【東京防災ってどうよ12】ここがダメなんだよ【8】(#1226)
『東京防災』にツッコむ、気がつけば8回目。まだまだ終わりは見えません。
今回は、「なんでそうなるかなぁ」という小ネタをいくつか。
【064ページ】炊き出しは衛生的に
調理・盛り付けの前、食材に触った後、トイレの後にはせっけんで十分に手を洗います。調理器具も、使用後や作業が変わるたびに洗浄と消毒を行います。
その通りなんですけどね。
でも、炊き出しが必要な時って、大抵断水してますよね。手指も調理器具も、十分な洗浄のためには、せっけん、洗剤と流水(もちろん水道水や飲用適の井戸水など)が必要です。
調理者が溜めた水で手を洗うだけなんて、言語道断。当然ながら、手指や調理器具の消毒用に、エタノールなどの消毒剤が必須。不十分な環境の手洗いだけでは、食中毒のリスクが高まります。
てか、イラストじゃゴム手袋してるじゃないかぁぁww何故それを書かない?文字数の制限か?入手できないと問題だからか?
理想的なのは、使い捨てのラテックスやニトリルなどの手袋を、作業ごとに交換することですね。 これは、明らかにイラストレーターとの打ち合わせ不足だけど、絵の方が正しいってどういうことよw
しかしまあ、現場でできもしないことを“指導”する、これも防災界では普通にあることですね。
ちなみに、『参照→208ー211ページ』とありますが、そこには代用食器や簡易コンロの作り方だけで、衛生の話は一切なし。全く無意味なので無視します。
【065ページ】感染症の予防
風邪、インフルエンザなどの感染症が流行しやすくなります。こまめに手洗い、うがいを励行します。水が出ない場合、可能であれば消毒用エタノールを用意できれば安心です。
安心じゃないんだよ。
まず最初に大切な知識を。風邪やインフルエンザなどの感染経路の大半は、実は喉からではなく、ウイルスが付着した場所に手で触り、その手で食品や目や鼻などの粘膜に触ることで、ウイルスが体内に入る場合です。
風邪などをひくと喉が痛むので、なんとなくそこから感染したというイメージがありますが、実は大半が違います。ですから、感染症予防のためには、うがいより手洗いの比重がはるかに大きいのです。
でも、断水下では『流水で、せっけんを使い、指の又や爪の間、手のしわの中まで念入りにこすり洗いする』という望ましい洗い方は、なかなか難しいものがあります。
そこで、エタノールなどの消毒液が欲しいわけですが、とても大切な情報が抜けています。
避難所で感染が拡がって怖いのは、インフルエンザよりむしろノロウイルスでしょう。感染すると激しい下痢を引き起こし、特に共用のトイレでは十分な後処置をしないと感染拡大しやすく、過去の災害でも、実際にあちこちで起きています。
ノロウイルスの感染力は、インフルエンザウイルスよりはるかに強く、ウイルスがほんの数個体内に入っただけで感染する可能性があるので、より強力な対策が必要です。
ところが、ノロウイルスにエタノールは効かないのです。
ノロウイルス消毒のためには、次亜塩素酸ナトリウム剤の希釈液が必要です。専用の医薬品でなくても、キッチン用塩素系漂白剤を500倍程度に薄めたものでも大丈夫。
但し、劇薬なので扱いは簡単ではなく、エタノールよりも使用上の注意事項が多いので、書ききれないから実際の被災地で起きていることも無視ということなんですね。
かといって、別にノロウイルス感染などに関する項目があるわけでなし。『東京防災』では、都民の健康よりも、文字数縛りと責任逃れが優先されたようですね。
それとも、監修者が知らなかったとか?ww
当ブログの関連記事をリンクしておきます。
【シリーズUDL20】衛生編3・敵の弱点と武器の効果を知れ(#1075)
【シリーズUDL21】衛生編4・こんなのならさらにお手軽(#1078)
【シリーズUDL22】衛生編5・環境の敵を排除せよ(#1082)
ちなみに、後の方に掲載されている災害用備蓄品リストには、消毒剤関係は一切入っていませんね。まあお気楽だこと。また後でツッコみます。
【065ページ】睡眠と消灯
避難所での生活は不慣れなことも多く、睡眠不足になって体調を崩してしまうおそれがあります。明るいと眠れない人、暗いと眠れない人もいるので、日替わりで消灯することもひとつの方法です。
これも、一見もっともですけどね。しかし、実にお気楽な話でしかありません。
東日本大震災、今回の熊本地震、管理人は直接の情報を持っていませんが、おそらく他の地震災害でも、多くの避難所で、夜も煌々と明かりがつけられたままでした。
その理由は、明かりを暗くすると、夜中に主に女性に対する干渉が多発したからです。
夜中に、男性が寝ている女性を覗く、身体に触る、ひどいケースになると、ふとんに潜り込んで来るというようなこともあったそうです。
このため、不審な行動が目につきやすいように、明かりをつけておかざるを得なかったのです。
これは避難所生活では決して珍しく無いことなのですが、報道に乗ることはまず無く(熊本地震で初めて公式に報道されたのでは?)、行政も無視、ということですね。
もっとも、他の項目に『不審者を見たら警察や管理者へ』とは書いてありますが、それで防げれば苦労はしない、というのが現実ですよ。
避難所の明かりを消すか消さないかは、睡眠の質ではなく人間の質で決まるということです。
そして、集まっている人間の雑多さでは、他に類を見ない大東京。避難所で平和に眠れるかどうかは状況次第、まあ行政はそこまで面倒見切れない、ってことでしょうかね。
ちなみに、『参照→206ページ』とあるので飛んでみると、簡易ランタンの作り方という、まあどうでもいい、いやトリビアネタとしては重要な話でしたw
このシリーズ、一体どこまで続くんだろう。
■『東京防災』は、東京都防災ホームページからデジタル版が閲覧できます。また、PDF版や電子書籍版も無償で配布されています。詳しくは下記リンクからご覧ください。
東京都防災ホームページ
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