【東京防災ってどうよ16】ここがダメなんだよ【12】(#1237)
番外編を挟んで、通常シリーズに復帰します。今回は、『東京防災』にツッコむ12回目。まだまだネタは山ほどあるんだよなぁw
【148ページ】簡易な浸水防止方法
浸水に備えるには、「土のう」「水のう」「止水板」などを活用します。ゴミ袋に半分程度の水を入れた「簡易水のう」を隙間無く並べたり、止水板の代わりに長めの板などを利用する方法もあります。
『大雨・暴風』編の中の一節です。当ブログ読者の方は、管理人が何を言いたいか、もうおわかりですよねw
当ブログが糾弾する“頭で考えただけ”で”実際には出来もしない、代表的な机上の空論の登場です。
いつの間にか変わったぞ
お馴染みのw、『水のう』が、やっぱり出てきました。
これ、当初は流し台の排水口などの上に置いて、内水氾濫によって下水が家の中に逆流するのを防ぐ、という用途だったはず。
それならば多少の効果は見込めるものの、当ブログ過去記事でも指摘している通り、浴槽の下や洗濯機の下など、水のうを置けない排水口もあるので、完全とは言えないのです。
あくまで、流し台など目立つ場所だけで活躍する、ちょっとキャッチーな『防災トリビア』の類です。
でも、いつの間にか家屋の浸水を防げるというような話になって、なんと自治体とかの公式訓練でも採用されているのです。
訓練では、水のう壁を作るまではやりますが、実際に水を満たすわけじゃない。もしやったら、大変なことになって、教官の面目丸潰れになりますからw
♪でっきるーかな?
こんなものが役に立つと主張する皆様は、もう四の五の言わずに、浴槽とかで実際にやってみてください。
浴槽のまん中に水のうをふたつくらいぴったりと置いて、その片側に水を入れたらどうなるか。滑らかな浴槽の内壁は、水のうとの密着度は理想的です。
しかも狭い壁に挟まれて横にもズレず、変形もしずらいので、水のう同士も広い面積で、ぴったり密着します。それでも、つぶれた饅頭みたくなりますけどね。
上画像のイラスト見てください。水のうがなんだか自立してますよw絶対あんな風にはなりません。大ウソです。
水を入れて行くと、まあ水深10cmかそこらくらいまでは耐えるかもしれません。でもそれを超えると、片側からの水圧で変形して、密着が失われはじめます。
そして最後には水圧に負けて型崩れするか、ズレて『決壊』してしまう。事実上、水深20cmにも耐えられないでしょう。つまり、床下浸水レベルでも防げない。
さらに、洪水時は水に流れがあるし、ゴミも流れて来ます。流れがあれば水のうはさらに動きやすく、小さなゴミの衝突ひとつで破れてしまう。
そんなもの、家財を守るために使うことを勧めますか普通。無いよりはマシ、上手く行ったらラッキーくらいなものを。
机上の対策も登場w
さすがに、大ウソつきもそれには気づいたようです。そこで、また必死に“頭だけで”考えたようです。
まず、水のうを段ボール箱に入れて重しに使い、それを壁のように並べると。
この画像は、某自治体サイトの防災ページからお借りしました。 しかし、見事な机上の空論。
でも、段ボール箱に入れて並べるだけでは、箱同士の間の水密性がほとんどありませんから、水流の勢いを弱めるくらいで、浸水防止は全く不可能。ガムテープで目止めなんかしても無意味というか、ガムテープは濡れたら貼り付きませんよw
それに、段ボールは濡れたらすぐにグズグズです。
ならば箱の列にブルーシートを巻いて一体化しようと。
この画像は、東京都の防災訓練時のものですが、ブルーシートを巻く前の状態です。こんなのが実際に訓練されちゃってるんです。でもまあ、とりあえずこれで水のう壁の水密は確保できたはず。もうこれで安心、なわけがない。
ブルーシートを巻いた水のう壁と、建物などの壁との間の水密、どうしますか?
正解はなんと、
土のうを積むのです。
ならば、最初から土のうを積めって話ですねw
百歩譲って、ブルーシートを巻いた段ボール水のう壁は、土のうの数が足らない時の、次善の策くらいにはなるかもしれません。しかしその場合でも、完全な水密を確保するためには、土のうとの併用が必要なのです。
防水壁と建物の間の水密を保つには、現実的には土のうくらいしか方法がありません。これはもちろん、『長めの板』でも同じことです。
ね、できもしないことが書いてあるでしょ。
根本的な問題
一見、役に立ちそうというイメージだけで、実は全然ダメな水のう、なんでこんなに広まってしまったのでしょうか。
ひとえに、行政に食い込んだ、低レベルの『防災の専門家』が勧めるものだから、訓練とかでも採用せざるを得なくなっているのでしょうね。
それに、テレビやネットでも流されるているから、それを検証もせずにコピペやパクリで広める輩も多いし。いや、『専門家』が言うからと、好意で拡散する一般の方々じゃなくて、それを商売にしている連中のことです。
キャッチーなトリビアとしては“優秀”なネタですから、とても使いやすいんですよ。
ちなみに、あの山村武彦とかいうNHKやフジテレビが大好きな『防災の専門家』が、水のうを盛んに推してますね。『東京防災』と、どう絡まれているかは存じませんが。これは事実だから実名ねw
思い切り脱線してしまいましたw元に戻しましょう。
水のうの根本的な欠陥は、水を使うということ。水のうの敵は、制御不能の大量の水、すなわち洪水です。
水の特徴は、力を加えればいかようにも形が変わること。それは袋に入れても大体同じですから、大量の水の力の前には、力負けして崩れてしまう。
ならば固い箱に入れて、重しにしようと。でも、水の重さ、すなわち『比重』は、水のうの中身も洪水の水も同じ『1』。同じ重さならば、量が多い方の圧力に負けますし、袋などの容器に入った水には、浮力もかかって動きやすくなる。
しかも、防水壁は片側から水圧がかかるので、アーチ状にする、裏側に杭を打って支えるなどの、構造的対策が無いと、簡単に崩壊してしまう。
一方、浸水対策として土のうが優れているのは、
■土の比重は約1.7で水よりずっと重く、水を吸うことでさらに重くなる
■積み上げて突き固めることで変形して強く密着し、水密性が高い
■アーチ状に積む、杭と板で補強するなど、構造的に強い積み方が容易
ということで、妙な言い方ですが、水のうの欠点がすべて補われているわけです。本末転倒ですけどねw
これが本物
ちなみに、ゴミ袋を使った水のうは、正しくは『簡易水のう』と呼ばれています。じゃあ簡易じゃない奴はどんなだというと、こういう奴。
これは一例ですが、要は水圧がかかっても大きく変形しない強度を持つバッグに水を満たし、地面と固定することで水圧や浮力による移動を防いでいるというわけです。
しかしこれとて、建物の浸水を防ごうと思ったら、建物の壁との水密を確保するために、土のうなどを併用しなければならないでしょう。
もうヤメにしませんか?
浸水対策には、土のうが一番。でも、一般家庭で用意するのは現実的ではなく、市販のハイテク土のうはコスト的に大変。
一般家庭や店舗では事実上、浸水に対して打つ手が無いのです。
そこで、水とゴミ袋というどこにでもあるものを使い、「誰でもお手軽に浸水防止」的なノリで、目からウロコ的なトリビアとして広まってしまったのかなと。
もっとも、自分でやったこともない『防災の専門家』が、キャッチーなネタとして拡散したのが最大の問題でしょうけどね。
というわけで、当ブログとしては、内水氾濫を除く浸水対策としての『水のうネタ』を、防災情報から今後一切削除することを提唱します。
こんな、ほとんど大ウソというレベルの話が大手を振っていて、それを拡散して商売しているのが『防災の専門家』というのが、この災害大国の現実なのです。
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