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2016年7月13日 (水)

【東京防災ってどうよ09】ここがダメなんだよ【5】(#1221)

『東京防災』にツッコむシリーズ、今回はもう5回目ですよ。


【048ページ】人混みはパニックに注意


Panic
人混みの中で突然走り出すなどの行動がパニックを引き起こし、事故になる危険も。不正確なうわさや譲歩の流布によるパニックを防ぐために、まわりの人に配慮した行動を心がけます

パニックについては前記事でも触れていますが、大切なことなのでもう一度。

上記の内容では、あくまで『パニックを引き起こさないように、ひとりひとりが周りに配慮した行動をしましょう』ということですね。

しかし現実には、特に発災直後の恐慌状態に於いて、他に配慮できる状態の人はごく僅か。

例えば、強い余震が来て、思わず悲鳴を上げそうになった時、周囲にパニックを引き起こすかもしれないからやめておこう、今の居場所は危険だから、別の場所へ向かって駆け出すのはやめておこう、などと考えて実行できる人がいるのですか?

ネットで流れたけど裏の取れない、正しいかわからない情報を、これが広まったらパニックになるからと、拡散や口伝をやめた人がどれだけいるのですか?

所詮、机上の空論に過ぎません。過去の災害で出来なかった、人間心理を考えれば、これからも出来そうもないことを、“そうあるべきだ”というだけで指導しても、なんの効果もありません。


君子危うきに近寄らず、だよね


そんなできもしないことより、『パニックが起きたらどうするか』を考えなければなりません。

しかし、密集した群集の中にいてパニック状態になったら、安全確実な対処法は存在しません。右往左往、猪突猛進する群集に流され、突き飛ばされ、踏みつけられるのです。

そこでできることはただひとつ。

『最初から群集の中に入らない』

ということだけです。

指定避難場所など、ある程度安全が確保されている場所ならまだ良いのですが、例えば東日本大震災後の都内で見られたように、大きな駅前に立錐の余地も無いほど集まった人々の真ん中に、あなたがいたら(実際にいた方も多いでしょう)
Kitakukonnan
Kitakukonnan2

想像してみてください。もしここで、強い余震が起きて、ビルからガラスや外装材が降り注いだら、飲食店や下水道に流れたガスに引火して爆発が起きたら、あなたが直接の被害が無い場所にいたとしても、何が起きますか?

最近多発している、空港などの爆弾テロから逃げ惑う人々の映像が、いろいろ公開されています。あれが、本当のパニックです。そして、災害直後の群集は、あれより人の密度が何倍にもなっているのです。 その中で、あなたは無事でいられますか?

ですから、群集からは常に距離を置く、駅前などで待機する場合は、群集の端の方に位置を取り、いつでも群集から最初に離れられる、行動の自由を確保しておくのです。

ただ端にいるだけでは、後から来る人々に中の方に押し込まれますので、それをかわしながら、常時同じ場所を確保しなければなりません。群集が膨れ上がれば、どんどん外側へ移動するのです。

それでは電車やバスが動き出した時に、乗る順番がどんどん遅くなる?その通りです。そこで、早く帰れることと踏みつぶされるかもしれないこと、どちらに重きを置くかは、あなた次第です。

もっとも、ほとんどの公共交通が止まるような大地震では、待っていればそのうち動き出すというレベルの話ではありませんが。


群集のパニック対処法については、当ブログでは今まで何度も指摘していますが、他にあまり同様の話を見かけません。『みんなで配慮しあえばパニックは防げる』なんて脳天気に信じていたら、ひどい目に遭うのは、あなたですよ。

でも、悲しいけどこれ、東京都の公式指導なのよねえw


【050ページ】落下物から身を守る


Falldown
住宅地では屋根瓦やエアコンの室外機、ガーデニング用プランターなどの落下で負傷したり、命を落とす危険も。繁華街やオフィス街では、看板やネオンサイン、ガラスの破片などの落下に注意しましょう。

例によって、文末が『注意しましょう』だけで、どのように注意するかが一切無いのですが、今回はそこではありません。

まず、過去の地震災害で、普通の住宅街において落下してきたエアコンの室外機やプランターの衝突で負傷、死亡した人がいるのでしょうか?というか、一般家屋のプランター、普通道路まで落ちますか? ヨーロッパみたいに、窓が花壇になっているような家など滅多にないでしょう。

仮に少数いたとしても、わざわざ書くようなことではありませんね。住宅街の主な危険は、屋根瓦の落下とブロック塀や石塀、灯籠などの倒壊であり、多くの犠牲者がでています。

一番危険なのは塀の倒壊に巻き込まれることですが、ここではテーマが『落下物』なので記述なしw(壁の倒壊に関しては別章に記述がありますが、まあ現実的ではない、理屈っぽい分類ですね)


あれを忘れてないか?


繁華街やオフィス街では『看板やネオンサイン、ガラスの破片など』となっていて、それは間違いありません。

でも現実には、それよりも落下して来る確率が高いものがあり、それはビル街ならばどこでも起こり得ます。新しいビルばかりの場所も、例外ではありません。

その危険は、外壁材。

ビル街で周りを見てください。外壁に陶器や石材などの外壁装飾用タイルや板を貼っているビル、すごく多いですよね。それがはがれるのです。古いビルならば、外壁の吹き付けモルタルなどがはがれて落下してくる可能性が、非常に高くなります。

地震でなくても、時々外壁の剥落事故がニュースになります。古いビルの場合、セメントや接着剤が劣化したり、ヒビが入っている場所が、実はとても多いのです。

比較的新しいビルでも、施工不良の場所が現実にありますし、それ以前に、外壁に化粧タイルや石板を貼り付けるという工法自体が、激しい地震の揺れに対して完全では無いかもしれません。
Building
上画像は、東京・西新宿のビル街ですが、写っているビルのほとんどが、外装材がガラスもしくは化粧タイル、石材などを貼り付けた仕上げになっています。もちろん、すべてが新耐震基準の比較的新しいビルですが、ほぼすべてのビルから、外装材が剥落する可能性があると言っても良いでしょう。

細かい理屈はともかく、過去の地震災害で、新しいビルの外壁材があちこちで落下しているのは、紛れもない現実なのです。

ですから、繁華街やオフィス街でなくても、3階建てくらいの小さなビルでも、外壁材は落ちてくるものだという前提で考えなければなりません。

注意しろではアレですから、前記事の基本的対処方法を再掲します。

■歩道などビルからの落下物の飛散範囲から離れる
■バッグ、上着や腕で頭と首への直撃を避ける
■移動時は、周囲だけでなく上方も視認する


今回はここまで。まだまだ、ネタは山ほどありますよ『東京防災』


■『東京防災』は、東京都防災ホームページからデジタル版が閲覧できます。また、PDF版や電子書籍版も無償で配布されています。詳しくは下記リンクからご覧ください。

東京都防災ホームページ

■当記事は、カテゴリ【『東京防災』ってどうよ】です。


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コメント

こんにちは。

いや〜落ち着けって言うは易く行うは難しですよね。
人間想定外のことが起きるとどうしても落ち着くことが出来ませんよね。
一概に慌てることは害だとは決めつけられないですが……

自分は突発性の何かがあるたびに習慣づけていることがあります。
それはハンカチを口に当てる、そして深呼吸する。
これだけで安心感と落ち着きを取り戻せます。赤ちゃんとかも同様ですね。
心理学的にも口に物を当てると落ち着くようです。

それと想定外のことが起きるから動転してしまうのであるならば常に想定することかなと。
作家の柘植久慶氏の作品にも常にこうきたらこう受けると想定して行動するとの記述があったような記憶があります。
なので、ここで増水したらとか自分のオフィスで地震が起きたらとかどうするとかを常に想定することは必要だと思いますね。

ただ、想定しすぎて、
この柵が腐ってたらどうしようと思って寄りかかれないとか、
さり気なくボルトを確認しちゃうとか、
マンホールが落ちたら困るしなと思って上を歩けないとか、
電車に乗っている時に急停車されると手に持ってる荷物で体の安定が取れないとかあいつがぶつかってきそうとか
まあ、生活に支障がでて酷く目つきが悪くなりそうですが……

では、更新頑張ってください。

>whokiさん

なんか文章にするともっともらしいけど、言っていることは足の遅い奴に一所懸命走ればトップになれるぞ、みたいな、なんとなくできるかもだけで、現実には絶対に無理という話ですよ。

それもひとりじゃなくて、群集みんなが落ち着くって、バカじゃねえの?ってレベルなんですね公式なのに。しかも、パニック後の対処は何も書いていないという。

過去記事にも書いていますが、私も深呼吸です。できれば3回、最低でも1回。口に何か当てると安心するというのは初耳でした。早速取り入れてみようかと。人間の本能に関わることなんですかね。

あと、声に出して「大丈夫、大丈夫、大丈夫」と言うのも効果的です。声を出すことと、自分の声を耳で聞くことの相乗効果があります。

柘植氏の著作は私も大抵読んでいて、いろいろ参考にさせてもらってます。普段から想定するといっても、いつもピリピリしていたら疲れてしまいます。普段の生活を送りながら、脳の2%くらいはいつも周囲に注意を払い、なんとなく行動を考えている、そんな感じが理想かと思います。

これは、普段から意識していれば、誰でもできるようになるはずです。ニーステロの記事にも書きましたが、最近の街中は、自然災害よりも危険要素が多いくらいなので、とっさの時に固まらないように、常にちょっとだけ意識していたいものです。

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