村井地震予知の“インチキ”を考える【10】(#1169)
今回は、ちょっと時間を遡ります。今回も『週刊P』の印象操作による“的中偽装”です。
これも的中だとでも?
2013年4月11日発信のメルマガで、村井氏は『和歌山県での地震』の可能性を指摘していました。
すなわち、和歌山県内の電子基準点に、目立つ動きが見られたということです。 しかし、和歌山県をピンポイントで指定していたわけではありません。和歌山県は、村井氏の言う“常設”の警戒地域である『南海・東南海警戒ゾーン』に全域が入っているので、いつどこで起きても“的中”と言えるのですがw
和歌山は多発震源域
東日本大震災(東北地方太平洋地震)から約4ヶ月後の2011年7月5日、和歌山県北j部の深さ10kmを震源とするマグニチュード5.4の地震が発生し、最大震度5強を観測しました。
この地震は、震災による大規模な地殻変動によって誘発された、広い意味での震災の余震と言えます。それ以来、和歌山県北部震源域では小規模地震が頻発するようになり、時々震度4~5弱が発生するという状況が続いています。
上図は、京都大学発表の震源図をお借りしたもので、和歌山県北部で震度5強が発生した7月5日を含む、2011年7月1日から7日までの地震発生状況(無感地震を含む)です。
和歌山県北部に震源深さ10km以浅を示すピンク色の点が集中している部分がありますが、これは震度5強の余震であり、その後和歌山県北部で発生する地震の震源域と重なります(震度5強の本震を示す大きな点は、多発した余震を示す点に隠れてしまっています)
このように、和歌山県(主に北部)は、東日本大震災後には西日本における“必ず起きる”震源域のひとつとなっています。村井氏がそれを意識したかどうかは定かではありませんが、とにかく和歌山県の名前が上がりました。
ここでも強運を発揮か
すると、メルマガ発行の2日後の4月13日、和歌山県からは紀伊水道を挟んで対岸となる、淡路島中部、深さ約15kmを震源とするマグニチュード6.3の地震が発生し、最大震度6弱を観測しました。
面白いことに、この地震は“的中”と表現されず、ただ『異常変動』の近くで地震が起きたということが記されて、なんとなく“的中”したという印象になっています。
以下、翌年にこの地震のことに触れた、『週刊P』の記事を引用します(太字部分)
昨年(2013年)4月11日号のメルマガでは、和歌山県での地震の可能性を指摘したところ、2日後に対岸にある淡路島で震度6弱の地震が発生。
このように、記事ではさらっと流しています。いかにも「当然のように当たった」というニュアンスですが、“的中”とは言っていない。
恐らく、和歌山県は村井氏が『警戒ゾーン』とした、他の地域と同列に挙げられたうちのひとつなのでしょう。村井氏、やたらと広範囲を『警戒ゾーン』にしますからwつまり、『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』が、ちょっと成功したようなものでしょう。
これなど、大多数の『ハズレ』を無視して、ごく少数の『アタリ』だけをピックアップして騒ぐという、実に単純な印象操作です。
このように、後付けの印象操作はいかようにも可能ですが、確かに水平距離とタイミングだけ見れば、和歌山県内の『異常変動』と、関連があるように見えないこともありません。
メカニズム無視なら何でも言える
村井氏は、自分は学者ではなくエンジニアだから、理論的裏付けが完全でなくても、現実に起こった事象を重視する、というようなことを言われます。
もっとも、村井氏の言う“現実”は実はノイズであり、本当は何も起きていないのですけどw
さておき、その考え方が、無茶苦茶な理屈を押し通す体の良い言い訳にもなっています。ここで、淡路島周辺の断層図を見てみましょう。
まず、上に掲載した図に、西日本を構造的に南北に分断する、中央構造線(巨大断層)の線を重ねてみます。
赤い矢印は、和歌山県北部の多発震源域を指しています。
次に、淡路島付近の詳細図を見てみましょう。『地質図Navi』からお借りした図表です。
地図の下を走る、右上がりの直線的な断層列が中央構造線断層帯で、和歌山県と大阪府の府県境にほぼ重なります。中央構造線の南側(画像下側)が和歌山県北部です。
ご覧のように、和歌山県北部と淡路島は距離的には近いものの、両地域は中央構造線(巨大断層)で分断されており、地質構造的な連続性はありません。
奈良・和歌山県境付近の断層は、中央構造線に沿った方向が主で、淡路島付近のそれは中央構造線に対して斜めに交わる方向であることからしても、地下の構造に連続性が無いのは明らかです。
ですから、淡路島ですら観測されていない島内の浅い断層の動きが、中央構造線を挟んだ対岸の和歌山県で、それも地表面の急激な動きとなって現れるということは、全くあり得ないのです。
しかし、そもそも地面は村井氏が主張するようには動いていないわけで、仮に地盤構造に連続性がある場所でも、これも村井氏が主張するような、前兆現象が起きることは無いのです。
これなど、地震が発生したタイミングと水平距離の近さだけからこじつけた、メディアによる強引な印象操作の結果にすぎないということです。
よって、村井氏が淡路島の震度6弱を“的中”させたという事実はなく、これもハズレというか、下手な鉄砲の乱射が当たっただけの、最初から無関係の事象です。
すいませんまだ続きますよw
■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。
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コメント
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またまた出しゃばります。
この2013年4月の淡路島の地震は、JESEAの「検証 2013年に発生した震度5弱以上の地震について」というページで地震当時の方法では捕捉できなかったが現在の方法では捕捉できた例として挙げられています。
根拠となった和歌山県での変動というのは広川という観測点のデータです。地震は4月ですが、1月に5cm超2回、4cm超3回の異常変動があったとされています。それで4月11日号のメルマガではこのあたり(和歌山)で震度4程度と予測したようです。
広川はごく近くの木があるとてもノイズの多い観測点で、私が計算してみたら前年の2012年には異常変動の4cm超が19週もありそのほとんどが5cm超、8月には10cm超という週もありました。震源から離れたノイズの特に多い観測点1点の変動をもとにしたこうした「検証」とやらは、本当にばかげています。
昨年の夏頃以降、JESEAでは多くの観測点を受信状態が悪くてノイズが多いという理由で解析から除外しています。これはほとんどジョークみたいで笑ってしまいますが、広川もそれらの除外点に含まれています。
投稿: ちょっと立ち寄りました | 2016年4月 6日 (水) 20時17分
>ちょっと立ち寄りました様
毎度有用な情報をありがとうございます。
JESEAのサイト、改めてチェックしてみます。内容は大体想像がつきますが。
広川は、2011年の和歌山県北部地震で震度5強を観測した、震源にかなり近い場所ですね。でも、そのことに一切触れないで、和歌山県全域を警戒してしまうし。
確かに、ごくまれに和歌山県南部でも小さく揺れることもありますが、まあそんなことは考えていないのでしょうけど。
中央構造線を超えた淡路島の地震が、今なら和歌山でわかると強弁しているのも凄いなと。
おっしゃる通り、たった1点の『異常変動』で判断する(せざるを得ないのですが)という時点で、マユツバもいいところです。測量やっていると、こういうことは良くあるのでしょうか。翌日計ったら10cm高くなっているとかw
国土地理院は、ノイズの原因として樹木の繁茂だけをサイト公表していますが、今後他の原因も公表するとのこと。さて、その後どう変わるか楽しみですねw雨と雪の影響を除いたら、もう身動きとれないでしょうにw
伝聞ですが、直近2回のメルマガは「警戒点に追加も削除もなし」という味もそっけも無いものだそうです。
NTTドコモの提携以来、一気に批判の声が高まったので、しばらくホトボリを冷まそうとしているとしか思えないのですが。所詮はその程度なのでしょうけど。
さて、その後どういう動きをするのやら。そろそろ、メディアが態度変えると思うんですよ。他人ごとながらそれが一番怖いww
今後ともいろいろご教示いただければ幸いです。よろしくお願いします。
投稿: てば | 2016年4月 7日 (木) 11時00分