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2016年4月11日 (月)

村井地震予知の“インチキ”を考える【13】(#1173)

今回は、『週間P』記事から見る村井氏のインチキ“的中”ネタの最後として、村井氏の注目度を一気に引き上げた、あの地震についてです。


実質的に震災後最大級の地震


2014年11月22日の午後10時8分頃、長野県北部、北安曇郡白馬村、深さ約10kmを震源とするマグニチュード6.7の地震が発生しました。

最大震度は長野市などで震度6弱を観測し、震源近くの白馬村役場などでは震度5強を観測しました。

しかし、震源である神城断層のほぼ直上付近に当たる白馬村神城地区では、建物の被害状況などから、実質的に震度6強、もしくはそれ以上の激しい揺れとなったと考えられます。

この地震は、『長野県神城断層地震』または『長野県北部地震』と命名されていますが、当記事では以後『神城断層地震』と表記します。

下図は、気象庁の報道発表資料からお借りした、推計震度分布図です。
Kamishiro1
この図に示された公式の記録では、震度6弱が最大の揺れでしたが、黒い×印で示される震央付近では、震度6弱では説明できない規模の建物被害が出ていますので、震源直上の実質的震度は震度6強以上と判断されるわけです。

仮に、実質的な最大震度が6強以上だったとしたら、東日本大震災(東北地方太平洋地震)後の地震としては、最も揺れが強かった地震のひとつと言えますし、揺れによる構造物への破壊力は、もしかしたら震災後最大だったかもしれません。

そんな大地震を、村井氏は「ピンポイントで的中」させた、ということになっており、それ以来一気に『有名人』となったようですね。

さて、それは本当なのでしょうか(という書き方も今更イヤらしいですねw)


無根拠データと下手な鉄砲の併せ技


基本的にはそういうことですが、これに『週刊P』のレトリックが加わると、さらにもっともらしく見えるという話です。

『週刊P』の2014年12月の記事で、村井氏はこの地震が起きる約2ヶ月半前、2014年9月8日発行の『週刊P』の記事内で、『甲信越・飛騨地方は今年(2104年)に入ってから隆起沈降を繰り返していることから警戒』として、『飛騨・甲信越・北関東を警戒ゾーンに指定』しているとされています。

さらに(神城断層時地震で)『特に被害が大きかった北安曇郡白馬村を「異常変動地点」として示していた』とも。

そして記事では長野県神城断層地震の発生を受けて、『ピンポイント的中の連発という事実に驚くほかはない。』と結んでいます。 既に“ピンポイント的中”を、事実として断定してしまっているわけですよ。週刊誌ならではの荒技ですね。

インパクト優先で事実はどうでも良い“熱愛発覚か?”みたいな記事とかと同じノリかもしれませんが、人命がかかった、さらには大きなカネが動く話が、その程度で良い訳がない。

検証してみましょう。


“インチキ”の基本おさらい


村井氏の”インチキ予知”手法のあらましは、これまでの記事で述べて来ましたが、ここでおさらいを。

電子基準点のノイズを地表面の『異常変動』だと決め付け、起きてもいない変動を根拠に、非常に広範囲を『警戒ゾーン指定』する。

大きな地震が起きる可能性があるのは、『異常変動』が観測された直後から半年くらいの間という、非常に長い期間を設定する。『異常変動』とされるノイズは頻発するので、『警戒ゾーン』指定は、ほとんど途切れることがない。

『警戒ゾーン』は、自説による『異常変動』の有無に限らず、実際に地震が多発している地域を広くカバーしていて、それに関しての合理的説明は無い

こんな感じで、ほぼどこで起きた地震でも“的中”とコジつけられる体制ということです。まあ、どこが『予知』(ご本人は途中で「予測」と言い換えておりますが)なんだという話です。

それに、メディアの“アオりが加わります。以下、解説します。


時系列無視で印象が変わる


上記の『週刊P』記事、時間的な記述はひとつだけ、記事掲載誌が「2014年9月8日発売」というものだけで、一般的な感覚では、情報はすべてその時点の最新情報という印象になりますね。

しかし、そうではありません。

まず、これは語るに落ちたとツッコミたくなりますが、『甲信越・飛騨地方は今年(2104年)に入ってから隆起沈降を繰り返していることから警戒』と。

記事掲載時点で既に『異常変動』を検知してから最長9ヶ月が経過しており、地震の発生までは最長10ヶ月以上あります。全然「数ヶ月以内」では無いのに、地震までの経過期間を明記せずに、無理矢理“予測されていた期間内”という印象を導いています。

しかし、村井氏の言う大規模な『隆起・沈降』は、電子基準点のノイズなわけで、元来存在しない現象なんですけどね。


次に『警戒ゾーン』とされた地域ですが、「飛騨・甲信越・北関東」だと。地域名だけだとなんとなく納得してしまいそうですが、具体的に挙げてみましょう。

岐阜県北部・山梨県・長野県・新潟県・群馬県・栃木県・埼玉県北部

とまあ、とんでもなく広い範囲を『警戒ゾーン』のひとつとしているわけですが、その中には、多発震源域がいくつも存在します。

そして、村井氏が『特に被害が大きかった北安曇郡白馬村を「異常変動地点」として示していた』という記述。普通に考えれば、掲載誌が発行された、2104年9月のちょっと前くらいの印象です。

そこで、当シリーズ過去記事に掲載させていただいた、『週刊P』掲載図表をご覧ください。
Murai2
この図のデータ調査期間は、2014年7月6日から12月6日と明記されており、北安曇郡白馬村の電子基準点で、プラス8.55cmの『異常変動』があったとされています。

では、この『異常変動』はいつだったのか。上図の上下に載っている変動グラフによれば、最大7cm以上の『異常変動』(実はノイズ)が検知されたのは、ほとんどが8月であることがわかります。神城断層地震が発生したのが11月22日ですから、とりあえず、『異常変動から数ヶ月程度』と言われる範囲内には入っていますね。

ただ、2014年(平成26年)8月は、当シリーズ記事で何度も採り上げているように、月初から月末にかけて、台風12、11号連続襲来と大気状態の不安定化による、公式に『平成26年8月豪雨』と命名された程の豪雨の月であり、上図でもわかるとおり、各地で『異常変動』(ノイズです)が頻発しているのです。

すなわち、白馬村電子基準点の『異常変動』は、周辺の他地域も含めて、豪雨の影響によるノイズである可能性が非常に高い、というより、地震も無いのに8cm以上隆起し、すぐに沈降するという地球物理学的にあり得ない動きを示しているという時点で、ノイズ確定と言っても差し支えないのです。


上図でもうひとつ注目は、記事だけ読むと『飛騨・甲信越・北関東警戒ゾーン』は、2014年に入ってから指定されたようなイメージですが、もっとずっと前から”警戒されっぱなし”です。

この地域には、以前から村井氏はやたら拘っており、ほとんど“常設”の『警戒ゾーン』となっているのです。もちろん、2016年の現在も。

しかし、2014年末に掲載された上図では、『飛騨・甲信越・北関東警戒ゾーン』が消滅しています。その理由は良くわからないのですが、11月に神城断層地震が起きたので、恐らくエネルギーが放出された(村井氏は地震学は無視しますが、こういう表現は使います)とかで、警戒解除したということかもしれません。

それにしても、長野県北部の地震だけで、他の地域まで全部警戒解除なんて、ほんとバカにしてるのか、というくらいの大雑把さですね。せめて「ピンポイントで警戒解除」してくださいよww


このように、無茶苦茶な理屈にメディアが印象操作を加えた記事で、導かれる結論が「ピンポイント的中の連続に驚くほかはない」ですよwこの地震に関しての“ピンポイント”は、電子基準点の『異常変動』(しつこいですがノイズです)と大きな地震が、同じ白馬村で起きたということだけ。

それを、ここまで針小棒大に膨らませて、「ピンポイントで的中」というイメージだけを一人歩きさせたいわけです。そして残念なことに、その試みはある程度成功を収めているようだ、ということです。今のうちはね。


正直、疲れました


ここまで、村井地震予知の“インチキ”を検証するシリーズを続けてきましたが、こんな児戯にも等しいと言ったら子供に失礼、というような理屈を、重箱の隅をつつくように検証することに、いささか疲れました。

もちろん、まだネタはたくさんあります。でも、何度やっても結論は同じ。全ての例で、同じような“インチキ”を洗い出すことができます。

そんなわけで、とりあえず次回に軽くまとめをやって、村井氏ネタは終わりにしようと思います。

本編最後にひとこと。


それでも、あなたは信じますか?


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


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コメント

お疲れ様でしたw

この地震について言えば、ノイズである「異常変動」と大きな地震が同じ白馬村で起きただけ、というお説、まったくそのとおりと思います。

私自身なんとか電子基準点のデータを処理できるので少し付け加えさせていただきますが、白馬で週間異常変動が8.33cmになったのは、2014年7月13日から19日の週です。前の週も次の週も4cmを超えています。8月豪雨よりは少し前ですが、気象庁の過去の天気図などを見ますと、このころも日本中が大荒れでした。あんなばかばかしい変動が地殻の動きなどであるはずもなく、ノイズそのものです。

JESEAの地震予測のような低いレベルのでたらめになぜ多くの人が騙されてしまうのか、やはりあの先生の肩書が効いているのではないでしょか。ことあるごとに「測量学の世界的権威」とかを振り回すのですから、そんな先生が地震学はもちろん電子基準点についてすら素人同然というかそれ以下の知識しかないとは、多くの人は信じないでしょう。

現時点では、JESEAも自分たちのやっていることがインチキであることは承知しているのではと、私は疑っています。広告塔である先生のマスコミやネット上での発言がそれを知った上でのことなのかそうでないのか、どちらにしても何か哀れです。

村井氏の地震予知は、広域に地震予知を出し、実際の地震がかすったら「予知成功!」と言い出します。
これって、複数の地震予知を乱発して、一つが当たったら全部当たったと言うようなものですよね。

御存知かと思いますが、気象庁の地震速報では、全国を188の区域に分けて震度を発表します。おそらく、これが震度を発表する際の最も大きな区切りではないかと思います。
『神城断層地震』の時に村井氏の地震予知は、以下の15区域に地震予知が出されていたことになります。
 栃木県北部、栃木県南部、群馬県北部、群馬県南部、栃木県北部、栃木県南部、
 埼玉県北部、埼玉県秩父、新潟県上越、富山県東部、山梨県中・西部
 長野県北部、長野県中部、長野県南部、岐阜県飛騨

では、この中で震度5弱以上になったのはどこかと言うと、長野県北部と新潟県上越の2区域だけでした。
的中率は、わずか13%です。
ちなみに、「飛騨・甲信越・北関東」と言っておきながら、「飛騨(岐阜)」の最大震度は震度2、「甲信越」の「甲州(山梨)」は震度3、「北関東」も震度3でした。
当たったと言うより、外れたと言う方が正しいですね。


ところで、電子基準点の異常変動を、他の測量方法で検証できないものでしょうか。
測量界の権威である村井氏なら、特定の一地点に限定すれば、リアルタイムでも1cm単位の測量は可能だと思うのですが・・・

>ちょっと立ち寄りました様

お読みいただいて、ありがとうございます。また、毎度貴重な情報のご提供にも感謝します。

これ以上やっても一緒なので、この辺でひと区切りつけて、後は不定期ネタとしてやって行きます。

この問題に対する私のアプローチ方法は、非常に荒っぽいものです。専門家の方々は、データの裏付けが無ければ反論が難しいでしょうし、いろいろお立場もありましょう。しかし私の場合は、あくまで市井のいち防災研究者という立場で、ノンジャンルの情報と知見を取り込んで、ある意味で『素人』の強みを最大限に生かしているつもりです。

反論に使った内容も、科学的に本当に正しいか?と言われれば、それを証明はできませんし、とにかく隙だらけの論理展開であることは、自覚しております。でも、大筋において正しい方向を向けているかとは思っていますが。

そういう方法が、基本的には村井氏と似たものであることも自覚していますwただ、ウソはつかない、間違いは間違いと認める、しかもビタ一文儲からない、という点で村井氏とは違いますw

過去のシリーズ記事【防災の心理】でもかなり詳しくやったのですが、不安な時には誰もが、わかりやすいヒーローを求めているのだと思います。そして、こういう世界で最強のブランドが『東大』だという指摘もしています。

東大の方々は、学術的な能力が最高レベルという証明ではありますが、それが人格のイメージにまでも波及しちゃうんですね。誰もがウソはつかない、世のため人のため、カネ儲けなんか考えない、みたいな人格者なんだと思い込むような。もちろん、そういう方の方が多いのでしょうけど。

さらに、名誉教授というのがまたクセもので、要は現役ではない、好き勝手なことができる立場の名誉職なのに、世間のイメージは「教授より上位」なんですよねw

私がここまで言い切ってしまうのも、実は私の周りに東大関係の方がそれなりにいるので、いろいろ見ているのもあります。もちろん私は、能力的にそのレベルにはありませんがw

社会学的には、とても面白いと思うんですよ。東大名誉教授が、国が設置したシステムを使って、限界が見えた従来の地震予知法を覆す、だれもがわかりやすい『予知』をして、メディアを利用して『的中連発』のイメージを捏造する。

しかも、従来の地震学者はアテにならない、自分のやり方が正しいのだという対立軸をきっちり作り、止むに止まれず世の中のために立ち上がった、孤高の科学者というイメージも作る。

私らのような批判者も、下手をすれば「真意を理解しない愚か者の攻撃」として、逆宣伝に利用される可能性もありますが、だからこそ、下手なツッコミをされないように、これだけ微細に入ってやったというのもあります。

なにしろ、これは見事なブランディングなんですね。みんな大好きな「ブランド」や「イメージ」がずらりと並べられていて、ある意味で、「ウケて当然」なんですよ。村井氏の考えだけじゃなく、プロデューサー的な人物がいるのかもしれません。

村井氏とその取り巻きが、自分らの理論がインチキだと認識している可能性も考えています。本編で詐欺罪の成立要件に触れたのは、そういうことです。もしインチキだと認識しながら、正しいものとして販売したら、詐欺罪が成立します。

でも、月216円のために告発する猛者も、「被害者の会」みたいなのもあり得ないでしょうがw

何にしても、もし世の中が批判の論調になったら、取り巻きは逃げて村井氏一人が責められることになりますね。もし、担ぎ出されただけなのならば、悲惨な話です。そうでなくても、晩節を汚すことになるんじゃないの?という感じではあります。

これから、国土地理院の対応や、公式の場での批判など、どんどん外堀を埋められて行かれてますね。さて、どこまで突っ張れますやら。

最後になって恐縮ですが、白馬村の『異常変動』が7月だったというご指摘、ありがとうございました。しかし多雨だったということで、私が論理破綻せずに済みましたw

改めまして、お立ち寄りいただきましてありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


> 伊牟田勝美様

毎度ご意見ありがとうございます。

本当に、この程度の理屈が堂々とまかり通ってしまうことに、ある意味で恐怖を感じます。前のコメント主様への返信でも触れましたが、いろいろな条件とイメージが世間の欲求とぴったり附合したことによる、強力なブランディング効果が生まれているように思います。

結果、あの独裁者が言った「大衆は小さなウソは見抜くが、大きなウソには騙される」という流れになっているのかなと。そして、これは良く言われる「ウソも繰り返せば本当になる」という。

そういう流れに一矢を報いたくて私はこういうことをやっておりますし、伊牟田様をはじめ、表で反論している方々も、皆そうではないかと思っております。この流れがさらに広がって行けば喜ばしい、というより、そうなってもらわないと困ります。

ご教示いただいた気象庁の地震速報発表区域を見ると、改めて村井氏の理屈が無茶苦茶であることがわかります。どこをどうやったら、地盤に何の連続性も無いあれだけの範囲に同じ影響が出るという理屈になるのでしょうか。

かつて、ケネディ大統領の暗殺を予言したとされて大もうけした占い師がアメリカにいましたが、実は暗殺されると予言(もちろん当てずっぽうですが)したのはニクソン副大統領だったのに、世間のうわさとメディアのアオりで、いつの間にかそうなってしまったと。

それも、大統領暗殺という社会不安の中で、誰もが「ヒーロー」を求めた結果なのでしょう。

私など、「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」をやっている手合いは、みんなそれを狙っているのかなと考えております。一発当てれば、そのイメージで大もうけできると。でも、これだけネットが発達した時代に、昔ような大もうけはあり得ないんですけどね。

なにしろ、村井氏があんなくだらない話を強気で言う裏には、だれかプロデューサーがいるんじゃないかと思ったりもしています。操り人形だったら、哀れですよ。

ところで、測量というと、私のような素人はトランシットで赤白の棒を見ているイメージしかありません。確かに、電子基準点の動きを他の方法で計測できたら、面白いことになりそうですね。

ただ、そのためには絶対的な固定点が必要なわけで、結局は衛星との距離を測るのが一番正確なのかなと。電子基準点とは本来そういうためにあるものなのに、ひとりのMADサイエンティストのおかげで、妙な話になってしまいますね。

このたびはいろいろご意見を頂戴しまして、ありがとうございました。またブログも拝見します。今後ともよろしくお願いいたします。

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