦術も無いとは言えません。


爆破テロへの対処法とは


爆破テロへの効果的な対処法は、存在しません。

唯一、事前にできる対処法としては、爆破テロの対象になりそうな場所には、なるべく近づかないということだけです。上記のように、テロ攻撃は大きな示威・宣伝効果と、大きな人的被害を与えられる場所で行われるのが“セオリー”であり、そのような場所はどこかを、普段から考えておかなければなりません。

そのような場所にいて爆破テロに巻き込まれてしまったら、自分の安全は運次第です。要はどこで爆発が起きたかで、状況は大きく変わります。

自動車爆弾などの大型爆弾ではなく、人間が運べる程度の量の爆薬の場合、爆弾の種類や状況によって一概には言えないものの、基本的には爆風による殺傷半径は10~15メートル程度かそれ以下であり、それ以上は爆弾ケースの破片や、仕込まれた金属片などの飛散による外傷で殺傷されます。

しかし、その程度の爆弾の場合、飛散した金属片などが人間の身体を貫通する可能性は小さいので、爆発地点から10メートル以上離れて「2列目」以降にいた場合、致命傷を受ける可能性はかなり小さくなります。爆風の大半も「1列目」が受けるからです。

致命傷を受けない場合でも、爆発による大音響と圧力波による鼓膜や聴覚器官の損傷、爆風による打撃及び強烈な負圧による呼吸器の損傷、吹き飛ばされた人やモノなどの衝突による負傷をすることが考えられます。

また、二次的には建物の損傷やガラスの飛散などによる殺傷効果も発生します。ビル街で爆発が起きた場合、爆風(圧搾空気界)が超音速で拡散して、一瞬真空に近い状態が形成されます。このため、衝撃で割れたビルのガラスの多くが負圧で吸い出され、屋内ではなく路上に落ちて来る可能性が高くなります。


爆発が起きた後の対処法とは


爆発に巻き込まれても、自分が移動できる状態であれば、速やかにその場を離れる必要があります。テロ攻撃による爆発の場合、二次攻撃の可能性があるからです。

爆弾テロの“セオリー”のひとつとして、最初の爆発後に、救護や警戒のために集まる人や野次馬を狙って2発目を起爆するというものがあり、実際に行われたことも少なくありません。

今回のブリュッセル空港爆弾テロでも、短時間差とは言え2人が2発の爆弾を起爆していますし、さらに、爆弾を持っていたと思われる3人目の実行犯も確認されていますから、状況によっては3発目が起爆された可能性もあるのです。

そうでなくても、火災の発生や建物の崩壊が起こる可能性がありますから、まずは一旦速やかに安全圏に退避して、状況が十分に掌握されるまで、その場を動かないでいるべきでしょう。

その際、周りにいる負傷者の救護を優先するかどうかは、状況次第としか言えません。今回の地下鉄の現場では、連続攻撃の可能性は小さかったと言うことはできます。


テロ遭遇時のセオリーとは


ここからは一般論です。

例えば英国内では、英国からの独立を標榜するアイルランド系民族団体による爆弾や銃撃テロ事件が昔から起きており、そのような経験から導き出された対処法が一般にも指導されていて、それはテロ攻撃に遭遇した場合の基本として、あらゆる場合に有効です。

それは、以下の3つのワードで表されます。

Run

Hide

Call

Runは、ただ走れではなく、走って速やかに危険地帯から離れろ、ということ。

Hideは、安全地帯まで逃げ切れなかったら、安全と思われる場所に隠れろ、ということ。

Callは、状況と居場所を速やかに警察などに通報せよ、ということ。

先のパリでのテロの後、どこかの『専門家』が週刊誌の記事で、テロに遭遇したらRun、Hide 、Fight、すなわち逃げ切れなかったら戦えなどという、噴飯ものの“指導”をしていましたが、それは戦闘のプロの話。素人は、武器を持った相手と、決して戦おうなどと考えてはいけません。結果は明白です。


ところが、今回のブリュッセルテロ事件の後、ブリュッセル市内では長い時間に渡って携帯電話が使えなかったようです。これは、携帯電話を使った遠隔起爆装置を無力化するための措置と考えられます。

可能性としては、前記したように、二次攻撃のために空港や地下鉄内に先に爆弾を仕掛けておき、そこで銃撃や自爆を行った後、警察、軍隊、救急隊など、そしてテレビ局が集結した時点で遠隔起爆させるという戦術もあり得るわけです。厳重な警戒の中で先に爆弾を仕掛けるのが無理ならば、旅客に扮した人間が、逃げる振りをして爆弾入りキャリーバッグを現場に放置してくる方法もあります。避難した一般客の遺留荷物と区別はできません。

実際に、3人目の実行犯が持っていた爆弾とライフル入りバッグが、現場に放置されている状態で見つかっており、遠隔起爆式で二次攻撃を行う目的だったと考えられます。

その時点では実行犯は現場にはいられませんが、遠隔起爆式ならば現場からのテレビの生中継をどこかで見ながら携帯電話のボタンを押せば良いわけで、それを防ぐために電波を止めていた訳です。

なお、携帯電話を使った遠隔起爆装置は、中東や北アフリカ地域におけるIED(Improvised Explosive Device =即席爆弾)の起爆装置として、頻繁に使われる方法です。すなわち実行犯側は、そのための技術を持っているわけです。


いつかはどこかで


ヨーロッパ域内でのテロ攻撃が続いています。では、他の地域ではどうなのでしょうか。

中東や北アフリカを主な居住地とする民族が、北米やアジア地域で大規模テロを起こすことは、想像以上に困難です。しかし、不可能だとは全く言えまえん。

ヨーロッパでテロが多発する理由は、実行側の本拠地と地理的に近く渡航が容易であり、訓練を施した実行犯を送り込むのも比較的容易であること、各国内に実行側と同質で現状に不満を抱えたコミュニティが多く、準備のカムフラージュがしやすいこと、武器弾薬の闇マーケットでの調達が比較的容易であり、国境を越えた輸送も簡単ということなどによるものです。

すなわち、場所も人も資金も道具も揃っていて、何よりそのその民族を攻撃するための強い理由が存在する、ということなのです。


それに対し、そのような条件が無いか、または十分ではない地域でテロ攻撃の準備を長期間に渡って秘密裏に行うことは、想像を絶する困難があります。

しかし、繰り返しますが、不可能ではありません。そして、今までと同様のテロが起こされるとも限りませんし、小規模のテロならば、その気の人間が少しいれば、いつでも起こせると言っても過言ではありません。

我が国の国内でもその可能性はある、ということを忘れてはなりませんし、海外に渡航する際には尚更、「どこで何が起きてもおかしくない」くらいの考え方で、対処法を考えておく必要があると言えるでしょう。


■3月24日追記

トルコ国内で、イスラム過激派に参加するためにシリア入りしようとした、日本人青年が拘束されました。この人物は、フェイスブックなどで過激派側と連絡を取り合い、当地への渡航を勧められていたそうです。

ここで注意しなければならないことは、このように実際に行動に移す人物がひとりいる裏には、かなりの数のシンパが存在しているということです。我が国の状況からして、実際の行動に移すのは困難ではありますが、小規模ならば具体的行動を行うのは容易である、ということは疑いありません。

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月17日 (木)

北国のスタジアムで防寒を考える(#1158)

管理人が大規模スタジアムライブに行くと書く、なんとなくシリーズ化している【○○のスタジアムで××を考える】、今回は冬の北海道へ遠征しました。


みんなわかってるのかな?


今回の会場は、札幌市の札幌ドーム。管理人はかつて札幌の住人ではありましたが、ドームができるはるか前の時代でしたから、中に入るのは初めてです。

冬の札幌とはいえ、ドームですからライブ中は何の心配もありません。問題は、ライブ前後の屋外です。今年の北海道は比較的暖かい日が多かったようですが、ライブ当日の予報は最高気温マイナス2℃、最低気温マイナス9℃と、いい感じで冷え込みそうでした。

しかも、断続的な雪と風速5~6m程度の風も予想されていた、つまり軽く吹雪くこともありそうで、屋外で長時間過ごすには、それなりの装備が無いとヤバいぞ、という感じでした。

入場前にはどうしても屋外待機時間がありますし、屋外で朝から関連イベントをやっているので、そこへ行ったら何時間も屋外にいることになります。 ライブ後は、大暴れした人は汗をかいた状態で氷点下の屋外に出て、交通機関にたどり着くまでに、かなりの時間がかかります。

元道民としては、本州から遠征するファンが、この状況をどれだけ理解しているのかな、というのが最大の心配でした。

もちろん、運営や地元ファンから寒さへの注意情報はかなり出ていましたが、果たしてどれだけ理解されているのかと。実際、北海道に初めて行く知人は、ジャージにいつものサンダルくらいで大丈夫だと、本気で思っていたなんてこともありました。

しかも、ライブ会場ではステージ衣装コスプレをしたり、ファングッズを身につける人が多いので、軽装になりたい人が多いのです。寒さを理解してギリギリの軽装をするならともかく、氷点下を甘く見たら、シャレでは済まされません。

そんなわけで、管理人は氷点下の屋外、場合によっては吹雪の中で半日過ごす前提で、敢えてオーバースペック気味の重装備にしました。若くないしw
Asahiyama
久々にブログに登場させていただきました。加工してありますがw

これは、ライブ翌日に札幌の夜景スポットへ行った時の画像。これだけ高度があるので、軽くマイナス12℃くらいです。着ているのは軍用の防寒コート(N-3B)タイプで、これならマイナス20℃以下でも大丈夫。 なんたってアラスカとかで着られている奴です。こんな重装備は、道民から見たら観光客丸出しでバカにされそうですけど、想定される最悪の状況を快適に過ごそうと思ったら、これくらいは必要です。

下に着ているのは、Tシャツと薄手のパーカーだけですから、建物に入ればすぐに薄着になれるということも重要。北国の屋内は暖かいので、重ね着で調整できないと、今度は暑くて大変です。

もっとも、氷点下の屋外で過ごすには、放熱しやすい頭、血流が少なく冷えやすい耳、手、足先など末端の保温が重要で、厚い上着を着れば大丈夫というものでもありませんが。


天候に救われた?


実際に、ライブ前の街中では「あれじゃヤバいだろう」という格好の遠征組ファンが、かなり見られました。下手をすると、ファングッズ着用のために、関東より軽装じゃないか、というくらいの。

特に、靴がメッシュのスニーカーなど“軽すぎる”人が多く見られました。靴もファン装束の一部という人は、「いつもの靴」で、そのままで来てしまっているのです。他には、防水性が無さそうな革靴や、女性はムートンのブーツとか。特にムートンは、濡れたら地獄です。

しかし、これは本当に幸運なのですが、当日気温はそれなりに下がったもののほとんど風は無く、雪も全く降らずに、穏やかな天気だったのです。

一般に、風速が1m上がると体感温度が1℃下がると言われます。さらに雨や雪が加わると、露出した肌が濡れて冷えることで、かなり苦痛を感じます。

それが無かったことで、その程度の軽装でも危険な状態になるほどでも無い、という感じではありました。気温はずっと氷点下だったので雪も溶けず、雪面もほとんど乾いていたのです。

さらに、周辺を観光する人が多かったライブ翌日も、穏やかに晴れた、ある意味で理想的な天気でした。


一天にわかにかき曇り


ところが。管理人はライブ2日後まで札幌にいたのですが、最終日は強い低気圧の接近で未明から暴風雪。そして、昼くらいから急激に暖気が入り、強い雨に変わるという無茶な天気でした。

未明までの大雪で道路に雪が積もって、歩道はほとんど埋まって歩けないし、裏道は除雪が間に合わずにベタベタボコボコで、車もまともに走れない。

圧雪の上には雨水が溜まってツルツルだし、くるぶしまで埋まるシャーベットや水たまりがあちこちにあって、防水性の無いローカットの靴だと、確実に浸水するような状態。
Sapporo
札幌駅前が上画像の通りです。防水靴でも、ローカットだったら確実にシャーベットの餌食です。

もしライブ当日にそんな天気だったら、冗談ではなくて低体温症で倒れたり、手足が冷え切って軽い凍傷になるくらいの人が出てもおかしくなかったでしょう。少なくとも、濡れた靴で氷点下の雪の上にいなければならないという、考えたくもない状態になる人がたくさんいたはずです。

管理人としては、そういう状況を考えた装備だったので、むしろ嬉しいくらいでしたがwちなみに、管理人の靴はゴアテックスインナー入りの、ハイカットのトレッキングシューズでした。


TPOを知り、備えよということ


結局何が言いたいのかというと、真冬の北海道へ行くにしても、あくまで札幌市内で会場はドームという考えで、寒さをナメてかかっている人がかなりいた、ということです。

天気予報も見ずに、当日の予想気温(かなり冷え込む予報だったのです)さえ知らないという人も多かったのです。結果的に、予報よりはるかに穏やかな天気で助かりましたが、その反面、北海道もあの程度で大丈夫、という誤った認識をした人もいるかもしれません。

管理人は、防災装備に関して防水・防寒を非常に重視しています。それはまさに北海道暮らしの経験があるからで、寒さの恐怖を知っているからです。それでも、北国じゃなければそこまで気にしなくても、という意見もあるでしょうし、自分は大丈夫だと思うのならば、それも良いでしょう。

でも、真冬の北海道へ行くというのに、予備情報はたくさんあるのに、あんなにたくさんの人が不十分な軽装だったということが、かなりショックでもありました。

何か災害や事故に遭えば、吹雪の中で外に出なければならないこともあります。経験が無ければ本当の怖さがわからないのは仕方無いとしても、あんなに寒さをナメてかかる人が多いとは。

その感覚は、『防災の専門家』が勧める防災グッズに、防水・防寒装備が無かったり少なかったりすることにも、如実に表れています。寒冷、降雪地域でなくても、真冬のインフラ停止下で屋外にいるのがどれだけ辛いことか。

“本番”でわかっても、後の祭りということです。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2016年3月16日 (水)

最初の、しかし忘れがちな危険とは(#1157)

過日、管理人はある防災イベントに参加してきました。数人のチームで街を歩きながら、大地震を中心とした災害の際に、街のどこに危険が潜んでいるかを見つけて行くのがミッションです。

そこで改めて感じたことがあるので、記事にしました。


最初の危険は落下物


繁華街やビル街の屋外で大地震に遭ったら、最初に襲ってくる危険は、落下物です。割れたガラスや看板類などが落ちて来ることは、すぐに想像できます。

最近の店舗ビルは正面がガラス壁になっていたり、全面ガラス張りのビルも珍しくありません。そのようなガラス壁は、もちろん耐震性が考慮されてはいるのですが、絶対に割れないとは言えません。

管理人自身も、震災後の仙台市内や石巻市内などで、家電量販店やパチンコ店の大型ガラス壁が崩壊しているのを、実際に見てきました。津波によるものではなく、震度6強程度の揺れで崩壊しているのです。

厚さ1cm程度の厚いガラスの断面は、まさにカミソリと言えるような鋭さです。あんな破片を浴びることは、想像したくもありません。

しかも、高い場所から大きなガラスの破片が落ちて来る場合には、必ず尖った方が下になるのです。これは紙飛行機と同じ原理で、それが空力的に一番安定する状態というわけです。その直撃を受けたら、ヘルメットやバッグ類で防護しても、貫通を防げない可能性もあります。

ですから、地震を感じたら、そのような場所から速やかに離れる、頑丈な建物の中に入る、外の状態を確かめずに飛び出さないなどの行動が生死を分けます。

ここで、動画をご覧ください。東日本大震災のニュース映像を集めたもので、激しい揺れや津波などのショッキングなシーンが含まれます。

この動画の開始から33秒では、落下物の恐怖が映し出されています。音声では「看板が落ちて来ている」と言ってますが、それだけでは無いのです。


意外に見落とされているもの


動画の中で、看板と一緒に落ちて来ているもの。それは外壁材です。多くの場合化粧タイルですが、吹きつけのモルタルが剥がれて落ちて来ることもあります。

そういう目で、あなたの周りのビルを見回してください。ガラス壁以上に、外壁に化粧タイルを貼った建物が多いことに気がつくはずです。

特に、古い建物の場合はタイルが浮いたり剥がれかけていることも多く、そこへ地震が起きれば、簡単に剥がれて落ちて来るでしょう。しかし、新しい建物でも、外壁材の剥離落下はかなり起きているのです。

そんな中で、管理人が最も危険だと思うタイプの建物をお知らせしておきましょう。管理人は、勝手に『しましまビル』と呼んでいるもので、地震を感じたら真っ先に離れますね。
Img_0960
ちょっと古いビル街だと、こういう窓と壁がしましまになった四角いビル、結構ありませんか。

これは昭和30年代末期から40年代くらいに流行したデザインで、このデザインを見ただけで、旧耐震基準(既存不適格)建物であることがわかります。中には耐震補強を施しているビルもあるかもしれませんが、中小のビルでは大抵そのままです。

ましてや、窓枠がアルミサッシではなく鉄製だったら、建築当時から何も手が入れられていないことは間違いありません。ですから、まず倒壊の危険が大きいのです。阪神・淡路大震災で倒壊したビルのほとんどは、この時代のものです。

しかもこの『しましまビル』は、窓の間の壁面が、画像のように化粧タイル仕上げになっていることがとても多いのです。化粧タイルは、鉄筋コンクリートの躯体(建物本体)に、モルタルで貼り付けてあるだけですから、長年の震動によるヒビや浸水などで、落ち易くなっていることも多いのです。

築40年を超えるようなビルの化粧タイルは、強い地震が来たらまず落ちるものだと考えておくべきで、さらに、新しい建物でも決して絶対安全ではない、と思っていなければなりません。

上のyoutube動画で、看板と壁材を落としているビルは、そんなに古いものではなく、1981年以降建築の新耐震基準建物のようです。あの時、東京都内は最大震度5強。新しいビルでも、その程度の揺れでも落ちることがあるということの証明でもあります。


もう一度確かめよう


繁華街やビル街で強い地震に遭ったら、まず最初の危険は落下物です。

ところが、東日本大震災時の都内の映像では、ビルから出たものの、最も危険な歩道に集まっている人の多いこと。たまたま、何も落ちて来なかったに過ぎません。

本当に強い地震が来たら、まずその段階をクリアしなければ次の段階に進めない、すなわち地震発生直後に死亡または重傷ということです。水とか食料とか言っている場合ではありません。

ですから、改めて皆様の周りの危険を見回してください。そして、まずそこから逃げるための行動を、場所に応じて常に考えていてください。上の動画を見てもわかる通り、判断し、行動する時間は数秒しかありません。

そして、あなたの頭上に落ちて来るのはガラス、看板類、そして化粧タイルなどの壁材なのです。

※今回から、小見出しのスタイルを変えてみました。


■当記事は、カテゴリ【地震・津波対策】です。


2016年3月14日 (月)

村井地震予知の“インチキ”を考える【2】(#1156)

ところで、かなり前から“インチキ”という声が多かった村井氏の手法に対し、管理人はなぜ今になって突然噛みつきだしたのかという話など。


【一度は期待しました】
現時点では、『地震予知』の技術は全く手探りですから、あらゆる方法の可能性を試すべきです。そして、その結果を検証することで、少しでも可能性の高い方法を見いだせればというのが、科学者だけではない、多くの人の願いでしょう。

それはすなわち、『地震予知』への願いの裏には、巨大市場が眠っているということです。下衆な言い方をすれば、『震源にはカネが埋まっている』ということ。だから、いろんな人が集まって来る。

実は管理人、村井氏の有料メルマガ「MEGA地震予測」に、登録していた時期があります。そして、その内容を自ら検証することと、関連する情報を集めることを行った結果、「これは信用するに値しない」と判断し、登録を解除しました。

なにしろ、『予知』の内容がとにかく曖昧。非常に広い範囲と時期に渡って「大きな地震が起きるかも」というだけのものに過ぎません。

村井氏が震源の範囲、地震の時期や規模を予想している根拠はともかく、結果的に“地震が多発している地域がほとんど指定されている”だけなのです。

このような方法は、我が国の地震に関して知識が少ない方には、それなりにインパクトがあるでしょう。でも、管理人も当ブログでもやっているように、普段から地震の発生状況を注視している人には、

「なあんだ地震が多い場所選んでるだけじゃん」

としか見えません。


しかも、現実には『予知』されたほとんどの地震は予想期間内には起きず、起きても予想震源域とは違っています。少なくとも、震度5弱以上の地震を、震源域、規模、時期とも正確に“的中”させたことは一度も無いはずです。すなわち、 実用的価値はゼロ。

しかし、なんとなく近いような地震をすべて“的中”とし、メディアもそれに乗ってアオっているだけです。『地震予知ヒーロー』の存在は、数字になりますからね。


百歩譲って、地震が多発している場所だから、地上の変動も多く観測される。だから予想震源域と重なって当然だという考え方をしてみましょう。

その結果、日本列島の半分くらいが、それも、数ヶ月から半年もしくはそれ以上のうちになどという、中長期間における危険地域として指定されていることが、『地震予知』と呼べるのか。

そんなもの、「いつどこで起きてもおかしく無い」と、何ら変わりません。その程度の精度しか出せず、しかもそれさえもろくに当たらない時点で、論理は破綻しているのです。


【大企業もダマされた?】
このテーマを始めるのに決定的だったのが、NTTドコモが自社の基地局のGPS座標データを、村井氏の団体に提供するという話。

この話、地震などの研究に真っ当に取り組んでいる方々からは、当然のように非難轟々です。大企業が“インチキ”に巻き込まれたというショックよりも、悪しきブランディング効果が問題なのです。

元来、村井氏の最強のブランドは『東京大学名誉教授』だということ。これだけで、「この人には間違い、ましてやウソはない」という無敵のイメージを構築しており、それもあって、メディアの注目度が高いのです。

それに加えて、我が国を代表するIT企業が協力するとなれば、外野からは「日本最高レベルの技術者集団も認めた」という、事実とは異なるイメージが構築されます。

実際にはそのような検証を経たわけではなく、技術的検証のできない上層部のごく少数が、「自社イメージ向上になる」と判断しただけのことでしょうが。逆効果なのに。

ともかくも、この提携は「テレビでおなじみの」の延長線上のように、これだけのメジャー筋が絡んでいるのだから、きっとこれは正しいんだという思考停止を生む危険が大きいということです。

NTTドコモさん、目を覚ましてください。この“インチキ”の拡散に心を痛める、良識と知識のある人々は皆、この決定を蔑んでいますよ。


【そこでもう一度見てほしい】
そういう流れの中で、管理人も、当ブログで『地震予知』をやってみたわけです。

一連の記事をリンクしますので、是非もう一度ご覧ください。今の日本列島は、いとも簡単に地震を『予知』できるのです。

ついに管理人が地震予知《・・・の実験ですよw》(#1134)
管理人の地震予知結果は果たして?(#1136)
管理人、異常な高確率予知に成功?(#1142)
【地震予知検証】チートをやれば誰でも勝てるけど(#1145)
話題の『地震予知』は本当に当たっているのか?(#1152)


一連の記事に記した管理人の実験結果は、「起きた地震は震度1~2ばかりじゃないか」と思われるかもしれませんが、今回の対象期間はたった7日間です。これを、某先生のようにw何年も続けていれば、数ヶ月のうちに震度4、1年くらいのうちに震度5弱の1回くらいは起きるでしょう。

そこで、数多くのハズレは一切無視して、高らかに“的中”を宣言すれば良いわけです。

こんな感じで、今の日本列島において、とりあえず地震が起きる場所を予測することは、いとも簡単なことなのです。ですから、曲がりなりにも『予知』した地震が起きたからと言って、理論の正しさやウソが無いということの証明には全くならない、ということなのです。

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上画像は、村井氏が過去にはこんなこともブチ上げていたという、あくまで一例。他にもいろいろ外していますが、こういう“不都合な”過去は、すべて無かったことにされているのです。

それにしても、村井氏が主張する、大規模地震を予測させるレベルの変動が本当に起きているのだとしたら、それでも中規模地震さえ起きないことの方が多いということになってしまい、村井理論の破綻は明らかなのですがw


さて、次回は具体的な資料をお借りして、“インチキ”の実体を解説します。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

2016年3月11日 (金)

あの日から5年。海外から見た311(#1155)

東日本大震災(東北地方太平洋地震)の惨劇から、5年の時が流れました。

この日に寄せて、管理人の非常に個人的な話題にお付き合いいただければ幸いです。


【負い目を感じる日でもあります】

管理人は昔から災害、防災方面にはうるさく、自費で防災士の資格を取得したのは2007年ですし、2010年10月からは、mixiで当ブログの前身でもある防災情報コミュニティを主宰しておりました。

そちらの記事では、地震、津波、火災対策などだけでなく、原発事故における、個人でできる放射線防護対策まで網羅していましたが、それが実際に必要な日が来るとは、正直なところ考えていませんでした。


そしてあの日、東日本を中心として数千万人もの方々が、大抵は初めて経験する激しい地震と、未曾有の巨大津波、そして原発の危機に放り込まれました。

管理人としては、長年に渡って蓄積してきた知識、装備などを最大限に発揮すべき、ある意味で“見せ場”になるはずでした。 しかし、それは叶いませんでした。あの日管理人は、米国のワシントンD.C.にいたのです。ですから、東日本大震災の実体験は何ひとつありません。

管理人が米国にいた理由は、当ブログの中のどこかに書いたと思いますが、ここでは省略します。

なにしろ日本国民として、防災に関わる人間として、大震災の実体験が無いことが、自分の負い目になっています。

その負い目が、震災2ヶ月後から福島の最前線へボランティア活動へ行き、正直に書いてしまうと警戒区域、それも10km圏内まで入るような活動をしたり、宮城県内各地を訪れたり、そして2012年1月から当ブログを始めたりということに繋がっている部分は、確かにあります。
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ここから先は、凄まじい世界でした

【それは成田から感じていた】
管理人は、2011年3月9日の午後に、成田空港を発ちました。搭乗前、空港で昼食を食べているときに、ゆさゆさという大きな揺れを感じました。直感的に、震度4。

P波はほとんど感じず、振幅の大きなS波です。成田という不慣れな土地で、過去に感じた記憶が無いタイプの揺れでしたので、震源推定はできませんでした。ただ、遠い、大きい、ということはわかりました。最初は、「東海か?」と思ったくらいです。

すぐに震源情報を見ると、宮城のかなり沖の、大きめの地震。震源は、1978年など過去に起きた宮城県沖地震などより、ずっと沖です。そこでそんな地震が起きるパターンは、記憶にありませんでした。しかし、震央の位置も深さも、プレート境界型地震のそれです。

その時、管理人は「あんな場所でこの規模が起きるとは、イヤな感じだな」と、同行者に言っています。それはもちろん、大規模地震の前震である可能性です。 それくらい、“いつもと違う”地震でした。もっとも、あれほどの巨大地震の前兆だとは、想像もしていませんでしたが。

その後、3月10日にごく近隣でもう1回、大きめの地震が起きています。 そして3月11日。前震震源のすぐ南側から、M9.0に達する巨大断層破壊の連鎖が始まったのです。

もしあの時、管理人が国内にいたならば、3月10日の2回目の前震を感じた時点で、「しばらく警戒レベル上げよ」という判断をしていたと思います。


【手も足も出ない】
米国時間の3月11日未明。時差ボケもあった管理人は、ホテルで一杯飲んで、部屋で寝ていました。実は、日本にいる家族から、東北で巨大地震と津波発生のメールが届いていたのですが、気がついたのは午前1時過ぎ、日本時間の午後4時過ぎでした。

すぐにテレビでCNNをつけると、BREAKING NEWS特番をやっており、NHK WORLDのライブ映像や、CNN日本駐在リポーターからの電話リポート、環太平洋地域への津波警報など、日本国内とそれほど違わないくらいの密度の情報が得られました。

遠く離れた米国で、自分の国が未曾有の巨大災害に引き裂かれていくのを、ただ何もできずに見ているだけ。犠牲者数は、その時点で数百人とされていましたが、映像を見て、これは数千、下手をすると数万のレベルになり得ると考えていました。

言うまでもなく、窓の外に広がるワシントンの街は静かです。でも、テレビでは自分の国の巨大災害が、リアルタイムで報じられている。そのあまりのギャップに、管理人はかなり混乱しました。

何度も、窓から街を見ました。わかっていても、静かなことが信じられない。それくらい混乱していたのです。

その晩は、朝までほとんど眠れぬままに、CNNを観ていました。現地時間の3月11日午前5時過ぎ、ワシントンD.C.のホテルで、CNNの画面撮りをした映像をリンクします。約4分です。

CNN Breaking News 11,March,2011

そして、米国の3月11日が明けました。外で会う人々も、特に日本の災害については触れません。もっとも、私が日本人か中国人か韓国人か、ほとんど区別できていないのでしょうが。

それでも、
「どこから来た?」
「日本から」
「大変だな」
「大惨事です」
「おくやみを言うよ」
「ありがとう」
というような会話は、何度かありました。そしてそのたびに、目頭が熱くなりました。

例えばニューオリンズのハリケーン災害の時、日本国内ではどれだけ気にしたでしょうか。米国人に会っても、そんな話題も振らなかったかもしれません。

遠い東洋の島国の大災害を気にかけてくれている人がいるというだけで、かなり感激します。それにしても、当の国民が何もできずに、粛々と旅の予定をこなしているということに、かなり違和感を感じました。

実は、現地で合流した日本人もいたのですが、関西の方で特に被害が無かったこともあり、日本人同士でも震災の話しないという、妙な空気だったのです。


【そして、帰国】
管理人は、3月13日成田着の飛行機で帰国する予定でした。しかし、羽田も成田も閉鎖という情報を得ていました。果たして、予定通り帰れるのか。

とにかく、現地時間の3月12日午前中にホテルを出て、ダレス空港に向かいます。その時点から、日本に関する情報はほとんど得られなくなります。

その段階で、福島第一原発では原子炉の圧力が上昇し、予断を許さない状況であるとの情報がありましたが、結局、帰国まで、それ以上の情報は得られませんでした。

結局、成田空港の閉鎖は解除され、管理人が乗る飛行機がダレスからの再開第一便となるという幸運で、予定通り離陸しました。機内は、ビジネス客よりも、予定通り観光旅行に向かうような、若者や家族連れで混雑しているのは意外でした。

その時点で、原発が危険な状態だという情報はあったのです。米国人は核への恐怖が強いと思っていましたが、意外と脳天気なのかなと。

そして、急遽日本へ取材へ向かう、米国テレビ局のクルーもいて満席です。でも、果たして本当に成田に着陸できるのか、成田からの交通は動いているのか、そして、原発は大丈夫なのか。情報が一切無いまま、約12時間のフライトが始まりました。

機内には日本人はあまりおらず、アジア人は中国人の団体が多かったようです。中国語の新聞を読んでいるので、すぐわかります。

管理人は、英字新聞をもらいました。完全に読解できなくても、日本の地震と津波の記事ですから、ほとんどわかります。これが、機内での唯一の情報源だったのです。 フィナンシャルタイムスの3月12日付け週末版です。

Ft4
『地震とツナミが日本を叩きのめした』という強烈な見出し

Ft3
“でかい奴”が、殺人的な水の壁が

Ft2
右上の小見出し『神戸(阪神・淡路大震災)後初、国家の威信を吹き飛ばす一撃』

Fullsizerender
原発の最新情報は、避難区域が10km圏から20km圏内に拡大されたこと

基本的に穏やかなフライトでしたが、日本に近づくにつれて、機内の緊張が、少し高まったような気がします。12時間の空白を経て、日本は今、どうなっているのか。この先、どこまで行けるのか。本当に、大丈夫なのか。

結局、3月13日は計画停電による鉄道の間引き運転が始まる前日だったので、ほとんど問題なく、夕方には埼玉南部の自宅まで帰り着けました。翌日からはまた大混乱になったと聞いて、胸をなで下ろしたものです。

そしてその足で、ホームセンターへ走りました。ある程度揃えてはいたものの、不足していた家族分の放射線防護装備を買い集めるためです。

実は、米国で原発危機情報を得た時点で、家族に防護装備と非常時の行動について、メールで指示していたのですが、まだ不十分でした。そして、マスコミが騒ぎだした途端に、必要物資が無くなると読んでいたからです。

実際、その時点ではホームセンターのカッパ、ブルーシート、防塵マスク売場などには、誰もいませんでした。しかし原発で水素爆発が起きて、テレビに「専門家」が登場して解説を始めた途端、本当に棚が空になりました。

こういうことからも、事前に正しい情報を知っていることがいかに大切か、改めて痛感させられました。


【希有な体験でした】

海外在住ならともかく、たまたま海外に行っていた時に、自分の国が巨大災害に襲われる。しかも、世界最悪レベルの原発事故が進んでいる国に舞い戻るという、なんとも珍しい体験をしたのが、管理人の311だったのです。

そして、あのリアルを自分で体感していないという負い目が、今やっていることに繋がっているのは、間違いありません。

震災から5年。復興が進む一方で、「なんでこうなっちゃったかな?」と感じることも多々あります。管理人は、自分ができる分野で、そういったおかしな事と、これからも戦って行こうと考えております。

非常に個人的な話にお付き合いいただき、ありがとうございました。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月 8日 (火)

村井地震予知の“インチキ”を考える【1】(#1154)

Photo
電子基準点の一種。ある人々によれば、これが1週間に数センチとか動くことがあるらしいww


当ブログでは創設以来、主に『商業ベースの防災の専門家』の行状に関して、多くの批判をしてきました。

一方、学術的な専門家、具体的には地球物理学や地震学、その関連の専門家などに対しては、その一部の発言などをピックアップして、誤りを指摘する程度でした。 基本的に、学究の徒に対する敬意が前提にあったのです。

しかしこの期に及んで、一部の学術的専門家に対しても、根本的にスタンスを変えざるを得なくなりました。

学術的な専門家までが、素人には真似のできない壮大なウソをついて、カネ儲けを始めたからです。もちろん、有用な情報によって収益を上げるならば、何の文句もありません。

問題は、肩書きの権威を振りかざし、児戯にも等しい非科学的な方法で地震の不安を煽るということが、堂々とまかり通ってしまっていることなのです。


【今、もっとも問題なのは】
ここはストレートに行きましょう。現在もっとも批判されるべきと考える対象は、

東京大学名誉教授(測量工学)村井俊治氏が主宰する「JESEA地震科学探査機構」と、発行するメルマガ「MEGA地震予測」

と言えます。あちこちのメディアに登場しては、今や我が国の“地震予知”の第一人者くらいの扱いです。メディアは、常にスターを欲していますからね。


ここで確認しておきたいのは、管理人はじめ、氏や氏の機関を批判する人の大半は、氏の手法である『地震前に発生する(かもしれない)地表面の変動を、GPS電子基準点を利用して計測する』という手法自体を批判しているわけではありません。

それ自体は研究途上の対象であり、現時点では地震との相関があるとも無いとも断言できないからです。もっとも、これまで発表された“成果”からは、少なくとも精度の高い相関があるとは思えませんが。


さておき、そこではありません。

最大の問題は、村井氏とそのチームにおける、基礎データの扱い方と評価の方法です。それをこれから解説して行きますが、それこそが、科学的手法とは全く言えない、管理人も含めた多くの人が“インチキ”だと指摘する部分です。

メディアが“的中連発”とアオる裏には何があるのか、本当に“的中”しているのか。実は、管理人が前記事でやった『地震予知』のネタ、あれはこの本編のための前フリだったのです。


【評価基準からしておかしい】
村井氏の手法は、列島各地に国土地理院が設置している、約1300カ所にも上る『電子基準点』のデータを解析することです。

『電子基準点』では、GPS衛星の電波で地表面の動きを測定しており、その精度はミリ単位です。地表面がX,Y,Z軸どちらにでも、1ミリ移動すればわかるほどの高精度なのです。

村井氏は、地震の発生前には地下だけはなく地表面にも動きが出るはずという独自の理論で、その動きと地震発生の相関関係を探っているわけで、そのためには、国土地理院の『電子基準点』は最高の基礎データとなります。それが、正しく使われる限りにおいては。

地表面は、様々な理由で日々動いています。でも、その動きはごく小さいもの。急激に大きな動きが測定されることは、まずありません。

ところが、村井氏のチームは、頻繁に「極端な変動が観測された」と発表し、その辺りで地震が来るとアオっては、「詳しくはメルマガで」と、熱心に商売をしています。

それは、本当なのでしょうか?


【一応科学者なんだけど】
村井氏は、決して地震の専門家ではありません。測量工学の“世界的権威”だそうです。その方がなぜ『地震予知』を始めたのかは良く知りませんが、少なくとも測量に関しては、トップクラスの専門家なのです。

測量に限らず、いかなる測定やデータ収集には、誤差が伴います。それは主に測定機器や条件によるものですが、新世代のGPS測量には、新世代なりの誤差の理由があります。電磁的ノイズです。

気象条件など様々な理由でGPS衛星の電波が乱れたり、他の電波が干渉したり、機器の調整や電源の状態が影響したりと、様々な電磁的ノイズが発生します。

本来ならば、そういった不正なデータを除去した上で判断しなければならないわけですが、測量の専門家であるはずの村井氏は、全くもって信じられない方法を行っています。

電磁的ノイズの影響を全く考慮せず、すべて急激な変動データとして採用し、地震の予兆だとしているのです。これだけでも、真っ当な科学者がやることではありません。十分に“インチキ”です。

そのあまりの酷さに、電子基準点データを提供している国土地理院が、ノイズの存在を強調する発表を行っているほど。

中には、○月○日の異常データは○○地点の機器交換の影響によるもの、などとピンポイントで理由を公表しているのに、なんと村井氏は、その異常データで「地震が来る」と発表していたりするというものすごさです。

そんな『地震予知』、あなたはまだ信用するのですか?

村井氏による無茶苦茶なデータの扱いを詳細に分析した、理学修士の方のブログをリンクさせていただけることになりましたので、是非ご覧ください。

リンク先記事だけでなく、一連の記事をお読みいただければ、村井氏の理屈(理論ではありません)が無茶苦茶なだけでなく、科学的態度を放棄して、自分たちの利益のためにデータを恣意的に曲解していることが見えて来ます。

【ブログタイトル】横浜地球物理学研究所

【記事タイトル】村井俊治氏の地震予測は、GPSの誤差を考慮しておらず、信用できません

ちなみに上記リンク記事は、2014年9月にアップされています。真っ当な方々の間ではそれより前からインチキ認定されていたのですが、最近になって話題が欲しいメディアが食いついて、アオりが激しくなっているわけです。


【それだけじゃない】
ここで、ひとつの疑問が持ち上がります。

本来は無意味なはずのノイズによる異常データを拠り所にした『地震予知』が、なんで世間では“的中”したと騒がれているのでしょうか。

普通ならば、予知がハズレだらけならば、あの方法は正しくない、という評価をされるわけです。それ以前に、発表者自身が正しい方法では無いと判断し、発表を取りやめるのが世間一般の感覚ですし、科学的な態度というものです。

しかし、現実にはあちこちで“インチキ”と言われている、現実と整合性の無い方法が“的中連発”と崇められ、信者(と収入)を増やしているのです。何故なのでしょうか。


もう大体おわかりですよね。実際には、“的中”などしていないのです。その裏には、当ブログでもいろいろ触れてきた、『肩書への妄信』、『確証バイアス』などの心理的理由、さらには事実との整合性よりも、話題性とインパクトを重視するメディアの扱いによって、ダーティヒーローが生み出されているという側面もあります。


次回以降、“インチキ”の現実とメカニズムを検証して行きます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


2016年3月 7日 (月)

【シリーズUDL36】心理編8・言葉が、心をほぐす(#1153)

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UDLで心の安定を保つために、時にはこういうことも(童話『王様の耳はロバの耳』より)


■UDLとはUnder Disaster Lifeの頭文字。被災生活の概念です。

『先が見えない』UDLにおいて、いかにして前向きな気持ちを作り出して行くか。それは、想像以上に困難なことなのです。

人が動くためには、心にも身体にもエネルギーが必要です。しかし過酷なUDLの状況は、特に心のエネルギーを蝕み、食い潰して行きます。


【補給する方法はない】
身体のエネルギーならば、食事をすればとりあえず補給できますが、心のエネルギーは、補給できません。あくまで、今自分の中にある、疲れきってズタズタになった心のヒビを修理しながら、だましだまし動かして行くしかないのです。

その修理の方法も、外からつぎはぎをするようなことはできません。

唯一の方法は、自分の心の中から沸き出す修復剤で、ひとつひとつヒビを埋めて行くだけです。そのために、3つの方法が効果的だという、UDLからの声があります。


【声は心の解毒薬】
まずひとつめは、自分自身でやる方法。これは、いろいろな場面で良く語られる方法でもありますが、とにかく『声を出して話すこと』。

これまでに見聞したことでも、ついさっきあったことでも、心の中にふと浮かんだことでもいい。そして、誰かが聴いてくれなくてもいい。とにかく、なんでも言葉にしてみるのです。

そこに感情があっても無くてもかまいません。ただ起きたこと、思ったことをなんでも言葉にすることに効果があるのです。 一度言葉のきっかけができれば、あとは自然に出て来るものです。

それを誰かが聴いてくれれば、より話しやすいかもしれません。でも、ひとりの方が良いこともある。独り言を言っている自分を、おかしいなんて思わないでください。ひとりでも言葉が出て来るということは、あなたの中で処理しきれない現実を、あなた自身が噛み砕き、現実と整合して行こうとする、意思そのものなのです。

ですから、それを無理に抑えないでください。

ひとりで話していても、必ず聴いている人がいます。それは、あなた自身。自分の声を自分で聴くことで、第三者的な立場から自分の状態を俯瞰する効果もあり、それがまた、心の安定に繋がるのです。


でも、一見簡単な『話すこと』ですが、実際のUDLでは、そう簡単ではありません。

まず、周りにいるのは自分と同様、もしくは自分よりひどい目に遭った人か、外部から来た人など、状況を実感としてわかっていない人。なかなか「話したい」と思えるような人には出会えないかもしれませんし、誰にでも話せるほど図々しくもなり切れない。

さらに、これはみなさん似たような経験があると思いますが、心が痛めば痛むほど、言葉にしずらくなるのです。ですから、UDLにおいては、話をしたくなくても、ちょっと無理をしてでも話すことを習慣にするくらいでなければなりません。

心がガチガチに固まってしまう前に、少しずつ言葉にして行けば、それだけ心がほぐれやすくなるのです。

時には、童話『王様の耳はロバの耳』のように、ひとりで穴の中に向かって叫んでも良いのです。とにかく思いを言葉にすることが、過酷な状況下で心を修復し、せめてもの安定を得るための、最良の方法なのです。

【自分でできなくなってしまったら】
体験や思いを言葉にする行為を、自分だけでできるうちは、まだ良いと言えるでしょう。

過酷なUDLでは、何事も言葉にする元気も失われてしまうことも、少なくありません。 そんな場合には、周りの助けが必要です。それが、ふたつめの方法です。

それは、『寄り添う』こと。

これは、身体的な距離はもちろんですが、心を寄り添わせる、ということでもあります。では、具体的にはどういうことなのでしょうか。


東日本大震災後、この『寄り添う』という言葉や概念が、かなり多く語られましたが、その多くは、ありがちな失敗例を伴ったものでした。ある人が被災者に『寄り添おう』として、結果的に心を閉ざさせてしまったり、却ってストレスの原因となってしまったことも、少なくなかったのです。

最大の失敗は、励まし。心に元気が残っている人は、つい「がんばれ」、「前を向け」、「ひとりじゃない」、「みんながついている」などという、次に繋がるような言葉を投げかけてしまい、それに対する前向きなリアクションを、無意識に期待してしまいがちです。

でも、現実にはそういうことをイヤというほど考えようとして、その上で全然『先が見えない』状況に打ちひしがれている人には、逆効果どころかストレスそのものでしかありません。それでも、励ましてくれる気持ちはありがたいので、文句も言わずにじっと聴いている人も少なくありません。

現実のUDLでは、特に外部から来た人からの、ある意味で無遠慮とも言える励ましに対して、感情的なトラブルに発展したケースも少なく無いのです。


では、実際に『寄り沿う』とは、どういうことなのでしょうか。そのことと、3つ目の方法は、次回お送りします。


■当記事は、カテゴリ【シリーズUDL】です。


2016年3月 4日 (金)

話題の『地震予知』は本当に当たっているのか?(#1152)

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3/4から過去7日間、本州中部周辺だけでもこれだけの地震が起きている(無感地震含む)当図は東京大学ハーベスト震源図からお借りしました


当記事は、【地震予知検証】チートをやれば誰でも勝てるけど(#1145)からの続きとなります。


【釣場を知れば大漁確実】
さて、管理人はある1週間の間に起こる地震を6つ『予知』し、そのうち5つが実際に起こるという、“的中率”83%を叩き出しました。しかも、良くある「○○地方」という曖昧なものではなく、県別の震源域と震源深さまで、正確に“的中”させたのです。

その理由は上記リンク記事で述べた通り、震災後約5年に渡って毎日の地震をモニターしている経験則の積み重ねから、今最も地震が起きやすいと考えられる震源域を6つピックアップした、というだけのことです。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たりますが、撃ち方が上手ならば、数撃たなくても当たります。これを釣りに例えれば、管理人は釣場を毎日見ているので、釣り針を落とす前に、魚がどのスポットのどの深さに集まりやすいか知っていた、ということです。

そこへ、魚が良く食う餌をつけた釣り針を正確に落としたのですから、釣れて当たり前。このように、東日本大震災後の地震多発状況では、小規模地震の発生を統計的に予測することは、実に簡単なことなのです。

それは東日本大震災後の地震多発期だからこそ、ということでもありますが、今の日本列島は、それくらい“傾向がはっきりした地震”が、毎日のように多発しているのです。


【“主”はいずこに?】
しかし、この方法では決定的にわからないのが、“主”(ぬし)の存在。その釣場の伝説の大物です。すなわち、巨大地震。

大体この辺りにいそうだというのはわかっても、そこへ魚探かけてもまず見つからない。でも、時々強い当たりをみせて餌を持って行ったり、魚影をちらりと見せたりするから、いるのは確実。それを地震に例えれば、巨大地震を起こせるエネルギーが蓄積されていることを示す変動や、巨大地震と同様のメカニズムで発生を繰り返す中小規模地震のようなものです。

世界の地震学者は、釣りで言えばその釣場の“主”を確実に釣り上げるための理論や技術を確立しようと、研究を続けているわけです。しかし、そこにいるのが確実な“主”が伝説になるが如く、その姿はなかなか掴めません。


【“主”ついに尻尾を掴まれる?】
震災から間もなく5年。そんな昨今、注目されている『地震予知』手法があるのは、皆さんご存知でしょうか。特にメディア露出が多いのが、下記のふたつかと。当ブログ、予告した通りすべて実名表記に変えます。

■東京大学名誉教授 村井俊治氏主宰の有料メルマガ「MEGA地震予測」及び、研究主体のJESEA地震科学探査機構

■電気通信大学名誉教授、一般社団法人日本地震予知学会会長の早川正士氏が顧問を勤める有料サービス「地震解析ラボ」

このお二方、地震、いや自信たっぷりに「地震予知は可能である」と、日々『予知』情報を有料で流しており、自ら“的中”を華々しく宣言するは、それにメディアが食いつくわで、かなり話題ではあります。

でも、“的中”連発をちょっと検証してみると、実は全然当たっていないとしたら?

科学者ではない管理人は、GPS による地殻変動の観測(村井氏)や電離層の変化の観測(早川氏)の理論が正しいとか間違っているとかを判断する基準は持ち合わせておりません。

ただ確かなことは、『両氏の方法による地震予知は、ほとんど当たっていない』のです。このことを指摘するのは管理人だけではなく、少なくとも科学的、統計的視点を持った真っ当な人々からは、かなり前からインチキとさえ言われているものです。

既に理論の正否に関する論争ではなく、事実上の『予知』精度の低さ(もしくは無さ)を粉飾する詭弁の積み重ねに、一度は期待した人ほど落胆し、かなりの割合がアンチに変化しているのです。それでも話題性は高いのでメディアがアオり続けており、ビジネスとしては拡大し続けているようですね。もう、後には戻れないでしょう。


【とりあえずの証明】

これらの『地震予知』法における問題を細かく検証するのは、文系人間の管理人には骨が折れます。そこで、地球物理学や統計学に造詣の深い方の分析なども紹介しながら、「なぜインチキと言われるのか?」を検証して行きたいと思います。

その前に、「ちょっと地震に詳しければ、自分のルールでやる中小規模地震の『予知』など簡単だ」ということを、管理人自ら証明してみたわけです。もちろん、またやれと言われればいつでもできますよ。80%とかはフロックでも、平均して60%くらいは楽勝で叩き出せるはずです。

とりあえず、地震発生の傾向を掴んでいれば、数撃たなくても当たる状況ですし、傾向をあまり掴んでいなくても、少し多めに撃てば当たる、それが今の日本列島における地震の状況だということを覚えておいてください。


そんなわけで、次回に続きます。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


【小説・生き残れ。】あとがきと解説(#1151)

22回に渡って再掲載させていただいた「小説・生き残れ。」いかがでしたでしょうか。

この作品は、マニュアル的な意味も持たせたフィクションです。カテゴリを「ディザスター・エンタテインメント」としている通り、あくまで大災害を題材にした「娯楽作品」というスタンスで書きました。岩城衛と三崎玲奈が大地震に見舞われた地下鉄の中で出会い、それから半年とちょっとのうちに、なんと計4回も大地震に遭遇するという、あり得ない設定ではあります。一度の災害を描くだけでは遭遇する状況が限られますので、そこはフィクションであることを最大限に利用しました。

主人公の岩城衛、お気づきの方もいると思いますが、岩手の岩、宮城の城をつなげ、読みは福島県浜通りの旧名「磐城」と同じという姓にしました。ならば名前は「まもる」だろうなという、ある意味安易な命名ですが、管理人なりの、震災被災地への思いを込めました。

三崎玲奈には、特に意味は持たせていません、語感で決めました。芸能人に同じもしくは似た名前もありますが、特に関係ありません。なお、読みは「れいな」です。

ちなみに、ふたりともいわゆるアラサーの独身ですが、管理人がこの作品のターゲットとして想定したのが、その辺りの年齢層なのです。様々な仕事の前線にいて、身軽にあちこちに出かけ、繁華街などに出ることも多い、つまり最も多くの「状況」に遭遇しやすい層と考えて、そのような方に役立つ内容にしようと考えました。

構成的に管理人が狙ったのは、いわゆる災害小説とSFチックなライトノベルの中間辺りの線。あまり重苦しくならないように、状況のリアルさや詳細さにはあまりこだわらず、あくまでも大地震に遭遇したいち個人の心理や行動にフォーカスした構成です。犠牲者の描写も、意識的に避けました。

しかし、地震発生時の状況や、その時に取る行動、玲奈が語る災害の知識などに関しては、現実に即してリアルに描いています。お読みいただいた方が同じような状況に遭遇した時に、彼女たちの言葉や行動を思い出し、それを真似ていただければという思いがあります。


玲奈をはじめ、衛以外の主な登場人物はすべて元自衛隊員ということに違和感を感じられた方も多いかもしれません。管理人は元自衛官というわけではありませんが、自称「自衛隊サポーター」で、現職や予備自衛官とも交流させていただいていることもあり、さらにはご想像の通り結構ミリヲタでもありますので、そちら方面が得意という理由もあります。

要は、訓練された人間が取る的確で敏速な行動と、気持ちは熱いものの、能天気で知識不足の衛ができることとの対比をしたかったことと、的確な判断や行動無くして、非常時に自分を守ること、ましてや他を救うことがいかに困難なことかを描きたかったために、そのような設定にしました。

なお、自衛隊に関する専門的な記述や描写の部分は、あくまで管理人の知識だけで書きましたので、実際と異なる部分もあるかと思います。お詳しい方、その辺は大目に見てくださいw


最終章では、ふたりはついに「東海地震」に遭遇してしまいます。余談ながら、管理人がかつて通った中学校の修学旅行は、静岡方面が恒例でした。しかし当時、東海地震の危険が大きく叫ばれ始めために、東北方面に変更された経験があります(これだけで歳がバレますね)

そんな原体験もある関東在住の管理人としては、大騒ぎしたのにあれからずっと起きない「東海地震」に、ある意味で特別な思いがあります。東京大地震や富士山噴火を描いた方が一般受けするのでしょうが、当初から「東海地震」をメインの題材にすることを考えて、玲奈の出身地を静岡に設定しました。

しかし今にして思えば、管理人が中学生当時も宮城沖地震などが起きていましたし、東日本大震災級が起きてもおかしくない状況もあったわけです。地質学的時間軸では、数十年など一瞬に過ぎません。そう考えると、どこで何に遭うかは本当に運次第であり、それを意識的に避けることなど、少なくとも今の人間には不可能なのだという思いを強くします。我々ができることは、大災害に遭うという前提の意識と備えだけなのです。


管理人の究極の思いは、津波避難所で玲奈の前に立ちはだかる老夫婦の言葉に凝縮されています。なお、空襲からの避難中に背負った赤ちゃんを落としてしまったという話は、当時実際に少なからず起きた実話を元にしています。そのような、命がいとも簡単に消えて行く極限の状況を体験した老人の
「人間の気持ちや力だけではどうにもならないこともあるんじゃよ。無駄に死んではいかん」
という言葉が現実です。いくら備えていても、大災害への対策に絶対は無いのです。

すなわち、最後には可能性の問題なのです。どうにもならない状況に陥る可能性を減らし、どうにもならなくなる前に危険から離れ、どうにもならないと思える状況の中で、一縷の希望を見いだす可能性を大きくすること。それは普段からの正しい意識、正しい知識と正しい行動のみによって実現されるということであり、その象徴として、十分に訓練された元自衛隊員を登場させたわけです。


ラストシーンで、衛は新しい自分と生活に向かうことを決意して、玲奈にプロポーズします。傷つき、生活の糧を失った恵子と須田も元気に立ち上がり、声を合わせて、新しい状況に向かって一歩を踏み出します。「状況開始、状況終了」とは、自衛隊で演習などの開始と終了時に、司令官が発令する用語です。

大災害に打ちのめされた中から立ち上がる人間の強さと、「次」へ繋がる希望を感じさせて終わりにしたかったので、あのようなエンディングになりました。

改めまして、お読みいただいてありがとうございました。


よろしければ、この作品のご感想、ご意見などをコメントかメールでお寄せください。もしかしたらこの四人が、またどこかの「状況」で活躍する時が来るかもしれません。


■当記事は、カテゴリ【ディザスター・エンタテインメント】です。

管理人からのお詫びとおしらせ(#1150)

日頃より『生き残れ。Annex』をご愛読いただきまして、ありがとうございます。

2月25日からもう1週間以上も、何のおしらせも無く更新が途絶えてしまっており、大変申し訳ありません。

実は管理人、2月末に久しぶりに札幌に行っていたのですが、かの地でのハードワークが祟ったのかw、関東に戻ってからインフルエンザを発症してしまいました。

そんなわけで、しばらくお休みをいただいた次第です。しかし、おかげさまですでに快方に向かっております。ブログ更新も、そろそろ再開して参りますので、引き続きご愛読の程、よろしくお願いいたします。

ところで今回の札幌行の理由、後ほど久しぶりに『○○のスタジアムで××を考える』シリーズ記事をお送りする予定と言えば、おわかりいただける方もあるかとw

何しろ、皆様もくれぐれもご自愛ください。


ここで、もうひとつお知らせです。

当ブログでは、『防災の専門家』の大ウソや机上の空論、知識・能力不足などを、細々と指摘しております。

そのような記事では、対象の人物等を、基本的にイニシャルで表記してきました。

しかし、今後は人物、団体名等を、すべて実名表記することにします。

これは、震災から5年経った今でも“不適格専門家”が後を絶たないどころか増えてさえいること、根拠も精度も曖昧な“地震予知法”が、メディアや企業を巻き込んで大手を振りはじめているという状況に、強い危惧を抱いているからです。

「テレビでおなじみ」だの、行政や企業の防災ナントカを歴任したとか言う肩書きで大ウソや机上の空論を言う輩は数多いですし、東大教授(元、名誉含む)とかでも、商売やメンツの為などで大ウソをつくことも多々あるのが現実なのです。

そういうものを、今後は殊更細かく指摘して参りたいと思います。もちろん、常に異論反論ご意見は大歓迎ですが、感情的、非論理的な暴言や誹謗中傷の類は一切無視し、削除させていただきます。

乞うご期待、というのも変ですが、やっぱりご期待くださいw

■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。

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