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2016年4月 1日 (金)

村井地震予知の“インチキ”を考える【8】(#1166)

当シリーズ前回記事(#1164)から続きます。


かなり“持ってる”なあ


本題とはちょっと離れますが、村井氏、かなり”持ってる”と感じることが多々あります。

つまり、実に良いタイミングで物事が起こるという、強運をお持ちのようです。 次の話は、そんな例です。でも、あくまで運ですけどねw


なぜ栃木だけなんだ?


これも、『週刊P』の記事を、要約の上で引用させていただきます(太字部分)

(2014年)9月3日午後4時配信のメルマガでは、長野県、群馬県、栃木県、岐阜県の山脈地帯に、まとまって『異常変動』が見られ、栃木県を「要警戒」としました。

4県に5cm超の(電子基準点の)変動が見られ、要警戒と解説。

これだけ広範囲に『異常変動』があったのに、なぜ栃木県だけなのでしょうか。


やっぱり“持ってる”


2014年9月3日午後4時配信のメルマガの直後、なんと午後4時24分に、栃木県北部、震源深さ10km、M5.1、日光市で最大震度5弱という地震が発生しました(下図参照)。下図は、気象庁の報道発表資料からお借りしました。

Tochigi

当然ながら、これも“的中”扱いです。メルマガ配信直後と言っても、直前の異変を検知した緊急情報がヒットというわけでは無いものの、やはりこのインパクトは強烈ですね。

私がライターならば、首都直下地震でさえも直前に『予知』してくれそうな救世主登場、というイメージでアオり記事書きますよw

不思議なのは、4県で『異常変動』があったのに、なぜ栃木県だけを警戒せよということだったのか、ということです。


あの時だったのです


まず、長野県、群馬県、栃木県、岐阜県の山間部で『異常変動』が観測された理由を考えてみましょう。

当シリーズ前々回記事でも触れましたが、2014年の7月末から8月にかけては、台風の連続襲来や、大気が不安定な状態が続いたことで列島各地が豪雨に見舞われ、各地で被害が出ました。76人が犠牲になった、広島市の大土砂災害も、この年の8月でした。

この豪雨は、気象庁が公式に、地域を限定せずに『平成26年8月豪雨』と命名するほど、列島各地が豪雨に見舞われたのです。

村井氏の9月3日のメルマガに書かれている『異常変動』が、どのタイミングのものなのかは定かではありませんが、一般的に考えて8月中、それも8月後半とするのが合理的でしょう。

その8月後半は、日本気象協会の過去天気解説によれば『中旬から下旬中頃にかけては、前線が日本海沿岸付近に停滞すると共に、暖かく湿った空気が流れ込み、北日本から西日本の広い範囲で大気の状態が不安定となったため、大雨となった所があった』と、なっています。

しかし、豪雨は8月下旬だけではなく、8月1日から11日頃までの前半は、台風12号、11号の連続襲来による豪雨がありました。すなわち、2014年8月は上旬から下旬まで、ずっと各地で大雨が続いていたのです。

そんな時、『長野、栃木、群馬、岐阜の山間部』は、間違いなく豪雨でした。大気が不安定な時は、山にぶつかった暖気が上昇し、強力な積乱雲が発生しやすくなります。

そんな場所で集中的に発生した『異常変動』とは。明らかなことは、電子基準点は、大気中の水蒸気量が多いと、誤差(ノイズ)が発生しやすくなるという特性があるのです。すなわち、降雪や降雨の影響を受けやすい。

でも、その中で、なんで栃木だけを警戒としたのでしょうか。


なんだ空気読んでるじゃんw


この記事を最初見た時、管理人は軽く吹き出しました。

「なあんだ村井氏、結構あざといじゃん」という感じ。完全に自説だけで『予知』をするならば、4県を警戒としなければなりません。

しかし、岐阜は、震災直後には北部で小規模地震が多発したものの、2014年頃にはほとんど落ち着いていたし、群馬は昔から地震が少ないことで有名な場所だし、震災後も目立った増加は無く、特に山間部ではほとんど起きない。

長野は、特に震災後に北部、中部、南部それぞれで地震の増加傾向があったが、中部、南部が多めで、北部山間部を震源とする地震は少なかったのです。

これは、管理人の地震の発生状況モニター結果による、各地の地震発生傾向です。

で、栃木はどうかというと、過去記事でやった『地震予知ゲーム』でも、管理人自身が「栃木県北部及び南部」を『予知』範囲としているように、ある意味で“いつ起きてもおかしくない”震源域なのです。


関東地方だけで見れば、栃木県は茨城県、千葉県に次いで地震が多い場所だと言えます。県内が震源となる回数で言えば、埼玉県よりずっと多いのです(埼玉は茨城南部の地震で良く揺らされます)

しかも、茨城と千葉には海底での地震も含まれますし、震災後の海側の地殻変動をより大きく受けている場所でもあります。ですから、関東における内陸地震の可能性としては、栃木県が筆頭と言っても良いわけです。

すなわち、もし管理人が電子基準点の『異常変動』データを正当なものとして判断するならば、やはり栃木県を筆頭に警戒を呼びかけたはず、ということです。

まあ、地球物理学は無視しても、その辺は良くご覧になっているんだな村井氏は、とw

で、その結果実際に、それも『警戒宣言』直後に起きちゃうのだから、ほんと“持ってる”としか言えません。でも、それはあくまで確率論であり、これも村井氏の『予知』が正しいと裏付ける根拠には全くならない、ということです。

まだ続きますよ。

■4月1日追記■
読者様から、非常に興味深いコメントを頂戴いたしました。是非、コメント欄もご覧ください。


■当記事は、カテゴリ【日記・コラム】です。


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コメント

さすがですね、「あの時」だったのです。

当時、JESEAのメルマガの内容をほとんどまるまるリークしてくれるサイトがありました。それによると2014年9月3日号の予測のもととなったのは、8月10日から16日の週の週間異常変動です。この週は4cm超が全国で107か所もあったのです。

どんぴしゃり、「平成26年8月豪雨」の影響であることは明白です。

この「異常」をもとにした「甲信越飛騨地方は要警戒」の部分は 「長野県、群馬県、栃木県、岐阜県の山脈地帯にまとまって異常変動が見られました。上記4県に5cm超の異常変動があります。要警戒です」と書かれています。

なので、メルマガの段階では特に栃木県だけ警戒と言ってたわけではなく、週間Pに載せる段階で発生した地震に合わせてあのように強調したのでしょう。

なお、メルマガのこの号では、このような異常な事態は東日本大震災以来なので「来年初めごろまでに大きな地震が起きる可能性があると考えます」とまで言っています。

続きを楽しみにしております。

>ちょっと立ち寄りました様

お立ち寄りいただきまして、ありがとうございます。

かなり意を強くいたしました。私は『週刊P』記事と他のデータを突き合わせているうちに「あの時だった」ことに気付き、かなりの確信を持って書いたのですが、貴殿から貴重な事実をお聞きできたことで、改めて腑に落ちました。感謝いたします。

それにしても、4cm超が107ヶ所ですか。村井氏とて、各方面から電子基準点のノイズ特性は指摘されてご存知でしょうに、その上で堂々と発表できる神経は、並大抵ではありませんねw

やはり、栃木を強調したのは、『週刊P』側だったのですね。週刊誌はこういうことも平気でやると憤りつつ、私がライターだったら、やっぱりやるでしょうねww

でも、村井氏は4県の中で栃木を強調するほどの、地震発生状況への見識も無い、ということもわかりました。

この度は、非常に有用なお話をありがとうございました。このシリーズ、まだまだ続きます。また、何かコメントを頂戴できれば幸いです。

ありがとうございました。

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